元勇者、悪役令嬢になる   作:☆☆☆宮☆☆☆太郎

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私がヒロイン!(フリージア視点)

☆☆☆

 

私にはあーちゃんという小さい頃から仲の良かった友達がいた。

何をするにも一緒で小さい頃はよく砂場でお城を作っていた。勿論、他にもおままごとやお人形遊びなどもやった。

だけど、私が一番好きだったのは砂遊びだった。

理由は自分の理想のお城を作ってお姫様になった自分が住んでいるという妄想をするのが好きだったのだ。

華やかな舞踏会に美味しいご飯、そして、私を迎えに来てくれる王子様。

時にはお姫様ごっこをすることもあったけど、私はお姫様ごっこに関してはあんまり好きじゃ無かった。

お姫様ごっこをするときいつも村娘とか、メイドさんを演じていた。

別にお姫様をやらせて貰えなかったわけじゃ無い。

 

一緒にお姫様ごっこをする友達の間で誰がお姫様役をやるか一度喧嘩をして以降、皆順番にお姫様役をやりなさいってお母さんや幼稚園の先生に言われていたから

あの時は本当に大変だった。もう少しで殴り合いの喧嘩になるところだったのだ。まぁ今となってはそれも良い思い出だけれど

 

そんなこんなで私たちの間でお姫様は皆が演じられる役となった。

なら、なんでお姫様役をやらなかったかというと、私は子供ながらに知っていたのだ。いや、私自身その目映さに目を奪われていたのだと思う。

本物の輝きに

そして本物が直ぐ隣にいるものだから、常に自身と本物を比べていた。

 

そして、比べて分かった。私は世間的に言うとあまり可愛い、いや、容姿の優れた子供では無かったのだ。

あ、でも、言っておくけど別にそこまでブサイクって訳でもなかったと思う。

普通の子供だったってだけ

別に悲しい話でも何でも無い。ただ、他の人よりも早い段階で現実を知ったと言うそれだけの話だ。

 

大人達だって私とあーちゃんを比べて酷い言葉をぶつけたりはしなかったし、むしろ子供である私を可愛い可愛いと褒めてくれていた。

だけど、それでも私の隣に経つあーちゃんに言う可愛いと私に伝える可愛いという言葉。その重み、質というのは違っていた。

私に言うときは微笑ましいものを見るように可愛いというのに対し、あーちゃんに対してはどこか浮世離れした風景を見て感動した時のように、息を呑んでいるのが分かった。

 

まぁ、自分で言うのもなんだけど、少しだけ、ほんの少しだけだけど早熟な子供ではあったと思う。

 

だから、私はお姫様ごっこを提案しなかったし、複数の子供達と遊ぶとき、仮にお姫様ごっこをしなくてはいけなくなったときはお姫様を辞退した。

子供ながらに身の程というものを弁えていた。

 

私とあーちゃんは全然違った。どこにでもいる少女と神に愛された少女。だけど私とあーちゃんの仲は自分で言うのもなんだけど凄い良かったと思う。

というか、最後の瞬間までは親友だと思っていた。今考えれば自分のことしか考えていなかったからそんな風に思えたのだろうけど……

 

あーちゃんは自身の美貌を鼻にかけることのない子供だった。

どんな時でも自然体で、良く笑い良く怒る。正直者で優しい。そして、けっして人を見下すこと無く誰とでも分け隔て無く接する。

皆の中心にいていつも周りを元気づけた。特に私が落ち込んでいた時は変顔大会を主催して、なんとあーちゃん自身が優勝してしまったのだ。

あの時のあーちゃんの変顔と言ったら……今思い出しても頬が緩んで噴き出しそうになる。それに、砂遊びをしていたときは私がお城を作っている横で一生懸命泥団子を作って服も顔も泥だらけにしていた。

その後、作った泥団子をよく砂場を独占していた男の子にぶつけたのはどうかと思うけど……

 

それとあーちゃんは駆けっこも好きだった。

というか、恐ろしく速かった。

幼稚園の頃に五〇メートル7秒台を叩きだしていたのだ。

いや、今考えれば速すぎでしょ

当時はどのくらい凄いか良く分からなかったけど、今なら大人達があんぐりと口を開けていた理由が分かる。

 

