異世界に行きたかった女の子がナザリックの一人になったと思ったらやらかした 作:アルトリア・ブラック(Main)
エ・ペスペア領のある村で盗賊騒ぎが発生したという。
村は壊滅し、何故か盗賊も死んでいるという状況に青の薔薇チームが派遣される
「…見るからに酷いわね…」
村の惨状にラキュース達は悍ましさと恐怖を感じたと同時に、首謀者がここで死んだのか生きているのかを調べに来た。
本来ならアダマンタイト急冒険者である彼女達が派遣されるのは普通はなかったのだが、行方不明になったルイの捜索のためにというのもあった。
凄惨な光景の中、イビルアイだけは一つの違和感を感じ取る
「どうしたの?イビルアイ?」
ティアとティナに声をかけられて「…いや」と声を出しつつ、少し離れた所も見ようと歩き始める
盗賊への殺し方が普通とは激しく違う、まるで、異常な力で身体がちぎられたようになっていること、そして…
ラキュース達から離れた場所に行き、拳を握り締める
ルイの中にいるプレイヤーが覚醒した。
最悪な可能性に一度リグリットかツアーに相談せねばと一度ラキュースの元に戻る
「…ん?」
ラキュース達が村人達が埋葬されている場所に向かう。
「なぁ、ラキュース。蘇生魔法ってそうポンポン使えるようなもんじゃねぇんだよな」
ガガーランの言葉にラキュースは唇を噛み締めながら
「蘇生魔法は一人蘇らせるのにかなりの魔力を使うわ、それに、蘇った人間は大きく力を失うの、村人達である彼らを何のデメリットもなく蘇られされるなんて、それは神の御技よ」
そう言って『辺りを捜索してみましょうか』と言って歩き始める
リンとルイはとりあえず村を転々としながらも、村人達からは毛嫌いされて数日も立たずに追い出される日々だった。
そんな中、魔獣の気配を感じない洞窟に入り、二人で暮らすようになった。
リンはあれから心が死んでしまったのか、必要最低限の会話しかしてくれなくなった。
洞窟から少し離れた場所でルイは助けるつもりがあるのかないのか分からないゲーティアを呼び出す。
(…僕が邪魔ならさっさと殺せば良いのに、殺さないって事は、まだ僕から離れる訳にはいかない理由があるはず…)
「リンの心を治す方法を教えてほしい」
そう言うとゲーティアは悪魔みたいに嗤いながら
「治してどうする?また昔のように笑い合いたいと?両親も死んでこんな洞窟に暮らしているのにか?ならいっそのこと壊れたままの方が良いんじゃないか?」
(…コイツ…答えてない。出来るけど教えるつもりはないってことか…)
舌戦でコイツに勝てる自信はない。少なくとも魔法を使えるのはコイツだけだし、僕が死にそうになれば助けてはくる。
まだ見殺しにできない理由が何かあるはずだ
「親を失った苦しみは誰よりも理解してるつもりだ、僕がこうして乗り越えられたようにリンだって時間は掛かるだろうけど乗り越えられるはずだ」
「………」
「お前だって、踏み躙られる痛みを理解しているならきっと…」
ゲーティアを通して見た記憶、彼あるいは彼女が人間だった時の記憶
人に虐げられる記憶
不機嫌そうにするゲーティア、こんな危ない橋を渡るのにはそれだけメリットはある。
僕を殺して封印を完全解除するのが一番なのに、そう出来ない理由。
おそらく、封印魔法をコイツは知らない、僕が本気で人を殺したいと願った時コイツが解放されたように、何かしら条件はあるはずだ。
僕がコイツに絶望して見捨てる、なんて感情にはならない。
いくらコイツが人を殺したとしても僕はもう、コイツをただの化け物としては見れなくなっている。
「踏み躙られる痛みを理解していると言って、全てを救いたいなんていう万物の救世主になんてならないとは思うがな」
ゲーティアの表情には諦めに似た何かがあった。
「全部を救えなんて言ってない、僕は、僕の周りの人が幸せになってくれるならなんだってする」
「悪意を向けられてもか?」
「あぁ」
「化け物と罵られ、死ねと言われてもか」
「あぁ、化け物と言われても」
問答をするとゲーティアはため息をつく
ゲーティアはゆっくりとリンの元に行く
ゲーティアは手をリンに出す前に僕を見てくる
「言っておくが自分の周りの人間全てが善意に善意で返してくるわけではないことを理解しておくべきだな、人間というのは善意で返しても悪意で返してくる人間なんてごまんといるのだからな」
そう言って魔法を展開する
「終わったぞ」
そう言われ、リンの元に駆け寄る
「リン!!」
「………ルイ?」
長い沈黙の後、リンはまっすぐルイを見て来る
「…お父さんとお母さんは…?」
その言葉にルイが思わず黙ると
「お前ら二人以外全員死んだ」
「!」
ゲーティアが淡々と話す、その言葉に睨むように彼を見ると涼しい顔で嗤っていた。
「……そう、なんだ」
「…二人のお墓はきちんと作ったよ」
