キヴォトス最後の魔法使い -非科学の象徴が行く銃撃戦だらけの青春-   作:ふぃーあ

1 / 2
拝啓師匠、どいつもこいつも血の気が多いです

《魔法》。今のキヴォトスでは失われつつある……というか、もはや私が最後の伝承者であるそれは、科学の発展によって非科学が駆逐された結果追い落とされたもののれっきとした学問だ。

 

 ただ非科学的なだけで、そこには正しさがあり、結果があった。

 

 人と人とがやりとりするように、人と神秘はやり取りをして、その結果として想像もつかない奇跡が起きる。それが、《魔法》という学問であり、どのようにやり取りをするか、というのを教えるものである。

 

『何者かに拾われたか。ん?返すだと?気にするな……幸運な何者かに小生はとある学問を教えてやるつもりでそれを配置したのだ。どうだ、小生に師事する気はないか』

 

ある日路上で私が拾った端末から繋がった電話先の《師匠》は、そう言った。そして、先に述べたようなことを言いながら、様々な学びを私に与えてくれた。そして。

 

『小生からはこれで全てだ。小生は小生のキャンペーンに戻る……お前はお前のキャンペーンを始めろ。その攻略の果て、お前がどうしようと、それはお前の選択だ。悔いるようなことがないようにな。行け、キヴォトス最後の魔法使い』

 

 そんな学問を1から100まで修めた最後の魔法使いたる私……『明黎ヒカリ』は、今……

 

「おらーっ!! 身ぐるみ全部置いていけーっ!!」

「拝啓師匠! ゲヘナの治安の悪さは『ちょっと』ではないようにお見受けいたしますッ!」

 

 全力で逃走中であった。外界と接触を断ちこれまでの生涯を魔法に費やしてきた私だが、まさかちょっと治安が悪いと師が仰っていたゲヘナ学園地区がこう……初手路上強盗団遭遇とかいう治安の悪さだとは思わなかった。

 

「この先は開けてる! もう逃げ場はねぇぞ!!」

「(マジですか? ……躊躇いなく行けますね、やっちゃいましょうか……)望むところです! ファイナルラウンドと行きましょう!」

 

 開けてるならぶっ飛ばしてもいいのでは? という考えに至るあたりはまあまあ頭キヴォトス、というかゲヘナ寄りでは? と自分で自己解析。でもそういうものなのだ、魔法って。

 

「それではではでは……開けた場所ですし、参ります!」

「なに?」

 

 開けた広場の中央に陣取り、師匠から頂いた本を開く。

 

「《魔法律定義書(ルールブック)》!!」

 

 本が開くと同時に自動で宙に浮かぶ。私は一切本に目を通さずにすらすらと続ける……幾百と重ねた基本、今更ミスりますか!? 

 

「《詠唱破棄(ノットワード)》《神秘増強(エーテルブースト)》! 魔法律式第188番《地中より来たる剛腕(ガイアズストレート)》!!」

 

 瞬間、詠唱を破棄され、増強された神秘の力を以て、大地から巨大な拳が突き上がる。

 

「ふげぇぇっ!!?」

「じ、地面から、デッケェ拳っ!?」

「やば……てか、なんだありゃ、魔法……!?」

 

 その言葉が聞こえた瞬間、高らかに名乗り上げる。

 

「私こそはキヴォトス最後の魔法使い、非科学の象徴! さあ、戦うというのならかかってきなさい!!」

 

 その名乗り上げと、突き上げられたリーダー格の少女の姿に怯えたか臆したか、彼女らは撤退していく。

 

 ほっと胸を撫で下ろす……わけにもいかないのが、ゲヘナ学園という世界であった。足元を2発の弾丸が穿つ。

 

「動けば撃つわ」

「……どちら様で?」

「ゲヘナ風紀委員会委員長、空崎ヒナ」

 

 あー。と私は天を仰ぐ。これは、もしかしなくても? 

 

「見たことの無い生徒が不良に追われていると聞いたから来てみたらこれ。珍しいものを見せてもらったわ……詳しく、聞かせてもらう」

 

 

 

 

 連行された先、風紀委員会の独房……から場所を移し、執務室にて。

 

 ホワイトボードに書き連ねられる文字、文字、文字。

 

「つまりですね。魔法というのはれっきとした体系を持つ学問なわけです」

 

 そこでひとつ説明を終え、ペンの蓋をきゅっと閉めて振り返ると、そこには真剣に話を聞く委員長さんたちのお姿が。

 

「……なんだか半分も分からなかったけれど、つまり貴方にとっての銃は魔法ということね」

「さすが委員長さんです。完璧な着地点ですね!」

 