そんな風にあーちゃんは凄い活発で優しい子だったのだ。だから私はあーちゃんを妬まずにいられた。

正直、スッと受け入れられたかと言われればそんなことは無かったけれど、あーちゃんは性格も良かったし、幼い頃からの付き合いだし、小学校の友達にお姫様になりたいと明かしたときにあーちゃんの方がお姫様っぽいと言われた時も「ま、そうだよね」って笑い飛ばすことが出来た。

とはいえ、全員が全員私のように割りきれる訳ではなくて、特に小学校に上がると異性を意識し出すおませさんも現れ、男子達を首ったけにするあーちゃんに突っかかってくることも珍しくなかった。

まぁ、好きな子を取られてやきもちをやく子がいたのだ。

 

そういうときは私がそれとなくあーちゃんとその子の間を取り持ったりもした。

別に人より特段優れているわけでも無い早熟なだけの子供だったのだけど、あーちゃんの役に立てたのだからそれでも良かったのかもしれない。

とはいえ、最初だけ取り持ってあげれば後はあーちゃんの性格を知っていき妬むだけ体力の無駄って分かっていつの間にか皆仲良くなっていた。

 

そんな私とあーちゃんの関係が変わったのは中学に上がった頃だった。

 

まぁ、私はただの早熟な子供であーちゃんはテレビに映るアイドルよりも可愛い女の子なのだから、当然の帰結だったんだと思う。

 

それでも、一応聞いて欲しい、私とあーちゃんの結末を

私の心を整理するために必要だから

 

☆☆☆

 

中学生に上がった私は姉がやっていた乙女ゲーム『トゥルーラブ~才能の花園に咲く一輪の華』をプレイさせて貰えた。

姉自身は買ったは良いけど、このゲーム通称『トゥラブ』が好みでは無かったみたいで『トゥラブ』を大層気に入った私に喜んでゲームを譲ってくれた。

変わりに私が大切に取っておいたケーキを食べられたけど……

 

まぁそれは置いておいてそれからの私はのめり込むようにゲームをプレイした。

勿論、あーちゃんのことを蔑ろにしたつもりは無かったけど、あーちゃんはこのゲームがあまり好きでは無かったみたいで他のゲームや外で遊ぶことを提案することが多かった。

 

『トゥラブ』をやりたかった私、他の遊びをしたかったあーちゃん

 

それでも、私もあーちゃんと仲良くしたくない訳では無かったため、出来るだけあーちゃんに合わせて他の遊びをした。

『トゥラブ』は帰った後でも出来るしね。

ただ、どうやらあーちゃんは『トゥラブ』の話題自体があまり好きでは無かったのか、私が『トゥラブ』の話をすると不機嫌になることが多かった。

 

とはいえ、だ、昼はあーちゃんと遊んで夜は『トゥラブ』か成績を維持するための勉強をしていた私に昨夜のバラエティー番組の話やアニメ、ドラマの話など出来るわけも無く、どうしても私が振る話は学校のことか『トゥラブ』、天気の話の三択になった。

 

そうして、お互い話が、というか話す話題が噛み合わなくなっていった結果徐々に私たちの距離は離れていった。

良くある話だと思う。

 

あーちゃんはその類い稀なる容姿も相まって、直ぐに新たな友達を作り、一方私はぼっちになって更に乙女ゲームにのめり込むようになった。

今考えると、あーちゃんの存在は私がド陰キャにならないための最後の砦となっていたんだろう。

 

そして、私から離れたあーちゃんはお洒落とか剣道とか様々なものに興味を示していった。

因みに、剣道は初年度から団体戦のレギュラー入りを果たし、更に個人戦では全国一位に輝いたそうだ。

いや、どゆことって思うかもしれないけれど、私もその話を耳にしたとき同じ事を思った。

更にファッションに関しては知的系、カッコいい系、かわいい系、スポーツマン系、キラキラ系などあらゆるジャンルを着こなしていた。

時々写真を送ってくれていたのだ。

 

まぁ、そんなこんなで私とあーちゃんの間には細く長く付き合いがあったため、離れてはいたけれどそれでも友達だと思っていた。

これからもずっと友達でいるんだと思っていた。

 

あーちゃんは剣道やお洒落に興味を示すようになってから私と一緒に行動していた時以上に、それこそ男女問わず絶大な人気を得て、学園の王子や文武両道の大和撫子なんて呼ばれるようになっていた。

流石にそこまで来ると恐れ多くなってくるのが人間というもので本当は剣道の大会の際に応援に来てくれないか、と誘われたことや一緒に遊びに行かないかと誘われたこともあったのだけど、遠回しに断ることも多くなった。

