曇らせ大好き明美さんの子   作:スティック/糊

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ストレス

 

「随分綺麗な土下座だこと」

 

 諸伏景は自宅に帰ると成人するまでの年齢2週目を迎えようとしている大人3人がリビングの入り口に向かって綺麗な正座をしており、こちらの姿を見るなり床に手をついて頭を下げてきた。

 降谷零、諸伏景光、風見裕也の実に綺麗な土下座である。

 

 こちらがいいと言うまで頭をあげそうにないのでこれは好都合だと考えた景は向こうの音声をミュートにした状態で玲奈に通話を掛けた。

 

「で、主犯は」

「俺、です」

「動機は」

「彼女の推察通り、伊達との会話で『宮野さんの娘に助けられた』と聞いて、裏取りをしようとしました」

「もっと他にもやり方あったんじゃないの」

「…はい」

「少なくともまともな関係築きたいなら法に触れない方法とるよね、普通」

「御尤もです」

「少なくともあの子は、まともな関係築こうとは思っていないんだって判断したよ。違法捜査で普通の感覚消えてるんじゃないの」

「っぐ、決してそんなつもりはなかった!」

「犯罪者の言い分だよね、それ。警察官人生で一体何回聞いてきた?」

 

 そこまで言って降谷零は灰になった。

 

「次、お父さんと風見さん。こんなふざけた真似止めなかったの?」

「…すまない」

「…恩人に娘が居ると分かったらいてもたってもいられなくなって、すまない」

「二人とも年頃の娘が居るのに盗聴なんて気色悪い真似良く許したな、って心底思う。軽蔑した」

 

 二人も灰になった。

 

「これで私の友人関係壊れたらどう責任取ってくれたわけ」

「そ、それは…」

「あの子優しいからこんなこと起きても交友関係やめる気はないって言ってくれた。あの子は昨今類を見ない超良い子なの、落し物があれば交番じゃなくて落とし主の元に届く時間が短くなるでだろうと警察署に届けるの。怖い思いしてる子供を見かけたら勝手に体動かして助けちゃう子なの。両親いない孤児だって認識して児童養護施設で育っても腐らないで将来のこと考えて無利子の奨学金得るために必死に勉強して超倍率の高い特待生やってんの、毎日必死にバイトして自分で自分の生活支えてる清く正しい真面目な子怖がらせるなんて、それでよく市民を守るなんて言えたね」

「―――申し訳ありませんでした」

 

「で、馬鹿公安警察3人はどう後始末付けるつもり?『違法だからこそ、合法的な手段を残しておかないと自分の首を絞めることになる。自ら行った違法な作業は、自ら片を付ける。それが公安』じゃないの?合法な要素ゼロでしょ」

「はい…」

 

「ここまで歳頃の娘的に直接説教したけど、玲奈追加でなんかある?何ならこの馬鹿どもの処遇決めて」

 

 そう言うと3人はバッと顔をあげ、私の手元のスマホに目線が行くがひと睨みすると再度土下座の体制に戻った。

 

『急に電話かかってきて何事かと思えば、別に今まで困ってなかったことなんだから関わってこないで。知らなかったことにして貰えればそれでいい。ここまで知られたなら母方の親戚筋に伝えるかどうかは好きにしてくだs『はい、インターセプトト、その話するなら私もついでに言っておきたい』どうぞ』

 

 このままフワッ足したことしか言わなそうな公安3人衆に対しての処遇を被害者に聞けば、ある種一番きつい回答を返してきそうだったが、純花がインターセプト。

 

 玲奈の母方って言うと純花の父方になる。

 

『えー、初めまして。話の腰を折ってすみません、旧姓黒澤ジンの義理の娘です』

 

 そう始まった純花の話を3人は土下座の体制のまま耳を澄ませる。

 

