異世界に行きたかった女の子がナザリックの一人になったと思ったらやらかした   作:アルトリア・ブラック(Main)

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抗不安薬は2錠いっぺんに飲むとフラフラし過ぎて歩けません(誰得)


第17話『残滓』

 

夢を見た、かつての夢

 

呑んだくれの父親とそんな父親の暴力に耐えかねてこちらに暴力を振るう母親

 

そして色覚異常を持っていたから、もっと蔑まれた

 

《お前なんて生まれて来なければ良かったのに》

 

そう話す母親の言葉はいまだに記憶に残っている。

 

《私だって出来るなら産みたくなかった》

 

そう話す母親、日常茶飯事で起こる学校でのいじめ、画鋲を入れられるのだって指を鉛筆で刺されるのだって階段から突き落とされるのだって良くあった。

 

あぁ、子供なんてうるさいしやってはいけないことの倫理観なんてものはないし、それを本来教えるはずの大人は責任を押し付けられたくないからなんて理由で見て見ぬフリをした。

 

愛ってなんだ、希望ってなんだ。

 

正しいってなんだ、助けてなんて言葉は警察官が聞いてもその厄介ごとが複雑であれば助けてなんてくれない。

 

単なる家庭の事情なんですね、なんてクソみたいな理由で通される

 

何が家庭の事情だ、助けて欲しいから手を掴んでくれる存在が警察なんじゃないのか、所詮、行政機関なんてそんなものだ

 

私にとって唯一の救いはアニメや漫画、小説や本の全て

 

私が私でいられなくて良い世界、それから目を離したら地獄が待っているから

 

『最高に物知りだよね、博識って言った方が良いのかな』

 

多分、帰りたくなくて川沿いにいた時に声をかけて来た少女

 

物凄く美人、『推しの子』の星野アイのような可愛さだった。でも少しだけ癖っ毛はあったし、ガサツさがすごかったが

 

でも、そんな彼女には手足に傷があった。

 

同じ境遇の匂いはした、でも、あの子も私もそんな話はしなかった、したくなかったのも事実

 

『漫画は良いけど小説はレベル高いなぁ字数を追うのって相当疲れない?オススメの本とかある?』

 

とても明るい、今まで会ったことのない優しい子だった。

 

《……『さようなら、私たちに優しくなかった、すべての人々』って本かな》

 

一発目にそれを進めるのも大概だが、あの本は好きだった。

 

家にあったら捨てられるから持ち歩いている

 

《超常現象はあるけど、読んでて想像しやすいよ》

 

そう言うと『そっか』と笑いながら

 

『じゃあ、これからいろんな話教えてね!漫画は私の専門分野だよ!』

 

それからいろんな話をした、特にオーバーロード のことは、アニメから知ったという彼女に本を見せた時の絶句したような顔はいまだに忘れられない

 

『辞典とかより分厚くない!?前進めてくれた物より数百倍レベル上がったんだけど!?』とコントのように話していた。

 

その彼女と話すのが生きている上で一番楽しかった。

 

あの橋の下に行けば彼女と沢山お話ができるから

 

あの最低最悪な父親という形を被った男の子供を妊娠してからは、母親から『死んでしまえ』と言われ、首を吊った

 

死ぬ間際、消える意識の中、幻の声が聞こえた

 

真っ赤に染まった彼女は私を見て抱き上げようとしてくれた所まで意識があった。

 

『死なないで!私の…』

 

その言葉の先は分からない、もう生きるつもりなんて無かった

 

自分よりつらい人間なんて山のようにいるだろうけど、私はこの世界から居なくなりたかった。

 

人間でいることに絶望したから…

 

 

 

 

目が覚めるとそこはいつものナザリック地下大墳墓の、自分の一室だった。

 

「おはようございます。ゲーティア様」

 

シズの声が聞こえてくる。

 

「………」

 

普通なら、すぐに挨拶すべきだったが、あまりにも夢見が悪かったせいで返事をしないとシズが異変か!と慌てて『蘆屋道満を呼んで来ます!』と走ろうとしたので

 

「……いい、ちょっと夢見が悪かっただけだ。ほっとけば治るようなものだし、道満は呼ばなくていい。少し一人にさせてくれ」

 

「…お食事の方は…?」

 

シズが恐る恐る聞いてくる。些か申し訳ないが

 

「…すまないが、俺が呼んだら持って来てくれるか?手間掛かってしまってすまないが」

 

そう言うと『そんな手前なんてものはないです』と言ってセバスに伝えると言って去っていく

 

誰も居なくなった空間で、夢を思い出す

 

あの時の彼女は何を言ったのだろう。

 

