01 0806ゼリルしゃべる
プロット
聖生物――生きるもの
ライフ
魔生物――生きてはいないもの(命のいらない者共)
→聖魔の戦いであることを強調
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――昔々ことだ。
――大陸スピトゥール
――魔を司る神カオスラボスと
聖をつかさどる女神ニューリアの壮絶な戦いがあった。
オーク、スケルトン、デーモン、それから、肉の塊に、一つ目の霧。砂の怪物、スライム、サキュバス、
瘴気を纏った禍々しい軍勢を従え。【魔物】
人間、エルフ、ドワーフ、虫、魚、鳥、トラ、オオカミ、ヘビ、ユニコーン、ドラゴン、サンダーバード、人魚
【生物】
血の通った軍勢
無数の魔物が塵と化し、無数の命が多くの血を流し、骸となった。となった。
壮絶な戦いの末、女神ニューリアは魔神カオスラボスを滅ぼし、
海に囲まれた世界の大陸の果てに追いやり、
世界の果て、やめの世界へと追いやり、
光の壁でその扉を封じた。
――こうして生き物たちの世界に平穏が訪れたのだ。
――生き延びた生命は、命を紡ぎ続ける。
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〇もっと馬鹿馬鹿しい話に。
・俺が好きなのは人間の乳だ!
でもぱざら入ってたよ。おっぱいはいい物だって。よくしらねぇけどな。人間なんか興味もねぇ
・ちっちゃい仲間、乳はでかい
夜の草原をオレンジ色の髪を逆立て、山賊と武闘家を混ぜたような服装の少年が死に物狂いで駆け抜けていた。
「うおおおおおおおおおお!!!!! 一体何が起きてんだよおおおおおーーーー!!!!!!!」
背後からはゴブリン、スケルトン、オーク、ゴースト、コボルトなど、この付近に出現しうるあらゆる
「おいお前!本当に何も知らねぇのかよ!!」
少年は元々鋭い目付きをさらに細めて、右手で抱えている“彼女”に問いかける。
「知らないって言ったじゃないですか! 気がついたら追いかけられてたんですから!!!!」
“彼女”は女騎士を想起させる凛とした声で抗議した。
「つーかそもそもお前、“なんの
――そう、少年が小脇に抱える彼女は人ではなかった。
彼女はまるで、人の顔くらいの大きさの饅頭を横に二つくっつけたようなフォルムをしていて、肌質や体温、なによりその柔らかさは、人間の“とある部位”に酷似していた。
有り体に言って、彼女はどう見てもおっぱいだった。
――――この日、少年《ジュモ・オレンジバック》は拾ったのだ。
――――世にも奇妙な、喋るおっぱいを。
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多くの生命で満ち溢れ、天高く伸びた木々がどこまでも広がる《オルバ大森林》の中。木々の隙間から降り注ぐ陽光が、招かれざる客人達を照らしていた。
五人ほどのの深緑色のフードを被った人間の男たちがニタニタとした笑みを浮かべながら森の出口へと向かっている。
「ギャハハ! さすがお頭、まさか本当にフォレストドラゴンの赤ん坊が手に入るとは! こりゃ当分酒代には困りませんなぁ!!」
その言葉通り、先頭を歩く“お頭”と呼ばれた男の小脇には、中に小動物が閉じ込められた檻が抱えられていた。
「クルルゥ……」
檻の中で不安げに鳴き声を漏らしたのは、山羊のように渦巻いた角を生やし、苔のような深緑色の鱗に覆われた四つ足の竜――フォレストドラゴンの赤子だ。
男たちは《ビーストハンター》。希少な
フォレストドラゴンはこの森の長である。そして、その子供が攫われたということは、森の
次第に騒がしくなっていく森。――そして、その非常事態にいち早く気づきハンターたちを追う者がいた。
「――見つけたぜ、クソ誘拐犯ども……!!」
その逆立ったオレンジ髪と凶悪な目付きは見間違いようもない。少年、ジュモ・オレンジバックだ。
ジュモは吹き抜ける風の如き身軽さで木から木へと飛び移り、ハンター達への距離を詰めていく。
「お、お頭、何か近づいて……」
ハンターたちが気づいた時にはもう遅い。
ジュモは木の上から大きく飛び上がると、めいいっぱいの恨みを込めて一人のハンターを踏み潰した。
ドッッッシーーーーーーン!!!!!
「ぎゃあああああ!!!!」
突如起こった地響きと仲間の悲鳴。
混乱するハンター達の前に、砂埃の中からジュモがようやく姿を表した。
薄茶色のサルエルパンツをまるで猿の尾のようなベルトで締め上げ、
その上からは、髪色によく似たなオレンジ色のベストを着ている。
そんな野性味溢れる服装とは裏腹に、手足には鋼色が鈍く光る無骨なガントレットとレガースが身につけられていた。
「やっと追いついたぜ誘拐クソカス野郎ども!! さっさとをその赤ん坊を返しやがれ!!」
ジュモはびしっと檻の中の龍の赤子を指さしながらハンターの頭目を睨みつけた。
「な、なんだてめぇ!ふざけやがって!!」
ハンターの一人が、ナイフで咄嗟にジュモに襲いかかる。
「遅ぇ遅ぇ!!」
だが、不意打ちだったにも関わらず、ジュモは目にも止まらぬ速さのパンチで男の顔面をぶち抜いた。
「ぐぎゃあああっっ!!」
殴られた男が意識を失い、地面に倒れ伏す。
ジュモの、子供らしさの抜けきらない顔立ちと言葉遣いとは裏腹に、その気迫にハンターたちは気圧され、確かな恐怖を覚えていた。
「ひぃっ……」
「な、なんだよこいつ……!」
「てめぇら!! なにガキ一人に何ビビってんだ! さっさと殺せ!!!」
頭目が怒号を飛ばすと、残ったハンター達はナイフを抜き、一斉にジュモへと襲いかかった。
数にして四人。それも、その全員が生き物を狩ることに長けた手練れだ。
「へっ……その程度か」
――だがジュモは全く怯まず、ハンターたちの背丈よりも高く跳び上がると、軽やかにバク宙をした。
そしてその勢いで、背後にあった木の幹を蹴って反動を得ると、次の瞬間にはガントレットに包まれた両拳でハンターたちを殴り飛ばしていた。
「ぐべらっ!!!」
「ゴフッ!」
「もう一撃だぁっっ!!」
ジュモは身を捻りながら再び跳び上がると、ムチのごとき勢いの蹴りを放ち、残る二人のハンターを薙ぎ払った。
「かはっっ!!!!」
「げはっ!!」
――一瞬のうちに取り巻きは全て倒され、残るは頭目ただ一人だ。
「ば、馬鹿な……たった二撃で……」
「うるせぇ、いいからさっさと赤ん坊を返しやがれ。そいつは森の宝だ。てめぇの汚ねぇ手で触れていいもんじゃねぇ。」
「わ……分かったぞ……そのサルじみた身のこなし……、貴様獣人だな……」
――《獣人》。人間と
ジュモの外見には、尾のようなベルト以外ビーストらしい特徴は見られないが、獣人の外見における、人とビーストの比率は個体ごとに大きく異なる。
人間に耳や尻尾が生えたような外見のものから、毛むくじゃらの獣が二足歩行をしているようなものまで千差万別なのだ。
中でもサルの獣人はその姿が人間とほとんど見分けがつかないことも多い。
それ故に頭目は、ジュモが獣人ではないかと予想した。
――人間と獣人が純粋な身体能力で競う場合、よほど鍛えられた人間でなければ獣人に勝つことはまずない。それは、この世界の常識の一つだ。
故に、頭目が取った行動は一つ。
頭目は、抱えた檻の隙間にナイフを差し込むと、中のドラゴンの赤子に当てがった。
「動くな! 一歩でも近づいたらこいつの命はねぇぞ!!」
「くるるぅ……」
「このド腐れ野郎が……!」