 賞賛の意を込めて拍手をすると、バカにしないで、とばかりの視線が飛んでくる。

 

「バカにしないでください!!」

 

 言ってきた人もいた。胸がバカでかい癖に横乳が空いている、ちょっと頓痴気な見た目の女の子だ。アコさんというらしい。

 

「あーいえ! バカにする気は全然ないのですが、やっぱり魔法学の基礎を踏まえた上で説明するのは難しくてですね。初めての方が理解できるように説明したつもりですが、それでも難解でしたよね?」

「えっと……そんなことはありませんでしたよ」

「そうそう。割と理解自体はできた」

 

 イオリさんとチナツさんという、風紀委員会の幹部クラスのお二人からは暖かい言葉を頂戴し、改めてそこで一息を入れた。

 

「とまあそんな銃替わりに魔法を用いているのが、現代における最後の魔法使い、非科学的学問であるところの《魔法》を《神秘(エーテル)》で操る者、それこそが私……『明黎マリ』というわけですね」

 

 ヒナさんが聞きたいことがある、というような面持ちでいたのを私は見逃さない。

 

「はい、ヒナさんそのお顔。なにか気になることでも?」

「えぇ。神秘を力にする、ということは分かったのだけれど。神秘、って言うのはあなたが言うには『ヘイローから供給される力』なのよね?」

「はいその通りですよ?」

 

 魔法とは、《神秘(エーテル)》ありきの奇跡。そして《神秘(エーテル)》とは我々にしかない特異なる力……ここまでは真実、摂理ですからね。

 

「私は《神秘(エーテル)》を操るということに何らかのデメリットがあると思っている。そこに廃れた理由があるとも。……あるのでしょう? 何か、重大なリスクのようなものが」

 

 その言葉に酷く驚いた。僅かな説明でそこまで看破されるとは! さすが風紀委員長、頭もよく切れるようだ。

 

「んふふ……その通りです。みなさんの身体が頑強なのは《神秘(エーテル)》の循環により小規模に無意識な《強化(バフ)》の魔法が発現しているからです。特にヒナさん、あなたの循環は研ぎ澄まされ、もはやほぼ完全な魔法現象に近い……魔法律式第25番《鉄超えに至る身体(アイアンスキン)》という魔法の少し手前、くらいでしょうか」

「……もしかして、魔法のリスク、とは」

 

 アコさんが、静かに言葉を紡ぎ出す。ヒナさんはそれを聞いて、答え合わせをする方に回ったように腕を組んだ。

 

「我々は無意識下に魔法現象の手前のようなものを行使し、利用して普段の頑強さや足の速さを得る。魔法は神秘を用いて行使され、異なる力を発揮する。……まさか、あなたは」

 

 アコさんが答えに辿り着いた瞬間、顔を青くした。

 

「あなたは、魔法の行使中、銃弾に直撃すれば致命的なダメージを負う……?」

「はい、正解です。よくできました……これが、古い時代に魔法使いを滅ぼした魔法使いの武器です」

 

 私はそれに合っていると頷いて見せてから、一丁の銃を机に置く。

 

「この拳銃には魔法律第77番《魔弾の射手(ザミエルバレット)》という魔法が付与されています。効果は射手の望む場所に6発まで弾を自由に飛ばせるというものです。ただし、7発目が弾倉にリロードされた時点でいつ発砲されるか分からず、発砲された場合6発目を使用した射手の頭部に向かって飛翔するというデメリットがあります」

 

 その言葉と、アコさんの導き出した「デメリット」によって、魔法使いの衰退の理由がハッキリしましたね。いや、隠すつもりはないんですけど、言う理由もなかったので言わなかったんですが。

 

「魔法使いを殺すための、魔法の付与された、銃……」

「バカみたいだ……魔法使いを、同類を殺すために、こんな」

 

 言葉を失う人々。私は緩く微笑んだ。

 

「何事も、争わずに共存、とはいかないのです。生命の真理は闘争にある」

「だからって……」

「まあ……もう過ぎたこと。もう何も思うところがないと言えばないのはそうだね」

「……じゃあさ、戦場でそれを私があなたに撃つとしたら?」

「んー。なんというか、私は弱点を克服していますので」

 

 その瞬間、座の空気がゆるくなった。

 

 なーんだ、みたいな顔で安心して背に体を預けるイオリさん。ふう、と胸を撫で下ろすチナツさん。腕を組んで考えていたが顔を上げたヒナさん。なっ、と口に出ているアコさん。

 

