グラント・ザッパ・ボナム
そしてワンピースNOVELエースのイスカ少尉も登場します。
セリーヌ視点
楽しい時間はすぐに過ぎてしまうもので、翌朝の早朝には私達はルフィにぃ達に見送られて出航した。
そのまま軍艦で凪の帯を通り抜けていけばすぐ海軍本部のあるシャボンディシ諸島付近に辿り着く。
先に電伝虫で帰還連絡をしておくのも忘れない。
遠くで大型海王類の顔が見えると割と本気で怖いけども、じいちゃんは気にしていない様子だった。
「ぶわははは!いざという時には海王類と喧嘩しながら泳げばいいわい!」
…それできるのじいちゃんだけだと思うの。
そんなこんなで正義の門が遠くに目印のように見えて、見慣れた海軍本部の港に停泊すると、立派な顎鬚を生やし、葉巻を厚い唇で咥えているヤマカジ中将が駆け寄ってきた。
「ガープさんアンタ遅いよ!何かあったかと思ってヒヤヒヤしたよ。」
ガープじいちゃんは笑いながら煎餅を頬張って答えた。
「お前に心配されるほど落ちぶれちゃおらんわ!召集とはなんじゃい?」
ヤマカジ中将は参ったなこの人はと言わんばかりに頭を掻くと、淡々と答えた。
「ガープさんは別件でセンゴク元帥から。そこのアンタの孫娘とかとり伍長はこっちで預かるよ。他の兵達とは別でね。」
「ほう?何の任務じゃ?」
ガープじいちゃんが能天気に尋ねると、ヤマカジ中将は面倒そうに答えた。
「何でも…海賊ハナフダ関連の任務らしい。青キジ大将まで出張ってる。詳しい話はァこれからだよ。」
そのハナフダという単語を出した途端、私の隣に居たかとりの様子が変わった。明らかに殺気を醸し出している。
「ハナフダ…?元七武海のハナフダですか!?」
その言葉に、ヤマカジ中将は困惑しながらも頷いた。
「あァ、そうだ。」
「………!!」
ガープじいちゃんはじっとそんな様子のかとりを見つめると、真面目な口調で諭した。
「かとり。分かっておるたァ思うが、任務に私情は持ち込むなよ。早死にするぞ。」
「………はい。分かってます。」
そのやり取りの意味が分からなくて、私は困惑する。すると、ガープじいちゃんはズカズカと歩き去って行った。私たちもヤマカジ中将に連れられて会議室へと向かった。
和室の前まで来るとヤマカジ中将は襖を開けた。すると、出入り口の奥の方の一番上座には青キジ大将が胡座してこちらを向いて座っていた。
その横には顔中に傷だらけの歴戦の風格を漂わせるドーベルマン中将が座っている。
青キジ大将はこちらを見るとため息をついて言った。
「あァ…揃ったか。お前ら遅いじゃないの。待ちくたびれちゃったよ。」
「も、申し訳ありません!」
私とかとりが敬礼して謝罪すると、青キジはそういうの良いからと、私たちに座るよう促した。
ヤマカジ中将はドーベルマン中将と同じく、青キジ大将の横に座った。
私達は空いている下座に座る。冷静に見渡すと、私達の他にも数名海兵が呼ばれているのが分かった。
赤と黒のツートンカラーのモヒカンをした小柄のガラの悪そうな少年に、ドレッドヘアの色黒なゴツい大男。…腕の長さからいって手長族だろうか。
後は紅色のショートヘアの、短いホットパンツを着た美脚が美しい女海兵さん。コートを羽織っていることから将官だろうか。
後は白髪頭の長身の背中に刀を二刀背負った男…なんかさっきから凄いこっちを見ている気がする。
「それじゃ、説明を…あァー…ドーベルマン中将よろしく。」
そう気怠げに説明をぶん投げた青キジ大将だったが、慣れているのかドーベルマン中将は淡々と説明し始めた。