「分かったならそのまま両手を上げて後ろに下がれ……!」
ジュモは頭目を睨みつけながらも後ろに下がる。
今最も大切なのは赤子の命を守ること。ジュモはそれを忘れてはいなかった。
「そうだ、それでいい……。いいか、俺が森を出るまでそこから動くんじゃねぇぞ……!!」
やがで、ジュモとの十分な距離が空くと頭目は安堵し、ナイフを持つその手が一瞬緩んだ。
――ジュモは、その瞬間を見逃さなかった。
「――“みんな”! 今だ!!」
ジュモが叫ぶと森のあらゆる方向から木々をかき分ける音が聞こえ始める。そして甲高い遠吠えや、地を這うような唸り声が聞こえてきた。
そして、ジュモの声に応えるかのように、小鳥が、リスが、鹿が、イノシシが、ゴリラが、巨大な蝶が、動く植物が、翼の生えたネズミが、翠色の狼が――森の動物達が、頭目を取り囲むように一斉に現れた。
「な……なにが! 一体何が起きている!」
呆気に取られた頭目の腕を小鳥がつつき、頭目はたまらずナイフを取り落とした。
「しまった……!」
咄嗟にナイフを拾おうとするが、今度はそれをリスが攫って行く。
「なにぃっ!?」
そしてとどめとばかりに、鹿や猪が頭目に向かって突撃し、頭目はいとも容易く吹き飛ばされ抱えていた檻をついに手放した。
「ぐああああー!!!!」
駆けつけたジュモが放り出された檻を受け止める。
「っぶねぇ!……よし、今檻から出してやるからな! そこの猿! 手伝ってくれ!」
ジュモの呼びかけに答えた
「くるるぅっ!!」
「よっしゃ! 元気そうで安心したぜ!!」
「ひっ……ひいいいいいいいい!!!!」
その様子を見てただ1人、一目散に逃げ出したのは、ドラゴンの赤子という人質を失った頭目だ。
「クソッ! クソッ!! あのガキまさか
ビーストテイマー》だったなんて……!! いや!それにしたって一度にあれだけの
転んだ頭目はついに大木を背にして追い詰められた。
「どうやら鬼ごっこも終わりみてぇだな」
「ま、待て……! お前ビーストテイマーなんだろ……? ならレアなビースト欲しいだろ……? 知ってる情報全部教えてやる! だからビーストどもを追っ払ってくれ! 命だけは助けてくれよ!!
頭目の言っていることは全て本当だった。希少なビーストの情報は非常に価値のあるものだ。ひょっとすれば、その交渉を聞き入れるビーストテイマーもそれなりにいるだろう。
――だが、頭目にとって不幸だったのは、ジュモはそれらに価値を見出さないどころか、嫌っていたことだ。
「…………くっっっだらねぇ」
「は……?」
「くだらねぇって言ってんだ。そんなモンになんの価値がある」
「か、価値ってそりゃ…………」
「
「お、お前だってフォレストドラゴンが欲しいんじゃ……」
「俺は
「なんだって……? 一体、何の話をしてやがる。それじゃあまるで、ビーストの声でも聞こえるみたいじゃねぇか……」
「――ああ、聞こえてるぜ? みんなお前をぶちのめしたがってる」
そう。ジュモには実際に|動物《ビーストの声が聞こえている。
ジュモは、物心ついた時から
『悪イ奴!!』
『余所者、追イ出ス!』
『敵ダ……』
『喰イ殺セーー!!!』
ジュモの耳に、森の平穏を見出そうとする余所者に鉄槌を与えよという声が響く。
「――なあお前ら。こいつの処遇は森のボスに決めてもらう。それでいいよな」
「ボス……だって…………?」
顔面蒼白になった頭目に向かって、ジュモは上を指差した。
頭目は、恐る恐る首を上げる。
ギロリと自分を睨みつける首長の竜と目が合った。
同時に、頭目が寄りかかっていた巨大な木が“宙に浮いた”。
「あ……あぁぁぁ……」
頭目が寄りかかってた木。その正体こそ、誘拐されたフォレストドラゴンの親だったのだ。
「あばよ、クズ野郎」
「ぎゃ……ぎゃああああああ!!!!!!!!」
頭目が最後に見た光景は、自分を押し潰さんと迫り来る、ドラゴンの足の裏だった。
◇
ずしーん、ずしーん、ずしーん。
遥か遠くまで広がる平原をフォレストドラゴンの巨大な脚が踏みつけていく。
その苔むした大きな背中の上には、オレンジ髪のツンツン頭の姿があった。
「いやあ〜、悪いな、乗せてもらっちまって」
背中にはリュックサック、前には助けた赤子を抱いてあぐらをかくジュモ。
口では遠慮しつつも、ちゃっかりくつろいでいるのであった。
「グルルオオ……」
「くるるぅ……!」
ドラゴンの親子が鳴き声をあげる。
それもジュモには“言葉”として聞こえていた。
『オマエ、我ガ息子、助ケテクレタ。感謝スル……』
『アリガトウ! ニンゲン!!』
「おう、次からは攫われないようにお前も強くなるんだぞ?」
『ウン! ツヨクナル!』
ジュモは赤子を助けたお礼に、ドラゴンに運んでもらっていた。
『進ム方向ハ、合ッテイルナ?』
「ああ大丈夫だ。ちゃんと北に向かってる」
ジュモはこのスピトゥールの最北端にある街、《聖都》を目指す旅人である。
オルバ大森林に訪れたのはその途中でのことだった」
「もうすぐ日が落ちる。送ってくれるのはここまででいいぞ」
『ム? 別二、モット遠クマデ運ンデヤッテモイイノダゾ?』
「ありがとな。……でも、夜は危ねえからな。森の奴らだって、ボスがいないんじゃ心配だろう」
『……ソレモソウダナ』
ジュモの言う通り、スピトゥールの夜は恐ろしい。なぜなら夜は、闇から生まれし異形の怪物――
『デハ、私ノ鱗ヲ持ッテイクトイイ』
ドラゴンが体を震わせると、ペリリと鱗が一枚剥がれ落ちた。
「いいのか?」
フォレストドラゴンの鱗は万病の薬になる。それ故に欲しがる人間が後を立たない希少品で、市場では常に高値で取引きされている。
ジュモは鱗の金銭的な価値には微塵も興味がなかった。しかし、旅の途中で病を患った
「そういうことなら、遠慮なく貰ってくぜ」
ジュモは拾った鱗を後ろ腰のポーチにしまうと、森へ帰っていく親子を見送った。
「達者でなーーーー!!」
やがて母親の背の上から手を振る子供の姿がら見えなくなると、ジュモはまた北へと歩き出した。
◇
日が沈みきる頃になると、ジュモは辺りで一番背の高い木の上に登った。
「うし、この木なら大丈夫そうだな……おーい、お前らちょっといいかー?」
ジュモは木の周りを飛び交うコウモリたちを見かけると声を掛ける。
『ニンゲン?』
『ニンゲンダ!』
「俺が寝てる間、何かあったら起こしてくれないか?」
スピトゥールの夜は多くの危険が潜んでいる。
故に、夜になれば街の門は固く閉ざされるし、冒険者は二人以上で行動し、夜は必ず見張りをするのだ。
だから、一人旅を続けるジュモはいつも、夜行性の
『ワカッタ! 起コス!』
『何カ! アッタラ!』
「よし、たのんだぞ!」
そうしてジュモはコウモリに手をかざすと、手のひらから光の線が2本飛び出し、二匹のコウモリそれぞれの中に吸い込まれていった。
ビーストテイマーが
リンクラインが弾かれず、無事吸い込まれれば、それはテイム完了の合図であり、その
そしてテイムされた
『身体ガ軽イ!』
『フシギ!』
「だろ? 今のでお前らの身体能力が上がったんだ」
テイムされた
おまけに、通常であればテイムを解除すればこの上昇効果は消えてしまうが、ジュモにテイムされたビーストは、解除後でも能力上昇は解除されない。
ジュモはこの珍しい現象を、力を貸してくれた
◇
「ぐごお〜〜、ぐがあ〜〜」
『『オキロ! オキロ!』』
「んが……!」
ジュモが眠りについてから一時間ほど。、イビキをたてながら爆睡するジュモの周りでコウモリたちが騒ぎ始めた。
