平田直志の父親、平田元は、一年前に運転免許証を取得したが、
家計が苦しい為、車を買ったことは無いというか、
優柔不断な父親は、車を買う気は無いらしい。
しかも、そもそも、金は無い。
今回は、父の友達から、中古の軽トラを7万で譲り受けて、
購入して、それに乗って、
人生で初めてとなる、ドライブに出かける事になった。
「直志。父さん、初めて車を運転するんだ…」
「えっ?そうなの?免許、去年取ったのに?」
その、軽トラには初心者マークが貼られていた。
「これまで父さん、車を運転したことは一度も無いんだ…
46年間生きていて、抵抗感があったんだ。
優柔不断のせいで」
「まぁ…車の運転って、案外、大変って聞くしな…」
「それで、直志。どこに行きたい?」
「父さんの事だから、近場の商店街にしようよ」
「そうだな」
こうして、軽トラを運転して、僅か5分で商店街の、
コインパーキングに辿り着いたが…
「…バックが出来ない!でも、父さん頑張るよ!
直志。降りて、軽トラがぶつからない様に、誘導して欲しい!」
「わかった!父さん!」
こうして、どうにか止めた。
1時間100円のコインパーキングに止めた。
八百屋で買い物をした。
「直志。今日は何がいいんだ?」
「野菜が安いな…」
どの野菜も、100円から400円までで売られていた。
大きさや種類にもよるが…
「直志、あの軽トラ、中古車販売店に売るつもりだから」
「わかった」
「今度は、電車かバスかタクシーで行きたいな…
もう、車の運転はしたくない」
「その方が良いと思うよ。
俺も車は運転するつもりも無ければ、免許も取りたくないし」
直志も父親に似て、優柔不断だ。
八百屋で、野菜を思わず大量に買って、
軽トラに積んで、平田家に帰った。
「よし、父さんが茹で野菜を作ってやる!」
「おーっ!今日はごちそうだ!」
「今日は収入が良いんだ。
普段は月給、8万だが、今月から9万になったんだ!」
なお、軽トラは貯金で購入した。
「直志。たくさん、野菜を食べて欲しい」
「ありがとう!父さん!」
「直志。友達は出来たか?」
「うん!いっぱい出来たよ!」
「女の子の友達はいるか?」
「うん!恋人じゃないけど、よつばちゃんって子と、
仲良くしているんだ!」
「それは良かった。父さんも嬉しいよ。
父さんも直志に負けないように、
早いところ、安定とした職を探すよ」
と、父はバイトの募集広告を、いつも通りに読んでいた。
直志の父、元は夜間定時制高校、4年制の公立高校を、
4年の1学期に起こした、暴力事件で中退を余儀なくされたようだ。
その後、直志が産まれる前から、
バイトとパートに明け暮れる日々を送っていた。
妻とは30歳の時に結婚するが、
その妻は直志を産んだ直後に亡くなってしまうのだった。