そこは、メリディアンとメリナにとって見覚えのある場所だった。
"ダリウィル"
かつて、裏切り者としてブライヴが処理した存在がいた"封牢"だ。
狭間の地の各地に点在する封牢は、名の通り罪人を閉じ込めたり、手に負えなくなった存在を封じたりする時に用いられる、魔術的な封印を施された牢屋。時には身を隠すのにも使われることもあるとも聞く。
『…っ!…ああ、お前らか!俺だ、ブライヴだ!』
「むお!ブライヴか!こっちか!?」
『逆だ馬鹿!どう見ても真ん中だろう!』
「無事か…!?何故こんなところに…」
『傷を負ってるわけではないさ…イジ爺に
「貴公も穴に!?」
『噛み殺すぞ』
「イジー殿が…?」
「…」
ブライヴはいた。
姿は見えないが、声だけが封牢の中心より響いてくる。つまりは閉じ込められているということだ。それも、ブライヴの言葉が正しいならばイジーの手によって。
メリディアンとアレキサンダーが困惑しつつもまずはどうにかしようと動き回らんとする、が…しかしメリナは、
…こういう時、
メリナはその時と似た感覚を得たがためにその場で
焼けて煤けた、自分のものではない記憶のどこかが警告をしている。
どれだ。
何がだ。
神人に与えられる"影従の獣"。それは大いなる意思が
ラニの暗き路。何故、ブライヴにこんなことを?
『私は全てを裏切り、全てを棄てるだろう』
裏切りの
何に対しての?ブライヴへの?であるならば彼女の本意とは。
『黄金律とは、裏切りの歴史なのだから』
あの時の諦めたような、彼女の表情。
そう、まるで。どうしようもない何かに打ちのめされた…
────唐突に。
ヒントは内よりやって来た。
『────マリカ、来たのね』
『メリディアン…?』
『…』
『なんだ、これは…一体…どういうことだ』
『彼は…』
『………』
『選択、して…しまったの。私たちのために………』
『そう、か…そういうことか…────お前は…どうする』
『…彼の意志を、生きた証を手放すわけにはいかないわ…この子を…』
『…っお前、まさかその身体に…いるのか…?』
『マリカ、マリカ…これが彼の過ぎた愛ゆえの信仰でしかなかったとしても────』
『────私は、最早あなたと矛を交える必要はなくなった…なくなって、しまったの…"大いなる意思"の掌の上で…踊ることも、ない』
『メリディアン』
『酷い人…こんなこと、望んでなかったのに。こんな風に叶えてくれだなんて、思うわけがないのに』
誰かの遺体の前で、"赤髪"のメリディアンが泣いていた。
その遺体の顔は………────
『そうです。それが黄金樹の時代の始まり、その陰にあった犠牲の話なのですよ』
あの時のイジーの言葉が、メリナを呼び戻す。
ふらりと、思わずその場に崩れ落ちそうに。
それを視界の端に捕らえたメリディアンが一早く駆け寄って支えてくれた。
「メリナ…!?」
「む…大丈夫かメリナ嬢」
「待って…まだ、待って…牢を開けるのは」
「一体────…もしや、またマリカ様の記憶が?」
「見たの…だから、待って」
記憶の逆流、それが再び彼女に訪れた。
マリカと、メリディアンの記憶…そしてもう一人、
あの光景は本当にあったことなのだろうか?
