曇らせ大好き明美さんの子   作:スティック/糊

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読み返したら矛盾点見つけたけど気力のある時に直します。(高確率で直さない)

肌に合わねぇと思ったらブラウザバックでお願いします。


クリスマス前

 

 

 文化祭は好調に終わった。

 

 それは一般公開日に割り振られていた私たちの出番が校内日に変更になったからである。

 

 そのことに諸伏パパは大変ショックを受けていたとのこと。

 ……ライブハウス?一切口にしてないそうです。

 

 そして収録も終え1か月と少し、クリスマスが見えてきた。

 

「……あの、マスター?」

「なんだい?」

「この、『“ナモナイ”デビューソング700万再生おめでとう』とは?」

「え、文字通り」

「―――スゥ、ちょっとジンさんに問い合わせてきます」

 

 いつものようにバイト先に出勤すると入口にフラワースタンドが立っていた。

 あれ、何か開店しましたっけ、と一瞬考えたがその文字を読むと、『“ナモナイ”デビューソング700万再生おめでとう』との文字が。

 

 

 少し席を外し、急いでジンに電話をすると数コールもせず彼は出た。

『なんだ、ついに知ったか』

「ついに知ったかじゃありませんよ、そんなバズる要素ありましたっけ?!」

 

 安易に広告なんてものもなく、あるとすればリーダー景の曲はかけないが絵ならかける、という発言により前世のボカロのMVのような仕上がりになった一曲とミニアルバムの視聴用動画の2つだけ。

 

『Vtuber、とか言ったか動画配信者がお前らの楽曲に出会って復帰のきっかけになったと言ったことで動画サイトで再生されまくってミニアルバムもすごい売り上げになってる』

「Oh…」

 

『売り上げの類いはこっちで割り振った。諸伏娘にも後で口座を作るようにいっておけ。あと確定申告で親の扶養外れることも』

「りょ、了解」

 

 その後動画サイトの再生数の売り上げとは別に各楽曲サイトでのDL売り上げ、サブスクの売り上げに……Gibsonのレスポール、余裕でペイ出来ちゃった。そんな感想しか出てこなかった。

 

 

 

 〇

 

 

 

 諸伏景はその日、自宅のリビングでハロと遊んでいた。

 数年前まではハロとハロの嫁とハロの子が居たのだが、数年前によくある病で亡くなり、今いるのはハロの息子、2代目ハロである。

 

 自宅でハロと遊ぶのは降谷さんが出張の時などハロの面倒を見れない時だ。

 適当にボールを投げたり、ブラッシングして満足したように離れるとソファーで横になりながらスマホを弄るのがよくある光景で、ハロがこれるように自室のドアを開け勉強机に集中することもある。

 正直に言えば降谷さんの自宅は私の家の隣の部屋。

 要は同じ階のマンションなのだが、降谷警視正ともなれば一般人がまず触れて言いレベルの情報はなく、機密保護のためハロがこちらにやってくるのは自然なことだ。

 

「―――扶養外れる年収って103万円とかからだっけぇ……」

 

 それはパートアルバイトとかの奴のハズ。単純に所得48万以上は年末調整から外れ、確定申告をせねばならなかったはず。

 

 一番割合少なくてこれかぁ、と少し麻痺を覚えた。

 作詞作曲に対する印税が大きく、MVの素材等を作成した景は一時金である程度もらええるならいいやー、とMVの再生数とDLのジャケットを景が書いていたのでその売り上げを売り上げから何%と言う形で契約したことを覚えている。

 一応父景光にも契約する際に“学生のちょっとした思い出みたいなものだよー”と軽いノリでこちらに一切のマイナス的負担がない事を説明した覚えもあった。

 と言うか、1か月ほど前のことなのだから忘れることなどないのだ。

 

 でも年末調整って文字通り年末、つまりは12月ごろにするもので年度末ではなかったはずだ。

 でも確定申告は年度末近かった気もするし…、とりあえず、パパに報告してジンジンに税理士紹介してもらおう、そう景が決意すると丁度父景光が帰宅したようだった。

 

 それと同時にハロが駆けだしたので降谷さんも一緒。

 ハロの降谷センサーに驚きを隠せないものだ。

 

 

「パパと降谷さんお帰りなさい」

「ただいま景」

「晩御飯、用意してあるよ」

「たすかる」

 

 そんな挨拶と同時に、ハロも降谷さんにタックルをかまし全体的に撫でまわされている。ヘソ天の完全服従状態だ。

 

