☆☆☆
私はお嬢様が嫌いだ。
高圧的で私たちを同じ人間だとすら思っていない、あの蔑んだ目が嫌いだった。
あの声を聴くたびに体が竦む。
動作の一つ一つに意識が持っていかれる。
顔を見るたびに心が強張った。
お嬢さまといるのは私にとって真っ暗で息の出来ない深海にいるのと同じだった。
苦しかった。
心が苦しかった。
どれだけ長く睡眠を取っていても。
食事をしっかりとっていても。
太陽の光を浴びている時でさえ、疲れが取れることは無かった。
むしろ、睡眠を取れば、悪夢を見る。
屋敷の夢だ。
使用人のベッドで目が覚め、身支度をする。そして、仕事に移る。だけど可笑しなことに使用人仲間は一人もおらず、使用人仲間を探すとお嬢さまが立っているのだ。そして、
『私の世話をしないで何を遊んでいるのかしら!』と怒られる。
夢の中の私は現実とは違い、咄嗟にお嬢さまから逃げるのだが、夢の中のお嬢さまは凄く足が速くてどんどんと距離が近づいて行く。
私はクローゼットの中に隠れて、そこで夢だと気が付く。
夢よ覚めろ!夢よ覚めろ!夢よ覚めろ‼
そうすると、私はベッドで目が覚める。
だけど、辺りを見渡すと誰もいなくて、ドアを開けると、何故かお嬢さまが立っていて、また追いかけられる。そう、夢の中でも悪夢を見続けるのだ。
その上、夢の中ではお嬢さまに追いかけられるというおまけつきで。
いつも夢から現実に戻ってくる時には全身が汗でびっしょりに濡れている。最近は目が覚めたら水で濡らしたタオルで体を拭うことが日課になっている。
食事に関してもそうだ、最近では食べ物を飲み込もうとしても、喉に鉛が詰まってような不快感があり、飲み込むのに苦労する。
反射的に上を向き、水で流し込むことでなんとか食事を摂れているのが現状だ。
お屋敷で働かせていただく前まで大好きだった日向ぼっこでさえ、最近では太陽の光に体力を吸い取られるような徒労感に襲われる。
あれだけ大好きだった太陽は今では私を追い詰める怨敵だ
……本当は辞めたい。
でも、辞めるわけにはいかない。
だって、家にはまだ小さい弟や妹がいる。それに私の家は貧しい農家だ。
雨が続けば収入も食べるものもなくなってしまう。
雨が降らない日が続いても同じだ。
税金だって私たち貧しい農民には厳しい。
だから、家族は私がコリアンダー公爵家の使用人になれたことを本気で喜んでくれたし、私がコリアンダー公爵家にいく前日には高級食材である砂糖を買って、ケーキを作ってくれた。
「はぁ」
私は無意識の内にため息を吐いてしまう。
家族の為に働かなくてはいけないという義務感はある。
だけど、私の心は………………は、私は、どうすれば良いんだろうか。
私は俯きながら歩く。
今日はお休みをいただいており、気分転換に……いや、少しでもお嬢様から離れたくて、お屋敷の外に出ていた。
周りを歩く人たちは大なり小なり幸せそうな顔をしている。
店を構える商人さんは客引きの為に大きな声と笑顔を浮かべている。
それに、時には通行と世間話に花を咲かせることがある。
とても楽しそうに仕事をしている。
「はぁ」
なんだか私には場違いな気がして、居心地が悪くて足早にその場を後にする。
出来るだけ居心地が良い場所に、息がしやすい場所に、私の心を守れる場所に。
私は帰り道など気にせずにどんどんと歩いて行く。
道はどんどんと狭くなる。
ああ、広い道よりもずっと落ち着く。ここならお嬢様に見つからないだろう。
人通りが少なくなっている。
ああ、人目がないからお嬢様の関係者もきっと来ない。告げ口されることはない筈だ。
建物に遮られて太陽の光が入らなくなる。
ああ、ここならゆっくりと……休むことが出来そうだ。
私はほっと胸を撫で下ろす。
後は座れそうな場所さえあれば……そこで私は辺りを見渡す。
見渡して気づく。
「あれ?」
薄暗くて狭くて人通りの少ない、路地裏。
それは犯罪者の巣窟で腕に自信のない女性が来てはいけない所。
来たら最後、何をされるかは……口に出したくもない。
私は急いでこの場から立ち去ろうと脚を動かす。
だけど、数歩あるくと、脚が動かなくなる。
いや、誰かに後ろから手を引っ張られて前に進めなくなる!
