オリキャラは前編通して三人から四人出すかもしれません。
そこまで増やす予定はないです。
セリーヌ視点
唐突だが、7歳にして私は素晴らしき故郷であるフーシャ村を去ることとなった。
理由は二つある。
ガープじいちゃんが、ルフィにぃがシャンクスおじさんに憧れて海賊になると言い出したので、凄まじく怒った。これが一つめの理由。
それはもう怒った。
げんこつの雨が降った。
その結果、ルフィにぃはコンゴ山の山賊に預けられることとなった…。なんで?ほんとになんで?
海兵にしたいなら一番やっちゃダメだと思ったんだけど。私がそう訴えると、ガープじいちゃんは言った。
「それぐらいの逆境でなければ、ルフィの根性は叩き直せん!」
聞く耳を持っていなかったじいちゃんは、そう言ってルフィにぃを引っ捕まえて山へと連行していった。
「ちくしょう!覚えてろじいちゃん!セリーヌはどうすんだよ!?」
「セリーヌは…わしが引き取る!」
はい。理由その二です。
ガープじいちゃんがルフィにぃと一緒にいるのは私に悪影響だと言って、急遽私を海兵の雑用にすると言い出しました。
一般兵ならともかく、雑用ならもうこの年でも大丈夫だろうという話だった。
ならルフィにぃもそうすれば良いじゃんと思ったけど、ルフィにぃに雑用は無理だなと考え直した。
…でも、正直これは私が望んだことでもある。
私は力が欲しかった。
つい先日、シャンクスおじさんと山賊のヒグマという男との一悶着で、私はルフィにぃと一緒に山賊に痛ぶられた。
…何もできなかった。痛くて、蹴られて、泣くことしかできなかった。
海賊のシャンクスおじさんが居なかったら、多分私たちは死んでいた。
人を守るには力が要るのだと、その時心の底から実感したのだ。
だから私はじいちゃんに条件をつけた。
「雑用はするけど、ガープじいちゃんが私を特訓して!私は強くなりたい!」
ガープじいちゃんはガハハと笑うと、私の頭をわしわしと、撫でて言った。
「もちろんそのつもりじゃ!お前は最強の海兵になるんじゃ!」
「うん!」
と言うわけで、私はじいちゃんに連れられて海軍本部に軍艦で向かうこととなった。
ここからは、かーむべるとという、海王類だらけの海を通っていくので、よく分からないけど、海王類に気づかれない軍艦が一番速いらしい。
ついにその日が来た。私は緊張しながらも少ない着替えや荷物を纏めて、小さなカバンに詰め込んだ。
港には、村長や愛しのマキノさん、魚屋のお爺ちゃんとおじさん夫婦、果物屋のおじさん、漁師の夫婦などみんなが見送りに来てくれた。
「元気にやれよ!ほら、選別のセリーヌの好きなりんごだ!」
そう言って果物屋のおじさんがりんごを渡してくれた。
「…皆の手伝いを今までよく頑張ったの、セリーヌ。向こうでも元気にやるんだぞ。」
村長のおじさんはそう頭を撫でて笑顔で激励してくれた。
愛しのマキノさんは…何と私をしゃがんで抱きしめて、笑顔で言ってくれた。
「辛くなったら、いつでも戻ってきていいからね。体に気をつけてね。」
何だか胸がじーんとする。目が涙で滲むのを必死に抑えて、私は船の上から笑顔で手を振った。
「みんな!行ってきます!!」
そうして、私は素敵な故郷から、広大な海へと飛び出したのだった。
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それから私たちは小さな島に3回ほど寄って、水や物資を補給しながら海軍本部へと向かった。
かーむべるとという海域に差し掛かると、風がまるでなくて、不気味なほど静かだった。
「セリーヌちゃん!カレーできた?」
「はい!煮込み終わりました!皿に盛り付けます!」
私はその間、船の一番下っぱとして一生懸命働いた。慣れない環境だけど、それを言い訳にはしていられない。
毎日必死に濡れた雑巾で船中を掃除した。
清潔は船上で何よりも大事なものだと本で読んだことがあるので、特に丁寧にやった。
厨房での料理の手伝いも雑用の大事な仕事だ。
野菜の皮剥きから、釣れた魚の下処理。
物資が限られているので、失敗=損害となる状況だ。
神経がすり減られるが、村でのお手伝いの経験が生きた。
何とかそれなりに動けるようになってきたと思う。
そうやって二週間ほどが過ぎると、いよいよ海軍本部が近づいてきたらしい。不思議な海の渦の動きだ。
本で読んだことがある。海軍本部と、世界政府のエニエスロビー、世界最大の監獄であるインペルダウンの三つの機関を繋いで、海に渦ができているのだ。
そしてそれぞれの機関の入り口となるのが…
「うわ…おっきい…!!」
「どうじゃ?驚いたか。これが"正義の門"じゃ。」
…なんて大きさ!世界政府のマークが刻まれた馬鹿でかい扉が、そこにはあった。
軍艦を縦に積み重ねて何隻ぶんだろうか?