そうだとしたならば
軽い
ザリ、と小石を踏みしめる音と共に彼女は立ち止まった。なんだか迫力があるな…とその背中を見てメリディアンは
『…無事か?』
「ええ」
『悪いが、ここから出してもらえると助かる。イジ爺は俺がラニの、災いになると…だが、そんなことのあるはずはない。俺はラニの影従、欠けることのない一部。イジ爺もそうと知っているだろうに…正直、わけが分からないんだ』
「まずは、お互いの事情を理解してからでも遅くないと思う。だからあなたは、もう少しここにいて欲しいの。私たちが、イジーお爺さんから話を聞いてくるから」
『む………』
「おお…」
「おおお…?」
声色こそいつも通りだが、いつになく力強い印象があった。それにメリディアンと同じように気圧されてか、ブライヴは反論ではなく困惑の言葉の方が
後ろの野郎どもはたじたじである。
「行きましょう」
『あ、おいっ…!』
「…そうだな、確かに何か私たちの知りえない事情があるのは確かなのだろう…それに、どうにも彼女、
「…成程なぁ。メリナ嬢の気に障ることをしてしまったのか、ブライヴ」
『していないが!?…していないよな…?』
既にやや離れたところで待っているメリナに一応確認。
「…?…特にそんな覚えはないけど」
「ともかくアレキサンダー、お前はここにいてくれ。私たちは"祝福"を経由して向おう、単純に早いに越したことはあるまい。それでいいな?メリナ」
「ええ、お願い」
ブライヴが口を挟む間もなく、話はとんとん拍子で進む。
ともかく、事情を確認する。
そのためにメリディアンとメリナはイジーの元へと急いだ。
…イジーは、何事もなかったかのように彼らを迎え…そしてメリディアンはその態度を問うこともなく、正面から切り込んだのだ。
かの秘宝を掲げながら。
「それは、"ノクローンの秘宝"…ブライヴがいない中、さらにはこんな短期間の内にやり遂げるとは…やはり貴公こそが英雄と呼ぶに
「イジー殿、封牢に囚われているブライヴと話したんだ」
長年の我らが悲願。それが目の前のメリディアンの子が関わったその時から恐ろしい速さで叶えられていく。"英雄"、そう呼びたくなるのも当然なのだろう。
しかしメリディアンはイジーの最大限の讃辞を受け流す。
思わず秘宝に手を伸ばしたイジーは、そのメリディアンの言葉で動きを止めざるを得ない。真っ直ぐと見つめ返す暗青色の両目が、イジーに得も言えない緊張感を走らせた。
「…ブライヴと話したのですか」
「ああ。すまない、本当はブライヴを、イジー殿を信じるべきだったのだろう…だが…」
ブライヴと話したということは、イジーがあそこに閉じ込めたことも知っているということだ。観念したように、イジーは身を緩め、白状する。
メリディアンもメリナも、張り詰めた気配が消えたことで少しだけ気を緩めた。
「…いいでしょう。貴公らには、お伝えしておきます。知っての通り、ブライヴは二本指がラニ様に与えた従者。決して裏切ることない影」
「"影従の獣"、か」
「ですが、ラニ様が神人として、二本指の
「────そういうことか…」
「…」
メリディアンはこの残酷な運命に頭を抱えそうになるのを耐えた。彼も多少の事情は覚えているのだろう、同時に得心がいったというように低く唸る。
メリナもまた、言葉はないが少なからず衝撃を受けていた。また当然のように一緒に旅を出来ると、思い込んでいたのだ。無情にも崩れる時は一瞬なのだ。
苦悩するメリディアンたちを痛ましげに見下ろしつつも、イジーは先を続けた。
「…それは運命。ブライヴの意志など、何の意味も持たないでしょう。…苦しいことですが、封じておくしかないのです。ラニ様のために…そして、貴公らのためにも」
無念である。
イジーは、なんの解決策も見出すことなくこの日が来てしまったことを悔やんでいる。
ブライヴは、ラニとも、そしてメリディアンの子とも並び立つことすら許されないのだ。あんまりではないか、ずっと一緒にいたというのに、ここまで生きてきたというのに、ようやく心許せる友を見つけたというのに。
「────しかし」
イジーは
