曇らせ大好き明美さんの子   作:スティック/糊

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スキを見せると着せ替え人形

 

「一週間とちょっとぶりィ!」

「テンションたっか」

 

 1月4日

 江古田高校1-Bにて。

 本日は始業式やって午前中は授業の半日日程。

 3人組として定着している中で私の当校は一番遅く、教室に入った瞬間にハイテンションの景に抱き着かれた。

 

「あー長野ほんと堅苦しかった」

「お疲れ様」

「いくら警察官家系だからってこう、何というか聞き方がどこか尋問染みててめんどくさかった」

「よしよし」

「あーおぎゃる。玲奈のバブみやべーわ」

「日本語でどうぞ」

「あけおめ」

「あけおめ」

 

 

 景は2分ほど抱き着き満足すると離れた。

 それを少しあきれたような目で純花が見つつ、こちらに来た。

 

「私もぎゅー」

「貴様もかブルータス。良いけどさ」

「あの着物姿はズルいでしょ、何人沼に落としてきたの。お姉さんに行ってごらん」

「由美さんに着付けしてもらってすぐ着替えたから目撃したのは由美さんと写真だけ」

「よしよし、あんな可愛いの見せられたら誘拐されちゃうから私らの前だけにするんだよ」

「と言うかこの三人で一番誕生日早いの私だが」

「まぁ、私が一番後とも言う。でも一番背がデカいのは私」

 

 なお私が5月5日、景が7月7日、純花が3月3日である。

 背丈は純花>私>景。

 

「好きにせぇ」

「でもパイは負け始めてるかも」

「知らんがな」

「おい、きょぬー共しばくぞ」

 

 1週間と数日ぶりにあったら二人のテンションがおかしくなってました。

 

 

 〇

 

 

「やっぱこのアングルだよね」

「こう、ワイシャツにエプロンっていいよね」

「二人とも本当にどうした」

 

 放課後バイト先の喫茶店で相変わらず謎の壊れ方をしている二人に思わずツッコミを入れてしまう。

 

「高顔面偏差値を見ていると健康にいいってシミジミ思っちゃって」

「ほんそれ」

「自分で鏡見とけ」

 

「え、照れる」

「顔面もさることながら玲奈ちゃんのウィスパーボイスの中毒性を感じる年末年始だったんだよ」

「わかる」

「ASMR出せって言ってきそうで怖いわ」

「いくら積めばいい?」

「やらんが?」

 

 やっぱこの二人年末年始何があった。

 

「と言うか何か企んでない?」

「バレた?」

「ちょーっと私たちと服に行かない?」

 

「―――アレか、正月に着物着て案外ノリノリコイツとか思ったのか」

「正解大卒」

 

 ふとどこか媚びるような要素を感じ、あ、これ何か企んでる顔だと感じ問えばあっさりと白状した。

 

「玲奈ちゃん割とメイクに抵抗ないし、ステージ衣装可愛い系にしてもあっさり来てくれるし、着物も結構のノリノリ。さては着せ替え人形にしても許されるのでは?と」

「私服も結構バリエーション豊かだし、ちゃんと季節のとってるし」

「……当方、散財する趣味を増やす予定はございません」

 

 一応、一応彼女らと前世バレした際に中の人はアラサーのおっさんやでーとは伝えている。

 その影響か最低限女子としてこれくらいは気を付けときなとアドバイスをくれるが服装とかの方面で過度に過干渉してこなかった。

 

 確かにノリノリで由美さんの写真撮影を受けて『お義母さんからくる服の譲り先決まったな』となんかロックオンされたけど。

 前世おっさんで見てる分には好きだなーって思ってたデザインの服ノリノリで自宅で来てるけども!