めちゃくちゃな大きさだ。
凄い…!こんなものが世界にはあるんだ!
ガープじいちゃんが惚けた驚き顔の私に自慢げに解説した。
正義の門はふしぎな海流の外から海軍本部へと向かっている私達からもよく見えた。あれが開く時はどんな感じなんだろうか。
そして暫くすると、また私は驚いた。
「これが…海軍本部…!」
石造りできた聳え立つようなワノ国風の城壁の上に、まさに城が鎮座していた。
その城下には、無数の住居が立ち並び、軍人達のための街が形成されている。
軍艦はゆっくりと港に近づいてくると、軍人さん達の様子も見えてきた。
広間らしきところで、屈強な巨人の海兵が、何やら立派なコートを羽織った目つきの鋭い海兵達に演説をしている。
無数の軍人達が、訓練をしたり、今まさに戦闘に向かうのか武器を携えて出航している。
港にじいちゃんと降りると、何やらロックな格好をした、一人の黒髪の美しい女性がじいちゃんに近づいてきた。
腕全体にタトゥーがあり、首には棘のついたチョーカーをつけている。
…すっごいおっぱい。シャツからはみ出たおへそがセクシーだ。綺麗な人だなあ…。
「アンタを元帥殿が呼んでるよ。また任務すっぽかしたって?いい度胸してるね全く…。」
「ガッハハ…そうだったかもしれん!どれ、ちょっと行ってくるかの。おお、そうじゃ。ドール、この娘を他の雑用係の所に案内してくれんか?」
そう言ってじいちゃんは私を指さした。女の人…ドールさんは、面倒そうだったが、渋々頷いた。
「このガキは?」
「わしの孫娘みたいなものじゃ。」
「ふーん…。分かったよ。ほら、ついてきな。」
「あっはい!」
ドールさんは淡々とそう言うと、足早に歩き始めた。私は慌ててついていく。
ドールさんは立派なワノ国風の建物の中に入っていく。私もついていくと、中には厳しい顔つきのおじさん達が沢山いた。何やら難しそうな話をしている、
その広間らしきところを通り過ぎて、部屋の一室を無造作にノックした。
そして扉を開けると、そこはどうやら共同の寝床のようだった。
畳張りの部屋に、無数の布団が乱雑に敷かれている。
中では一人の赤い髪色の少女が眠っていた。髪型はツインテールにしている。年は私と同じぐらいのようだ。
ドールさんは面倒そうにその女の子に声をかけた。
「おい…おい!起きな。」
「…ぅーん…ッ!し、失礼しましたドール中将!夜勤終わりなもので!」
その少女は慌てて即座に立ち上がると、寝巻き着姿のままビシッと敬礼をした。
ドール中将は私を指さして言った。
「雑用の新入りだよ。後は任せたから。それじゃ。」
そう言って、彼女は立ち去ろうとした。が、その前に思い出したかのようにズボンのポケットから飴玉を取り出すと、私たちに放り投げた。
「やる。しっかり雑用やりな。」
「「ありがとうございます!」」
私たちが揃って礼を言うと、ドーベルさんはぶっきらぼうに手を軽く振って去って行った。
すると、少女は私をじろじろと眺めて呟いた。
「まだ子供じゃない。ほんとに雑用なんてできるわけ?」
私は首を傾げて不思議に思って問いかけた。
「同じぐらいに見えますけど…?」
「あんたいくつ?」
「7歳です。」
そう私が答えると、彼女は胸を張って自慢げに言った。
「私は8歳よ。なら私の方が年上ね。あんたが一番子供だわ。」