転生した以上分からないが

 

「………望んだというのにな」

 

先日の戦い以降から、いろんな感覚が支配している。

 

前の前の人生よりも今この世界にいる人間の方がマトモに見えた。

 

推しであるだけかもしれないが、帝国には王国ほど腐り果てた人間はいないように見えた。

 

ジルクニフが同盟相手がいるのに武王を喉が割れんばかりに叫んだように、アホな人間もいる。

 

あの王国の王だって悪い人間ではない、優柔不断で国を背負うに向いていないだけの存在

 

(…あぁ、何もかも嫌になる)

 

相談事なんて安易に出来ない、自殺したとか、誰が信じるんだこの世界の人間が

 

ふぅ、とため息をついて思考を切り替える

 

セバスかユリに一度嘘を交えて話すのもアリかと思い始める

 

ベットから出て、自分で天幕を上げる

 

深呼吸して準備体操する

 

ドアと外に誰かいる気配を感じる

 

「ナーベラル」

 

そう声をかけると

 

「はっ!!」

 

そうささっと部屋に入ってくる。

 

「すまない。今から食事の用意出来るか?」

 

「かしこまりました」

 

そう言って背を向けて歩こうとするナーベラルに

 

「いろいろ仕事があるのに待たせてすまなかったな」

 

そう言うとナーベラルはガバッと振り返り、綺麗に膝をついて

 

「そのようなことはございませんっ!至高の四十一人のお一人であられるゲーティア様の申される所なら何でも致します!」

 

その言葉に笑い『ナーベラルもルプスレギナのように趣味を全開に出して良いんだぞ』

 

冗談で言うとナーベラルは『あそこまでは少々…ですが、ゲーティア様のお言葉参考にさせて頂きます』と言って部屋を退出する

 

食事が終わり、セバスに軽く聞いてみた

 

「私とツアレと共に帝国を視察したいと…?」

 

セバスの驚いた声に何でそんなに驚くんだか、と思いながらも

 

「前の戦争の後で視察なんて帝国側して見れば戦々恐々かもしれないが、断りもしないだろう」

 

「お言葉ですが、私達などではなく、蘆屋道満様やドラコー様の方がよろしいのではございませんか?御身に何かあれば、あのお二人なら確実に護れますし」

 

その言葉にツアーの襲撃も考えたが

 

「まぁ確かにその危険性もあるが、不可視化の魔法で見えない状態で着いてきてもらうつもりなんだ。………モモンガからえらく怒られたからな」

 

絶対にレベル100は連れていくこと!具合が悪くなったなら早急に帰還すること!!と口酸っぱく言われてしまった。

 

「それに、セバスとツアレの方がマトモな意見が聞けそうだしな、デミウルゴス達は深読みが過ぎるからな」

 

そう言うと少し悩んでいたが一つ返事する

 

「もちろん、着いてくるツアレにも防御魔法や魔法アイテムを渡すつもりだ」

 

ニコリと笑うと「え?!」と慌てて要らないとか言いそうだったので

 

「セバスが助けた命だろう?それに、彼女は普通の人間。ナザリックを敵視している人間異形種なんて当たり前にいる。セバスが守りたいものを守れない主なんて価値がないだろう」

 

普通の事を言ったつもりだった。

 

普段のゲーティアならありえないだろうが、その言葉にセバスは深々と執事の礼を取って来る。

 

エ・ランテルの視察はモモンガに任せて帝国の街並みを見たいのも少しはあった。

 

皇帝が深読みする可能性もあるし、盛大にもてなしする可能性もあるが、普通のありのままの光景を見たかった。

 

「念の為に皇帝側に使いを出しておいてくれ。着飾らなくて結構と」

 

「はっ!」

 

「あぁ、それと、深い理由はないと伝えてくれ」

 

「かしこまりました!」

 

そう言って走って行くセバス

 

(…まぁ帝国騎士団が大勢辞めて行った今帝国側は結構ガタついているだろうし、向こうからして見ても嫌な思いはするか?まぁ、前々の世界じゃないから良いか)

 

この世界で恨まれて結構。ただ虐げられるだけの人生からは卒業する

 

手のひらを見ながら戦場の光景を思い出す。

 

魔法一つでこの世界の人間を安易に殺せる優越感、人である事を辞めた喜び

 

しかし、あの光景は少しだけ心に引っかかった

 

フカフカな椅子に寄り掛かり天井を見上げる

 

 

 

 

「え?ゲーティアさんが帝国を視察?」

 

アルベドからそう言われえ?となる。

 

アウラとマーレが自分の服装を魔導国の者に着用させようと言った一件をなんとか諌めた後にそう言われる

 

「はい、先ほどゲーティア様の方からお話がありました」

 

(…急にどうしたんだ?帝国の視察なんて、今日の朝も夢見が悪かったって言ってたし…休んだ方が良いんじゃないかな…?)

