正義の不在証明   作:カバー

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意外な助っ人

セリーヌ視点

 

 

 

ジャックの曲がりくねった太刀とモモンガ中将の実直な太刀が激突し、火花を散らす。

ジャックの剛腕にたまらず押し負けて、モモンガ中将が吹き飛ばされる。

それを庇うようにオニグモ中将が多腕を振るって斬撃の雨をジャックに浴びせるが、薄皮一枚切れた程度で平然とその一連の攻撃をジャックは耐え切った。

 

そして海兵達と戦っている部下達に叫んだ。

 

 

「プレジャーズ!死を恐れず殺せ!…退がりやがったら俺が殺すぞ。」

 

「ぎゃははは…!!」

 

 

プレジャーズと呼ばれた者達数人はそのジャックの叱咤に不気味に笑いながらも、私たちに突っ込んで刀で切り掛かった。

 

「何よこいつら!こんな時に笑って…気味が悪い!!」

 

そう叫びながらもかとりは得意の拳銃捌きで笑う者達を次々と撃ち抜いて無力化していく。

 

私もかとりに近づこうとする連中を鉄塊の応用技で、鋼のように固くした拳でぶん殴って吹き飛ばした。

 

が、流石は百獣海賊団の海賊達だ。雑兵とはいえ、一人一人が動きが良い。じわじわと私達が追い込まれている。

 

 

 

「ギフターズ!蹂躙しろ!"試作品"の実験だ!!」

 

すると、静観していた黒い角を生やしている数人が、ニヤリと笑って私たちに突っ込んできた。

 

「っこの!!」

 

「邪魔よ!!」

 

カマキリのような鎌を生やした女が、発砲しようとする海兵の腕をばっさりと切りさいて、次々と海兵達を撫で切りにしていく。

 

先ほどがなり立てていた白髪のゴーグルをつけた男は、なんと右腕を羊の巻き角へと変形させ、髪や鼻もゾオン系特有の変形をし始めた。

そして一気に海兵達の上空に舞うと、右腕を思いっきり突き出した。

 

「シープスホーン!!!!」

 

「「ぐあああ!!!!!」」

 

その一撃は、私たちの前方に居た十数人の海兵を一斉に吹き飛ばした。

 

そして…なんだあれ。キリン?麒麟の首から人間が生えている?

なんか麒麟の方の足めっちゃ震えてるんだけど!

その麒麟の首先に生えている男は、高らかに笑って叫んだ。

 

「俺様はハムレット!試作品の期待を超えていくものさ!」

 

「色んな意味で期待超えすぎでしょ!」

 

 

 

私のその叫びに気を良くした様子のその男は、私に狙いを定めたのか麒麟の首を傾けて首先の人間の体を地面に近くすると、凄まじく変な動きで私に走ってきた。

 

そして男は両手の刀で私に切り掛かってくる。

 

「ッ!!!ふざけんのに速い!!」

 

私は辛うじて仰向けにその一撃を避けると、麒麟の首を狙って蹴り上げた。多少は効いたようだが、即座にハムレットは麒麟の首を振り回して人間部分で次々に攻撃を繰り出してくる。

 

「そんなもんか!?かわいこちゃん!」

 

「くっ…まだまだ!鉄塊・剛!!」

 

私は麒麟の首の鞭のような攻撃を敢えて鉄塊で受け止める。そして、両手で麒麟の首を掴むと、思いっきりへし折ろうとする。が、

 

「ぐっ…俺様の武装色はそんなへなちょこ攻撃じゃ突破できねえぞ!」

 

信じられないほど麒麟の首が硬い。一瞬とまどって動きが止まった私に、ハムレットが刀を振り上げた。

ッ!やばい!

 

「そのまま捕まえてなさい!」

 

焦る私にレイジュさんはそう叫ぶと、飛び上がって踵落としの構えに入った。

そしてそのまま…

 

ズドン!!!

 

鋭い一撃がハムレットの頭部に入った。

思わずふらついてハムレットは地面に倒れ伏す。が、即座に起きあがろうとして…

 

「ッ!!な、なんだ!か、からだが動かない!!」

 

「神経毒よ。精々味わってなさい。」

 

 

 

そうクールにハムレットを見下すレイジュさんはまるで、物語のヒーローみたいだ。

…ん?ジェルマ?物語?確かそんな話があったような…そうだ!確か私の憧れの女海兵ソラの物語の悪役に悪の帝国ジェルマの話があった!

 

その姿は確かジェルマの一員ポイズンピンク!…え?じゃあ海兵ソラの物語って実話だったの?でもそうなるとジェルマは…

 

 

 

そんな風に考え込みかけるが、私は慌てて首を横に振る。今はそんなことしてる場合じゃない。私は戦場を冷静に見渡す。…やはりだいぶこちらが不利だ。

 

向こうに残っているのは、大看板のジャックと白髪頭の羊男、そしてカマキリのような鎌を腕に生やした女。そして一般の兵隊が数十人。

 

 

 

こちら側はモモンガ中将とオニグモ中将、そしてレイジュさんと私とかとり…だけだ。

他の海兵はもう皆やられてしまった。

黒い角を生やしている異形…ハムレットは黒い角を生やしてないけど。ほんとなんなんだこいつは…。

ギフターズと呼ばれた連中が参戦してから、一気に海兵達がやられてしまった。

 

でも、中将達が何とかジャックを抑えてくれている。これなら何とか青雉大将が来るまで持ち堪え…

 

 

 

私がそう半ば確信した瞬間、ジャックの体が変形し始めた。メキメキと鼻が伸びていき、身体中が茶色の体毛で覆われていく。そして8メートル近くの巨体が、さらに膨らんでいく。象牙のような…いや、象牙よりも遥かに大きな牙が生えていく。

 

これは…

 

「マン…モス…!!」

 

私達がその巨大さに呆気に取られた瞬間、ジャックの凄まじく長い鼻が信じられないほど素早く振り上げられ、モモンガ中将の脇腹にぶち当たり、体をまるで石粒のように軽々と薙ぎ払った。

 

「モモンガ!!」

 

叫ぶオニグモ中将に、マンモス状態のジャックが全速力で突撃する。

 

「ぬっ…ぐっ…!!」

 

オニグモ中将は六本の刀で突撃を受けようとするが、凄まじい力で軽々と突き飛ばされた。

 

モモンガ中将がふらつきながら立ち上がるも、口から血を流している!内臓のどこかを痛めたのか…!