 

まぁ、それでも私とあーちゃんの絆は変わらない、なんて脳天気に考える自分もいた。

ほんと都合が良いよね。折角歩み寄ってくれているのに自分からその手を払っておきながら、それでも友達、なんて

 

でも当時の私は十数年の絆がそう簡単に朽ちて消えるはずが無いと本気で考えていた。

 

もしかしたら、これも中二病と呼ばれる症状の1つなのかもしれない。今考えればそれくらい楽観的で自分本位の思考だったって分かるのに……

 

そんな私のとんでもなく恥ずかしい勘違いを正してくれたのは最近あーちゃんと一緒にいることの多い、多分、今のあーちゃんの友達である女子生徒達だった。

彼女たちは放課後私を校舎裏に呼び出すと事態を把握していない私に対して、こう告げた。

 

「あんたさぁ!茜先輩の友達止めてくんない?

茜先輩言ってたよ。アンタみたいな芋女に友達面されるの迷惑だって」

「しかも、茜先輩が言ってたんだけどこの子、乙女ゲームとか言うのやってて気持ち悪いって」

「え~茜先輩そんなこと言ってたの?流石に気持ち悪いは可哀想だよ~

だって~茜先輩と違ってこの子じゃまともに恋愛も出来ないだろうし~

画面の向こうでくらい夢見ても良いんじゃない?」

 

あーちゃんの今の友達はそう言うと私を軽蔑するような視線を向けてくる。

 

(まぁ、でも確かに私みたいな陰キャとあーちゃんは釣り合わないよね。)

 

当時の私は必死に自身にそう言い聞かせていた。

気持ちは差し詰め悲劇のヒロインだったと思う。

信じていた親友に裏切られた、と本気で思っていた。本当は何度も手を差し出してくれていたのに…

ただ、ズキズキと痛む心を無視して気丈なふりして彼女たちの申し出を、あーちゃんの申し出を受け入れられたのは、もしかしたら心の奥底では自分に非があると分かっていたのかもしれない。

 

「うん、分かった。これからはあーちゃん……茜さんには近づかないね」

 

私はそれだけ言うと足早に彼女たちの前から立ち去る。

心臓はバクバクとなっていてやけにうるさかったのを覚えている。

頑張って耐えていたけれど、涙のダムはもう決壊寸前だった。

 

多分、あと少し追い打ちをかけられていたら、我慢できずに子どもの様に泣きじゃくっていたと思う。

ただ、幸い彼女たちが私を追ってくることは無かった。

私を気遣っていたのか、それとも、私にさっきの内容を伝えられれば良かったのか……

それは私には分からない。でも、きっと彼女たちもあーちゃんを思って私にあーちゃんの本心を伝えたののだろうし、多分私を傷つける意思は無かったんだと思う。

 

「はぁ……よし!今日でキキョウ様を攻略するぞ!」

 

校門前、まだ部活中の学生や下校中の学生もいる中、手を大きく頭上に上げると自身に言い聞かせるように呟く。気持ちを切り替えるためにあえてオーバーリアクションを取った。

周りの目を態と無視した。

 

(そうだ、現実に居場所がなくても私には乙女ゲームの中に恋人も友達もいる。)

 

当時から私は切り替えの出来る女だったのだ。

……嘘、本当は鼻水垂らしてたと思う。

顔を伝い口に広がる塩気、という言い方をすればあたかも目尻を伝って涙が唇に付着したように演出できるけど、あれは粘性があった、涙ではないだろう。

今になって、こんなことを真剣に考察するのは馬鹿馬鹿しいけど、気持ちを整理するには馬鹿馬鹿しいくらいが丁度良い。

 

『画面の向こうでくらい夢見ても良いんじゃない?』

 

その言葉を聞いた瞬間、当時の私は自身でも気づかぬうちに歯を食いしばっていたのか、歯が欠けて口内を転がる。

私はポケットからティッシュを取り出し、歯を吐き出す。ついでに鼻もかんだ。

かんだそばから出てきたけど。

そんな風に鼻水を滝のように垂れ流している所、丁度タイミング悪く、あーちゃんが通りがかる。

 

あーちゃんは目に涙を一杯に溜めて、鼻水をだらしなく垂らしている姿に目を白黒させる。

せめて、涙を垂らして、鼻水は鼻の奥に溜めておきたかったよ。

とはいえ、あーちゃんはそんなことを気にする器の持ち主じゃ無い。

 