 

「つまり貢ぐ分には問題ないと言うことでよろしいか」

「友人関係で過度な金銭トラブルはご遠慮申し上げます」

 

 意味深にゲンドウポーズを取りながら謎の口調になり始める景。

 

「アレだよ、あれ、投げ銭。スパチャみたいなものだから」

「え、えぇ…」

 

 普段のお姉ちゃん感はどこに飛ばしてしまったか前世のオタク成分らしきものがにじみ出ている純花。

 

「怖くなーい怖くなーい、お姉さんたちとちょっとかわいくなるだけだから」

「大丈夫、玲奈に金銭的負担一切ないから。ちょっとお洋服着てメイクしてスタジオで写真撮るだけだから。帰りに焼肉も奢るから」

 

 ―――流れ変わったな。

 

「……もしかしてコスプレさせようとしていらっしゃいます」

「え、うん」

「私はかわいい女に自分好みの服着せたいだけ」

 

 どうにもコスプレさせたい景とちょっと疲れたアラサー女性みたいなことを言い出す純花。

 

「……次、どっかのタイミングでライブやってくれるなら」

「やるやる」

「よっしゃ、今週の土日空けといてね」

 

 二人の勢いに負けました。

 

 その後、マスターが『ほう、ライブかい。いつにする?箱を押さえよう』と変なスイッチ入れて首突っ込んできてバレンタインデーに決まった。

 箱はまたデカくなった。

 バンド馬鹿がよぅ…

 

 

 〇

 

 

 そして数日後の土曜日。

 江古田高校の最寄り駅から数駅の距離に位置するショッピングモールに集合を指定された。

 

「よし、今日お父さんに好きなだけ使えとの言質を貰って来たのでたくさん服着せます」

「バイクで来てるんだが」

「そこに郵送サービスがあるじゃろ」

「ダメだこの子何とかしないと」

 

 一月もまだ上旬、肌寒さと年始セールの幕が見えるショッピングモールで集合場所に来るなり純花はハッちゃけていた。

 

「こう、うちのお母さんも参加したそうにこちらを見ていたけど撒きました」

「英断」

「高坂家、もしかして人を着飾るの好きなの」

「大正解。つまり遺伝、私は悪くない」

「自重せい」

 

 本日景はミシンにつきっきりになっているので不参加。

 スタジオの予約と着せたい衣装の関係上半月後に変わった。

『アイドル衣装着せてハ〇プロメドレーしてもらうのは絶対条件として、いやベタな今期アニメ、シンプルにメイド服とかも良い、いっぱい着せたい』

 などの不穏な空気を流していた。

 頑張れ1月下旬の私。

 

「やっぱりお洒落さんだよね、制服以外パンツルックなのが気に食わないけど」

「ちょいちょい、私のメインの交通手段バイクぞ」

 

 そう告げる純花も本日はデニムに無地のシャツと白ニットのカーディガンの装い。

 

 私はチノパンにオーバーサイズのジャケット。

 

「で、スカート履かせてもいいかな」

「冬にスカートは未だに理解出来ん」

「玲奈制服には厚手のストッキングの民だもんね」

「このチノパンの下にも一枚ストッキング入れてるレベルやぞ」

 

 この時期バイクは対策しないとマジでキツイ。

 

「まぁ、着せるんだけど。店内あったかいからいけるって」

「好きにして」

「お、言ったね」

 

 じゃあさっそくレッツゴーと連れまわされ始めた。

 

 初めは抵抗が少ないようにと言う配慮なのかカジュアルな日常使いしやすいものから始まり、だんだんと可愛い系にシフトしていく。

 

「やっぱきれいな足だと映えるわー」

「冬場にショートパンツはやべぇって」

「私の中の童貞心がやったれ!って叫んでた。悔いはない」

 

 ニーソックスに文字通り丈の短いショートパンツにオーバーサイズのニット。

 いわゆる下履いてないんじゃない?と言うアレである。

 

「お前アレが付いてた経験ないやろがい。オーバーサイズって言うかゆったり着れるのは好きだけども野郎の視線が集まるので無し」

「見せつけていけ」

「イヤに決まってるだろ」

 

 仕方がないなーと玲奈ちゃんは、と某国民的アニメの猫型ロボットの声真似をされながら渡されたのはワンピース風のコート。

 

「いや、だからなんでそこまで履いて無くないですか、みたいなファッションに走るの」

「玲奈はでっかいぺぇも魅力的だけどそれよりも足よ足。太さと言う概念をどっかやったスラッとした足なのに全体のバランスから鳥ガラ感を与えない奇跡的なバランスの足、ぜひ高めのハイヒールを履かせたい」

「……本当に私みたいにおっさんソウル入ってないよね?」

「うるせぇ拗らせたアラサー同人女はこうなるんだよ」

「ひどい偏見」

 