私は鐘の音よりも大きく鳴り続ける胸に手を当てながら恐る恐る後ろを振り向く。
「や~っと、こっち見てくれた。ねぇねぇ、お姉さん。こんな所に何の用?もし良かったら、俺と
下卑た笑みを浮かべた男が私の腕を掴みあげる。私も反射的に抵抗を試みたが、男の方が圧倒的に力が強く私はいつの間にか壁へと追い詰められていた。
遊びに誘ってくるという割に横暴なその態度。
だけど、その遊びというのが私が知っているような子ども達がするような遊びではないということは、男の血走った目と荒い息……何よりも私のことを壁へと追い詰めた際に密着した男の下腹部から分かった。男の下腹部は人の体を巡る血のような生々しい熱と、蝸牛の甲羅のような硬質さでは無く、ぶよぶよとした生肉のような柔らかさと形容のし難い固さが共存する奇妙で気色の悪い感触をしていたのだ。
体の芯から冷めていくような、体が竦み上がる感覚が私を襲う。
抵抗したいのに、まるで血を抜かれたように体の自由が利かない。
糸を切られたマリオネットみたいだ。
私は誰か助けてくれる人はいないかと左右に視線を動かす。
すると
「え、誰々?お前どこで捕まえたんだよ。その女!」
「うっわ!マブ!俺にもヤラせろよ」
「お前ら…………金払えよ?」
「おうともよ」
「心の友よ~」
来たのは私を助けてくれる善良な人では無く、一緒になって私のことをもて
私は遂に脚の力が入らなくなり、その場にぺたりと座り込んでしまう。
大声を上げて、助けを呼びたいのに、体が震えて思うように声が出ない。
息も吸っているのか吐いているのか、定かでは無くなってしまう。
「あ、い、いや……や、やめて」
私が精一杯、力の限り声を上げる。
だけど、男達はそれを聞いてニヤニヤと嗤うだけ。
だめだ、私の声は男達には届かない。
それに、私自身なんだか、周りの声が遠のいていく感覚がする。
このまま、一人で誰も居ない場所に行けたらどんなに良いんだろう?
男達もお嬢様も誰も居ない場所。
私は、私を守るために舌を噛みちぎろうとした。
そのとき
「君たち!一体何をやっているんだ!!」
音が遠のく私の世界に、まるで私が張った心の壁を無理矢理叩き割るような大音量が響き渡る。
私も、そして、男達も反射的に音の発生源へと視線を向けた。
視線の先、私たちが見たのは、それはもうごく普通としかいえないような服装の、ごく普通の初老の男性だった。
私を襲おうとしていた男達はきっと警邏隊を恐れていたのだろう。
声の主が初老の男性だと分かり、男達の緊迫感が緩む。そして初老の男性の登場がおかしかったのか一人が吹き出し、つられて残りの二人も声を上げて笑い出す。
「おいおい、お前に何が出来るんだよ!おっさん」
「痛い目見たくないなら早く帰った方が良いぞ?」
「それそれ」
初老の男性を下に見て下品に笑う男達。
だけど、初老の男性はそれを意に返さず、こちらに向かって歩いてくる。
「はぁ、どうやら。身の程が分かっていないみたいだなぁ」
男の一人はやれやれと首を振ると、初老の男性へと殴りかかる。
そして、殴りかかった男は宙に舞った。
余りにも、鮮やかな動きに私は理解が追いついていなかった。
男が勝手に路傍の石に躓き、転んだのかとさえ思った程だ。
だけど、違う。
それは殴りかかった男の腕を掴む初老の男性の手を見れば分かった。
初老の男性が男を投げたのだ。
「どうやら、力の差を分かっていなかったのは、君たちの方だったみたいだね」
初老の男性は自分を馬鹿にしていた男達を逆に馬鹿にするように笑う。
当然、そんなことをすれば男達の逆鱗に触れる。
私を囲んでいた男達は初老の男性の方へと走り出す。
私はそれに安堵の息を吐くことすら出来ず、初老の男性の行く末を見守った。