「……何があった!」
事態を把握したジュモは瞬時に飛び起き辺りを見渡すと、木の下で妙なものを見た。
「あん? なんだありゃ……」
ジュモの視線の先では、緑色の小さな光が二つ跳ねるように移動していた。
「
目を凝らしてみるが、目が覚めたばかりで暗闇に慣れていないジュモでは光の正体は判別できない。
『知ラナイ! ナンダロウ!』
『モチモチ! プニプニ! ウゴク!』
「はあ? プニプニだぁ……?」
コウモリたちの要領を得ない説明に、ジュモはさらに首を傾げた。
「こりゃ、自分で確かめるっきゃなさそうだな……」
ジュモは軽々と木から飛び降りると、足音を消して例の移動する光へと近づいていく。
ぽよんっ ぽよんっ ぽよんっ ぽよんっ
確かにプニプニモチモチ何かがジュモの目の前を跳ねていた。
その“何か”は、球体が二つ隣り合っているような形をしていて、左右の球体の全面の頂点あたりで小さな光が輝いていた。
「なんだありゃ、珍しいスライムか……?」
スライム――ゼリー状の体に饅頭のような形の代表的な
知る限り、体の一部が発光するスライムには覚えがなかったが、
元より、住処や構成素材の違いにより派生種類の多いスライムのことだ、未発見の種がいたとしても不思議ではない。
気になったジュモは、目の前のスライムもどきを、がばりっ!と後ろから掴みあげた。
「きゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!」
すると同時にどこからともなく少女の悲鳴が聞こえてきた。
「のわあっ! なんだぁ!?」
ジュモはたまらずスライムもどきを宙に放りだす。すると、スライムもどきは空中で体制を整え、ジュモの顔目掛けて飛びついてきた。
「このっ! 不埒もの!!!!!!!」
「もがっ! もががっ!!」
再びジュモの耳に、凛とした少女の声が届く。
「(……まさか! こいつが喋ってるのか……!?)」
普段から様々な
普段ジュモがビーストと会話をする際、
だが、ジュモはびりびり鼓膜が震えるのを感じたことで、このスライムもどきは、テレパシーではなく、実際にしゃべっているのだと理解したのだ。
そしてジュモは、スライムもどきを引き剥がそうとする最中、さらなる疑問に苛まれる。
「(なんだこいつの体……スライムのくせに妙にあったかくて弾力があるような……)」
いかにスライムが多種多様とはいえ、特有のぬめりとした粘着質の体を持っているという点はどの種類にも共通している。
だが、いまジュモの顔に伝わっているのは、程よい弾力感の何かに柔らかく挟まれているような感覚と、心地の良い温度だった。
――――――それはまるで。
「ぶはあっ‼︎」
ジュモは力任せに、顔にはりついたスライムもどきを引き剥がす。
そして、ジュモは自分が大きな勘違いをしていたのだと悟った。
――ジュモに張り付いた彼女はスライムではなく、おっぱいだった。
――――スライムではなく、おっぱいだったのだ。
その乳房の付け根の先に、本来ついているべき女体はなく、その容貌はまるで、大きな饅頭を横に二つくっつけたような外観をしていた。
「………………は?」
ジュモが口をあんぐりと開かれる。
訳もわからずおっぱいを左右に引っ張ってみるが、不思議なことに左右の乳房が離れることはなく、その谷間が少しばかり深くなるだけだった。
さらに珍妙なことに、ジュモが見た2点の光はそれぞれの乳房の先端から、乳首を覆い隠すように放たれていた。
おっぱい単体とはいえ、完全に人間のおっぱいだ。この光がなければ、公衆の面前に出ることはできなかっただろう。
「ちょっ、ちょっと!いい加減私を揉みしだくのをお辞めなさい!」
ピシャリと言い放たれたことでジュモは完全に理解する。
――やっぱり、さっきから喋っているのはこのおっぱいなのだ、と。
ジュモはとりあえず、肺の空気を全て吐き出して叫んだ。
「おっぱいがしゃべったあああああああああああああ!!!!!!!!!!!??????」
……こんな状況で叫ぶのはごく自然なことだ。誰だったジュモのようになるだろう。
だが、今回はタイミングが最悪だった。
「そんな大きな声を出しては奴らが……!」
ざりっ、ざりっ
何者かが地面を踏みしめる音が、おっぱいの言葉を遮った。それも、一つだけではない。次第に聞こえる音は数十に増え、それと同時に『ギャルル……』と人でも、
子供ほどの背丈に濁った緑色の皮膚にギラついた瞳をした小鬼――ゴブリン。スピトゥールのどこにでも出現する低級の
現れたのはゴブリンだけではない。
この辺りに出現する
「どうなってやがる……」
ジュモの額に冷や汗が垂れた。
ジュモが肝を冷やしているのは、何もジュモ達を取り囲んでなおまだ余りある数だけではない。その現れた
暗闇からどこからともなく湧き出ように出現する
そのため、
だからこそ、十数種の
――
「奴ら、私を執拗に追いかけてくるんです! ようやく巻けたと思ったのにあなたが大声で叫ぶから見つかってしまったではないですか!」
「あぁ⁉︎ 知るかそんなもん! つーかそもそも先に悲鳴を上げたのはそっちだろうが! いや、そうじゃねぇ! なんでおっぱいの癖に喋ってんだよ! 一体何なんだテメー!!」
「それが人に質問をする態度ですか! 貴方! 非常識で無礼な人ですね! 後ろからいきなり触られたら、誰だって叫ぶに決まってるじゃないですか!!」
「喋って動くおっぱいがジョーシキどうこう言ってんじゃ――」
「ギャアアアア!!」
二人の会話を遮るように飛び込んできたゴブリンが、おっぱいに向かって棍棒を振り下ろす。
おっぱいは成すすべなく、その身に攻撃を受け――――ることはなかった。
ガギンッ! と金属を殴りつけた音が響く。
「っぶねぇ……。油断してんじゃねぇぞ、このおっぱいが」
ゴブリンとおっぱいの間に割って入ったジュモが、ガントレットで攻撃を防いだのだ。
「貴方、どうして……」
「なんつーか……。困ってる
「貴方は……脚も、翼も、尻尾もない。こんな私を見て、私をビーストだというのですか……?」
おっぱいの言う通り、彼女は
――だが、それでもジュモは、彼女を
「俺は、お前が人間には見えない。……俺は人間が嫌いだ。お前が人間だったら、助けなかった」
「そ、そうではなく……!」
「――なら!!」
ジュモはゴブリン振るった棍棒を跳ね返すと、ガラ空きになった腹に鋭い蹴りを放った。
急所を的確に蹴り抜かれたゴブリンは他の
き飛び、崩壊した体は黒い霧となって消滅した。
これこそが
――当たり前だ。そもそも
「お前は死んでも欠片ひとつ残らない、血も涙もない
「――それは。――それだけは違います」
彼女はきっぱりと言った。その言葉からは、彼女の強い心と、強い意思を感じさせた。
彼女の言葉を聞いたジュモがニッと口角を上げる。
「生き物は、人間、
ジュモ達を包囲していた魔物《まぶつ》が一斉に飛びかかる。
ジュモはおっぱいを左腕で抱え込むと、迫るオークを踏み台にして大きく飛び上がった。
「きゃっ!」
「荒っぽくなるから、ちゃんと捕まってろよ!」
ジュモの意思に応じてベルトがほどけ、うねりだす。
ベルトは後ろ腰の一点で固定されていて、そこから伸びる様は、本物の尻尾のようだった。
「
ジュモの声に応じ正面の木に向かって勢いよく伸びたベルトが枝に巻き付いた。
「まずはここを突破するぞ!」
ジュモは体を振り子のようにスイングさせ、勢いよく空中へと飛び出した。
「上から来ます!3体!」
「オラァ!!
