正義の不在証明   作:カバー

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ハナフダの影

 

 

 

セリーヌ視点

 

 

 

そして私は無理やりたしぎさんを立ち上がらせると、(それでもずっと平謝りしていた。)早々にローグタウンの海軍基地へと向かった。その一室で、スモーカー大佐は石積みをしながら葉巻をふかして私達を待っていた。

 

私達が扉を開けた途端、彼は私達を怒鳴りつけた。

 

「遅えぞ!何ちんたらしてやがった!」

 

「はっ!申し訳ありませんでした!少々トラブルがありまして…。」

 

 

私の敬礼しての謝罪にスモーカー大佐はため息をつくと、私達を一睨みして呟いた。

 

「どうせまたお前だろ、たしぎ。街の案内に小一時間もかけてんじゃねえ!」

 

「す、すみませんスモーカー大佐!」

 

…どうやらたしぎさんが遅刻するのは割と珍しくもないらしい。まあこの性格だとね…。でもこうも初日から怒鳴られるとは思わなかったな。かとりも同様らしく、若干萎縮しているのが見てとれた。

スモーカー大佐は椅子から立ち上がると、私とかとりに向かって言った。

 

「基本的にローグタウンの海賊どもは今まで通り俺が処理する。お前らはその前の、付近の海域の海賊船を処理しろ。軍艦があれば問題ねぇだろ。」

 

「ただ…俺はどーも…力量の分からん相手にそこまで任せていいのか不安でもある。おまけにたしぎより若いとくるとな。」

 

…直球だが分からないでもない。むしろ、ここまで露骨な方がやりやすくて助かる。今までだと表に出さずに舐められることも少なくなかった。そういう類の手合いを見返すには苦労したものだ。

 

だがかとりにとっては不服だったらしい。ムッとしたようで淡々と敬語で言葉を返した。

 

「…私達はガープ中将に任される程度には優秀だと自負しています。それに、偉大なる航路の海賊ともやり合ってきました。それでは不服ですか?」

 

「口では何とでも言えるぜ。訓練場に来い。すぐだ!」

 

そう言って彼は海軍将官の正義の二文字のコートを羽織ると、私達を連れてだだっ広い訓練場へとやってきた。

射撃用の的が壁際に貼られており、訓練用の人形もある。

その中央部に私達を呼ぶと、スモーカー大佐はとんでもないことを提案した。

 

「たしぎと模擬戦して見せろ。それが一番手っ取り早い。」

 

「えっ!スモーカーさん、本気ですか?」

 

たしぎさんの驚きの声に、スモーカー大佐は淡々と答えた。

 

「俺が冗談を言ったことあるか?」

 

「えーと…多分ないです。でも、お二人となんて…。」

 

そう躊躇うたしぎさんに対して、かとりは不敵に笑って強気に言った。

 

「あら。上等じゃない。要はたしぎ伍長に勝てばいいんですよね?」

 

「ま、そうなるな。」

 

スモーカー大佐はそう言うが、私はもっと欲張りたくなった。私が欲しいのは強い人間との戦いだ。ならば…。

 

「…いいですけど、もっといい案がありますよ。」

 

「ほう。言ってみろ。」

 

「私は貴方とやりたい。せっかくの機会なら強い相手とじゃないと意味がない。」

 

 

 

たしぎさんが私の強気の発言に思わず息を呑む音がした。スモーカー大佐は黙っていたが、ニヤリと笑って答えた。

 

 

「子生意気なガキは嫌いじゃねえ。いいだろう。ならお前は俺とだ。」

 

すると、かとりが不満げに非難の声を上げた。

 

「ちょ、ずるいです!私だってそういう機会なら…!」

 

そんな私達を、たしぎさんはポカンとした顔つきで眺めていた。そんなたしぎさんにスモーカー大佐は近寄ると、耳元で呟いた。

 

「…上に行ける奴は決まってこういうハングリーさを持ってる。たしぎ、お前はただ黙って見てるだけか?」

 

たしぎさんはその言葉にはっとした顔をした後、自分の頬を叩いて言葉をあげた。

 

 

 

「是非自分もお手合わせ願いたいです!私も腕を磨きたいので!」

 