「何人で来ようが、そんな力任せな動きでは私に土を舐めさせることは出来ないよ?」
殴りかかってきた二人の男、しかし初老の男性はまるで子どもを相手にしているかのように、男達をふわりと投げ飛ばしていく。
武術の心得が無い私にはそれがどういう原理で起きているのかはよく分からなかったが、それでも初老の男性と私が窮地を脱したと言うことだけは分かった。
「あ、あの、ありがとうございます」
私は腰が抜けてしまい、上手く立ち上がれ無いながらも、その場で頭を下げてお礼をいう。
すると、初老の男性は私に近づいていくる。
初め、男性もまた私の体が目当てだったのかと身構えたのだが、どうやらそういうわけではないようで、私に手を差し伸べてくれた。
「立てそうかい?」
「あ、えっと……」
「ははっ、かなり怖い目に遭ったようだし、仕方ないよ。なら私に運ばせてくれ」
初老の男性はお姫様にするような形で私を抱き上げると、そのまま、路地裏を進んでいく。
最初はどこに連れて行かれるのか、少し怖かったのだけど、男性が歩を進めていく内にどんどんと道幅が広くなり、大通り近づいていくのが分かる。
それに私はほっと息を吐く。
だけど
「ふぅ、どうやら誰も居ないようだね。良かった良かった」
初老の男性は目の前に見える小さなベンチがぽつんと置かれた広間を見て小さくそうつぶやいた。
瞬間私は身を固くしてしまう。
やっぱり、この人もあの人達と同じで……。
私は急なことに頭が真っ白になりながらも手と脚をバタつかせて抵抗する。
仮にこの人が私を落として怪我を負うことになってもいいから逃げ出さなければと、できる限りの力、精一杯の力で暴れる。
それに、男の人は焦り、急いで、ベンチまで行くと私を下ろした。
「な、何をするつもりですか!」
距離を取りながら初老の男性へ、問いを投げる。
それに対し、初老の男性は少し困惑するように眉を顰める。
「な、何をと言われても、ただ、君を大通りまで送り届けようとしただけで……」
「で、でも、さっき、言った言葉」
言葉で惑わそうとしてくる初老の男性を睨み付けながら男性の矛盾を突く。
仮にやましいことが無いのなら、あんな発言はしないだろう。
男は私の発言に目を点にすると笑みを浮かべる。
やっぱり!
「ああ、なるほど、そういうことか。合点がいったよ。だけど別に私は君に悪意を持ってああいう発言をしたわけじゃないんだ。ただ、ほら、私みたいなおじさんが君みたいな若い子を抱きかかえていたら、邪推する人間もいるだろう?それだけだよ」
その言葉に私は一瞬思考が止まる。
そして、意味を理解した瞬間、顔がすっごく熱くなる。
多分、今の私は熟したトマトの様に真っ赤な顔をしていることだろう。
「そ、そうだったんですね」
私は風が吹けば消えてしまいそうな程小さな声で返事をする。
その様子がおかしかったのか、男性は吹き出して笑う。
「ははっ、君は随分と可愛らしいんだね。僕の周りの女性は気が強い人が多いから、少し新鮮だよ」
ああ、もう!
私はなんて失礼なことを言ってしまったんだろう。
恥ずかしくて顔を覆いたくなる。
そ、それでも流石にこんな失礼な態度を取って謝らないっていうのは人としてダメだよね。
深呼吸を二回、吸って吐いて、吸って吐く。
「あ、あの!」
私は意を決して言葉を吐き出す。
さっきの勘違いを謝ろうと心を奮い立たせる。
ぐぅ
……だけど、運命の悪戯というのは実際にあるもので私が謝罪を告げるよりも早く、正直者の私のお腹は空腹を主張してきた。
ああ、なんでこうタイミングの悪いときに……。
いや、確かに、よくよく考えれば今日は何も食べずに歩き回っていたけど!