「お邪魔するよ。ハロの面倒見てくれてありがとう、お土産」

「あ、はい」

 

 諸伏景に対して降谷零の態度は結構甘い。

 

 嘗て父景光が景を引き取るのを決める際に彼を思って反対しまくった時にはまだ組織真っ暗成分が抜け切れていなかったのかだいぶ口汚く言われた過去もあるが、景自身としても暗殺者育成施設状態だった組織関係の育ちだからその疑念はごもっともだと思ってた。

 ある時、景が事件に巻き込まれてんやわんやあり気が付けばだいぶ甘やかしてくる親戚のオジサンポジになっていた。

 降谷が過度に景を甘やかそうとすると景光がそれを嗜めるのは見慣れた光景だ。

 その光景を見るたびにこの二人やっぱりできてるんじゃないか?と思ったほど。

 

 二人が清く正しく手を洗いに洗面所に向かうのを見ると足元では降谷に撫でまわされて満足気なハロにご飯にしようか、と声をかけると元気な返事が返って来た。

 

 かなりの高頻度で我が家に居るハロのご飯セットは諸伏宅にも存在しているし、ペットシートも置かれている。

 何なら部屋を改造して諸伏宅と降谷宅にハロが自由に出入りできる入り口を施工する話すら存在していたほどだ。

 

 ストッカーからハロのドックフードを皿に出し、定位置に持っていくととことこと後ろをついて回りお座りを自発的にし待機を始めた。

 

 主人である降谷や人間が食事を開始するまではしっかり待つタイプの子である。

 

 その様子を見届け自身らの食事を用意しようとすれば台所にはアラフォーと言うには些か顔面が若すぎる2人が用意された鍋やフライパンから食事を盛り付けていた。

 家庭力高いなーと思うと同時に皿を出すタイミングだのを見てるとやっぱりできているようにしか見えない。

 そんな風に娘が思っていることをつゆ知らず景光と降谷はウェイターの様に皿を複数持った状態で配膳をする。非常に様になっているがこの二人は警察官である。

 警視正と警部とそれなりに階級の高いポリスメンである。

 

「じゃ、ご飯にしよう」

 

 そう景光が言い、4人サイズのテーブルにアラフォーが並びその体面に景が席に着いた。

 そして頂きます、としっかりと手を合わせ声を上げるとハロもそれにヨシとドックフードを食べ始めた。

 

 

「今年のクリスマスプレゼント何か欲しいものあるか?」

「んー特に思いつかないかな」

 

 夕食を終え、景光がなんとなしと言った風に景に問うがそれに対して大きな反応はない。

 景の中身的にそれなりの年齢を経験してきた訳で高校生が欲しがるようなものはあまり興味がないし、普段の小遣いも十二分に得ていることから本当になかった。

 それに対して景光的には何かを送りたいが下手に趣味から外れるものを年頃の女の子に送った時のうっすいリアクションを恐れているため何か指標が欲しかった。

 降谷はその様子を見て物欲がないなーと微笑ましそうに見ながら今年は何を送ろうかと考えていた。

 

「お父さんたちは何か欲しいもの無いの?」

「景の健やかな日常」

「平和」

「重いよ……」

 

 そう言えば収益が入ったから父らに何かを送ろうと思い立ち聞いてみると何とも精神的に重い希望が帰って来た。

 

「この間インディーズデビューするって言ってたバンドの収益が出たから初任給、とはちょっと違うけど何か送りたいんだけどなー、不意にされるのかー、悲しいなー」

「うぇ!?そ、そうなのか」

「じゃ、サイン入りのCD欲しいな」

「それは違うじゃん降谷さん」

「父さんもそれがいい!」

「ちゃうやん」

 

 少し方向性がズレたようにアラフォー二人はCDを要求してきた。

 ここまでバンド名すら隠してきたと言うのにそれを明かせと申すのか。

 

「残念、DL販売のみなのでCDはありません」

 

 だが、対策はあった。

 DL販売、サブスクでの配信が中心なので昨今はファングッズとなっているCDは無いのだ。

 

「プレス代が要るのか?100枚くらい10数万でいけるか」

「俺たちのなんちゃってバンドは自分で焼いたっけ」

「ちゃうやん」

 

 一瞬勝った、なんて景は思ったがこういう時に降谷零と言う男は躊躇いがなかった。

 こういう時なんちゃってでもバンド経験があると言うのは厄介だ。

 景は潜入の偽装のため職質対策やらなんやらのためにアーティスト活動(笑)をしていたことの中にそんなエピソードトークをしていたことを思い出し脳内でこっそり頭を抱えた。