そんなたしぎさんを見つめるスモーカー大佐の瞳には、どこか暖かいものがあった。

その後私とかとりのじゃんけんの結果、かとりはたしぎさんと、私はスモーカー大佐と試合することになった。

 

赤い長髪を結んだかとりと、対照的に黒髪の短髪のたしぎさんが向き合う。二人の手には訓練用の木刀があった。流石に真剣でやるわけにはいかない。

 

 

 

「では…いきますっ!」

 

たしぎさんが木刀を上段に構えて切りかかった。

それをかとりは最低限の動きで躱す。

 

「ぐっ…まだまだ!!」

 

 

 

たしぎさんは上下からかとりに木刀を打ち込むが、その全てが最低限の動きで躱される。私の隣で試合を眺めていたスモーカー大佐は感心するように呟いた。

 

 

 

「…驚いたな。孔雀の覇気か?」

 

「ええ。かとりの本分は狙撃ですけど、ガープじい…中将にみっちり仕込まれてますから。」

 

 

 

やがて攻め続けるたしぎさんの動きが鈍くなってくる。その隙が生じた瞬間、かとりは木刀をたしぎさんの顔面に向かって放り投げた。

 

「ッ!?え!?」

 

咄嗟のことに動きが止まったたしぎさんに、かとりは一気に詰め寄ると、首を両手で羽交締めにし、動けなくした。

ニヤリと笑ってかとりは宣言した。

 

「私の勝ちね。」

 

「……参りました。」

 

 

 

その結果を受けて、訓練場の周りで眺めていた海兵達は歓声を上げた。スモーカー大佐は大気をついて葉巻をもう一本吸うと、淡々と言った。

 

「情けねえ。剣以外の選択肢がまるっきり見えてなかったなありゃあ。流石に戦い慣れてやがる。」

 

「…じゃあ次は。」

 

「ああ。…お望み通り、相手してやるよ。」

 

 

 

…私とスモーカー大佐が二人に変わって中央で睨み合う。スモーカー大佐のことは海軍本部で聞いたことがある。陰口だったけど。曰く、野犬。

上層部に噛み付くこともしょっちゅうで、そのせいで大佐以上の実力がありながら出世できずにいると。要は、世渡り下手の男、というのが聞いた話だった。

…逆に言えば、実力は大佐の中でも上位ということだ。彼を超えれば、大佐級よりまず強いということになる。

…いい機会だ。自分を試す絶好の!

 

 

私は先手必勝とばかりに剃で一気にスモーカー大佐の懐に入る。すると次の瞬間、スモーカー大佐の腕が煙となって私を掴み上げた。

 

「自然系の悪魔の実…!」

 

私は自分を掴み上げている煙の腕を武装色の覇気を纏わせた腕で殴りつける。たまらずスモーカー大佐は腕を離した。

 

「なんだ…!煙の俺を殴った!?」

 

「まだまだ!!」

 

私はさらにスモーカー大佐に接近して、打ち慣れたフォームで拳骨を放つ。

 

「ッ!舐めんじゃねえ!!」

 

スモーカー大佐は十手で私の拳骨を受け止めた。衝撃で二人とも仰け反る。

…なかなかの威力だ。

私は手招きしてスモーカー大佐を挑発する。

彼はそれに乗って腕を煙に変えて伸ばし、かなりの速さでパンチを繰り出してきた。

 

「ホワイト・ブロー!!」

 

「鉄塊!!剛!!」

 

私は鉄塊と武装色の合わせ技でスモーカー大佐の拳を腹で受け止め、両手で腕を掴んだ。

 

「せやあっ!!」

 

そして一気に一本背負いでスモーカー大佐を放り投げた。空中でスモーカー大佐は体勢を立て直し、私に向かって煙に変身して空を飛びながら突っ込んできた。

私とスモーカー大佐の拳が激突する。

 

「…やるじゃねえか!」

 

「鍛えてますので!」

 

また距離をとって睨み合う。そして互いに動こうとした瞬間、訓練場に海兵の一人が慌てた様子で入ってきた。

 

「スモーカー大佐!海賊が処刑台前で暴れています!警官隊から至急応援に来て頂きたいと!」

 

 

 

その報告に、スモーカー大佐はため息をついて十手を仕舞い、戦闘体勢を解いた。

私も少し残念に思いながらも戦闘体勢を解く。

ぶっきらぼうにスモーカー大佐は私に呟いた。

 