「私、常時展開型の特殊な魔法を常に8つほど展開しています。そのうちのひとつが魔法律第81番《魔導障壁(エーテルバリア)》です。まああんま説明の必要はありませんが、ようは皆さんが無意識にやってる自己バフを自分の明確な意識で起動しているものになります。ただ耐えられる総量は自分の神秘量を超えませんが」

「……つまり、あなたは攻撃する度に自身の耐久を削っている、ということね」

「んー、例外はありますけどそういうことになります!」

 

 別の魔法に『神秘を一定時間おきに回復させる』などの継続的な魔法が存在しているため、例外はあるものです。

 

「色々組み合わせたら割ととんでもないことできるんですけどまあ、素の私ですとそうですね……手榴弾の直撃を3回くらいまで耐えれる、というところですかね?」

「結構しっかりとした防御ね。……用意もできたかしら」

 

 ヒナさんがそれならまあ、という顔をしつつそう言うと、立ち上がった。

 

「委員長?」「ヒナさん、どうされましたか?」

「ついてきて。……イオリ、模擬戦闘をあなたと彼女、あと私でやって欲しい。できる?」

「やってみるよ、委員長」

「その意気。それと、明黎マリさん」

 

 振り返ったヒナさんはにこりともせず、拒否権がないことを通達するのであった。

 

「あなたの広場を破壊したぶんはこの模擬戦をやってくれたらチャラにしてもいいから付き合ってもらえるかしら」

「はい……」

 

 可能な限り被害は抑えたと言えど、破壊したのは私なので特に文句を言えない。ドナドナされていくような気分になりながら、ヒナに続いて訓練場に入っていく。

 

 イオリさんが銃に訓練用の弾薬を詰め込むのを後目に、神秘操作。

 

魔法律定義書(ルールブック)、出番ですよ」

 

 召喚された本を開き、使える頁を探していく。と同時に、私はイオリさんに声をかけた。

 

「ルールをここに決めます。私が今回使用するのは『三日月』までの魔法になります……まあ説明してないので分からないと思いますので簡単に申しますと、キヴォトス人相手なら相当酷くやらなければ大丈夫、程度の魔法です」

「分かった。こっちも訓練用の弾を装弾するつもりだけどどうする?」

「あ、実弾で構いません。こっちが手加減できないのでそっちも手加減は不要です。ヒナさんもそれでいいですか?」

「えぇ、大丈夫」

 

 そんなわけで、模擬戦にも関わらず実弾と魔法を用いることになって、私とイオリさんが向き合う。まずはヒナさんは様子見に徹するつもりか、少し離れた場所に立っている。

 

 緊迫した空気が象られていくのを感じる。可愛らしい猫耳パーカーの前を開けて、たなびく黒衣の代わりとする。

 

「それじゃ、始めよう。合図は……」

「いや、それには及びません。どうせです、これで始めましょう」

「……コイン? なるほど。アコ、それでいい?」

「もちろんです。それでは明黎さん、お願いします」

 

 胸元から取り出したコインを弾き、地に落ちていく様がスローモーションのように見える。目の前のイオリさんをまっすぐ見据えると、同じように相手もこちらをまっすぐ見ていた。

 

 地に、落ちて。

 

「ッ!!」

「魔法律式第12番《大地からの解放(ノーグラビティ)》!」

 

 一発目の弾丸、構わない、受ける。神秘の残量低下、《魔法》の発動によりさらに低下。残存は90パーセント。

 

 しかし受けてまで発動した魔法の効果は大きい。ふわり、と体が宙へ浮き上がる。

 

「なっ、浮いてっ!?」

 

驚くにはまだ早い。まだこれからなのだから……っと、とりあえず撃っとくのは悪くない選択ですけどそれもライフ(障壁)で受けますよ!

 

「魔法律式第125番《大気式推力発現(エアロスラスター)》、続けて第187番《六角防護結界(ハニカムガーダー)》! では、理不尽な戦いを始めましょうか!」

 

 空を自在に、大気を集めた推進によって進み、イオリさんの放った弾丸は空中にあるこの六角の盾を射抜くことが出来ず落ちていく。

 

「さあ、どうします? イオリさん」

「持ってる手札で挑むだけだ!」

「その意気や良し!」

 

 空中にある私を遠くから見据えるヒナさん。彼女の動きひとつでこの理不尽はおそらく崩壊する。だからこそ、備えを可能な限りイオリさんと戦いつつ済ませる。

 

 削られていく精神との戦いが始まったことをイオリさんには悟られてはならない。何気なく難題な戦いだ、と私は心底ため息をついた。

 

 

 

 




高評価を、お願いします。モチベーションのために……!

感想もお待ちしております。モチベーションのために。とても大事です。具体的に言うと高評価と感想があると次の話が著しく書きやすくなるのでお願いします!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。