その合図ジュモは素早く反応すると、右腕のガントレットから三本の鉤爪がせり出し、襲いかかる
「その戦い方は……!」
「話は後だ!とにかく今は全力で逃げるぞ!!」
◇
それどころか、やっと数を減らしたと思っても新たな魔物がどこからか合流してきて、追手の数は増える一方だった。
「次から次へとキリがねぇ!おい、こいつら明らかにお前を狙ってるだろ!お前一体何なんだよ!!」
「私だって知りませんよ!!」
「はあ⁉︎」
「私何も覚えていないんですよ! 目が覚めたら深い洞窟の中にいて、気づいたら追いかけられてたんですから!!」
「何言ってんだお前!冗談はそのおっぱいだけにしろ!」
「私だって好きでこんなおっぱ……胸みたいな見た目してるわけじゃないんですよ! だからその……お、おっぱいって言うのやめてくれませんか!」
「そうは言ってもおっぱいはおっぱいだろうが!」
「安直にもほどがあります! 第一、私にはちゃんと名前が……いえ、思い出せないんでした」
「なるほどな、要はお前に名前がありゃいいんだろ?」
「はい?……いえ、そうかもしれませんが……」
するとジュモは走りながら器用に首を捻り、うんうんと考え始めた。
「なあ、パイパイとニュウニュウ、どっちがいい⁉︎」
「なんですかその名前は!どっちもお断りです!」
「はあー⁉︎折角考えてやったってのに、文句の多い奴だな!」
「だってその名前どちらも胸からの連想でしょう⁉︎ 嫌ですよそんなの!! つけるならもうちょっと普通の名前にしてください!」
「普通だぁ⁉︎ くっそ……俺苦手なんだよそういうの……!」
再びうんうんと考えた後、ジュモは何かを思いついたようだった。
「じゃあゼリルってのはどうだ!」
「ゼリル……? 素敵な響きですね――これも胸の別称などではないでしょうね」
おっぱいが訝しげに尋ねる。
「うるせぇ、前に人間の町で見かけた菓子の名前からとったんだよ!なんか文句あるか⁉︎」
どうせまたクレームを入れられるのだろうと身構えるジュモ。帰ってきた返事は意外なものだった。
「――いえ、あなたが付けてくれたこの名前、気に入りました。今から私はゼリルと名乗ることにしましょう。だからあなたも、私のことはゼリルと呼ぶように」
「わ、わかったよ……。ゼリル、ゼリルだな?」
「はい、よろしい」
実のところゼリルはジュースなどの飲料を固めた菓子で、適度な弾力がありプルプルとしている。
つまるところ、それもおっぱいから連想されたものであるが、ゼリルがその事実を知ることになるのは、もう少し先の話だ。
「あなたの名前も、教えてくれませんか?
「そんな大層なもんじゃねぇよ。俺はジュモ。ジュモ・オレンジバック。森育ちのビーストテイマーだ」
「森育ち、ですか?」
「ああ。俺は赤ん坊の頃に天蓋孤独になってな。そこを森に住むオレンジバックの獣人に拾われて以来、俺は森でビーストと一緒に生きてきた」
オレンジバック――長い尾と、名の通り背中側になるにつれ濃くなっていくオレンジ色の体毛が特徴のサルの一種である。その獣人がジュモの育ての親だった。
「俺にとって
だからジュモは、あのビーストハンターのような男は、絶対に許さないのだ。
「――ジュモ、あなたのことが今少し、わかりました。その上であなたは伝えておこうと思います」
「ああ? こんな状況で何言おうってんだ」
「――ジュモ、人間が敵だというあなたの考えには賛成できません。時に悪事を働く人間がいることもまた事実ですが、それは彼らの置かれた境遇や環境が彼らをそうさせたのです。真に悪である人間など――――」
「説教垂れてるとこ悪いがゼリル」
ジュモが、足を止めた。
「……わりぃ、しくじった」
「……はい?」
夜の逃走劇は、追ってが人間ならば逃げ手が有利に進むが、
――ジュモの眼前には、行く手を遮るようにどこまでも続く、大きく、そして深い谷が広がっていた。
大型の飛行ビーストをテイムできれば飛び越えることができるのだろうが、運悪く、夜空にはコウモリ一体飛んでいなかった。
振り返ると、合流に合流を繰り返し無数に増えた
「この崖を飛び越えるのは無理だ。そしてお前を守りながらこの数の
「……そう、みたいですね」
「超ピンチな状況だが、一つだけ助かる可能性のある手がある」
「この状況を一体どうするつもりですか?」
「このまま向こう岸に向かってジャンプして、落下が始まる瞬間にお前を向こう岸までぶん投げる。それでも飛行型の魔物は追ってくるだろうが、そこは俺に会うまで逃げ切れたお前の手腕に任せる。――じゃ、いくぞ」
「待ってください‼︎」
「あ?」
「それではジュモ、あなたは――」
「谷の深さにもよるが、多分死ぬだろうな。だが、目の前で
ジュモはそう言い切ると、再び助走を付け、走り出そうとした。
「なりません‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
驚いたジュモが、足を止めた。
「あなただけが身を投げ打つなど、あってはなりません。……私は、自己犠牲のような考え方は――否定しませんが、私は嫌いです」
「ならどうしろってんだ」
「――最後の最後まで共に、命ある限り必死に足掻く――というのはどうでしょう」
その言葉に、ジュモはまた、ニッと笑った。
「その考え方、気に入ったぜ……‼︎ 俺だってこのまま死にたかねぇ!」
ジュモは、今度こそ助走をつけながら谷へと飛び込んだ。
「
尾の先端がジャギン!と槍のように変形し、壁に向かって勢いよく打ち込まれる。
だが、尾は岸壁を穿つことなく空を切った。
「クソッ!」
ジュモががむしゃらに再び尾を放とうとした時、聞こえたのはゼリルからの助言だった。
「ジュモ! ベルトを腰から外して下さい! 腕の長さ分リーチが伸びます‼︎ タイミングは私が合図します!」
「そういうことなら任せたぜ……‼︎」
ジュモは外したベルトを手に持ちかえると、ゼリルからの合図を待った。
落下を続けていると、壁が突き出るように大きく隆起した箇所があった。
「ジュモ! あそこを狙うのです‼︎」
「分かってる!