 流石にハイヒールは未履修なので勘弁願いたい。

 

「そういえば玲奈の好みの系統は?」

「レトロ系。TPO的に着ていく機会がびっくりするほど無いから部屋着になってるけど」

「ほう」

「大正ロマンとか中世イギリスみたいな雰囲気のが好きかな」

「あー、確かに着ていくところが難しい。写真は?」

「おっさんが自撮りするとでも?」

「よし、自撮りの盛り方とアングルについて語ってやろうじゃないか」

「いえ、結構です」

「でもプリクラは取ろう」

「あ、はい」

 

 

 この後めちゃくちゃプリクラとった。

 

 

 〇

 

 

 帰路と言わんばかりにモールの一回にあるス〇バでフラペチーノを買って駐輪場に向かって歩く。

 私はバイクで、純花はジンさんが迎えに来るという。

 ジンさんの迎えが私の解放のタイムリミットだったとも言う。

 

「いやー買ったわ」

「自重させてこれかー」

 

 朝のモール回転時から昼食時とカフェタイム以外は只管着替えまくってHPは残り僅か。

 ショップの紙袋の数はそれなりになり、純花が躊躇いなく配達を利用してた。

 今手元には紙袋は一つだけ。

 

「二人きりの初デート記念。受け取ってくれると嬉しいな」 

 

 口の中で下をコッと音を鳴らしながらキザな言い回しをしながらアクセサリーを貰ってしまった。

 

 なので私もお返しと言わんばかりに自分の手首に着けていた細いチタンのバングルを彼女の手を取りながらはめ、精一杯イケボを意識して「キミの思い出にられるならこれ以上うれしいことはないよ」と甲にキスを落としてみた。

 

「急にイケメンにならないで心臓に悪い!」

「こういうシチュはお嫌い?」

「大好きですが?!」

 

 でも自分でやられると心底恥ずかしい、と顔を覆ってしまった。

 

 

 

「―――これお願い」

「ひぇ!?」

 

 彼女が顔を覆った先をなんとなく追いかけると親方空から男の子が!案件。

 

 何を言っているかって?

 モールの吹き抜け、上の階から明らかに子供がぶん投げられたってことだけ。

 

 ここ米花町じゃないはずなんだけどな!

 

 両手で両手を覆ってた関係でひじにトート型の手提げ鞄に飲みかけのフラペチーノを押し込んで、駆け出す。

 こういうのって落下してくる時間でどんどん重さが加速するんだっけか。

 

 なるべく高い地点で受け止められれば着地に気を付ければ行けるはず。

 

 投げられた男の子はタッパから見て20㎏はないだろう。小学一年生くらいだろうか。

 

「ちょっと失礼ッ!」

 

 インフォメーションカウンター台を足場に跳躍。

 

 そこそこ高い地点でキャッチ行けた!

 

 抱え込んで、そのまま着地すると足が死にそうなので着地の寸前に宙返りの要領で前回り受け身ッ!

 

 受け身で叩きつけた片手と足にジンと痺れが来るが、大きなけがはなさげ。

 

「ちびっ子、大丈夫か」

「―――」

 

 腹筋で起き上ってちびっ子を立たせると、純花が駆け寄って来た。

 ポカンと何が起きたのかもわからず呆然としていた。

 

 厚手のアウターと短めの髪から男の子だと勝手に勘違いしたけど、どうやら女の子らしい。

 

「急に何やってんのおバカ!」

「こう、勝手に体が」

「怪我は!」

「無いよ」

「はー、ゴリラか、ゴリラの因子か」

「運動能力全般は多分そう」

「あむぴのアクション生で見るとこうなるのかって気分になったわ、こりゃ夢女も増える訳だよ!」

「危機的状況にならない限り二度とやりたくない」

「安全のため、そうしてどうぞ」

 

 そんなやり取りをしていると呆然としていたちびっ子の目に涙が浮かび大声で泣き始めた。

 

「よしよし、こんだけ大声で泣ければ大丈夫そう」

「怪我はなくてもトラウマもんでしょ」

「それは私もどうにもできない。そこはカウンセリングとか、親御さんn――「メグル!」来たみたい」

 