その言葉にリンは涙を浮かべながら「ありがとう」と呟く
あの時、僕はゲーティアに村人達を蘇生できないかと聞いたことがあった。
ゲーティアは笑みを浮かべながら『命は一人一つだろう』とか言ってはぐらかされてしまった。
確かに人の命をポンポン蘇らせるのはどうか、そう思ったことがあった、でも、可能なら蘇生させてほしいとゲーティアに懇願したことがあった。
でもゲーティアは拒んだ
『俺が蘇生した場合は俺が恩人扱いされるんだろうが、それと同時に厄介ごとにも巻き込まれるのはごめんなんでな』
ゲーティアが言うには恩人扱いされたくもなければ、人間を無造作に蘇生して増やしたくないと言う
そこだけは本当にゲーティアは変わらなかった
人間が減るのは何も言わないのに蘇生し増えるという発言に関しては本当に怖気が走るのか嫌がった。
(…僕に魔法詠唱者としての力があって、ゲーティアを従えさせられる力があれば…)
普段ゲーティアはいない、消えているわけでもないのだろうが、ルイが声を掛ければ幽霊のように金の粒のようなものと同時に出てくるのだ。
「……どうして私は生き残っちゃったんだろうね…」
そう呟くリンの声にドキッとなる。
二人が生き残ったのはたまたま自分の中にゲーティアが封印されていたからで、そのゲーティアを解放したのは強烈な殺意が芽生えたからだ。
「……僕が殺した」
そう言うとリンが驚く
正確に言えばゲーティアだけれど、僕があの時、心の底から殺意が湧いた瞬間、ゲーティアが解き放たれた。
もっと早く殺意を抱いていれば父親だけでも救えたんじゃないか
記憶を失う前はいつも嘆いていた
どうして自分なんかにあんな化け物を封印されてしまったのか、化け物は優しい言葉をかけて封印を解かせようとして来た。
確かに僕は化け物と一緒に永遠に閉じ込められるのなんて嫌だった、だからこそ必死で争った。
イビルアイに記憶を消されてから放浪する自分を助けてくれた命の恩人である彼らを救えなかった。
いくら綺麗事を言ってもゲーティアの言うとおり、人間は自分の欲望のために他人を犠牲にする。
そんなのは分かっている。でも、諦めたくなかった。
「…ルイが、殺したの…?」
「…お父さんとお母さんを助けられなくてごめんなさい」
そう拳を握り締めながら謝罪するとリンが歩み寄ってくる。
「…ぼくに、もっと力があれば…もっと早く殺意を抱いていれば…救われたのに…助けられなかった」
そう泣きながらに言うとリンが抱きしめてくれる。
少年と少女の光景にゲーティアは青春ストーリーでも見ている気分だった。
二つ前の自分ならその光景に憧れたのかもしれないが、そんな感情はもうとっくに薄れて来てしまっている。
(…問題はルイの中にあるのをどうにかしないとな…)
スキル項目に唯一ないアルス・ノヴァ
Fate劇場版『時間神殿ソロモン』の時にソロモンがゲーティアを倒すきっかけとなった宝具
ゲーティアと名乗ってはいるが、ソロモンとしての力も使いたかったからその宝具を真似た
ルイを見て分かるのは他の人間と違って強くなれる素質があるということ、何度も傷つき強くなればレベル100も夢ではない存在。
(…困ったなぁ…殺せば消滅する可能性だってあるし、どうルイから取り出すか…ツアーと戦うのは正直面倒だしな…)
ツアーの情報はあまりにも少ない、ただ、ツアーの父親…プレイヤーをこの世界に招く要因になった存在のレベルは100レベル以上だというのは知っているから、どれだけ多めに見たとしてもレベル100はあるのが確定している。
それに、禍々しい自分を見て来ただけで会話一切なしに殺しにきたことを考えれば、邪悪そうなプレイヤーは問答無用で殺す、的な通り魔的思考なのだろう。
(…そうなれば、全力で殺しにかかった方が良いな、あの白金の鎧だけでも)
話し合いができるならそれに越した事はないが、そんなの無理だろう、あの白金の鎧には
そう悶々と考えていたが、ふと閃く
今の村の地点はだいぶ、カルネ村に近づいている、その村なら子供二人は保護してくれるだろうし、その村にルプスレギナやユリがいれば速やかにナザリックに帰れる。
(…かと言ってなぁ、俺が提案しても怪しむだろうし、どうするものか…)
ルイは俺の言葉の裏を探すところがある。親切に答えれば答えるほど裏に何かあると考えるところがある。
「ゲーティア」
ふとそんな声が聞こえて来て反射で出ると
「…僕が、呪われてた理由」
話をすっかり聞いていなかったが、ルイの表情は暗く、何か後ろ暗い事でも話したのだろう。
「………」
リンはボケーとした顔でゲーティアを見つめてくる
「僕が、記憶を失ってたのも、ゲーティアが僕に封印されていたからで僕は評議国の人達からも狙われてる」
「どうして?誰も殺してないんでしょ?」
「ただ通り過ぎただけだな(これから殺すかもしれないが)」
