イカタコの世界へ飛ばされたハンターが無双するお話   作:瑠璃咲ずい

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Episode.1「凄腕ハンター、左遷される」

「は?」

 17歳のハンターだった瑠璃咲(るりさき)ずいはギルドマネージャー・ゴコクの面前であるにも関わらず素っ頓狂な声を上げた。

「言葉のままじゃよ、キミは明日から『バンカラ街』に転勤じゃ」

 そう、拠点から生まれ育った里「カムラの里」に里帰りをしたら、突然異動を命じられたのだ。しばしば問題行動を起こした記憶はあるが、「次やったら飛ばすからな」的な警告はまだ受けていない。

「どこなんだよそれ、聞いたことねえぞ?」

「『最高にイカした街』と聞いておるぞ。そこで明日から『イカガール』として働くのじゃ」

「……へ????」

 ますます意味不明な単語のオンパレードになった。イカガール?メスのイカの事か?イカの販売業者にでもなるのか?それともイカ漁師になって大金を稼いで来いと?

 ずいが首を傾げていると、ゴコクは笑った。

「ふぉっふぉっふぉ。もっと嚙み砕いて説明するなら、異世界に飛んで修行してくるのじゃ」

「は????」

 その言葉でとりあえず理解出来たことがある。

 

 

( 実 質 左 遷 じ ゃ ね え か よ ! ! )

 

 

「心配することは無い、修行は単独じゃないぞ。友達も一緒じゃ」

「…………そいつの名前は?」

「『りんご』じゃ。面識あるじゃろう?」

「はああああ!?」

 ずいの親友、「蜜姫(みつひめ)りんご」。彼女はずいの幼馴染みだが、ずいと違って根っからのバカかつアホであり小さい頃から手を焼いていた。そんなりんごは今「バルバレ」でキャラバンの一人として活動しているはずだ。

 久しぶりに再会出来るのは嬉しいけれども。

(これ絶対面倒くさくなっただろ)

 転勤に至るまでの心当たりがありすぎる。現にギルドのお偉いさんであるゴコクに対してもこのようなタメ口だし、クエスト中に暴言を吐いたり、大小さまざまな問題行動が目立っていたが。流石に何の前触れも無く異世界へポーン!は無しだろ。

 そう思いつつも、今まで孫のように育ててくれたゴコクの命令には背けなかった。ずいは渋々了承し、家に帰り早速荷造りを始めた。

 ずいはありったけの金と数日分の服を搔き集めてキャリーケースに仕舞う。

「……クソ、こんなことになるなら傀異錬成で散財するんじゃなかったな」

 つい昨日の里帰りギリギリまで観測拠点「エルガド」の鍛冶屋に金と精気琥珀をひたすら貢ぎ、装備の大幅な強化を狙ってようやく理想の防具が出来上がったのに、性能を試しに行く前に転勤命令が出てしまった。やっとLv.4の装飾品をブチ込める装備なのに!!

 自分の運の悪さに失望しつつ、しっかりと自宅の戸締りをし里を出発した。

「あ、やっほー」

 里の入り口でずいの旧友・りんごが待っていた。

「なんか私もいきなり行ってこーいってされちゃって~。もうちょっと前に言ってくれないかなぁ」

「ホントだよ。私なんか今日言われたからな」

「うわぁブラック企業じゃんw」

 再会を喜びそれぞれの拠点の長に文句を言いつつ、カムラの里を離れた。

 

 

 二人は様々な世界を繋ぐポータルに着いた。近くに小さな看板があり、スプラトゥーンを象徴するポップなイカとインクのマークが書かれている。りんごはその看板を見て思わず声を漏らした。

「うっひゃー、今こんなのあるんだ。機械音痴はどんどん置いてかれちゃうよ」

「モドリ玉があるんだから今更そんな驚くことじゃねえだろ……」

 ポータルを通過するとずいはイカガールに、りんごはタコガールになった。イカタコたちの移動の基本である、インクの潜伏も出来るようになっていた。仕組みは全く分からない。メタいことを言うが、本当にご都合主義である。

 ポータルから電車に乗り換え進むこと数十分、これからの拠点であるバンカラ街に到着し、出発前に伝えられた家賃の安い借家に入った。

 少々窮屈な空間にビジネスホテルにあるような小さな家電製品が数点と、簡素なキッチンがある。部屋の隅には若干カビが生えていて、壁紙が所々剥がれている。家賃相応のクオリティーだ。