私は頭を抱えたくなった。……実際に抱えているのはお腹だけど。
その一部始終を見ていた男性はお腹を抱えて笑い出す。
今日は笑われてばっかりだ……。
私がむっとしているのが伝わったのか、男は笑いすぎて出てきた目尻の涙を拭き、片手で謝罪のジェスチャーをする。
「ごめん、ごめん、いやぁ、随分と図太い子がいたもんだって思っただけさ。ああ、もし良ければこれ食べるかい?」
男は懐からパンを取り出すと私に差し出してきた。
この人がきっと悪い人ではないということはこの短い付き合いでも何となく察することが出来たのだが、流石に人から貰ったものを警戒せずに食べられるほど私も図太くは無い。
もう一度言っておく図太くは無い!
私が食べていいか、食べない方がいいかで手を自分の胸元とパンの前で彷徨わせていると、男性はパンの一部をちぎって食べてしまう。
「安心して良いよ。睡眠薬も毒も入っていないからね。……それとも、パンは嫌いかい?もしそうなら僕が食べてしまうけど」
「い、いえ、食べます。ありがとうございます!」
男性は本当に自分一人で平らげてしまいそうだったので、私は急いで男性からパンを受け取り齧り付く。
おいしい。
ふわふわなパンだ。
農家だから分かるけれど、粗悪な小麦ではこれ程上等なパンは出来ない筈。
この人上流階級の出身の人だろうか?
「ふふ、やっぱり君は図太いね。気持ちの良い食べっぷりだよ」
「ぶふほくはないれふ(図太くは無いです)」
私の食べっぷりに失礼ないちゃもんをつける男性にきっちりと否定の言葉を告げる。
私はこれでもお淑やかな女の子だ。
図太くも無い!
そこで、男性は首を傾げる。
まさか、私の図太くないという発言に対してだろうか?
「ふむ、それにしてもどうして路地裏なんか居たんだい?君が如何に図太くたって路地裏が危険だということは知っているだろう」
私は食べていたパンを飲み込む。
心の奥底にあったしこりが、引っかかりが、決して家族にも仕事仲間にも出せなかった……独りぼっちの私が顔を出す。
助けてと声を上げる。
なんだか、喉に鉛が詰まっているようなそんな不快感が生まれ、食欲が失せる。
………………あれ?でもここ最近はずっとこの不快感に苛まれていたはず。
こんなに美味しくご飯を食べれたの何日ぶりだったっけ?
「……悩みがあるのかい?」
「それは……」
男性は私の心を見透かしたような、核心をつく一言を発する。
「もし、悩みがあるのなら、相談してくれないかい?これでも僕は顔の広い行商人でね。もしかしたら、君の力になれるかもしれない」
「……えっと」
私は、
私は、
私は、男性に事情を説明した。
心の中に溜まっていたドロドロとした淀んだ感情を吐き出した。
全部全部吐き出した。
私がどれだけ辛かったのか、頼れる人が居なくて心細かったのか、誰にも言えなくて苦しかったのか、全部全部吐き出した。
ボロボロと涙が溢れる。
ドロドロとした感情が涙と共に流れていく。
全部吐き出したら、少しだけスッキリした自分がいた。
結局話すだけ話しただけで現状は何も変わっていないけど、それでも、今日は少しだけ良い日になった気がした。
私はお礼を言おうと、男性を真っ直ぐに見据える。
しかし、男性の方は少しだけ、心ここに非ずといった様子だった。
話を聞いてくれていた時は静かに相槌を取ってくれていたんだけど……。
男性は静かに声を出す。
「とても辛かったんだね」
「はい、でも、話を聞いてもらえて」
「もし君が辛いのなら、これをそのお嬢様の食事に混ぜるといい」
男性はポケットから無色透明の液体が入った瓶を渡してきた。
私は一瞬、男性が何を言っているのか分からなかった。