 

そう提案しようと思ったが、すでに動いているらしく、セバスが帝国側に視察に今日行く、歓迎はしないで良いと言う話をしたらしい。

 

今日というのも唐突だが

 

「そうか、着いていくメンバーは決めているのか?」

 

「はい、不可視化してドラコーが見張り、伴はセバスとの事です。後…何と申しますか、ゲーティア様はメイドのツアレを連れていくということらしいのです」

 

何を考えているんだろうと悩むアルベドに同じく何を考えているのかなとか思ったが

 

「その話は後でゲーティアさんに聞いておく、アルベドは私と一緒に書類仕事を頼む」

 

「はい♡一緒に、ですね」

 

「う、うむ」

 

やらかしたかと思いつつ、帝国視察中に友の身に何も起こらないのを祈りつつ書類に目を落とす。

 

(…相変わらず何を書いているか分からないけど…)

 

 

 

 

 

一方…

 

 

「なんであんな化け物共が急に出てくるんだ!!そもそも、あんな破壊力の魔法があるなんて知らなかったんだ!!」

 

ジルクニフは誰もいない部屋で叫ぶ

 

盗聴防御魔法がかけられており、その術者が盗み聞きしなければ良いのだが、そんな事なんて頭に入らなかった。

 

「悪いのは俺か!?魔法を放つように依頼したのは俺だが!!あんな魔法知ってたのはジルクニフだけだ!?何の噂だ!!」

 

だんだんとテーブルを叩く

 

王国との戦争で王国側は大損害だ、ならばアホが動かなければ50年以上は向こうも再起はしないだろう。

 

というか、もうほっとけば王国は崩壊するし、法国も関与しないだろう。

 

帝国側も被害は出ている。王国ほどじゃないし、それに比べれば軽いものだが

 

あの殺戮を見て精神に異常をきたした者は何十人かいる。

 

でも、最悪なのは、その後のゲーティアの言動だ

 

「『バハルス帝国は買っている』!?ありがたいが!!どう意味で取れば正解なんだそれは!!」

 

その言葉で帝国騎士団の半数は堕落や腐敗さえせず、きちんとしていれば狙われなくて済むと判断している者も多く、以前より気を引き締めて訓練している者も多数いるのは聞いた。

 

皇帝の言葉では少しずつだったというのに、それをあの場でゲーティアはいとも簡単に騎士団達の背中を押したのだ。

 

「そもそも!!あの片方の男の従者だか知らんが何が『最小出力であの威力ですな!』だ!?アレが最小出力!?もっと上があんのか?!そもそも、何だ!!『王を狙ったらダメか?』って!!ニンブルが止めなきゃ王国全軍破壊するつもりだったのか!?」

 

もう、皇帝らしさなんてそっちのけで叫ぶ

 

アインズの方もあの子羊達で蹂躙していたし、ゲーティアの方もまだ力はありそうだ

 

「従者も全員あの調子じゃ化け物揃いだろうなぁ!!」

 

もう皇帝放り出したい、魔導国を倒すための連合軍なんて作ろうとと思ったが、あんな化け物どもにどう人間が立ち向かえなんて言うんだ。

 

ビーストマンに協力を仰げば良いのか?大陸の化け物どもに協力を仰いでも勝てる未来なんて見えないぞと内心大暴れしていると…

 

「陛下!失礼致します!」

 

ノックして数秒待っているがヤケに急ぎの声だった。

 

「入れ」

 

深呼吸してなんとか皇帝の面にする。もう剥がれてもいるが

 

「魔導国、ゲーティア閣下が帝国を3時間後に視察したいと、出迎えも歓迎も結構、気を使わないで良いとのことです」

 

そう言われまた内心暴れ狂う。とりあえず、失礼のないように用意しろと部下を出して、盗聴防御魔法が作動しているかなんて気にせず

 

「そういう意味の買いか!!?何だ急に視察って着飾らなくて結構!?大虐殺した奴をパレードで迎えるのが普通だろうが!!何が正解か思案しまくる俺の身にもなれ!!」

 

胃痛と頭痛と目眩が同時に襲って来るものの、何とか、気を持ち直すため一気に治癒アイテムの入った瓶を飲み干す

 

 




【一番な苦労者】
ジルクニフ→原作より胃痛と頭痛と目眩が襲ってる。皇帝辞めていいか!?もう逃げても良いよなぁ!?と
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