 小さなテーブルの上には、支給品のブキ「わかばシューター」と初心者マークが印刷されたネームプレートが二個ずつ置かれていた。

「ナニコレ」

 りんごはその二つを手に取る。

「おい、得体の知れないものなんだがら下手に撃つなよ?」

「分かってるよ、これで早速死んじゃったらやだもん」

「まあ、こいつらはこれから生活する上で必要になるだろうが……」

「……銃っぽいけど、私たち戦争しにきたわけじゃないよね?」

「もし戦争に駆り出したなら、帰ったらすぐにあのジジイの顔面殴ってやるわ」

 そんなやり取りをしながらわかばシューターとネームプレートを手持ちのバッグに仕舞う。

 二人はキャリーケースとバッグを借家に置き、しばらく中心街を散策することにした。カムラの里やバルバレとは一味違った建物が聳え立つ街に圧倒されながら歩く。

「うわー。すっごく都会!周りの人が弄ってるのがガラケーなのがちょっと気になるけど……」

 りんごは辺りを見回した。

「何かお店寄ってこうよ!……あれとかどう?」

「え?」

 二人が入った先は「カンブリアームズ」と看板が掲げられた質素な店だった。

「なにこれ~」

 薄暗い店舗一面にはブキが沢山立てかけられていた。スタンダードなシューターから、重厚感のあるスピナー、独特な形をしたチャージャーなど二人が今まで手にしたことが無いようなものばかりだ。普段モンスターの素材で作られた武器しか見てこなかった二人は、テカテカしたプラスチックの素材感に見慣れずにいた。

「ハンターの武器よりシンプルだな……」

「確かに、血生臭くないね」

「そこかよ」

 ずいが呟いたその時。

「いらっしゃいでしー!」

 分厚すぎるゴーグルを掛けたカブトガニ頭の生命体・ブキチが二人に近付いてきた。どうやら、この店の店長らしい。

 ブキチは二人の身体を脳天から足先までスキャンするように見つめると、表情を変えて唐突に言い放った。

「イカしたブキを持ってないでしね!」

「えっ?」

 初対面なのにも関わらずこのような態度を取られりんごは困惑した。ずいは何か言い返そうとしたりんごを制止して言った。

「は?来たばかりなんだから当たり前だろ?これしか持ってねえぞ」

 少々メンチを切りながらずいは到着時に支給された「わかばシューター」をブキチに見せる。ブキチはそれを見てしばらく考え込んで言った。

「まずはロビーに行ってたくさんバトルするでし!」

「「バトル……?」」

「そうでし。一人前にならなきゃブキは売れないでし!」

 悲報。転勤初日、店から売買拒否される。

「は?」

 ここで何を言っても無駄そう、とずいは思った。はっきり言って面倒くさいカブトガニだ。りんごは早くも話に付いていけなくなり、上の空になっている。ここは一旦、ブキチの言う通りにロビーに向かってみることにした。

 

 

 

 ロビー。バンカラ街の階段を上った先にある大きな建物のフロアだ。

「あぁぁぁぁぁ、危うくあの被ってた殻を引き剝がすところだった。次会ったらラギアクルスの餌にでもしてやるわ」

「落ち着いてよ、ずい」

 奥の方にあるスペースには、ウォーミングアップや試し撃ちをするためのイカバンカーが複数個設置されている。ずいはわかばシューターを構え、イカバンカーに向けて撃つ。数発当てるとイカバンカーはダメージを蓄積して破裂し、再び膨らむ。りんごも見習ってわかばシューターを使ってみた。

「……ブレが酷え。インクを多く詰められるのは良いけど……」

 ハンター時代にボウガンや弓といったガンナー武器は使ってこなかったが、わかばシューターはド素人のずいが見てわかるほど弾道のズレが大きいのだ。

「私、人間に向けて銃を撃つってやったことねえんだよ……」

「それはギルドナイトの仕事だからねー」

「そもそもボウガン系統を触ったことねえし…」

 いつもは勝ち気でサイコパス染みているが、いつになく弱気になるずい。

「ライトボウガンってどうせ簡単だし大丈夫でしょ!」

「ライボ使いに殺されるぞ」

 数発撃ってわかばシューターの性能を確認し終わった後、円柱状のポッドに近付いた。

「ここでバトルするの?」

「いや、ここに入ってマッチングするみたいだ」

「へー、早速入ってみようよ!」

 好奇心旺盛なりんごはずいの手を引いて一目散にポッドに飛び込んだ。すると、二人の前にメニューらしきものが映し出された。それには「ナワバリバトル」と書かれている。りんごは未知の機械に興奮が抑えきれなくなり、何も考えずその光に触れた。

「うわぁ!えい!」

「おい、ちょっ待てっt」

 その瞬間ポッドの中は黄緑色の光に包まれ、二人の身体はそれぞれイカ(タコ)状態になりポッドの床を貫通して、あっという間に消えていった。

 

「「うわああああああ!」」




少々設定が無理矢理なのは勘弁してクレメンス。
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