ジュモが再びベルトを伸ばすと、槍のように尖った先端が壁へと突き刺さった。
「よしっ!」
ジュモはそのまま、向こう岸の石壁にとりつくべく、ベルトの先端が突き刺さった箇所を軸にスイングさせた。
そして、ガントレットから伸ばした爪を壁に食い込まさんとした、その時だった。
ガギンッ‼︎
食い込みが甘かったのだろう。ベルトの先端が岩から外れ、ジュモは再び宙へと投げ出された。
「クソッタレが」
「ジュモ! 諦めてはなりません‼︎」
「んなもんわかってる! けどこの状況で一体何を――」
「――祈りましょう」
ゼリルが落ち着き切った、凛とした声色で告げる。
普段のジュモであれば、素っ頓狂な声を上げるか、文句を言っていただろう。
だが、ゼリルからは有無を言わせない迫力があった。
「……分かったよ、ただ諦めながら死ぬよりかは、いるかもわかんねぇ女神に祈るほうがよっぽどマシだ‼︎」
――女神ニューリア。
かつての聖と魔の戦いにおいて、魔人カラボスを打ち破った末、傷ついた自らの体を世界中に散らばせたという女神であり、このスピトゥールで広く信じられている『聖教』の唯一神だ。
だが、森で育ったジュモにとって、神だの教えだのと言うものはどれも嘘くさいものであり、当然信じてなどいなかった。
故に、ゼリルの呼び掛けがなけらば、ジュモが祈ることは決してなかっただろう。
だから、だろうか。
ジュモたちが谷底に身を叩きつけられんとしていたその瞬間。
――奇跡が起きた。
ジュモの体を、淡い緑色に光る球体が包んだ。
そのまま地面に衝突し、ドガン‼︎ と轟音が鳴り響くが、ジュモは負傷どころか、衝撃一つ感じなかった。
「助かった……のか?」
身を包んでいた球体が消滅すると、ジュモは恐る恐る立ち上がった。
「おいゼリル、なんだか分からんが俺たち助かったぞ!」
――返事がない。
「ゼリル?」
腕の中のゼリルを見たジュモは、ある異変に気づく。
「ち、乳首が――‼︎」
そう。ゼリルの乳房の先端から放たれていた光が消え、隠されていた乳首が露わになっていたのだ。
「まさか、死んでねぇよな……?」
ジュモがゼリルの胸に耳を当てると、しっかりと心臓の鼓動が聞こえてくる。
「気絶してるだけ……なのか? ったく、目でもついてりゃそれも判るってのに、こう言う時おっぱいってのは不便だよなぁ……」
そして、ジュモは一つ気になることがあった。
ジュモを守るように、光る球体が現れたかと思えば、ゼリルの光が消えていたという事実を。
「……ひょっとして、お前が守ってくれたのか?」
ジュモがぼやくように尋ねるが、ゼリルはまるで寝息をたてるように、静かに胸を上下させるだけだった。
◇
「よっ……ほっ……よっ……はっ……」
一定の間隔で聞こえてくるジュモの声に、ゼリルは目を覚ました。
「ん……。えーと……ってええっ⁉︎ ちょ、ちょっと一体どういう状況ですか⁉︎」
「……しょうがねーだろ、背中に縛り付けたら落とした時に助けられねぇんだから」
そう。ゼリルが驚いたのは崖を登る上で、ジュモが選択したゼリルを運搬する方法だった。
そびえたつ断崖絶壁を上り切るには両手を空ける必要があった。そして、そのためには、抱えたゼリルを体のどこかに縛り付けておかなければならなかった。
考えた末、ジュモが出した結論は、“ゼリルを自分のベストの中に入れる”ことだった。
そして、それはあたかも、ジュモが巨乳……いや、爆乳の持ち主になっているかのようだった。
「……! そうです、私たち確か谷底へ落ちて……」
「覚えてねぇのか?」
「……はい?」
ジュモは、ゼリルに突如現れた光の球体のことを話した。
「――光の球体、ですか。私にそんな力があるのでしょうか……?」
「さあな」
「……もっと愛想のよい返事をしてくれたっていいのではないですか? それに、私の身を案じてくれるのは有り難いですが、私の収納場所は、もう少し何とかならなかったのですか……?」
「うっせぇ。俺だって他の方法があるならそうしてる。自分におっぱいがついてる見たいで気持ちワリーし、ずっとふにょふにょしたのが肌に触れてて変な感じするんだよ。文句があるなら他の方法を言ってみろ!」
「…………確かに。屈辱ですが、今はこの方法がベストだと、私も同じ結論に辿り着きました。ズボンの中に仕舞われるよりはよかったと考えるようにしましょう。
「ズボンか……、それは考えてなかったな」
「本当にやめてください‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
売り言葉に買い言葉。その後も乳首の光が戻っただの、セクハラだのと、ゼリルとジュモは喧騒を撒き散らしながら崖を登り切った。
「ジュモ、空が……!」
「ああ、夜明けだ――」
ジュモが空を見上げると、長かった夜が明け、煌々とした朝日が差し込みはじめるところだった。
集まっていた
「
「これでようやく、落ち着いて話ができそうだな。お前これからどうするんだ?」
「どうする……ですか?」
「ほらアレだよ、目的っつーか、なんつーか。
ジュモの問いに、ゼリルは「目的、と言ってよいのかはわかりませんが」と前置きをして答えた。
「私は、どこかに行かなければならない気がするのです」
「へえ、そりゃどこだ?」
「それは……わかりません」
それを聞いたジュモは、「ぷっ」と吹き出した
「ぎゃはは! そんなことだろうと思ったぜ」
「な……! 何も笑うことはないじゃないですか!」
「なあゼリル。俺と来ないか?」
「あなたにも、何か目的があるのですか?」
「そういや、まだ言ってなかったな」
そういってジュモは、胸元にしまってあったペンダントを引き抜いた。
「俺はこいつをパザラの妹に渡すために、聖地に向かってる。パザラは俺の親で、
続けてジュモは、指で地面にスピトゥールの大地を描いた。
スピトゥールの大地は海に囲まれており、北に行くにつれ大地が狭まっていく、雫のような地形だ。
「で、聖地ってのはここだ」
大陸の最も北、最も細い部分をジュモは指さした。
「この天辺の場所がジュモの目的地なんですね」
「なんでもここは世界の果てらしい」
「世界の果て……ですか?」
「……正直俺もイマイチ信じていなんだけどよ、なんでも聖地には強い聖なる力を操る聖女がたくさんいて、闇の国の入り口を塞いでるんだってさ」
「なんだか壮大な話ですね……その、闇の国、というのは?」
ゼリルの脳裏に浮かんだのは、先ほどまで自分を執拗なまでに追いかけていた
「そうか、ゼリルは『聖魔大戦』も知らないんだったな」
「はい……」
「このスピトゥールには、反対側があるんだ」
ジュモは雫型のスピトゥールの大地のさらに北に、鏡写しになったもう一つの雫型の大陸を書いた。
二つの雫型の大陸が線対称につながり、大地の形はあっという間に雫から、八の字型に変わった。
「この反対側の大陸ってのが闇の国だ。そして、俺たち住むスピトゥールは昔、『光の国』って呼ばれてたらしい」
そうしてジュモは『聖魔大戦』を語り出した。
「その昔、闇――
戦いの結果、闇の勢力は負けて、光の大陸から闇の力は排除された。
境目では光の壁を貼って封印している」
「今、壁の向こうはどうなっているのですか?」
「……さあな。復活した
「――パザラの妹が聖地にいる、ということは、妹様は、聖女なのですか?」
「さあな」
「え……?」
「パザラが妹の話をするなんて、あの時がはじめてだった。」
「俺はパザラが死ぬ瞬間まで、パザラに妹がいることすら知らなかった。パザラは俺に語らなかったんだ。……でも、死に際に頼んだ。
―― だから俺は、いかなくちゃならない。
「ジュモ、私の成すべきことがわかるまで、旅にお供してもよろしいですか」
「ゼリル……。よし、じゃあ決まりだな。じゃあ次の目的地は――」