 泣き出した子供をあやすように撫でているとエスカレーターから慌てたように金髪長身の美人さんが駆け下りてきた。

 降りきる所で少し躓きながらも少女の元へ。

 少女を強く抱きしめながら「大丈夫」とか「怪我はない」と心配する様子に一安心。

 

「先ほどはカウンター蹴り上げてすみませんでした」

「いえ、お気にしないでください。大きな事故にならなくて本当に良かったです」

 

 周りに大きな出来事として伝播し、カウンターの受付のお姉さんもこちらに来ていたので謝罪をしておく。

 

「鞄にフラぺ突っ込んだけど大丈夫そ?」

「へーき。それに鞄なんて洗えば使えんだからそんなこと気にしないの」

 

 それとさっき渡したやつ、と無意識に落っことしたアクセサリーの入った紙袋を再度貰った。

 

「これ、事情聴取とか巻き込まれるパターンだと思う?」

「わからん。と言うかDC界隈の突発事件に初めて遭遇してビックリしてる」

 

 ここ米花町じゃないやん、と私と同じことを言っているのでせやなーと遠い目をしてしまった。

 

「あの、娘を助けて頂きありがとうございました」

「お気になさらないで下さい。受け身は取りましたが衝撃はゼロじゃないですし、目に見えない怪我してるかもしれないんで病院連れて行った挙げてください」

「は、はい。え、っとあなたもしっかりと検査を、あ、治療費」

「本当大丈夫ですから。目に見えないで言うとトラウマになってしまうかも知れませんし今晩はしっかりと抱きしめて寝てあげてください」

「ほ、本当になんとお礼を言っていいかっ」

 

 事件が起きたばかりで少女のお母さんも相当同様しているようであわあわとしながらもしっかりと礼を伝えてくるあたりできた人なんだな。

 そんな彼女の足元に大泣きして涙と鼻水でで顔をぐっちゃぐちゃにさせた女の子が顔を出す。

 

「おね、おねえさん、だずげてくれで、あ、ありがど」

「ちゃんとお礼言えるなんて偉いね―――そうだ、お姉さんがお守りをあげよう」

「おまもり?」

「今日みたいに突然お母さんから離れて怖い思いをしないお守り」

 

 首に着けてた。チェーンのアクセサリーを少女に渡す。

 ちびっ子にはだいぶサイズがデカいけど、少しでも事件から気を紛らわせることが出来るなら良いだろう。

 

「このチェーンは簡単に切れないからきっと君を守ってくれるよ」

「……うん」

 

 少女の手にチェーンを握らせると、少女は泣き疲れか、突然起きた出来事に処理しきれなくなったのかキュっと気を失ってしまった。

 

「っと、お母さんも気に追い過ぎないでくださいね。人間には限界ってやつがありますから」

「いえ、あの、はい」

「チェーンもチタン製なのでアレルギー反応は起きずらいとは思いますが、邪魔になりましたら適当なタイミングで取り上げて処分してください」

「そんな、絶対にしません!」

 

 気を失ってしまった少女を抱えると親御さんに渡しながら、余計なことをしてしまったかと思いながら親御さんに伝えた。

 思いのほか強い否定が帰ってきて驚く。

 

「むかーし母が手帳落っことして引かれそうになった警察官に渡してその後プロポーズ成功させたらしいチェーンの予備らしいのでご利益はまぁ、あるかと。っと、ここらへんで失礼します」

「この馬鹿は責任もって病院に連れて行くのでご安心くださいね」

 

 そう告げると少しポカンとした表情を浮かべる彼女を目じりにそそくさと退散することにした。

 

 

 〇

 

 

 突然起きた事件にて娘が危険に晒された女性、伊達ナタリーは突然の情報にこちらに背を向け去っていく姿を見ていることしかできなかった。

 

「宮野さんの娘、さん」

 

 断片的な情報から、そう断定するしかない。

 

 

 半年近く前の夏もそうだ。

 娘のメグルの小学校初めての夏休みの最終日の昼頃に夫から財布落っことした、チェーン切れたなんて連絡を貰ったから今でも覚えている。

 そして、カードの不正利用とかの可能性を考え利用停止の連絡をしないと、キーケールも兼ねてるから家の鍵の交換もしなくちゃ、迎えに行った方がいいのかと慌てたからなおさら。