 

 結局景はゴリ押しに勝てそうにないと悟りバンドメンバーの同意無いと作らないと自室に逃げた。

 

 

 〇

 

景『急募:CDプレス回避方法』

 

純『諸伏家からお父さんに連絡が行った模様、焼く気満々』

景『えぇ……』

 

玲『うちの喫茶店の常連さんにもCD出して何ならファングッズ出してと揺すられ始めている模様』

 

景『焼く?』

純『正気記念に欲しい所はある』

玲『わかる』

 

景『……ジャケットイラスト書きまーす』

玲『助かる』

 

純『で、何部くらい焼く?』

玲『各家庭と常連さん分くらいでいいんじゃない』

景『我が家の分お二人のサイン欲しいな』

純『うちも』

玲『私個人用に欲しい』

 

純『じゃ、イラストでき次第最低ロットでおk?』

景『おk』

玲『おk』

 

 

 〇

 

 

 クリスマスイブの前日12月23日。

 ウィスキートリオの娘らは終業式後玲奈宅に集合していた。

 

「夢みたい」

「まさかの一番テンション上げてる勢が玲奈」

「売れずに地元のハコでチマチマやってた身としてはこんなに自分がかかわったCDを見るとこう、感無量」

 

 CDプレス小ロット計画から一転。

 気が付けばそれなりの部数を焼くことになってしまい、クリスマスライブとその物販での販売が決まったし、ネット販売と言う形で受注の様子を見ながらとなるはずがそちらもびっくりする数注文が決まった。

 バンドグッズとして生まれたタオルとのセットが一番売れ行きが良かった。

 そこら辺を捌いてくれるジンさん神。

 

「じゃ、ライブの定員分サインしますか」

 

 玲奈宅でバルクにサインしてケースに入れて封と言うマシーンになった3人が何故、23日に集合しているかと言えば各家庭のクリスマス事情に合わせた結果と言うやつで友人らの一足早いクリスマスパーティーを開催しているのだ。

 元々はクリスマスイブの予定だったが、例のライブの決定により時間はずれ、CDの発注とサインの都合を考慮した結果このような形になった。

 

 23日玲奈宅にてサインマシーン終了次第お泊り会兼クリパ。

 24日ライブ。

 25日各家庭でクリスマスパーティー。

 

 玲奈も高坂家クリスマスパーティーに純花とジンに呼ばれたのだが流石に、と事態し一人ツーリングの予定とした。

 

 

「クリスマスにピザとコーラ。これだね」

「クオリティーたっか、と言うかいつの間に庭に石窯が」

「趣味の日曜大工」

 

 帰宅後制服姿のままサイン開始、15時を回ったころにサインが終わり昼に予定していたピザパーティーが始まった。

 

 玲奈宅の庭にはそれなりに立派なピザ窯とBBQセットが組まれていた。

 おそらく来年にはちょっとしたウッドデッキを作る予定だ。

 玲奈がネットで耐火煉瓦とモルタルを注文し使ってウッキウッキで作り上げたのかこのピザ窯である。

 BBQセットはグリルと、焚火したいがために用意された。

 こういう時近所に気を使わないといけないとかの心配がないのがいい。

 

「純花、このチーズすっごい美味しい」

「グルメなお父さん一押しのチーズだからね」

 

 とても伸びる上にシンプルに癖が少なく美味しいチーズにはしゃぎ

 

「ジ〇リ飯、ジ〇リ飯やろう」

「安心しな、スキレットもあるぞ」

「わーい!」

 

 そのチーズの伸び具合からテンションが上がった景の提案により色々と違う料理へと発展していく。

 皆な中身は成人しているため料理スキルはそれなりにあるし、今世の生活が生活なので必然的に伸びている。

 

 ただ、惜しむべきは未成年のため酒が飲めないこと。

 玲奈の得意レパートリーは喫茶店で出る軽食や酒の当てが中心で、景の得意料理は和食全般、純花もまたカクテルに会うような小洒落た洋食となっている。

 

「ただ、この油の量は10代しか勝たん」

「わかる」

「20過ぎたら酒盛りしようね」

「それな」

 

 このメンバーなら宅のみで酒の制限も怖くない、そんな期待があった。

 

 色々な方向に転がりながら大満足なクリスマスパーティーの後始末を開始。

 