『私、端的に言うと赤井秀一が認知してない私生児なんです』

「!?」

『あの野郎が昔ワンナイ決めた娘ってやつですね。本人は欠片も知りませんし、親類も知りもしないでしょう。血縁上は玲奈のはとこに当たります』

 

 その言葉にバッと3人は再度顔をあげる。

 目をとても白黒させていた。

 確かに公安の敵の私生児とかパワーワード過ぎる。

 

『私の情報含め世良一族に伝えるなり好きにしてください。成人するまでは会いませんけど』

『じゃ、私もそれで。お祖母ちゃんのご兄弟外国の警察関係者で、叔母は探偵さんらし、勝手に調べてくるような人だったら怖いし』

 

 この二人カジュアルに決めやがった!?

 あ、玲奈の発言にまた降谷さんダメージ受けてる。

 

『でh―――あ。盗聴被害者として一つお願いが』

「な、なんだろうか」

『赤井秀一日本から出禁継続させてください、政治的に無理なら私の視界に入れないでください。あいつがこの世で一番嫌いなので』

 

『アメリカ国内警察組織なのに日本に出しゃばってきてお母さんを危険に晒した上に変に敵取り気取ってたのが気に食わないんです』

 

『あいつさえ居なければお母さんと叔母さんと一緒に暮らせた未来があったかもしれない、それだけです』

 

 そう言って玲奈は通話から離脱。

 すっごい上手に赤井にヘイト向けたぞおい。

 

 降谷さんは一瞬虚無顔になって床を強く殴り、陥没させた。

 おい、ココ諸伏家やぞ。

 

 

 〇

 

 

 

「『女子高生の着替えに興奮する変態さんこんにちわ』

『赤井秀一以上の口下手なの?』

『公安警察はこれを止めようとする人いなかったわけ?』

『あーあ。これを作ったであろう阿笠博士のことお爺ちゃん、なんて気軽に呼べないわ』

『あの事件にかかわってた人ヤベーのしか居ないの?』

『国家権力傘にしてる自覚ないみたいね。絶対に勝てない存在にこんなことされるとか女子高生的に外怖くなって出られない案件』

『少なくとも身内に警察官目指してる女の子がいる環境でやる行動ではないと思う』

『人の心ないの?』

くらい言ってやるべきだったかな」

 

「流石にOver Killが過ぎる」

「あ、二人とも安心して『降谷さんにクリスマスに渡したCDの零さんへって文字、あの子が書いたんです。最初で最後の贈り物にならなければいいですね』ってトドメ刺しておいたから」

「だからオーバーキル過ぎだから」

 

 

「……最近の女子高生おっかな過ぎる」

「私は大丈夫、お父さんにはいかないから安心して」 

 

 

 問題の事件の翌日、バイトがあったので喫茶店へ向かうと開店から一時間ほどで2人とジンさんがやって来た。

 

 別に怖くはない。

 盗聴される方がよっぽど怖い。

 

「ちゃんと自重して“盗聴器の影響で外に出るのが怖くなりました、学校にいけません、特待生外れて学校退学”までやって罪悪感植え付ける選択肢を選ばなかったんですから」

「うわぁ」

 

 到底ジンさんから出てこないであろうドン引きの声に少し笑いすら覚えた。

 

「私これでも用法容量守らないとメンタル病むタイプのさみしがりやなんで優しくしてください」

「んなタマじゃねぇだろ」

「え、年末知り合いに誰も合わない一週間過ごしたらちょっとメンブレして真冬の海に飛び込んだらどうなるんだろ、なんて思ちゃうくらいには繊細なんですよ?」

 

 ま、足首まで入ってあまりの冷たさに辞めましたけど。

 なんて続けながら笑っているとジンさんは頭を抱えた。

 実際にやりかけてるじゃねぇか、と。

 

「純花、諸伏娘、こいつ大丈夫か」

「いやいやいや、初耳、初耳なんですけど!?」

「よーし、玲奈こっちおいで―」

 

 誘われるまま純花の元へ行きギュッと抱き着いた。

 