ジュモが言いかけたその時、ゼリルから放たれている光が、眩く輝きはじめた。
「きゃああっ!」
「うおっ! なんだ!」
そして次の瞬間。光はと
「熱っ……くねぇ……? つーか、今度は一体なんだよ!」
「――ジュモ、分かりました」
慌てふためくジュモとは反対に、ゼリルは落ち着き払っていた。
「あ?」
「この光が指し示す先に、私が目指すべき場所があります」
「そうなのか? でもよぉ……」
「信じられないというならジュモ、私の体を反対方向に向けてみてください」
「反対に……? まぁいいけどよ」
ジュモは言われた通りにゼリルを持ち上げ、反対側に向けようとするが――
「うおっ‼︎」
ジュモの怪力をも上回る勢いで、ゼリルはすぐに元の方向へと向いてしまった。
それはまるで、方位時針が北を指し続けるかのようんだった。
その勢いに振り回され、吹き飛ばされたジュモが地面に転がる。
「これでわかりましたか?」
「……ああ、まるで何か、強い力に引っ張られてるみてーだった」
「私も同じように感じました。――だからきっと、この光は私を導く光なのです」
「真北の方角か……確か『ジラーマ』っつー人間の街があったはずだ。避けて通ろうと思ってたが、仕方ねぇ」
ジュモは立ち上がる。
「さあ行こうぜ、ゼリル」
こうして、野生児ビーストテイマーと野良おっぱいの旅が幕を開けた。
ちなみに、ジュモがバックパックを、寝床にした木の上に置き去りにしたことに気づいたのは、この直後のことだった。
◇
「はあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜…………」
ジュモは大柄なシカの
「さっきからため息ばかりついて……、聞かされるこっちの身にもなってくださいよ」
呆れたように返答するのは、ケリュー・ディアーの首元に跨がった――もとい、へばりついているゼリルだ。ケリュー・ディアーが地面を蹴るたびに、その乳房がばるんばるんと盛大に揺れている。
「だってよ〜〜〜〜……」
そうぼやくジュモの背にはバックパックはなかった。
――遡ること、一時間前。
バックパックを木の上に置き忘れてきたジュモは、大型鳥のビーストの力を借りて谷を超え、寝床にした木まで戻ったのだが……。
「――パックがねぇ‼︎」
木の上に登ってみても、そこにパックはなかった。
「本当にこの木で合ってるんですよね?」
「ああ、それは間違いない。でも一体どうして……」
するとジュモは、パックを盗んだ犯人の痕跡を見つけた。
「なるほど、そういうことか……」
「ジュモ、何か見つけたのですか?」
「ゼリル、これ見てみろ」
ジュモが指差した木の幹には、小さな傷があった。
そして、よく見ればその傷は、一定の間隔で木の幹についているようだった。
「ジュモ、これは?」
「一度降りるぞ」
ジュモはゼリルを抱え地面に降り立つと、今度は地面を指さした。
「これ見りゃ分かるだろ」
そこには、寝床にした木を登ったであろうお、小さな
「ひょっとして、この足跡の主が、バックパック消失の犯人だと?」
「ああ。多分シーフラビットの仕業だな」
シーフラビット――二足歩行に進化したウサギのビーストで、その最たる特徴は珍しい物を見つければ、それが何であろうと巣穴に持ち帰ってしまう手癖の悪さだ。
「あいつら、珍しいものを見るとすぐ盗んでっちまうからな」
「では、この足跡を追いかければパックが見つかるわけですね」
「まあな。だけど、追いかけるのは辞めだ」
「え?」
「あいつらが物を盗っちまうのは本能だからな。人間が欲に眩んで盗むのとは訳が違う。それにこの跡をよく見てみろ。行きの足跡に比べて、すげぇ地面が抉れてるだろ? 俺のバッグにゃ色んなもんが詰まってた。だから普通には運べなくて、地面を思いっきり蹴って、少しずつ押しながら運んでったはずだ」
「凄い、痕跡からそんなことまで……」
「
――ということがあったのだが……
「自分でバッグを取り返さないことを選んだのだから、もっと堂々としてなさい!」
「そうは言ってもよぉ、あのバッグには旅の途中で出合ったビーストからもらった物とか、色々入ってたんだぜ? それとこれとは話が違うんだよぉ……」
「あっ! こらっ! なんで私を揉むんですか!」
ジュモは腹いせとばかりに無言でゼリルを揉みしだき続けた
「……改めて見ても、やっぱ人間のおっぱいだよ……」
「やめてください! 私だって、水面に映る自分の姿を見て仰天したんですから」
「つーか、この光も一体なんなんだ?」
ジュモは好奇心のままに、両手でゼリルの両の光――すなわち乳首のある位置をつついた。
「ひゃんっ‼︎」
「なっ、なんだよ妙な声だして!」
「あなたこそ何考えてるんですか!」
「だっ、だってほら、光ってるに触ったらどうなるのかとか、色々気になるだろ!」
「信じられません! 次に同じことしたら絶好――は、私が困ってしまうので――二度と口を聞きませんから‼︎」
「分かった、悪かったって……」
「それで?」
「あ?」
「それで、何か分かったんですか、私のちく……胸の光を触って」
「あー……いや……」
「なんですか、分からなかったのならそれはそれでハッキリ言いなさい」
「分かったっつーか、その光を隠してたら、どうなるんだろうなって」
「どうなる……とは?」
「その光って、聖術の光に似てるんだよ。もしかしたら
聖術――主に聖女など、素質を持ったもののみが扱うことのできる術であり、その光は淡い緑色をしている。
「つまり、私が昨夜追われていたのは、この光が剥き出しになっていたからであり、光を隠してしまいさえすれば追われることもなくなる、と」
「まあな。俺も聖術のことはよく知らねーから、多分だけどな」
「……しかし成程、試してみる価値はありそうですね」
「ただ、光を隠すってなるとどうしたもんかねぇ。バックがありゃ、その中にしまったんだけどよ」
「やるからには、徹底的に光を遮断できるようにしてくださいよ。たとえばそう、何かで私の全身をくるんでしまう、とか」
「……! なるほど、その手があったか」
◇
あれから数刻が経ち、草原には、再び夜が訪れようとしていた。
ケリューディアーはナワバリへと返し、現在ジュモたちは、通常時の速度はイマイチだが、とにかく逃げ足の速さに定評のある馬のビースト、『エスケープ・ホース』の背に乗っていた。
「(ジュモ、現在の状況はどうです?)」
ジュモの腕の中から、やけにくぐもったゼリルの声が聞こえてくる。
「ああ。まもなく日が暮れそうだ。……それにしても今のお前、“サザダンゴ”みたいだな」
サザダンゴとは、その名の通り、ダンゴをサザと呼ばれる植物の葉で包み蔓で縛った菓子である。
ジュモが似ているといったのもそのはずで、今のゼリルは植物の葉で全身を包み、蔓で縛ることで光が外に漏れないようにしているのだ。
それからすぐに夕日が沈みきり、いよいよ検証が始まった。
「駄目じゃないですかあああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
「俺に聞くなあああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
この阿鼻叫喚の状況からわかるように、検証は大失敗。ジュモは今日も
「なんであいつらゼリルに気づけるんだよ‼︎‼︎‼︎‼︎」
「全身を包んでなお光の遮断が不十分だった、もしくは私が狙われることと光の見える見えないに因果関係はなかったということではないでしょうかあああああああ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」