「近々、レイキーナ王国で職業案内所と、オークションが行われる。」
「諸君らも聞いていると思うが、そのオークションの商品の一つであるウオウオの実モデル・ダンクルオルテウスを狙い、ハナフダの被害が頻発している。」
その説明に、ガラの悪そうな小柄な海兵は腕を鳴らして言った。
「要は、その元七武海をぶちのめしてやろうって話か。いいね。燃えてきた。」
ドーベルマン中将は冷たい目で説明の途中に喋った彼を見て、淡々と答えた。
「自惚れるな、グラント軍曹。貴様程度の力で叶う相手ではないわ。」
「あァ!?」
その言葉に立ち上がったグラント軍曹を、青キジ大将が鋭く制した。
「グラント、上官に向かってェその口の聞き方はないでしょ。座れ。」
「……すみません、クザンさん。」
流石に大将に責められて強気で居られなかったのか、彼は大人しく座って黙った。ドーベルマン中将は説明を続ける。
「そのオークションに、"天竜人"であられるプルミング聖が参加なされる。かねてからレイキーナ王国の王と親交が深い縁もあって、大いに楽しみにしておられる。」
天竜人。聖地マリージョアに住む、世界政府を作ったとされる20の王の血を引き継ぐもの達。世界貴族と呼ばれる彼らは、下々の人間を見下し、特権階級としての生活を優雅に送っていると聞く。
ガープじいちゃん曰く、「人を人と思わぬゴミクズ」
…できれば関わり合いになりたくないな。
「よって、何としてもオークションは成功させねばならない。青キジ大将にはプルミング聖の護衛をして頂く。」
「俺とヤマカジ中将がその悪魔の実を含めたオークションの品々を警護する。そして貴様らは…」
「先んじてレイーキナ王国に潜伏し、怪しげな動きがないか調べろ。オークション当日には、警護に協力してもらう。」
そこまで説明し終わると、ドーベルマン中将は赤毛の女将校の方を向いて声をかけた。
「イスカ少尉!貴様に彼らを指揮してもらう。期待しているぞ。」
「はっ!」
その綺麗な女将官、イスカ少尉はビシッと綺麗な敬礼をした。その一連の流れを見ていた青キジ大将は、話は終わりだと言わんばかりに立ち上がると、私たちに声をかけた。
「まァ、あるかも分からん動きを調べるのも面倒とはァ思うが、気合い入れていけよ。…ザッパ、グラント、あんまり迷惑かけるんじゃねェぞ。」
「どういう意味ですか!?」
グラントは困惑した様子で叫んだ。
「心外…。」
白髪頭のザッパはぼそっと呟いた。
「んじゃ、後はァ頼むわイスカ少尉。俺と中将達はまた別件の仕事に行くから。よろしく頼むわ。」
そう言い終わると、青キジ大将達は襖を開けて去って行った。
赤髪の女将校、イスカ少尉は、立ち上がると私達を見て改めて挨拶した。
「それじゃあ改めて自己紹介しないとな。私はイスカ少尉だ。…お前らの命を預かることになる。よろしく頼むぞ。期待している。お前達の名前も聞かせてくれ。」
「はっ。」
その自己紹介を、グラントは鼻で笑った。ギロリとイスカ少尉がグラントを睨んだ。
「何がおかしい。」
「別に?ただ俺をアンタみたいなのが指揮するって思うと片腹痛くてなあ。俺の方がずっと強いんじゃねえの?」
その不遜すぎる言い草に、イスカ少尉は端正な顔を歪めた。
「なっ…上官に向かってなんて言い草だ!」
「…ソウダゾ…。私の"愛しの"釘打ちイスカ氏に向かってなんて言い草だ!!」
白髪頭のザッパが大声でグラントに向かって叫んだ。…なんか急に声デカくなるなこの人…。
というか今とんでもないこと言わなかったか?
