チビでガリで弱いけど太陽になりたいよ   作:望スープ絶割り

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今回はちゃんねる風ではないです。普通にSSです。
本編に入らなさそうなシーンを短編としてまとめました。語り手も時系列もバラバラ、場面設定も曖昧です。
番外編のようなものなので、読まなくても問題はないです。


太陽になりたいよ短編集

●十字架にアリア

(ジョセフ+太なり)

 

「『罪の重さと罰の重さは釣り合っていなければならない』……」

 

 外は涼しい風ばかりが吹いていた。動くのは億劫だと雲が静かに浮かぶ。日々過酷になる旅の中、青空だけが不動のままありつづける。

 

「通りすがりがそういう言葉を使っていたもので」

「例の掲示板か」

「はい」

 

 子供はひとつため息をはくと、そのまま窓を閉めてしまった。

 

「おれもそう思います」

「うん?」

「罪の重さと罰の重さは、釣り合っていなければならない」

 

 そう、ぽつりと。

 世界のどこかでシャボン玉が飛んでいる。少年の憂いはそこにあった。

 

 

 

●自慢の友達

(花京院+太なり)

 

「典明くん、あそこの本を取ってもらえる? あの赤い表紙のやつ」

 

 彼がそう言いながら棚の上を指さす。なるほど、確かに彼の背丈では台を使わないと、ひょっとすると台を使ってでも手を伸ばすのが難しい距離だ。

 一度当たりを見回して他の人がいないことを確認し、ぼくはハイエロファントグリーンの触脚を伸ばした。背表紙を傷つけないよう慎重に一冊取り出す。

 

「どうぞ」

「ありがとう、たすかる。ハイエロファントもありがとう」

 

 本を手渡す時にそう言われ、思わず動きを止めてしまった。

 

「なに?」

「いえ……ハイエロファントにもお礼を言われたのが、なんだか嬉しくて」

「そういうことか」

「ぼくの自慢の友達なんだ」

「知っているよ」

「……もう、隠さなくていいんだ」

 

 彼は返事の代わりに大きくひとつ頷いて、微笑んだ。

 彼にスタンドが見えるようになって、ぼくは良かったと思っている。彼自身もそうだろう、なんて、アヴドゥルさんには悪いが。

 

 

 

●キャットファイト

(承太郎+太なり)

 

「知っているか。おれたちの喧嘩、どうやらみんなの間で『キャットファイト』と呼ばれているらしいぞ」

 

 おれの絡みに承太郎くんは『うざい』の感情を隠すことがない。

 別に意地悪したりちょっかいかけたりしいわけではないのだ。ただこの名称に、おれもちょっと不服なだけで。

 

「そもそも我々は女性同士ではないわけで、しかも承太郎くんはどっちかっていうと犬科だぜ。狼とかディンゴとかだよ。ならばこの呼び方は相応しくないと思わんかね?」

「てめーが『ネコ』なのは合ってんじゃねえのか」

「おれがいつボトム希望だと言った?」

 

 承太郎くんが右手のコップを落とした。幸い中身は空、材質も金属だ。

 

「その体格でタチやる気か……?」

「ド失礼すぎんだろお前。おれだって好きな人が乱れてる姿みたいしめちゃくちゃチュッチュしたいよ」

 

 承太郎くんが養豚場のブタでも見るかのような冷たい目を向けてきた。コイツの目つきはリサリサの遺伝子が強すぎると思う。

 

 

 

●焔を飼っている

(アヴドゥル×太なり)

 

 少女漫画のような細い首。

 二回りも小さい手、震える指先。

 誰よりも低い背丈、頼りない肩骨。

 

(この躯のどこに、あんな怒りが秘められているのだろう)

 

 思わずにはいられない。

 貧弱雑魚を称する少年が、ときに、敬愛すべき友のためならば五体のどこでも犠牲にする勢いで怒鳴れるのだから。わたしは彼の燃え盛るような憤怒を知っていた。

 

「モモちゃん?」

 

 こちらの視線に気がついた彼が見つめ返してきた。くるりとまるいその目の中、『焔を飼っている』と形容したのはいつのわたしだったか。

 

「なんでもない」

「……本当に?」

「ああ、なんでもないんだ」

 

 軽い身体を片手で抱える。よく梳いてやった焼け空の髪がくすぐるようにわたしの頬へ触れた。

 

 

 

●JOJO!

(太なり+ジョセフ+花京院)

 

 太なりこと伊東燈(イトウトモル)は別の世界から漫画の世界へやってきた、いわゆるトリッパーである。転移者ともいう。

 そんな彼は、漫画の読者ゆえに困ったことがひとつあった。

 

「最初はめちゃくちゃ戸惑いましたよ! 承太郎くんのファンはみんな彼のことをJOJOと呼ぶが、おれにとっての『JOJO』は2部主人公、ジョセフ・ジョースターなんだ。名前が出るたびに気が散ってかなわない」

 

 そう。主人公の愛称問題である。

 

「祖父のジョナサンも『ジョジョ』と呼ばれていたようじゃが……」

「晩年のスピードワゴンたちはジョナサンと呼んでいましたし、現にあなたがジョナサンと呼ぶから。けれどもあなたをジョセフと呼ぶ人物は意外に少ないでしょ?」

「たしかに」

「ということは、ぼくも承太郎呼びに統一した方がいいですか?」

 