オニグモ中将は頭を打ったのか立ち上がれない様子だ。

 

 

「ふん。さっさと死ね。俺のこの姿を目にした時点で、お前達に生き延びるという未来はねえ。」

 

ジャックが無慈悲に私たちを見下ろしてそう宣言した。白髪頭の羊男が前に歩み出ると、高らかに叫んだ。

 

「お前ら一体誰に歯向かってると思ってんだ!!」

 

「ここに居られるお方は!!かの四皇カイドウ様の腹心!!3人いる"災害"と称される懐刀の一人!!旱害のジャック様だ!!!ジャック様の通った道は、まるで旱バツでも来たかのように朽ち果て滅ぶ!!」

 

「俺たちと戦う選択をした時点で、てめえら詰んでるんだよ!!」

 

 

 

私は目の前の恐怖を必死に振り払って、巨大なマンモスへと駆け出す。

少しでも、せめて中将達が回復するまで足止めしなくては…!!

 

「ダメ!!海兵ちゃん!!」

 

レイジュさんの制止の声も振り払って、必死に拳を振り上げる。私が一番積み重ねてきたもの。かとりと一緒に、何度も何度も軍艦を殴ってきた。

通じるはずだ。やれるはずだ。

だって私は、じいちゃんの孫娘だ…!!

 

「鉄塊・砕!!!はぁぁぁぁあああ!!!」

 

私はこの身の全てをひたすらに一つの拳に込める。鉄塊と軍艦バッグの積み重ねの応用だ!私の全てを!!

 

その一撃を、奴にぶつける!!

 

ズドン!!!

 

 

 

………………………………………え?

 

「何だ今のは?パンチのつもりか?」

 

ギョロリとマンモスの目がこちらを見下ろす。

嘘だ。私の全てが、私の7年間が…!!

嫌だ!怖い!こんなに遠いはずがない。10億といっても、こんなに遠いはずがない!!

 

私は一心不乱に拳でマンモスを殴り続ける。

 

「ぜあああああああ!!!!ぎあっ!!!」

 

 

 

私の体を、マンモスの鼻がまるで虫でも払うかのように薙ぎ払った。

こんなに、遠かったなんて…。

これが、10億の…新世界の怪物…!!

私は呆気なく地面に倒れ伏す。

痛い。肋骨が折れて内臓に刺さっている感覚がする。たまらず血を口から吐き出す。

動けない。嫌だ。怖い!

 

そんな私を見て、羊男達はげらげらと笑っている。

 

ジャックは無感動に私を見下ろすと、淡々と部下達に言った。

 

 

 

「そろそろ目的を果たすぞ。お前ら、先にこの国の連中皆殺しにしてこい。さっさとしろ!」

 

そう怒鳴られて、数十人の部下と羊男達は、慌てて島の内部へと走って向かおうとする。

何とか…何とかしなくては!!

そうだ!レイジュさんが…!!

 

私は藁にもすがる思いでそう思い至ったが、彼女は何と島に入る海賊達を無視し、私の体を素早く抱き上げて空へと飛び上がった。

 

「れ、レイジュさん…な、なにして…!!」

 

「もう無理よ。中将さん達も回収して逃げるわよ。よく頑張ったわよ、貴女達は。」

 

「そんな…!」

 

私は自分の無力さに眩暈がする。何が正義のヒーローだ。何が一人でも多くの人を守りたいだ…!ここで逃げたら、私は一生自分を信じれなくなる!!

 

「だから、止まれよ…。」

 

気がつけば、私は今にも島に入って行こうとする百獣海賊団に、無我夢中で叫んでいた。

 

「やめろォ!!!!!」

 

次の瞬間、信じられないことが起こった。島に入ろうとした海賊達が、ばたばたと地面に一斉に倒れ始めたのだ。まるで、気を失ったかのように…。

 

「…………ッ!?あのガキ、覇王色を!?」

 

ジャックがそう叫び、空を飛んで逃げようとしていた私達に向かって人間形態に戻って飛びかかった。

私達に刀を振り上げて斬りかかろうとして…

 

「火拳!!!!!!!!」

 

 

 

凄まじい灼熱の一撃が、海からジャックへと襲いかかった。ジャックはたまらず後退りし、海を警戒して睨みつける。

そこには、一隻の小舟が浮かんでいた。爆速で走っているその小舟から、一人の男がなんと炎へと変身し、空を飛んでここまで突っ込んできた。

 

ジャックは曲がりくねった太刀を構えてその男を睨みつける。

その男は、オレンジ色のテンガロンハットを持ち上げてニヤリと挑発的に笑った。

 

「よお、デカブツ。お前カイドウんとこのお遣いだな?」

 

「…てめえは誰だ。どこかで見た面だな。」

 

「おれか?おれは白ひげ海賊団新入りの火拳のエースだ。以後よろしく。」

 

その背中には、白ひげ海賊団のシンボルの入れ墨が入っている。四皇のプライドを背負っている二人の猛者は、静かに睨み合った。

 

 

 

 

 

 

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