え?お前が怪獣8号?ウケるんだけど   作:狭間です

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 遅れて申し訳ございません。色々と忙しくなかなか続きを書けませんでしたが、とりあえずゆっくり再開致します。

 前回のあらすじ。鳴海が相手にしていた9号の分体は、恐るべき学習能力により徐々に戦況を変えようとしていた。しかし、鳴海にはまだ隠された能力が残っていた。


第十二話

 

 

 

(おかシい)

 

 あくまでも怪獣9号の分体とはいえ、本体と遜色ない戦闘能力を持っている。それをもってすれば、目の前に立つちっぽけな人間1人など造作もなく肉塊に出来ると思っていた。

 

(見切ったはずの攻撃が、躱せない……?)

 

 しかし、現実はそうではない。

 

 次々に繰り出される攻撃を避ける間もなく食らってき、身体の至る所に風穴が空く。

 

(何が起こってイるんだ、速度が上がったのか……?ーーいや、違う、ボクの動く先に攻撃している!?)

 

 

 【Rt-0001】

 

 ナンバーズ1、怪獣1号の網膜から造られた識別怪獣兵器。1号は未来視の怪獣とも呼ばれており、その能力は生物の運動時に脳から発せられる信号を視覚化する事で本人の体が動く前に察知することが出来る。記録によれば回避不能の攻撃を放つ恐るべき怪獣だったと記されている。

 

 コンタクトのような形状に加工されたそれを装着することで、適合した装備者は怪獣1号と同じ能力を得ることができるのだ。

 

 

「視えたぞ」

 

 9号の視覚をつかさどる感覚器官を破壊すると、その死角から鳴海は勢いよく飛び出す。

 

「全ての信号が必ず経由する一点、そこがお前の核か」

 

(ダメだ、学習が追いつかなーー)

 

 

《隊式銃剣術二式 斬幕砲火》

 

 核と急所を的確に射撃し、ついでとばかりにその身体を三枚おろしにして見せた鳴海の後ろで、重く鈍い音を立てながら9号が地面へと崩れ落ちた。

 

 

 

 

「終わった……か」

 

 管制室から聞こえてくる本獣撃破の報告と、戦場の雰囲気でキョウは状況を察していた。

 

 本獣を撃破。実に素晴らしい。だがしかし、管制室の連中や戦場の至る所から勝鬨のような歓声が上がっている事に対してはイラつきを隠せない。

 

『「まだーー……」』

「まだよ!!」

 

 思わず口に出たキョウと長官の通信を遮ったのは、目の前に居た少女だった。

 

「まだ余獣が残ってる!!引き続き殲滅行動に移行します!!」

「……やるじゃねぇか、嬢ちゃん」

 

 戦斧を失い、全身に傷を負いながらも、キコルは拳銃一つで余獣の対処に走っていった。本獣を斃しても慢心せず、自らの行動で戦場を鼓舞するその姿に、キョウはやはり彼女の母親の姿を重ねていた。

 

「堤副隊長、そんな身体で……!早く前線から離れてください!」

「馬鹿言え、お前らが立ってる中で俺だけ膝折って良いわけねぇだろ」

「ですが……!」

「こいつら相手なら四肢が全部使い物にならなくなって、ようやくイーブンになるかどうかだろうよ」

 

 身体能力強化のほとんどを生命維持と治癒に使ってもなお、キョウは余獣程度に遅れはとらない。一般隊員もその戦いぶりから自らの発言が不要なものであったと気付き、直ぐに謝罪し戦闘へと戻って行った。

 

 

『全余獣討伐完了!』

 

 キョウが持ち場の余獣を狩りつくしてから程なくして、全隊員に向けて通信が入る。

 

『品川討伐作戦、完遂です!!』

 

「っふぅ……」

 

 管制室からの号令で、ひとまずの終了を迎えたこの作戦。そう、完遂という言葉を聞いたのにも関わらず、ひとまずと表現したのにはわけがあった。

 目の前で拳を合わせ、達成感を分かちあっているカフカとキコルの後ろ姿を見ながらキョウは考える。

 

『鳴海、堤、日比野……それからキコル』

 

『よくやった』

「ーー……!!」

 

『引き続き住民保護を最優先に、現場の安全確保だ』

「「了!!」」

 

 長官からの思いがけない賛辞を聞いた者、特に今まで褒められる事がほぼ無かったキコルはその喜びを噛み締めているようだった。

 