 花京院が言う。彼も当初は承太郎のことをJOJO呼びしていた一人だ。

 

「うーん……できればそうしてくれると助かります。でも強要はしません。承太郎くんも急に呼ばれかたが変わって戸惑うかもしれないからね」

「……嫌がられたらどうしようかな」

「それはない。典明くんなら平気ですよ。承太郎くんはきっと聡明なきみのことが好きだろう」

 

 燈がフォローすると、花京院はとりあえず納得することにしたようだった。聡明、という言葉にやや照れ臭そうに頬をかきながら。

 実際承太郎が花京院の呼び方変更にとやかく言うことはなく、心なしか嬉しそうだった、ということを補足しておく。

 

 

 

●いいところ毎日たくさん

(ポルナレフ+太なり)

 

「燈ってすぐ人のこと褒めるのな」

 

 ポルナレフが言うが、燈は「はて?」と首を傾げる。

 

「そんな褒めてたっけ?」

「褒めてるっつうか、自然と人の良いとことか好きなとことか口に出してるだろ。さっきもジョースターさんのブローチのデザインが良いとか、花京院の使ってる櫛がおしゃれだとかベラベラ話してて驚いたぜ? 日本人はシャイだって聞いたんだが」

「良いものは良いって口に出しといたほうがいいじゃないか。事実そうなんだから。あとはそうだな、自分がそう思ってるって他人に表明しておく癖があるのかもな。自分の思考が周知されているべきって意識が強いのかも」

「ほーう? 面白い考えだな」

「面白いかな」

「少なくともおれはもっともだと思うぜ。愛する人に毎日キスをおくるのはメチャクチャ大事だ。それとおんなじだろ?」

 

 チュッ、と空に向かって軽やかに投げキッスを捧げるフランスの男は、なるほど様になっている。悔しいほどに。

 

「……ポルくんも人のことすぐ褒めるよな。気に入らないものを貶すのも早いけど」

「自分に正直ってやつだよ」

「ちょっと正直すぎるぜ」

 

 

 

●好みのタイプ

(太なり×アヴドゥル+ポルナレフ)

 

「燈って褐色美女とか好きか?」

 

 かねてよりポルナレフが持ってた疑問である。

 

「なんだその質問……」

「いや、この間アヴドゥルのこと見て顔がいいとか髪が綺麗とか興奮してただろ? ブルネットが好きなのかと思ってよ」

「別に黒髪や濃い肌そのものに強い執着があるわけじゃない。銀髪も赤髪もみんな違ってみんな100点だ。モモちゃんを特別に褒めるのは、おれがそもそもモモちゃんの存在すべてが大好きすぎるからだよ」

 

 ありきたりに言えば、燈の外見の好みは『おれが好きになったひと』だった。精神の美しさに惹かれてしまえば、あとは全部まるっと好きになってしまう。

 

「強いて言うならかわいい目が好きだな。大きくて、眉が太くて力強くて、表情がよく見えるのがいい」

 

 とはいえ別に、好みの偏りがないわけではない。性癖というのは一定存在するのだし。誰でも良い、なんてワケはない。

 しかしそうなると、生来の性癖にすらマッチしてきたモハメド・アヴドゥルは、燈にとって最大の破壊力を持つのだが……。

 

「なんの話だ?」

 

 自分の名前が話題に上がったことが気になったのだろう。少し離れたところでジョースターとおしゃべりしていたアヴドゥルがポルナレフたちに近づく。

 

「モモちゃんのお目目がハイパー好きすぎるって話」

「そうか」

「それで納得するのかよアヴドゥル……」

 

 アヴドゥルにとって、燈が自分を好いているというのはもはや間違えようのない事実なのである。そうか、の一言で済んでしまうのも致し方ない話なのだ。

 ポルナレフは「やっぱお前らの信頼関係よく分かんねえなあ」とボヤいた。

 

 

 

●拐かす朝焼け

(太なり×アヴドゥル)

 

 きみの目が好きだ。まっすぐ前を見ているところが一等好きだ。焔を飼っている、その灼熱色の目が好きだ。

 きみの声が好きだ。訛りがあって、太くて、低くて、でも聞き取りやすい、熱いのに穏やかな声が好きだ。

 きみの笑顔が好きだ。静かに笑うところも、得意げに笑っているのも、タガを外して豪快に笑いだすのも好きだ。きみの笑顔のためにいくらでも祈れるくらいには。

 ああ、モハメド・アヴドゥル。きみの……言葉が好きだ。無茶をするおれを、絶対に許してくれない、きみの怒りと、導きの叱りを混ぜた言葉が、好きなんだ。

 

 マッチの火が燈る。熱で景色がぶれて、意識が拐かされていく。

 

「好きだよモモちゃん。16年も追っていた。炎のカゲを追っていたんだ、おれ、は、きみを、」

 

 視界が溶ける。漫画のコマも窓のフレームも世界の輪郭がぐずぐずになって、手遅れになって、おれの足が落っこちる。沼にはまって狂気が湧き上がる。

 

 墜落途中の体では、きみが好きなことしか覚えていなかった。

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