「真面目に言ってる場合かああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎ 頼むエスケープホース‼︎ 全速力で頼む‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
『言ワレ無クテモ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎』
この瞬間、ジュモとエスケープホースの思いが心の底から一致したことで、テイムによる能力上昇が上乗せされ、エスケープホースは見事なまでに
◇
朝日が大地を照らす中、ジュモとゼリルの旅は二日目を迎えていた。
ちなみに、エスケープゴートはあの後すぐに逃げ出してしまったので、現在乗っているのは、背中に大きなコブが一つついた馬、『ハンプ・ホース』だ。
「ひ、酷ぇめにあった……」
「それは私のセリフですよ馬鹿者!」
「お前だって俺の作戦に賛同してただろうが!」
「それは……そうですが」
「ったく夜になるたびあの調子じゃ命がいくつあっても足りなねぇ。街に行ったらどうにか解決する方法を見つけねぇと……」
そうしてジュモが何か策を考えようとした時、ジュモはあることに気づいた。
「あーーー‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
「どうしました⁉︎」
「そうだ、ギルドカードもバッグの中なんだった……!」
「ギルドカード……?」
「ギルドカードってのは、自分がどの程度の冒険者かって情報を書いてくれて……まあ俺はそっちのほうはどうでもいいんだけどよ……それがないと街に入るにも金が必要なんだよ!」
そう言ってジュモがポーチの底から出したのは、数枚の硬貨だった。
「これじゃ、〇〇〇〇が買える程度だ……」
「なるほど、このままでは街に入ることすらできない、ということですね」
「そういうことだ。街に入りたかったらお前も何か作戦考えてくれよな」
「そうですね、うーん……」
「あ! 天才的な作戦を思いついたぜゼリル。お前の
「私の……ですか?」
「ああ、まず適当な商人か何かの馬車を見つけるだろ? そして『今夜お前は
「却下です」
「なんでだよ」
「相手に不条理を押し付けるそのやり方が気に入りません。それに、商人を連れて魔物から逃げ切れる保証はありません」
「……やり方が気に入らねぇってのは知ったこっちゃねぇが、逃げきれない可能性があるってのは確かにそうだな」
「そこはシンプルに、商人に物を売るというのやり方でもいいのではないでしょうか」
「……! 確かにそうかもしれねぇが、売るっつっても何売ればいいんだ? 知っての通り俺は今何にももってねぇぞ」
「そうですね……道中、薬草や果実を採っていっていはいかがでしょうか」
「その手があったか! よしゼリル、その作戦でいくぞ」
◇
ジュモ達は街までの道中、薬草や果実を、
現在、ジュモが背負ったお手製の植物のツルで作ったカゴの中には、それらがぎっしりと詰め込まれていた。
そして、街に大分近づき、街道に差し掛かったところで、ジュモたちはついに二頭の馬が率いる荷馬車を見つけた。馬車の手綱を握っているのは、顎髭を蓄えた男だ。きっと商人だろう。
ジュモはハンプ・ホースを馬車の横に付けると、商人との交渉を始めた。
「おいテメェ!」
「ヒッ! と、盗賊‼︎」
「誰があんな奴らと!」
「こらジュモ!」
「うわあ! おっぱいがしゃべった‼︎‼︎‼︎‼︎」
動揺した商人が手綱を無理やり引っ張ったことで、混乱した馬は暴走し、街道から外れた明後日の方向へと走りだしてしまった。
「馬鹿野郎‼︎」
「ジュモ追いかけてください!」
岸壁が迫っていた。
「うわあああああ‼︎‼︎‼︎‼︎」
ジュモはハンプ・ホースの背から飛び出し、暴走する馬車の正面へと周りこんだ。
「止まれえぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎‼︎」
ジュモの両手からに伸びたリンクラインが馬に届き、理性を取り戻した馬が必死にブレーキを掛ける。だが勢いは戻らない。
「大樹象の足棘《エレファントスパイク》 !」
ジュモはレガースの足の裏からスパイクを迫り出させ、正面から馬車を抑え込む。
「うぎぎぎぎぎぎ……!」
そして、すんでのところで馬車は踏みとどまった。
「っぶねぇ……」
「ジュモ、大丈夫ですか……!」
ゼリルもハンプホースに乗り、ジュモのところに歩いてくる。
おっぱいが喋っているところを再び目撃し、それが現実だと悟った商人は、力なく馬から降りた。
「あ、あんたら何もんだ……何が目的なんだ……」
「俺たちは、あんたに物を売りたい」
◇
再び街道近くまで戻った一向は、改めて顔を合わせていた。
「……で、その喋るおっぱいは一体なんなんだ」
「おっぱ……まあいいでしょう。私のことは珍しい
「お、おう……。ビーストとこんなに流暢に会話するなんて、妙な感じだ。……こんなビーストがいるなんて、聞いたこともねぇけどよ……つーことは兄ちゃんがテイマーか?」
「ああ」
「……分かった。まずはその売りたいものとやらを見せてくれ」
結局、商人は少し考えたあと、ジュモ達の取引を聞くことにした。 ジュモ達が幸運だったのは、この商人が生粋の珍しいもの好きのギャンブラー気質だったことだ。
ジュモは、リュックから道中で採っておいた果物を見せた。
「ふむ……、どれもこの辺りで採れるもんではあるが、質がいい全部合わせて2000リアってところだな」
「……それじゃ足りねぇ。もっと高くならねぇのか」
「無茶言うな。その変の商人じゃ、難癖つけてもっと安く買い叩いてるところだ。交渉に応じてやってるだけでも有り難く思って欲しいもんだ」
「ぐぬぬ……」
「それより、そんな珍妙なビースト連れてるくらいだ。もっと珍しいもん持ってないのか? 毛皮とか鱗とか」
そう言われ、ジュモは自分のポーチにフォレストドラゴンの鱗が入っていることを思い出し、取り出した。
「そ、そいつはフォレストドラゴンの鱗じゃねえか! そうそう、そういうのを待ってたんだよ! さあ交渉をはじめようじゃねぇか」
「――いや駄目だ。こいつは金に換えるためにもらったもんじゃねぇ」
「……そうかよ、それじゃあ交渉は終わりだ。珍しいもん見せてもらった例に、それは2100リアで買い取ってやる」
そうして、商人は荷物をまとめ始めた。
「待てよ」
「なんだ? これ以上値段を釣り上げろってのは無理だぞ」
「あんたの荷物の中、バレちゃ不味いもん詰んでるだろ、クスリだな?」
「へぇ、カマかけて脅そうってか」
「カマじゃねぇさ、実際聞いたんだ」
「聞く? 誰に」
「カーマとルーシュ」
「……あ?」
商人の顔からサアっと血の気が引いていく。
なぜなら、その名前は、実際に馬に付けた名前だったからだ。
「俺はビーストの声が聞こえてなぁ。あんた感心したぜ、見かけによらず、あいつらのこと大事にしてんだな。こまめに蹄の手入れしてくれてありがたがってるぜ」
「そんな……ばかな」
「ただ、手入れの時、ガールフレンドの愚痴を言ってくるのは不満だってさ。商人のグルゼさんよ」
それは、二頭の馬しか知り得ない事実であり、ついでのように名前を言い当てられたのでは、商人――グルゼは信じざるをえなかった。
「……参った。こっちも訳ありでね、チクられて商人免許を剥奪されちゃ困るのさ」
そういってグルゼは5万リラを差し出した。
「毎度――例に教えておいてやる。ルーシュの後ろ右脚が痛むらしい。街に行くんだろ? 診てやってくれ」
「お、おう……」
「あんな奴に弱みを握られるとは、最悪の日だ」そう思いながらジュモ達の背を見送るグルゼ。
一応ジュモの言う通り、獣医にルーシュの足を見せたところ、本当に骨のヒビと関節の炎症が見つかったのは、別の話だ。