「…勝負はお預けだな。驚いたぜ。もう並の佐官クラスの実力はあるんじゃねえか?」

 

「私の目指す先は、もっと先の場所ですから。」

 

 

 

そう私が言葉を返すと、スモーカー大佐は私にニヤリと笑って、その場の全員に指示を出した。

 

「よし。お前ら出るぞ。海賊どもをまた大人しくさせなきゃな。たしぎィ!何ぼさっとしてる!刀持ってこい!」

 

「は、はい!すぐに!」

 

そう言うと慌ててたしぎ伍長は駆け出した。…なんかまた転んでるけど。

私とかとりも、成長の実感を噛み締めながら街へと駆け出すのだった。

 

 

 

 

*********************

 

 

 

その頃、海軍本部の畳の敷かれた厳粛な雰囲気の作戦会議室で、海軍元帥センゴクと、海軍大将青キジ、そして中将数名が真剣な顔つきで、アフロヘアのブランニュー准将の説明を聞いていた。

 

「三週間後に、天竜人であられるプルミング聖が参加される予定の世界政府加盟国のレイーキナ王国の…あー…"職業案内所"兼オークションに関してです。」

 

職業案内所という言葉に青キジは一瞬嫌そうな顔をしたが、そのままブランニューは話を続けた。

 

 

「やはり、ウオウオの実古代種であるダンクルオルテウスの実がメインであることが分かりました。」

 

その言葉に、センゴクが淡々と説明した。

 

「つまり、あの海賊ハナフダが狙っている"古代種"の悪魔の実だ。…そして、面倒なことにプルミング聖のお目当てでもある。」

 

青キジ大将はどこか面倒そうなセンゴクに、同じくらい気だるそうに問いかけた。

 

 

「ハナフダって言やァ、七武海の称号剥奪以降に確か中将の一人が返り討ちになってるっていう…。聞いた感じ、随分腕を上げてるらしいっスね。」

 

 

その青キジの指摘に、センゴクは忌々しそうに呻いた。

 

「敗北があの男の執念に火を付けたのだろう。…厄介なことにな。今回の悪魔の実も狙っている。オークションにも姿を現すだろう。…いや、下手すれば襲撃するかもしれん。」

 

ブランニューが淡々と説明を挟んだ。

 

 

「既にレイーキナ王国の輸送船が何隻か襲われています。勿論、ハナフダにです。探ってはいますが、隠れ方が巧妙で、オークション当日までに探し出すのは…。」

 

 

 

青キジはますます面倒そうにため息をつくと、頭を掻いて呟いた。

 

 

「要は、元七武海から天竜人を護衛しながらオークションを成功させろ…ってェことでしょう?面倒くせェ…。」

 

センゴクはそんな青キジを人睨みして黙らせると、その場の全員に言った。

 

「天竜人を守るのも我ら海兵の義務だ。青キジにはプルミング聖の護衛についてもらう。」

 

「ドーベルマン中将とヤマカジ中将はハナフダの襲撃があれば奴を撃退せよ。海軍の威信にかけて野放しにしてはならん。」

 

「「はっ!!」」

 

 

そして、センゴク元帥は声を張り上げて言葉を続ける。

 

「称号剥奪とはいえ元七武海にこれ以上好き勝手させるのは政府の威信をかけて断固許さん!」

 

「それ故、諸君らと共に任務にあたる海兵にも選りすぐりの者を選んだ。海兵の指揮を取る"釘打ち"イスカ少尉」

 

「青キジ大将の部隊のオールハント・グラント、アント・デ・ボナム、シモイ・ザッパ。」

 

「そして、ガープの孫娘であるモンキー・D・セリーヌ軍曹とかとり伍長。以上だ!」

 

 

 

その面子のリストを見て、青キジ大将は彼らの印象を思い浮かべた。

 

(イスカ少尉は生真面目なかわい子ちゃんだからまあ問題ねェとして…喧嘩っ早いグラントと女好きのザッパねェ…。面倒臭え任務になりそうだ。)

 

 

セリーヌとかとりに、新たな試練が立ち塞がる。

元王下七武海を相手に繰り広げられる死闘

その先に見えるものは、世界政府の闇…。

 

 

 

 

 

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