空いた口が塞がらないイスカ少尉に向かって、ザッパは畳み掛ける。
「ああ!私のアモオオォレ!!貴女のご活躍は常に拝見していましたよ!その麗しい顔立ち!活発さが溢れるショートパンツから出た御脚!!」
「どうか是非私と結婚…してください!!」
その凄まじい勢いの告白にイスカ少尉は俯いた。
あ、肩振るわせてる。やばい奴ら多すぎたな…かわいそ…。
「レガ…」
「へ?」
「それが上官に対する態度かあああああァ!!!」
イスカ少尉は凄まじい勢いの拳骨を二人の頭に浴びせた。…なんかじいちゃん並みの迫力に見えたのは、その怒りのせいか。
「ぐあっ!?」
「ぎえっ!?」
グラントとザッパは頭を抱えて呻いている。息を整えたイスカ少尉は、ため息をついて呟いた。
「いい加減にしろよクソガキ共が…。自己紹介だって言っただろ!?」
すると、それまで黙っていた大柄な手長族の男が手を挙げて自己紹介した。
「あー…なんかうちの二人が済みませんね。俺はボナム伍長です。この二人とは青キジ大将の隊で同じで…六式が得意です。」
「ザッパの奴はこう見えて剣技が得意で、グラントの奴はまあガッツがあります。」
その自己紹介に、イスカは感動したような顔つきで答えた。
「おお!まともだ…まともな部下がいる!よろしくなボナム。色々とほんっっとによろしくな!」
「え、ええまあ…。善処しますよ。」
そんなこんなで残るは私達だけになった。イスカ少尉が頭を摩って恨みがましく見つめるグラントと、まだ熱い視線を送るザッパを意図的に無視して私に声をかけた。
「お前達の自己紹介もお願いできるか?」
「はい。私はモンキー・D・セリーヌ軍曹です。ガープじいちゃんの指導を受けてきて、武装色の覇気と拳骨には自信があります。」
ガープじいちゃんの名前を出すと、その場の空気が変わった。ボナムが口笛を吹いて感心したように尋ねてきた。
「ガープって…あのガープ中将か!青キジ大将の師匠でもあったっていう!こりゃ頼もしいな!」
すると、グラントが鼻で笑ってまた答えた。
「へっ。にしては強そうに見えないけどな。ガキじゃねえか。」
すると、イスカ少尉が冷たく切り返した。
「お前もガキだろ。」
「なっ!?」
グラントは衝撃を受けたように固まって声も出ないようだ。実際、彼は10代前半程度の年齢に見える。私と同年代ぐらいだろうな。
「で、その隣のお前は…」
そう言ってかとりの方を見るが、かとりは心ここに在らずといった様子で気づいてもいないようだ。私が慌てて肘でこつく。
「かとり…かとり!」
「…んっ?何?」
まだぼーっとした様子だ。私は慌てて現状を耳元で説明する。
「上官に自己紹介!早く!」
「えっ?あっ!す、すみません。私はかとり伍長です。見聞色の覇気で敵の位置を見分けるのが得意です。」
「ほお、二人ともその歳で覇気使いか。大したものだな。…よろしく頼むよ。」
イスカ少尉は満面の笑みで私達に微笑みかけた。その笑顔があんまりにも綺麗で、私は思わず見惚れてしまう。すると、それまでまた黙っていたザッパが叫んだ。
「赤髪ツインテールのツン系美少女に銀髪の丁寧美少女!おお!私の!アモオォ!「やかましいわ!!」」
イスカ少尉がザッパが言い終わる前に彼の頭をまた叩いた。…なんだか賑やかなメンバーでの任務になってしまうようだ。
「なんか…みんなキャラ濃いね。かとり。」
「えっ?そ、そうね。……。」
私は彼らに目を取られて、気づかなかったのだ。かとりがこの時思い詰めていた原因を。腹に抱えた憎しみを。
その結果を、私はこれから目の当たりにすることになる。