まだやれることがあるのではないか、そういう期待。
そう、なぜなら────目の前の褪せ人はただの褪せ人とは明らかに違う。永遠の女王マリカの友であるメリディアン様のご子息。
…我らの目の前に姿を現したのは…きっと何か意味があるのではないか?何故なら
彼女がそれ以降黒いヴェールを被り続けていたのはそれが理由だ。忘れないように…そして火の巨人、その悪神の
ああなんとも、軍師を自称したというのに全く頼り切ったままで情けない限りだ。
それでも、それでもブライヴは家族なのだ。ラニ様にとっても私にとっても…愛おしく大切な存在。みっともなく
「貴公…一つ、頼みを聞いて欲しいのです」
「…!」
決意を胸に、それが無駄なのだとしても足掻く。
今、この瞬間ならば、その足掻きに力を貸してくれる存在があると確信しているから。
「暗き路を征くラニ様を、二本指は見逃さないでしょう。ゆえに必ずブライヴへと干渉し、彼を狂わせます…貴公、私は、その干渉を跳ね除ける術をずっと探してきました」
「干渉を…?…そうか、もしやその兜も」
「おお、察しがいいですな。そう、私のこの結晶鏡で作られた鏡兜も、その対抗策の一つ。…これは言わば大逆に従う者の装束なのです。"大いなる意志"と、その使いたる二本指の干渉を跳ね除けるためのもの…効果のほどが、現実どれほどあるのか計りかねますが」
それは遥か昔、大いなる意思の怒りに触れ地下深くに滅ぼされた永遠の都に伝わる古い技術。その模造品。
イジーは恐怖しているのだ。自らの裏切りを。
影従の影たるブライヴと同じように、自身もラニの呪いとなるのではないかと。
それを聞いて、メリディアンがメリナに目配せをし、
「ブライヴには、その対抗策は無意味なのだろうか?」
「私のこれは模造品…かつて永遠の都で作られていた
なんということか!戻ったメリナが手にしていたものは…まさにそのオリジナル。
これはかつてブライヴと別行動をとった時に────つまり、結びの教会でメリディアンが散髪する少し前の話だが────リエーニエ東の地下墓で見つけた鏡兜だ。
基本的にそういった
そのとある理由とは…?
「小さな覗き穴を塞げば密閉性がかなり高いので、食料の保存用に…」
「なんとも貴公らしい理由ですな………」
いつかのかぼちゃ兜と全く同じ理由である。あれも道具入れとして今でも使われている名品。
しかしまぁ、死活問題ではあるのだが、とても締まらない理由であった…彼ららしいと言えば、それまでなのだが。
メリディアンが言った通り覗き穴は樹脂で塞がれ、中を
イジーもこれまたなんとも言えない気分になったが、気を取り直すことに成功はした。
「…確かに、それならば多少の効果はあるのかもしれません…しかし、やはり根本的な解決には至らないのです」
「だが、時間稼ぎにはなるかもしれない」
「どちらにせよ、このままでは半狼であるブライヴでは被れませんね…そこは私がなんとか出来るでしょう」
やれることは、少しでもやらなくてはいけない。
だからこそメリディアンにも疑問はどうしても出てくる。恐れずに、彼は問うた。
「このことは、イジー殿から…いやラニ様からでも、もっと前から伝えることも出来たはずだ」
彼らの絆の深さを知れば、
少なくともメリディアンの知るブライヴならば、それこそ必死で探したはずだ。知っていたというのならば。
「…我々は恐ろしいのです、強靭なる意志と忠誠心、そして親愛を持つ彼だからこそ、知ることによって揺らぐ刃もある。真っ直ぐに迷いなく突き進む様こそがブライヴが最も力を発揮できるのです。それに、あまりに長く伝えずにい過ぎたのです…」
「だからこその私たちだと」
イジーも、そしてラニも、そうと知っていて今の今まで伝えずにいた。伝えられなかった。何故か。
「ずっと前に伝えるべき、だったのでしょうね」
だが、それを拒んだのはラニだった。ブライヴはラニが幼い頃から共にいた家族。ブライヴも同じで、互いに対して他人が思うよりも固い絆がある。
ブライヴは狂おうとも強靭な意思で逆らおうとするだろう。
しかし幾ら想いが強かろうがこの"呪い"から逃れられるとは二人とも思わなかった。ブライヴの幼少を…ブライヴがラニの前に姿を現した