「えと、これは何でしょうか?」
大方、予想は付いていたが、それでも嘘だと思いたくて、まるで何も知らない子犬のように首を傾げてしまう。
その様子に男性は優しさを宿した瞳を向けてくる
「大丈夫さ、これはあくまでも、少しだけ飲んだ人間の体調を崩すだけ。命に別状はないさ」
「い、いえ、それって凄く拙いことなんじゃ……」
私は男から距離を取る。
駄目だ。まずい。
さっきとは別の意味で危ない事件に巻き込まれている気がする。
しかも、今度は被害者では無く、加害者として。
私は男の話を強引に断ち切りその場を去ることを決意する。
「あ、えっと私お屋敷に戻らなくちゃなので」
「待ってくれ」
男性は咄嗟に私の手首を握る。
その感触がこの状況がついさっき獣達に襲われそうになったことを想起させる。
一瞬にして体が石のように固くなる。筋肉が強ばり、上手く動けなくなる
「君は辛い思いをしてきた!ただ、それはきっと君だけの問題じゃないんだ。君が抱えていた悩みは他の人も抱えている。そして、それはこれから来るだろう使用人の子達もきっと同じように抱える悩みだ。
君を慕ってくれる誰かが、君が慕っている誰かが、そのお嬢様に潰されてしまうかもしれないんだよ!」
その言葉にふと、先輩の顔が浮かんだ。
右も左も分からなくて、いつも怒られてばかりだった私をいつも気にかけてくれた先輩。
私の使用人としての技術は先輩から学んだものだ。
日常生活も気にかけてくれたし、家族と会えるように休みを調整してくれることもあった。
私が少しだけ具合の悪かった日、本当は休みだったのに嫌な顔1つせず仕事に出てくれたこともあった。
……先輩も辛いのだろうか?
ニコニコ笑顔を浮かべているけど、お嬢様の行動で心が傷ついているのだろうか?
もしそうなら……もしそうなら……
「ねぇ、僕と一緒にヒーローにならないかい?」
「…………えっと……私はもう帰りますね」
私はそそくさとその場を後にする。
手をギュッと胸の前で握る。
自然と手が震える。
私の、私の手の中にはあの瓶が握られていた。
☆☆☆
屋敷に帰ってからも私は葛藤していた。
この瓶をお嬢様のお食事に混ぜるかどうかを。
その度に思い出すのは男性の言葉だった。
『君を慕ってくれる誰かが、君が慕っている誰かが、そのお嬢様に潰されてしまうかもしれないんだよ!』
私の大好きな先輩が、これから来るであろう使用人仲間がお嬢様によって潰されるかもしれない。
夢で見る、私とお嬢様しかいないお屋敷。
『ねぇ、僕と一緒にヒーローにならないかい?』
私なら、私なら皆を助けられるかもしれない。
この瓶を少し食事に垂らすだけで……
『とても辛かったんだね』
そうだ、私だって辛い思いをしたのだ。
少しやり返すくらい良いじゃないか。
別に死ぬわけじゃない。
少し、うなされて、自分の行いを反省して貰えればそれでいいんだ。
私は
騙して、取り繕って、張りぼての正義を掲げる。
分かっているのだ。
本当は分かっているのだ。
でも、現状を変えられる。たったのワンアクションでこの息苦しい場所を変えられるのだ。
震える手で毒を盛った。
お嬢様はそれを疑うことすら無く、口へと運ぶ。
無愛想で、ふてぶてしくて、お人形のようにとても綺麗な顔。
私は視線を自信の足下へと向ける。
前髪で顔を隠す。
だって、
きっと
きっと、このときの
タイトルのノエルって誰だよって思っている方が殆どだと思うのでお答えしておくと、一話に出て来た使用人の名前です。
今後、本編でも名前が明かされます。
因みに、この後書きを見ずにこの答えに行き着いたあなたはニュータイプの可能性があります。