「ど、どうしたの!蘭ちゃん」

「……いや、さっき蘭ちゃんの友達に……」

「友達!?もしかしてあの子達が蘭ちゃんに酷いこと言ったの!?」

 

蘭ちゃんは酷く取り乱し、私を気遣ってくれるけど、私は蘭ちゃんから距離を取る。

それと、彼女たちが酷いことを言ったわけじゃ無いと、そこはきっぱりと伝えておいた。優しいあーちゃんのことだから、彼女たちを不必要に注意するかもしれない。

多分あーちゃんを思って言い過ぎてしまった部分はあったのかもしれないけど、大部分はあーちゃんの気持ちをしっかりと代弁していたのだろう。

 

「ごめん、ただ、あの子達にあーちゃんの気持ち聞いちゃった……」

 

その言葉にあーちゃんは酷く衝撃を受ける。

 

『しかも、茜先輩が言ってたんだけどこの子、乙女ゲームとか言うのやってて気持ち悪いって』

 

(やっぱり、間違いじゃ無かったんだ。)

 

少なくとも、私とあーちゃんの間に亀裂が入ったのは乙女ゲームを初めてからだ。

乙女ゲームに良い印象を持っていないというのは容易に想像が出来た。

あーちゃんも観念したように下を向くと、弱々しく笑みを浮かべる。

 

「そっか……。

蘭ちゃんごめんね。蘭ちゃんを傷つけたかった訳じゃないんだ。私自身蘭ちゃんとずっと友達でいたかったんだ……だけど、自分の気持ちには嘘、付けなくて……」

 

そんな風にあーちゃんが本当に悲しそうに言ってくるものだから、私は急いで首を振る。当然横に、だ。

 

「ううん、良いの。

私もあーちゃんの気持ち見ないふりしてたんだと思う。本当はずっと前から分かってた」

 

自分に原因があるにも関わらず、どの口がと今なら思うけど、このときの私はそうやってあーちゃんを傷つけないように取り繕うので精一杯だった。

そんな私にあーちゃんは上目遣いで問うてくる。

 

「それで、答え、聞かせて貰っても良いかな」

 

『あんたさぁ!茜先輩の友達止めてくんない?

茜先輩言ってたよ。アンタみたいな芋女に友達面されるの迷惑だって』

 

「……大丈夫、だよ」

 

このときの私はあーちゃんに目を合わせることが出来なくて、顔を背けてそう言うのが限界だった。

だから、あーちゃんがどんな顔をしていたのかは今の私にも分からない。

だけど

 

「……そっか、良かった」

 

そう言うあーちゃんの声は酷く安心したように憑きものが取れたような、漸く呪縛から解放されたような、舞い上がる五秒前のようなそんな声だったのを今でも覚えている。

私の心のダムはそれと同時に静かに決壊した。

 

「それじゃあ、私もう帰るね」

 

自業自得とはいえそう言えたことだけは当時の私を褒めてあげたい。

 

私は逃げ出すように、というか実際にそれだけ言うと駆けだした。

このまま、一緒にいてはあーちゃんの前で情けなく泣いて、心にもないことを言ってしまいそうだったから。子どもの様に癇癪を垂れ流しそうだったから

 

そうして、走って走って、涙で歪んだ瞳は、ぐちゃぐちゃになった私は赤信号になっていることに気がつかず道路に飛び出して引かれた。

本当に呆気なかった。人って死ぬときは意外とぽっくり逝くんだね。

まぁ、話はそれだけ。

 

光雪蘭の短い人生は膜を閉じたのだった!!完!!

 

そして、ここからは新しい私の話。

『トゥルーラブ~才能の花園に咲く一輪の華』の主人公フリージアに転生した私の話だ。

私は書き終えた日記帳を閉じると、引き出しの中にしまう。

鍵とかは掛かっていないけど、日本語で書いているからどうせ誰も読めやしないのだ。

日記をしまった私は変わりに学校指定の鞄を肩に掛ける。

 

「よし!

お父さんお母さん行ってきます!」

 

私はここで、この世界で一番幸せになる。

アイリス・コリアンダーもエピフィルム・カリカルパもカンナ・ライラックも全員出し抜いて私はこの世界で天下人になってやる!

 

後、友達は大切にします!対戦よろしくお願いします!

 

その思いを胸に私は魔法才華学園の門を叩くのだった。

 

☆☆☆

 

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