「……ごめん、実父関係でめっちゃ疲れて調子狂ってる」

「いいよ、いいよ。好きなだけこうしてな。学校も辛かったらほんとに休んじゃえ」

「特待生だからダメ、休めない」

「普通の学生に切り替えてもやっていけるでしょうに」

「お金足らなくなるかわかんない、極貧やだ。つらい」

「学費位うちが出すよ」

「金の切れ目が縁の切れ目だからヤダ、離れたくない」

「そのくらいで離れないよ」

「でも甘え過ぎたら嫌われるから、線引きしないと」

「はいはい、玲奈が一番安心できること選ぼうね」

「ん」

 

 不思議と、すごく落ち着く。

 

「と言うか昨日ちゃんと寝れた?ちょっとクマできてる」

「え、あ、玲奈大丈夫?」

「ん、あんま寝れてない」

「昨日の疲れ?だいぶ一杯着替えさせちゃったけど」

 

 純花の首筋に顔を埋めながら首を横に振るう。

 

「構ってくれるのはいいの、バイクから住所バレしただろうから、いつだれが来るかわからなくて、怖かった」

「ふりゃーギルティ」

「じゃ、しばらく家来る?」

「おかーさんが残してくれた家離れたくない、でもこわい」

「っ、そっか。じゃ、しばらく私が止まってもいい?」

「だめ」

「どうして?」

「高坂家の日常私が壊したくないから、だめ」

 

 寝不足からか、だいぶ思考がまとまらない。

 不思議と眠くなってきた。

 

「そっか、玲奈は優しいんだね」

「ぜんぜん。昨日、景も褒めてくれたけど、ぜんせん。私はわがままでめんどくさい子、だから」

 

 だめだ、バイト中なのに、眠い。

 

 

 

 〇

 

 

 

「寝ちゃった」

「寝たね」

 

 ギュッと抱きしめた女の子は昨日からの疲労と、本人の申告したとおりあの盗聴事件から相当な気疲れをしていたらしい。

 

「―――スゥ、純花暫らくこいつのとこから学校通ってやれ。大学で一人暮らしする練習とか適当な理由付けて」

「そうさせてもらう。本気で疲れてるみたい。主に精神的に」

 

 お父さんが、ジンがマスターに体調不良っぽいから連れて帰ると声をかけ、マスターも無理しないでゆっくり休んで来たくなったら来るように言ってくれ、と優しく送り出した。

 

「帰ったらとりあえず荷造りして、夕飯の材料買って、玲奈宅」

「ああ、それでいい」

 

 景は家でアホ共ぶちころと言って帰り、私たちはお父さんが玲奈を抱え車へ運んだ。

 

 後部座席の背もたれを少し倒して玲奈を座らせ、シートベルト。

 これが10年ちょっと前なら雑に放り込んでいたのだろうな、なんて。

 私は玲奈の隣に陣取った。

 

 お父さん曰く、助手席はあいつの席だと言って基本的に2シーター出ない限り載せてくれない。後は乗車定員問題。

 連れ子でその娘はさんざん調査を引っ掻き回しためんどくさい奴の子だと言うのに本当に人間性が高い。

 

 私がシートベルトをするのを確認するとお父さんは静かに車を進ませ、こちらに声をかけてきた。 

 

「純花」

「何?玲奈との交友関係だったらさっきこの子が墓に入るか私が墓に入るまで続けるって決めたとこだけど」

「腹決まってんならいい」

「この子ほって置いたらダメ男製造して朽ちる姿が目に浮かぶもの」

「……酒は家だけにしておけ」

「外ではしっかりとしたボディーガードでもいなきゃ即ペロリよこの子」

「大学は、気ぃ付けろ」

 

 俺は行かなかったら分らねぇが、なんて言いながらジンが想像するのは確実に新歓とかそう言う類の奴だろう。

 わかる、と深く同意した。

 

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