だから少しでもブライヴが生き延びれる
ブライヴが真実を知っていれば、イジーの今回の騙し討ちは成功しなかっただろう。知らなかったから、ブライヴは封牢に囚われ隔離することが出来た。
「ラニ様が暗き路を征き、この地を去った時…二本指の、大いなる意思の枷を外した時…ブライヴは自由の身になる
「或いは呪いが解けなかったとしても、私が共に残り、その呪いを解く方法を見つけれる
可能性の話でしかない。それでも、閉じ込めておかなければ必ず狂い滅びる。
「ブライヴがこんなことを望まないのは百も承知の上です………ですから、どうか、どうか彼をよろしくお願いします、メリディアン様の子よ」
それはイジーが初めて見せた弱み。
母と同じ顔をしているから?ブライヴの友だから?デミゴッドを打ち倒す力を持っているから?どれも正しいのだろう。その全てを持つ彼だからこそ、イジーは希望も見えない中で
今のイジーの心境を、まだメリナには推し量れなかった。
────ただ一つだけわかることは、メリディアンの左目が赤く揺らめき、視線の先…カーリアの城館の方角から何かを見出しているということ。
その目、灯のような目は"希望"を写している。
見慣れているはずの目を見て、メリナは息を呑んだ。…場違いにも綺麗だと、初めて思ってしまったから。
この決意に満ちた目を。
「イジー殿…私からも、頼み事がある」
一方、残されたブライヴとアレキサンダー。
チリリと、半狼の隠せない苛立ちが空気を震わせているような感覚すら覚える封牢内部。
しかしそんな
『………遅い』
「まぁブライヴ、すぐに戻れるかもわからんと言っていたではないか。どうせならこれを機に昔話でもしながら待とうではないか!うむ、先に聞かせてくれ!」
『せめてお前から話せ…』
「うん?確かにな…よし!メリディアンとメリナ嬢にはどこかで教えたことがあるが、俺が産まれた場所はリエーニエ東の隠れ村でな…壺以外には絶対に秘密の場所なのだ」
『…』
隠れ村なのに自分からばらすのはありなのか?とは思ったがブライヴは口を挟まない。
「そこでは"壺師"という、俺たちを生み出し管理する人物がいる。言わばそれが俺たちの”親”というわけなのだが、これがまた歴史を辿ると古い話で、かつて影より
『………………』
長い。
絶対に恐ろしく長い話だ。しかも本当かも怪しい。
というかこれ、昔話というより
ブライヴは早々に聞くフリすらやめて、
「────というわけで"大壺師"は長い戦いの末に鬼を退治し、この地に安住の村を築いたというわけだ!…どうだ!?」
この時、既に
『………………あぁ、いいんじゃないか。…で、お前の話は?』
「おお!そうだった!…そうだな、まずは俺の名前の由来だが…」
しまった、
適当に聞き流していたせいで適当な返事をしてしまい、結果長話は続く。
さらに
頬杖をついたまま目を閉じていたブライヴは、おお、だの、ああ、だの条件反射で相槌を打ちながら仮眠をとっており、コキリと凝り固まった首を鳴らして静かに
「長話に付き合ってもらって悪いな…どうにも俺は話をまとめるのが下手なそうだ」
『だろうな』
でもラダーンの英雄譚を話すときは
あれは練習した!
練習…?
仮眠を取ったはずなのに何故だろうか、疲労が取れた気がしないのは…
妙な睡眠学習のせいで、浅い眠りだったはずなのにこれまた妙な夢を見た気がする…アレキサンダーが爆発ゴマと化してコロシアム中を火の海にしながら縦横無尽に弾き回ってる夢だ。
隣で観戦しているラニが「イジーも昔はああだったな」としみじみと頷いていた…気がする。さっさと忘れろブライヴ。
「では今度こそ貴公の────」
『アレキサンダー』
咎めるような声が、アレキサンダーの陽気な声を断ち落とす。そうして、ブライヴは問う。
『本当にメリディアンは戻るのか』
「うん?戻ると言ったのだから、戻るに決まっているだろう?」
『俺が何故ここに囚われてるか、わからんわけでもあるまい』
身内だ。何よりも信頼していた家族同然の存在に騙されここにいる。
何故だ?
