正義の不在証明   作:カバー

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更なる混乱へと

 

 

 

セリーヌ視点

 

 

 

私とかとりは、14歳の新兵にしていきなりの実戦に駆り出されることとなった。

朝起きてから急いで海軍の新品の制服に身を包む。一般的な新兵の半袖のシンプルな服だ。

かとりはその服を着ながらぽつりと呟いた。

 

「早く、正義の二文字のコートを羽織ってみたいわね…。」

 

その声音は、どこか興奮と共に焦燥感を感じさせるものだった。かとりは前からそうなのだが、妙に出世に対して執着を見せる時があった。

本人が言うには、お金が欲しいからと言っていたが。理由は多分、弟達の生活費を稼ぐためだ。

商人の両親を家族に殺されたというかとりには、下に妹と弟がいた。

今は海軍本部の街に住まわせてもらっているが、ボロ住まいで辛うじてだという。

 

私はそんなかとりに、あえて朗らかに笑顔で答える。

 

「だったら、大活躍しないとね!私たち!」

 

 

 

海岸沿いで私達は他の海兵隊と集合し、軍艦の前で整列していた。目の前には私たちの上官である中将が二名仁王立ちをしている。

 

「モモンガ中将!オニグモ中将!出航準備整いました!」

 

そう軍艦から整備班の海兵が顔を出して、白と薄紫の縦縞スーツを着たモモンガ中将に叫んだ。

モモンガ中将は隣の兜を被った長髪のオニグモ中将へと頷くと、私たち海兵達に向かって大声で叫んだ。

 

「いいか!貴様らも知っているとは思うが、戦争中の非政府加盟国ホワイティ王国が、百獣海賊団の旗を掲げた!本当にこの島が四皇の傘下に入ったのか、調査する必要がある!」

 

…それ、想像以上にいきなりの重大任務では?

 

「だが、非政府加盟国に傘下入りするほどの武力も金もないというのが上の見込みだ。…だが、その方が問題ではある。」

 

その言葉に、かとりが手を挙げて疑問を問いかけた。

 

「その方が問題であるとはどういうことでしょうか?」

 

「……百獣海賊団が旗を無断で使われて黙っていると思うか?」

 

その一言で海兵達が騒然とする。…言われてみればその通りだ。海賊とは面子が何よりも大事な連中だ。つまり、舐められたら基本負けなのである。

酒をかけられても穏やかなシャンクスおじさんのような例外はともかく、海賊の魂である旗を無断で使われたらそれはけじめを付けに行くだろう。

いや、シャンクスおじさんでもそれは何かしらけじめをつけることになるだろう。それぐらい重い行為だ。

 

…だけど。政府加盟国ならともかく、非政府加盟国を海軍が守りに行くのか?私は怪訝に思ったが、周りも同様だったらしい。他の海兵も挙手をしてまた疑問を問いかけた。

 

 

 

「しかし、非政府加盟国を我々が守りに向かうのですか?」

 

…正直、私としてはそうあってほしい。正義のヒーローなら、誰だろうが助けに行くだろうから。だが、現実はもっとシビアだった。

 

「ホワイティ王国を守るのではない。ホワイティ王国の"観光資源"を守るのだ。ジェルマとハラクローイ王国が"正当"に侵略している最中だからな。…ふん。」

 

モモンガ中将は気に食わなさそうにそう言葉をこぼしたが、オニグモ中将が咳払いをして新兵達にがなり立てた。

 

「質問はもう十分だ!とにかく任務を忠実に達成せよ!」

 

「「「「「はっ!!」」」」」

 

 

要は、私たちは侵略戦争の手伝いをするということらしい。…いいんだろうか。そんなことで。

正義のヒーローに、私はなりたい。

人々を笑顔で助けるような、そんな海兵に。

 

そんな私とは裏腹に、船に颯爽と乗り込んでいった、かとりは乗り気だった。

力なく項垂れている私の肩を叩き、笑顔で言った。

 

「何しょぼくれてんのよ!さあ!私たちの初陣よ!海賊と海賊に媚を売るような連中をぶっ潰してやりましょ!」

 

「………でも、非政府加盟国って大変だろうから。海軍が先に守ってあげてれば…。」

 

「そんなこと気にしたってしょうがないでしょ!ほら!元気でしなさいよ!」

 

私は、力なくかとりに微笑んだ。

 

 

*********************

 

 

 

それから数日間かけてカームベルトを超えて北の海のホワイティ王国付近まで来ると、巨大な船…国?が海上でこちらに近づいてきた。

 

何十隻もの船が連結し、巨大な西洋風の石造りの城と街を形成している。そして一際高い城の天辺には、見覚えのある旗が風でなびいていた。

 

これが…ジェルマ王国!