 そんな微笑ましい光景を前にしても、キョウと鳴海の顔は優れない。

 

「キョウさんも感じますか」

 

 作戦を終えいつもの口調に戻った鳴海が口を開く。

 

「俺とお前の考えてることが同じかは分からねぇがな」

「奴は、君を殺して強大な怪獣の力を貰うと言っていた。殺す、ってのは分かる。だが後半の意味が分からないんです」

「……あぁ」

「奴の目的は一体なんだったんだ」

「俺のはちと別だな」

「?」

「コイツ」

 

 そう言ったキョウは、腰に装備している怪獣兵器に手を置く。

 

「本体と戦わせろってあんだけうるさかったこいつが、その言葉以来なんも声出さねぇんだよ」

「はぁ」

「決してお喋りって訳でもないんだが、メインディッシュを前に黙り込む程大人しいやつでもないはずなんだがな……」

「……まさかーー」

 

ビーッビーッビーッビーッ

 

「「!?」」

「!!」

 

 

 突如鳴り響く警戒音。

 

 

 

 

間に合っタか

 

 

 

「!?」

「残念……ダ、怪獣8号。「君を殺ス」ことは叶わ……なかった」

 

 声の主は、先程斃したはずの怪獣9号。

 

「あの野郎しぶてぇな、トドメをーー」

「だが、もウ一つの目的は果たさせてもらう」

「何を言って」

 

 

あー……見つけたぞ、適合者と怪獣2号

 

 

「は?」

「強大な怪獣の力、貰っていくよ」

 

 目の前から発せらる声が、何故か管制室からも聞こえる。その言葉を最後に身体を溶かして行く9号を見て、カフカは恐ろしい事実に気付く、気付いてしまう。

 

「キョウ兄、鳴海隊長!!コイツ本体じゃない!!」

「「「!」」」

 

 それを皮切りに、全員が一斉に管制室の方角へと走り出す。

 

 

 

 

「総員退避だ!!」

 

 功の号令で蜘蛛の子を散らすように逃げる職員たち。その中の一人に向かい無表情で攻撃を放つ怪獣9号。

 

「!」

 

 その攻撃に自身の身を挟み、すんでのところで防御を行う功。

 

(狙いは2号の力か……渡す訳にはいかん……!)

「伊丹、乃木坂、皆の避難と統率を頼む」

「ふざけるな!俺も戦うぞーー……っ!」

 

 そんな言葉を、隣に立っていた伊丹が制す。

 

「邪魔になる、歯痒いがそういうレベルの相手だ」

「っ!!」

 

「こんなに早くβとγがやラれちゃうとはなぁ、脱皮前のボクくらいは強かっタはずなんだけど」

 

 どこからともなく管制室に現れ、人間のような姿に変形した怪獣9号はコキコキと関節を鳴らしながら身体の調子を確かめるように言った。

 

「先手を打ったつもりだったのだがな」

 

(お前の進化は更に想像の上だったか)

 

 

ゴパァッッッ!!!

 

 

 功と9号の拳が衝突する。

 

 

(第3部隊の報告では、9号のフォルティチュードは8.5……)

(今の私でもなんとか対応可能なレベル……っ!?)

 

ドゴォォォォオッ!!

 

 再度響く轟音。しかし、地に倒れ伏しているのは怪獣9号ではなく功の方であった。

 

「……あれ、ボク強くなりすぎちゃっタかな?」

 

 自らの力の成長に喜ぶ訳でも戦いを楽しむ訳でも無く、ただひたすらに淡々と、9号は事実を確認するように呟いた。

 

 出来上がった小さなクレーターの中心には、衝突させめ左腕を兵器ごとひしゃげさせている功が居た。

 

(いかん……!これは、想定の遥か上ーー……!!)

 

 他の職員を避難させながらも行く末を見守っていた伊丹は、最悪の結末を幻視した。

 

 

 

 

「それでも……」

 

「!」

 

 死にかけの虫にトドメを刺すかの如く、無慈悲に振り下ろされる9号の拳は、少なくとも今は功に届くことは無かった。

 

「それでも貴様は、今日この場で私が始末する」

 

 オールバックで固めていた髪型は崩れ、破壊された左腕はもう力が入らないのかダラりと垂れ下がっている。

 

 

 それでも、日本の防人として、そして一人の父として、功は立ち上がった。

 

 

 

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