【都留岐涼花元カノ概念】トレーナーと再会していしまった……   作:のるどすとりーむ

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【都留岐涼花元カノ概念】トレーナーと再会していしまった……

 運命というのは本当に不思議なもので、「縁を切った」つもりの人でも再開してしまうことがある。

 

「はあ……」

 広告代理店に務める都留岐涼花もまたその運命を辿った人間の一人である。彼女はデスクに置いてある書類を何度も横目にしながらため息をつく。彼女の悩みのタネはその資料の、名簿にある「ただ一つの名前」だ。

 

 そんな彼女の様子も知らずに、とあるウマ娘が元気にオフィスの扉を開けてやってくる。

「涼花さんっ!UAFの計画がまとまったって本当ですか!?」

 子供のような純粋無垢な瞳をしながら、少し興奮気味に言うウマ娘──ソノンエルフィーだ。

 

「ええ、コレがその資料よ」

ホチキスで留めてある紙の束を渡す。

 

「ありがとうございます!……ふむふむ」

 

 エルフィーは一枚一枚丁寧に見ながらページをめくっていく。

 

「……ん?」 とあるページで彼女の手がまった。

 

なにかおかしな点でもあったのか、と涼花が横から覗き込む。

その資料のページはちょうど先ほど涼花が頭を抱えていた名簿だった。

(もしかして私と彼の関係が?)と少し心配になった涼花であったが、エルフィーは少し驚きと興奮が混じったような声で話した。

「このトレーナーさん、たしか今注目の人ですよね!?」

 

「そうなの?」

 

 涼花自身、仕事の関係上今注目の有名人や、ウマ娘、そして彼女らに関わる人物は記憶しているつもりだったが、彼のことは一切記憶になかった。

 

「ええ、確か……『凄腕フィクサー』だって」

「はい?フィクサー?」

 

「そうですそうです」

 フィクサーとは、黒幕のことなどを指す言葉であるのだが……

 

「なんでも、今活躍しているウマ娘の殆どは、彼が関わっているとか、いないとか」

 

 ここで涼花はなぜかトレーナーが昔語っていた夢について思い出した。

『俺は、【すべてのウマ娘が輝けるようにする】そういうトレーナーになりたいんです』

 

 まるで、その思い出を直視しないようにするためなのか、少し目線を外にそらす涼花。

 特段悪い思い出が彼にある訳ではないが、どうしても拒絶するような素振りを見せてしまう。

「……そう」

 

「涼花さん、この人たちと会うのが楽しみですね!」

 

「ええ、そうね」

 遠い昔を見るようにして、微笑んだ。

──

「本日、進行役を務めさせて頂きます──」

 数日後、涼花らは、その名簿の人々と対面をした。

「今回のUAFにつきまして──」

 トレーナーの姿もあるが、直視することはできない。

 

 しばらくすると、彼が発言する番になる

「はい、えっと……トレセン学園でトレーナーと、トレーナーの代表をしています、──と申します」

 

(あの頃から、だいぶ出世したみたいね)

 出会った頃は、新人トレーナーを名乗るのもおこがましいくらいに、未熟であったが、しばらく見ないうちに高い地位まで上り詰めていた。

 彼が出世街道を歩いていることに対して安心する感情もあるが、一方であの頃とはだいぶ変わってしまった彼に驚きを隠せない感情も、彼女の中にあった。

──

「──本日はありがとうございました」

 

会議はすぐに終わった。あくまでも今日はただの顔合わせの予定だった。なのですぐに解散して、元の持ち場に戻るはず、だった。

 

「えっと、涼……都留岐さん」

 

「……はい」

 

トレーナーが気まずそうに話しかける。昔のクセで下の名前で呼びそうになったところを慌てて修正する。声のトーンも少し下げている。涼花は一拍置いてからそれに返事をする。彼から話しかけられるのが少し意外だったからだ。

「その、これから飲みに行きませんか?」

 

「……はい……?」

 

──

「……ねえ、なんで私を誘ったの?」

 居酒屋で囁くようにして話しかける。誰も回りにいないためか、かつて彼と話していたときの砕けた口調になっている。

 

「それは……まあ、お互いに近況報告がしたくて。ほら、俺達変な形で別れたわけだし」

 トレーナーからの言葉に一瞬怯む涼花。「別れた」という言葉が、今更にして彼女に深く突き刺さる。

 

「そうね……私は見てのとおりよ、そっちは?お見合い、大丈夫だったの?」

 

「お見合いって?」

 まるで何のことか分からないように首をかしげるトレーナー

 

「ハァー……ほら、別れる前に、『親が勝手にお見合いして、しかも断れないようにしてきてる』って言ってたじゃない」

(あれをきっかけにして、段々と合う機会が減って……最後に私から……というような感じだったはず)

「ああ、あれね。普通に断ったけど」

 

「ええ!?」

素っ頓狂な声を上げる涼花。

(お見合いが成立しそうだから、彼に迷惑をかけないために別れたのに……)

 

「あんなに悩んでいたのに?」

 

「まあ、親に恩があったから断りづらかったけど、どうにか断れたよ。お陰で親父から勘当を言い渡されたけどな!」

 ハハッと気楽に笑うトレーナー。

 

「……なんでそんなことを?」

(たしかお相手はすごいお金持ちの令嬢とかだったハズ……)

 

「……」

 先ほどまで饒舌だったトレーナーがピタッと、喋らなくなる。

 

「……?」

 

「……(今なら言えるか)……君と結婚したかったからかな。まあ今となっては無理な話だけど」

 

 

「えっ……」

 トレーナーの告白に、固まる涼花。

 

「まあ、お互いこれからも仲良くしていこうよ。最初の頃の友達?に戻ってさ」

 

「……うん」

 彼女には、その二文字の返事しかできなかった。

──

店の前で向かい合う。

「じゃあ、今日はありがとうね」

 

「うん、こちらこそ……あと最後に」

 

1歩近づいて、トレーナーの耳で囁くように言う。これが最後の悪足掻きかのように。

 

「『無理な話』じゃなくて、『まだあるかもしれない話』にしてほしかったな」

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