「じゃあ、通り魔じゃん!見た目が悍ましいだけで襲いかかるなんてブサイクだから泥投げられるようなもんじゃん」
(…ヤケに具体的だな…)
「……確かに殺してないけど…これから殺すかもしれない可能性のある奴って認識なのかもしれない、向こうは」
「………」
ルイには少しだけ記憶を見られてしまった、東雲栞里の前の人生を
あの人生は見られたくなかったし、知られたくはなかった。
アルス・ノヴァさえスキル項目に戻ればルイなんて必要なかった。
自分の負の遺産を見られて平然としていられる方がどうかしている。
「うーん、よく分かんないけど、まだ殺してないんでしょ?ならいいじゃん」
「…へ?」
リンの言葉にルイは驚く
「もし、仮にさ、今後殺すような時が出て来たらその時考えよう。とりあえず今大事なのはこれからの私達の寝起きする場所だよ」
そう言ってリンが立ち上がり、ゲーティアの方へ来て
「これからよろしくお願いします。ゲーティア様」
ニッコリと笑う表情に思い出したくなかった存在が重なる
「………とりあえずはな」
そう答えたゲーティアにルイが驚いていた。
一方、ナザリックでは…
モモンガは頭を悩ませていた。
ゲーティアさんの気配がすぐ近くに感じる為、ナザリック総出で探す計画もあったのだが、そんなことをしたらまた大問題になり、最悪国家を巻き込むような面倒が起きる可能性があった。
特に大変だったのはゲーティアさんの作ったNPC達で数人は抑えられたが(止めた何人か怪我した)レベルの差とその攻撃性からソドムズビーストを止めるのだけは本当に大惨事になりかねた。
殺戮と破壊に特化したNPC、ルベドですら手を焼く存在。
ルベドとデミウルゴスでコキュートス以外の守護者総出で止めたおかげで渋々納得した。
ゾドムズビーストと呼ばれているが、ゲーティアさんは妖妃ドラコーと呼んでいて、その破壊と殺戮に重点を置きすぎた攻撃威力の高さにユグドラシルでは一度も運用された事はなかった。
「アレの気配がするのに何故外に出てはならんのだ」
まず、ドラコーは絶対に膝をつかない
守護者達が総出で跪く場面でも立って、王のように下からこちらを眺めている。
ゲーティアさんが彼女を王のように作ったせいでそういう風な身振りをするのだが、守護者達からしてみれば不敬だと言われていた。
そして、何よりタメ口、ゲーティアさんに対してもアレとかゲーティアと名指しで呼ぶ為、もっと反感を買う。
しかし、それでも攻撃されたりしないのは強すぎるからで、ルベドと真正面からやり合ってギリというか相打ちになっても勝手に蘇って勝つみたいなルール違反レベルの領域だ。
(…あぁ、もう胃が痛いよ…ないはずの胃と頭が…)
ゲーティアさんの行方不明以降、ゲーティアさんの作ったNPCがやや暴走傾向にある。
その暴走傾向を抑えられているのはデミウルゴスとアルベドのおかげで、モモンガとしてもゲーティアさんの帰る場所を残す為にもお前達が離れたら悲しむだろうと言って事なきを得ているのだが、それにしたって言葉遣いは荒いし雰囲気は怖いし、強すぎるし、何より…
(…なんでゲーティアさんの作ったNPCどいつもこいつも話してて胃が痛くなる奴ばっかりなんだよ!!)
そして、彼ら彼女らを作ったゲーティアさんは行方知らず、もう頭やら胃が痛すぎて破裂しそうなレベルだ
(…早く探さないと…俺のためにも…)
ソドムズビースト
【レベル】100
【種族】異形種(竜)
【異名】妖妃ドラコー
【住居】第七階層
【カルマ値】極悪
【詳細】
ユグドラシルでは運用した記録ゼロ、ルベドの次に最強。
というか殺戮と破壊にしか重点を置いておらず、ゲーティア同様大技はギルメンすら破壊しかねない程の力。転移後の世界のために作った為、ルベドと同時に放ったら人間社会終わりではある。(というか対ツアー対策)
最初は第一再臨姿で提出したが運営から『卑猥だからダメ』と言われて天動説体(第三再臨姿)として提出した。
【性格】
基本的にはドラコーと同様だが、ユグドラシル設定の影響により創造主至上主義でゲーティア(最終形態)になれば自分もそれらしい姿を取ったりとゲーティア優先。ゲーティアがアルベドや他の守護者に浮気しようものなら『死んでも蘇らせてまた殺して泥飲ませて溺愛する』というちょっと分からない次元になってる。
他の守護者と違い、アインズの命令には従わないが一応指示は聞くが、跪かないので他のNPCからは注意されているが、変えるつもりはない。
(アインズの胃痛のネタの一つ)
【交流関係】
・ルベド
同じ領域にいつつもお互い苦手意識がある。双方『どっか行ってくんないかな』レベル
・デミウルゴス
ドラコーのストッパー『頼むから仕事を増やさないでくれないかね?』とよく叱っているが効いていない。そのはちゃめちゃ具合のドラコーには呆れてはいるものの、ウルベルトが現れたら同じように行動するだろうと理解はしている。