 

私達の軍艦が近づくと、島…船の下から巨大な電伝虫が現れ、島の形が変動し、港のようなものが現れた。

 

「よし!停泊するぞ!」

 

私達の軍艦2隻は無事にジェルマの港へと停泊した。私たちが中将達の後に連れ添って船を降りると、特徴的なきっとジェルマの王族だろう二人が私たちを出迎えた。

 

「軍艦二隻だと?相手は四皇の旗を掲げてるんだぞ?私たちを守る気が本当にあるのか?」

 

そんな風にぐる眉が特徴的な、緑の独特なスーツを着て、黒いマントを羽織った男が私たちをジロジロと見て呟いた。

 

モモンガ中将はそんな彼に勤めて冷静に淡々と宥めながらも語った。

 

 

 

「ヨンジ王子。ご不安な気持ちも分かりますが、我々はあくまで偵察隊。もし何かあれば、大将"青雉"が待機していますので…。」

 

「大将が来るのならひとまず安心かしら。あら。可愛い女の子達もいるのね。」

 

そう言って私とかとりの方にウィンクした女性は、ヨンジという王子とは違って全身がピンクだった。長いピンクの前髪で右目が隠れており、まるで蝶のような紫の毒々しい羽を模したマントを羽織っている。

太ももには66の刺青が入っており、なんというか…非常にセクシーな女性だ。

 

私は一瞬見惚れてしまったが、慌てて敬礼して言葉を返した。

 

「はっ!モンキー・D・セリーヌであります!全力で任務を遂行させて頂きます!どうかご安心を!」

 

私は緊張して上擦った声で答えてしまった。その女性はくすくすと笑って、ヨンジ王子は呆れたように首を振った。

 

「まあ、そうしてくれたまえ。…ホワイティ王国に向かう前に物資を補充するといい。せいぜい頑張りたまえよ。ああ、それと。」

 

「ホワイティ王国の旗の件だがな。また面倒なことになったぞ。」

 

「というと?」

 

モモンガ中将が不穏な言葉に反応する。すると、ヨンジ王子は気だるげに答えた。

 

「今度は白ひげの旗を掲げたそうだ。…もうヤケクソだな、あれは。」

 

 

どうやら、事態は想像以上に悪化しつつあるようだった。

私を含めた海兵全員が、頭を抱えたくなったのであった。

下手したら、四皇二人に対処しなければならなくなった。

 

 

 

 

****************

 

 

所変わって新世界のとある島では、四皇で最も海賊王に近いと呼ばれる男、白ひげの本船、モービーディック号が停泊していた。ここは非加盟国であるが、白ひげがナワバリと宣言してからは平穏を取り戻していた。

 

常人の4倍以上の体格を持ち、身体中に点滴の針をつけながらも凄まじい威圧感を放つ怪物、白ひげは、部下からの報告を聞いて、呆れたような感心したような息を吐いた。

 

「俺の旗を無断で掲げた奴がいるって?カイドウんとこの話じゃなかったか?」

 

その白ひげの正面には、金髪のパイナップルを連想させる髪型をした白ひげ海賊団の医者にして、トリトリの実幻獣種不死鳥を食べた実力者であるマルコが、椅子に座り込んでカルテを眺めていた。

 

「ったく。ホワイティ王国だったか。迷惑な話だよい。大人しく傘下にしてくれって頼みに来てくれりゃあ、旗ぐらい貸したってのに。」

 

「それぐらい切羽詰まってたんだろ。ストレスでおかしくなっても無理はねえよ。」

 

 

 

そう言うと白ひげは巨大な酒樽からぐびぐびと酒を浴びるように飲んだ。医師であるマルコは咎めるように睨んだが、白ひげはどこ吹く風だ。

 

 

「どんな薬よりもこれが一番効きやがる。…さて、非政府加盟国だったか。だとしたら俺たちが守ってやらねえとな。」

 

「そんな義理ねえよい。先にカイドウの旗を掲げたって言うじゃねえか。自業自得だよい。」

 

 

 

そんなとりつく島もないマルコに、白ひげがグララと笑ってから答えた。

 

「エースの奴の小舟があったな。あれなら二人ぐらいなら行けるだろ?義理人情が俺の仁義よ。まあ助けてやろうじゃねえか。」

 

その言葉に、マルコは顎を摩って思案してから呟いた。

 

「まあ、それぐらいの小競り合いなら海軍とも百獣とも戦争にはならねえか…。所詮小せぇ島一つだ…。」

 

そして、ニヤリと笑って言葉を続けた。

 

「ワノ国突撃をおやじに止められた件から、エースも荒れてたからなあ。カイドウに意趣返しする機会なら、願ったり叶ったりだよい。」

 

こうして、ホワイティ王国のヤケクソから、事態は思わぬ方向へと動き出す。

そしてその受難を最も受けるのは、火中の栗を押し付けられた海軍なのであった。

 

 

 

 

 

 

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