 胃袋的に満足し、各自順番に風呂に入り炬燵にアイスと言うこれまた太りそうなことをしているが各自の運動量でどうにか許されている説がある。

 食べているアイスはハーゲンダ〇ツ。ジン提供である。

 

「正直今の今まで冬にアイスとか邪道だと思ってた」

「はー、これがいいんでしょうに」

 

 炬燵から出れない3人はアイスを食べ終えだらだらと溶けながらみかんを摘まんでいた。玲奈のバイト先の常連さんから頂いたものだ。

 

「二人は年越しの予定は?私は長野」

「母方の実家行き。始業式前には帰ってくる予定」

「私はどこか適当に日の出見にドライブ。バイトも28日までだから」

「アグレッシブだなー」

 

 二人は祖父母の元へ遊びに行くと聞き、ふと前世を思いだす。

 成人して最後に実家に帰ったのは何時だったか。

 未婚のままバンドマンしながらフリーターやって、就職してもバンドがやめられないアラサーのままで実家に顔を出しずらくて帰っていなかったな、と。

 

 すでに世界すら違うけど、前世の故郷に足を延ばすのもいいかもしれない。

 

 そう思ってスマホで検索を掛けるが、繁忙期今からではろくな部屋が空いていなかった。

 

「どったのー」

「前世の故郷に足を延ばそうと思ったら流石に繁忙期でどこも空いてなかった」

「どこ行く予定?」

「草津温泉」

「そっちの方出身なの?」

「その麓」

 

 年末なんてそんなもんだよー、何ていいながら溶ける。

 

「んー、2時間くらいの運転が苦じゃなければ軽井沢に別荘あるからお父さんに言って貸してもらおうか?」

「……冷静に考えると冬にバイクで行くとこじゃないの思い出したからやめとく」

「確かにあっちの方、冬は雪積もるもんね」

 

 長野に行きなれた景にそりゃそうだ、と笑われる。

 冬場にスタッドレスなしで草津の急勾配を登ろうとして事故っている車を毎年のように見ていたのを思い出す。

 FF駆動なのに後輪にだけチェーン必死に巻こうとしている都会出身者とかよく見かけたものだ。向こうはスタッドレスほぼ必要ないし。

 あと、車でもFR、後輪駆動車で雪道を走るなどアホか熟練者のどちらかだ。

 後者は公安のゴリラならやりかねない。

 

「夏に渋峠チャレンジする」

「渋峠?ああ、日本一標高の高い国道地点がある所だっけ」

「そ。白根の交通規制で通れるかは運だけど」

「あーね」

 

 渋峠は長野周りか群馬周りかで言ったら東都からいくなら草津温泉の方が回るの方が無難だろう。

 今有料道路事情どうなんだろ。

 冬に草津は車の免許を取ってからにしよう。

 

「…私もバイクの免許取ろうかな」

「私は車は良いけどバイクはって言われちゃってるからなー」

 

 純花がバイクの免許を取ろうかと言い始め、景は父に止められている模様。

 

「白バイ隊員で女性もそれなりに居るでしょうにスコッチ硬いね」

「どっちかと言うとふりゃー」

「「あぁ」」

 

 思わずハモってしまう。

 確かに自動車事故よりバイクの事故の方が死傷率高いし事故の傷も大きくなりがちだ。

 

「でもさ、灰ばりゃーもバイクの女じゃん?理不尽じゃない?」

「ハーレー乗りだっけたしか」

「バイクのメーカーは分からないけど」

 

 割とバイクに乗り気な景に色々なバイクを進めたい衝動に駆られるが彼女が実際に取ると決めた時で良いだろう。

 

「まぁ、私は前世で原付しか持ってなかったけど玲奈が楽しそうに乗り回してるからちょっと興味湧いてきてさ」

「家から最寄りまで原付?」

「新聞配達でカブ」

「イイね!」

「バイクわからないけどなんかうらやましいいいい!私もライブの身分証証明の為だけに筆記だけの原付取ったことあったけど!」

 

 春になったらバイクの教習通ってやる、と景は息巻いた。

 

「みんなでバイクとったらツーリングでキャンプとかいいよね」

「今日みたいに色々焼きたいねー」

「焼き物と言ったら伊豆のBBQおいしかった」

「わかる」

 

 翌年の目標はみんなで短距離ツーリングキャンプとなった。

 先導役はジンが引き受け、後にバ先の店長夫妻も加わることになるとはこの日思いもしなかった。

 

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