何故、
「うーむ、メリディアンが俺たちに嘘をつくとは思えないぞ?」
『だがあいつは隠し事をしている』
「そうなのか?」
『そもそも俺たちは出会って浅い。どうして信じられる?』
それは自問自答でもある。
共に戦いを生き延びたとはいえ、信じられるかは別の話のはず。
だが、妙にあいつは人を信じさせるところがある。それが何故かも、わかっているつもりだ。わかっていて、背中を預けた。
あの時…俺が将軍ラダーンに殺されそうになった時の、遠くに見えたメリディアンの必死の顔を忘れられない。
そこに嘘はなかった。そしてやつはやり遂げた。
俺の目の前で、"星"が落ちたのだ。思わず魅入ってしまうような、あの星が。
「そうだなぁ…共に歩もうと、手を差し伸べられたからだな」
真っ直ぐで純粋な答えだ。そしておよそ壺人らしからぬ、すれ違いなき友情のような話。
しかしアレキサンダーにとってメリディアンは、過去のブライヴにとってのラニやイジーである。
今、アレキサンダーの純真さはブライヴには響かない。
『…"影従の獣"を知っているか?ラニのような神人に"二本指"が与える存在のことだ』
「知っているぞ!"黒き剣のマリケス"が有名だな!」
『マリケスか…俺もそいつと同じだ。二本指が送り込んだ影…ラニにとっては忌々しい指の傀儡。まだ幼いラニが神人として選ばれた時、俺はカーリアに
「おお、ようやく貴公も話してくれるのか!」
アレキアサンダーの合いの手を聞き流し、ブライヴはさっきまでの苛立ちを
『俺たち"影従の獣"がどうして神人に送られるのか…イジ爺の言っていた言葉で理解した。俺は災い。裏切りを防止するための"装置"、そういうことなのだろう…しかし"剣"は持ち手がいなければなんの価値もない。俺は狂うのかもしれんが、それでも全うする。ラニの"剣"であることを』
覚悟はとうに出来ている。
ラニが二本指を拒み、暗き路を行くと決めた時から。
『ここから出せ、アレキサンダー』
「それはダメだな」
『…』
「ワッハッハ!流石の俺でも、見えなくとも酷いしかめっ面をしているのがわかるぞ貴公」
『茶化すな』
「────貴公、この旅は命懸けよなぁ」
『何を当たり前のことを』
「戦士として命を奪い合う!これ程心躍ることはなかった…俺たちはそう作られたからだ」
『…』
「しかし時に、命を投げ出すよりも辛いことがある、それが俺にも分かってきた」
将軍ラダーンに足をもがれた時、メリディアンはアレキサンダーを生かすために、アレキサンダーと自身のどちらの矜持も打ち砕きながら言葉を絞り出した。
言いたくなど、なかったはずだ。それでも生きて欲しかったから、言った。
あの時、間違いなくお互いの心が傷つき抉れたのは間違いない。
いや、優しいメリディアンが、それを承知でやったのだから、彼の方が苦しかったろうに。
アレキサンダーでも、それくいらいは理解できる…いや、理解できるようになった。
だから今は確信している。
「なぁブライヴ。メリディアンは、命を
ブライヴが命を賭けてラニのための剣であろうとするように、メリディアンもまた命をかけてブライヴを救わんとするだろう。自分を、そして他人の心を傷つけてでも命を
「貴公がラニ嬢を大事に思うように、俺はメリディアンも同じなのだと思うよ」
『…重すぎるぞ、それは』
胸元の、メリディアンのタリスマンが揺らぐ。
そういえば、重すぎるのはわかっていたこと、か…
「今きっと、お前のためにとあやつは足掻いているところよ…イジー殿と喧嘩でもしているかもしれんな!」
『そこまでやらんだろう』
「そうだなぁ…戦いに