 

 それに私たち夫婦の恩人からの思い出の品、こちらが勝手に言ってるだけだけども。

 それがついに壊れてしまったと言うことへのちょっとしたショックも覚えていた。 

 

 そして、夜。

 善意の一般人が警察に届けてくれたらしく、財布とキーケースは帰って来た。

 旦那さん、航の同僚曰く届けてくれたのは宮野さんと言う女子高生くらいの女の子、とのことだった。

 

 あぁ、また宮野さんに助けられたんだ。

 苗字の偶然の一致かもしれないけど、そう深く安堵した。

 

 航は宮野の墓に足を向けて寝れねぇ、なんて言っておりそれに深く同意した。

 

 

 そしてまた、だ。

 

 後に聞いた話ではあるが、幸せそうな家族が気に食わなくなったというひどく勝手な理由で犯人にうちの娘は投げられた。

 

 夫と、息子と娘で来ていたショッピングモールの二階でだ。

 

 少し大きくなって一人で歩き回れるようになったから、と。

 遠くに行かないでねと声をかけた矢先、ふらっと近寄って来た男にすごく自然に、当たり前の様に放り投げられた。

 

 突然の出来事に頭は真っ白になった。

 

 何が起こっているかわかっていない、そんな娘の表情がスローモーションで見えた。私だって何が起きてるか理解できなかった。

 

 ハッ、っとしたように航はその男にタックルして捕まえるのを見て慌てて、吹き抜けの下の方に駆け寄った。

 

 娘は、娘は大丈夫なのか。

 

 その光景が目に入るよりも先に大きく床を叩く音がした。

 

 最悪の展開を覚悟した。

 

 どうか、どうか生きてくれればいい。そう思って下を覗いた。

 

 

 無事、のようだった。

 

 

 一人の女性に抱えられた娘は意識はあるようだ。

 

 一瞬の間の後娘の大きな泣き声がモールに響き渡った。

 

「お母さん行って!」

「――ッ!」

 

 息子の声の声にハッと我に返る。

 

 駆けた。

 自分至上一番必死に走ったと思う。

 

 エスカレーターのゆっくりとした動きがもどかしく、危険だと言うのに駆け下りた。

 当然の様に降り口でこけそうになった。

 

 でもすぐに娘をしっかりと抱きしめられた。

 

 

 

 

 そして今だ。

 

『むかーし母が手帳落っことして引かれそうになった警察官に渡してその後プロポーズ成功させたらしいチェーンの予備らしいのでご利益はまぁ、あるかと』

 

 その警察官は間違いなく、夫のはずだ。

 娘の手に握られたチェーンは10年以上毎日見ていたのだから見間違うことない、端っこの留め具が特徴的な同じデザインの物だ。

 

 彼女は母、と言った。

 

 夫にチェーンを渡した宮野さんは10年以上前に亡くなったはずだ。

 

 つまり、このチェーンは彼女からしたら母の形見に当たるものだったのかもしれない。

 どうしよう、なんて気持ちが浮かぶよりもまた宮野さんに救われた。

 そう気持ちが一杯になってしまった。

 

 宮野さん親子二代に、伊達家は親子二代救われた。

 

 ああ、感謝をしてもしきれない。

 

 呼び止めることもできず去っていった背を見ながら頬には音もなく涙が伝った。

 

 

 〇

 

 

「DC世界物騒すぎ、本編終わってるんだよね」

「まぁ、工藤新一探偵事務所開いてそれで食ってるしそれじゃね」

「え、今そんなんになってるの!?」

「そーなんだよ、米花町駅前の雑居ビルのワンフロアにホームズ探偵事務所って名前で事務所があんの。せやかてと大怪盗と裏切りそうな声でやってるんだって」

「3/4組かぁ…」

「事件引き寄せそうな匂いぷんぷんするでしょ」

「絶対米花町の駅前には足運ばない」

「それがいい、ってどこ行くの」

「いや、帰るんだけど」

「病院行くよ」

「へーきだって」

「うっさい、私をウソつきにしたく無ければ来なさい」

「…はーい」




そろそろふりゃーと合わせたいのにッ!
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