「えーっ…。」
私はなんとなく目の前の女の子からウタのことを思い出していた。彼女はびしっと私を指さすと、こう告げた。
「いい!ここでは子供だからって、仕事はきっちりこなさないとダメなんだからね。私がみっちり教えてあげる!…あんた、名前は?」
そこで私はまだ自己紹介もしてないことに気づいた。
「セリーヌ。モンキー・D・セリーヌ。あなたは?」
彼女はその名前を聞いて、驚いた様子で固まった。そして、私の肩を掴んで揺さぶりながら大声で問いかけてきた。
「モンキー・Dって…まさか、あんたガープ中将の孫娘!?すっご…!む…でも私の方が年上なんだからね!」
そう謎に彼女は私にマウントを取ってきた。本当にウタみたいだ。
「私はかとりって言うの。ワノ国風の名前なんだって。よろしく。」
彼女は握手を求めたので、私も辿々しく手を握り返した。柔らかい、女の子の手だった。
「それじゃ、私が今から海軍本部を案内してあげる。明日からきっちり仕事してもらうからね!」
「うん!よろしくね!」
こうして、私の海兵人生が幕を開けたのだった。
********************
それから一週間ほどが経過した。先輩のかおりの親切のおかげで、私は割とすぐ仕事に慣れてきた。ただ…やはり相当な激務だ。
雑務だけでも辛いが、立派な海兵となるための講義も欠かせない。
そして何よりも…
「あっ…く…」
「まだまだ!腕立て伏せ100回追加じゃ!!」
「…は、はい!」
隙間時間に行われる、ガープじいちゃんからの特訓は想像を超えて辛かった。
終わった後は足ががくがく疲労で震えたし、筋肉痛で翌日の掃除にも支障が出そうだった。
腕立て伏せに、走り込み。基礎的な体作りのメニューだが、その量は尋常ではなかった。
でも、立派な海兵になるためだ…!
諦めていられない!
そう思いながらも、足をふらつかせながて特訓終わりの夜道を歩く。
月明かりが和風の庭園や建物を照らしている。私はこの幻想的な光景が好きだ。
女子の雑用用の手狭な寝床にまで戻ると、珍しくかおりが起きていた。私が扉を開けると、じっとこちらを見て座り込んでいた。
「どうしたの?もう12時だよ。かとり明日早いんじゃ…。」
「それは、そうなんだけど…その、あんたにお願いがあって。いつもガープ中将にあんた、特訓してもらってるわよね?」
「うん。」
そう私が答えると、かとりは俯いて肩を振るわせた。そして大声で叫んだ。
「ずるい!」
「えっ!?」
私が大声に呆気にとられると、かとりは捲し立てた。
「私だって、立派な海兵にならなきゃいけないの!だから、その…一緒に特訓したい!お願い!」
私は少しそのかとりの必死さに気圧されながらも頷いた。
「えっと…うん。分かった。じいちゃんに言ってみる。」
「ほんと!?ありがとう!」
そうにこやかに笑う彼女を見て、何となく頬が熱くなった。こんなに可愛いんだ、笑ったかとりは。
こうして、私達は二人で特訓を受けることとなった。ガープじいちゃんは快く受け入れ、以前よりもさらにみっちりと私たちを鍛えた。
全ては、立派な海兵になるために。
私たちの青春の日々は、血と汗と涙でできているものだったけど、…楽しいものだった。
そう、その時ははっきりと言えたのだ。