『どちらが本音かわからなくなる時がある、あいつは…どちらも本音なのだろうが』
「うむ!多分そういう男だ!」
『雑だぞ』
「それでいいのよ!互いに分からないことだらけだとしても、共に歩けるのだからな!…そんな男だからこそ、我らを共に歩ませた!」
『…』
半狼と壺人。
お互いにただ二人だけで出会っていればこの関係などなかったと断言できる。
それを繋ぎ合わせたのはメリディアンに他ならない。
恐らく…メリナもまた、そうやって引っ張り出された口だろう。彼はそうやって自らが不確かなままにやってのけた。
自分自身すら曖昧なまま、曖昧なままでいいのだと、歩調を合わせるのになんの問題があろうかと。メリディアンは、言葉にするまでもなくその道行で語り続けている。
だからこそ力になってやりたいと、この壺人はそう思うのだ。
アレキサンダーはメリディアンの力になりたい。
「そういうわけでここで待とう!俺はまだまだ話せるぞ!」
『…くそっ…まさかお前に言い
ブライヴとて、解決策が見つかると言うのならばそれが良いに決まっている。
メリディアンならば、それを見つけようとするのは容易に想像がつく。それを
封牢の中、胡座をかいたままに真っ暗に染まった空をブライヴは見上げる。
星も見えなんだ、見通す先はどこまでも暗い。はぁ、と息を吐き出し足元へ下げた鼻先。
そこには首から下がったタリスマンが無遠慮に揺れている。
どこか淡く、枯葉色が星のように瞬いた気がした。
『…どのみち、俺は動けん。待つさ────だが昔話はもうやめろ』
「うーむ…もっと面白い話があったんだがなぁ」
念の為お伝えしておきますと、投稿再開してから今回は四話目ですので、お見逃しがないようご注意ください。
ペースとしては1日おきくらいで投稿したいとは思っていますが、そこあたりは適当ですので悪しからず。何事もなければ次回は二日後の予定です。
また感想等お待ちしております!
■メリディアン
どこまでも足掻く。
■メリナ
言葉にはできていない、見えない繋がり。
この関係がただ居心地が良くて、ずっと続けばよいと自分が思っていたことに彼女は驚いた。
いつかは終わる。それすらも、彼女はまだ知らなかったのかもしれない。
■イジー
何も出来なかったことを恥じ、しかし名も無き英雄の存在によってみっともなく縋ることを決断した。
意味のない一歩なのか、活路を開く一歩になるか。
■ブライヴ
長く長く、唯一信頼した家族に裏切られ、疑心暗鬼になってる。それが何だというのか、俺は剣であり続けるだけ。
…そうして走り出す前に、あともう一度だけ、不覚にも信頼してしまった男を信じることにした。
■アレキサンダー
彼とて多くの者と関わり、別れてきた。
けれども共に歩こうなどと、本気で言った上に命がけで証明した男など初めてだったのだ。
ただ信じよう。
盲目的と思うだろうか?だがこれを信じられないというのならば、きっとこの地には、信じるものなど何一つなくなってしまう。
■ヒュングー
どこかで聞いたことあるような…
- イジーの鏡兜 -
結晶鏡で作られた兜
軍師イジーが、肌身離さず被っていた
それは、大逆に従う者の装束であり
大いなる意志と、その使いたる指の
あらゆる干渉を跳ね除けるという
イジーは恐怖していたのだ
自らの裏切りを
- ノクスの鏡兜 -
結晶鏡で作られた兜
永遠の都の呪具のひとつ
それは、大逆に従う者の装束であり
大いなる意志と、その使いたる指の
あらゆる干渉を跳ね除けるという
- ブライヴの手甲 -
ブライヴは、ラニの影従であった
たとえ運命に背いてでも
決して裏切らぬ、味方であった