02 ジラーマの街
ジュモ達は、ゼリルのことを不審に思った衛兵と一悶着あったものの、無事街に入ることができた。
ジラーマの街は、スピトゥールの大地の南部に位置するため強力な
また、周辺に村が多いため、お登りで冒険者になる物が多い街でもあった。
そんな街で、ジュモ達がまずするべきことはゼリルの目的地を探す――ことではなく、ギルドへ行き、ジュモのギルドカードを再発行することだった。
これからの旅、身分証であるギルドカードがないと、また面倒な事が起こりかねないからだ。
「さて……ギルドギルド……」
どこからどう見てもこの街に来たばかりのジュモを見兼ねた男がジュモに話しかける。
「ああ、ギルドなら通りを真っ直ぐ住んで、宿屋を曲がった……うわおっぱい⁉︎」
「おう」
「ジュモ!お礼を言いなさい!」
「……ありがとよ」
「お、おっぱいがしゃべったあああああ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
仰天する男もつゆ知らず、ジュモたちはギルドの前に到着していた。
他の建物より一際大きく、屋根の上に六角形のシンボル。
中にはカウンターボード
飯のスペース。
危険な
「取得試験の方は2回へ」
2階は広々とした1階とは異なり、いくつかの部屋にわかれていた。
順番待ちの札を持って座っている。
真新しい軽装、おどおどとした少女、中には荒くれ者のようなものもいるが、再取得のものだろう。
「幅広いですね」
「ああ、」
ジュモが窓口に話しかける。
「なあ、ギルドカードの再発行したいんだけど」
「かしこまりました。こちら、三日間行った初回の試験とはことなり、再発行ですので、一日間の実地試験となっております。お一人での試験でよろしいでしょうか」
「ああ」
「他の一人の人とパーティを組んでのD級討伐依頼の行動にでてもらいます。合否については、私が同行しますので、その場の行動で判断いたします。日程は……明日となりますがよろしいでしょうか?」
「……明日か、わかった」
その帰り道
『なるほど、複数人で受けるのですね。』
「他のやつらがチンタラやってやがるから、ささっと終わらしちまったよ。」
『……パーティである意味は……』
「さあな、けっこうテキトーだぞ?」
適性によるものが大きく、人による差が大きい。そしてなにより、間口を広くして冒険者を増やしたいため案外ゆるい。
落ちる理由の主なものは「若く、成長の見込みがあり、まだ実力不足」、「他者を過度な危害を加えようとする兆候がある」、「犯罪をしそう」くらいだろう。
一応、知識に対する講習も一度あるが、覚えていないものも多い。
――結局のところ、自己責任によるところが大きいのだ。
「それでは、別室にて適性検査をおこないますので、ついてきてください」
その前にサイコロ投げる人間追加?
個室には一枚の用紙とその上に正八面体のサイコロ。
部屋が小さめなのは、個人情報のためだ。
「すでにご存知かとは思いますが、改めて説明さえていただきます。あなたには今から、念を込めてこのマジックダイスを振っていただきます。そして、その結果であなたの適性と聖力の量を判別することができます。
「力、技、精神、この四角形の中に様々な職業のイラストが描かれている。
力には剣士や武闘家など、筋力が求められる職業が。
技にはシーフやアサシン、アーチャー、レンジャーなど、器用さが求められる職業が。
精神には魔法使い、踊り子や歌姫など、精神力を使用して、不思議な力をあやつる力が。」
ここに描かれているものはあくまで戦闘に活かすことのできる職業であり、
教会には、家事、農夫、農夫などの職業についても描かれており、紙面のおおきさは、長机いっぱいにも及ぶ。
そして、ビーストテイマーは技と精神の間、そして力から最も離れた位置にある。
「位置は職業適性を、サイコロの出目は聖力の強さを表します。そして、4以上であれば、聖職業の適性がでてきます。剣士ならば聖剣士。特に、魔法使いや踊り子ならば、聖女や聖人となります。
ジュモさん、以前の結果は?」
「ああ、ビーストテイマーで、聖力は2だったな」
「承知いたしました。では、マジックダイスを強く握りしめてから振ってください」
ジュモがダイスを転がすと、前回と同じようんい、サイコロがまるで意思を持っているかのように動き、ビーストテイマーのコマの方へと転がった。
勢いづきすぎたのか、コマを通り過ぎ、机から落ちるすんでのところで止まった。
だが、前回とはことなることが起きた。
「――サイコロが、止まらない……?」
マルカが目を見開いた。
サイコロは止まらず、角を設置面にして、くるくると回り続けていた。
「すっげぇ、回り続けてるぞ。おもしれぇ」
ジュモは無邪気にわらっているが、反面、マルカは穏やかではなかった。
「(マジックダイスは絶対のはず……これはいったい。いままで何百、もしかしたら何千回と測定に立ち合っていた。けれど、こんなことはじめて……。いったい、何が起こっていると言うの……?)」
「あれ? でもこのまま周りつけるなら、測定できなくないか? そしたらオレのギルドカードはどうなるんだ!?」
『ジュモ、私をおいてもう一度サイコロを振ってみてください』
会話を妨げないよう、口を閉ざしていたゼリルが話しかける。
「……? わかった」
「はい? 今、何か言って……」
ジュモは一切躊躇せずにサイコロを振った。
「ああ!」
マルカが未知の現象を惜しむような声を上げたが、ふりなおされたダイスは、”2”をさしていた。
「お、直ったぞ!」
「は、はい、たしかに……ジュモ様は聖力2のビーストテイマーとしての適性があるようです」
「おう。じゃあもう帰っていいのか?」
「は、はい……明日、9時にここに集合お願いいたします」
◇
帰りみちのことだ。
「なあ、なんでわかったんだ?」
『いえ、ひょっとしたら、私の聖力が影響しているのかも、と思いまして』
「なるほどな。魔物を帯び寄せるって、まずくないか?」
『はい……魔力が漏れ出てる状態ですからね。こんな状態ではとてもいけないでしょう。
「聖職者の連中が着てる服なら」
ジュモ、教会に行きましょう』
◇
教会。
各街にある最重要施設。
教会にはいくつもの役割がある。
普通の教会の機能のほか、それは
そのため、聖力が一定以上のもの、聖女、成人を各地に派遣しているのだ聖女を。
昼。
「建物がいくつもあんなtね4んどれだ? まあ近くの建物から入ればいいか」
開けるとそこは奥まで続く礼拝堂だった。
ステンドグラスから日が溢れ美しい。
その美しさたるや、「おお……」とジュモが感嘆の声を漏らすほどだった。
女神が闇の軍勢に向かっていく絵だ。
(すごい迫力だ)
ゼリルはなんだか妙な気持ちを抱いていた。
『引き込まれるような絵です』
『だな』
「……だけど、誰もいないな」
『そのようですね。別の建物を見に行きましょう』
離れの建物へ移動。
覗き込む。
そこには、栗色の髪をした少女が、今まさに着替え中だったであろう
下着姿を晒していた。
すらりとした体を晒していた。
ジュモの顔が赤く染まる。
『……モ! ジュモ!』
ジュモが我に帰ったときには遅く、少女と目があった。
カーテンが閉められ、玄関から勢いよく少女が飛び出てきた。
「こらー! 覗き見とは何事だー!」
「げっ! いやその、別にそんなつもりじゃなかったんだけどよ……」
「わかってるわかってる。これからは気をつけなくちゃね……で、君、私に何か用……って、うわっ! なによそのおっぱい!」
かあっと顔が赤くなる。
「カーテンを閉め忘れた私にも落ち度があったからお咎めは無しにしようと思ったけど!やっぱり変質者だったのね!」
「だぁーもうめんどくせぇな! ゼリル! 動いてみろ!」
『……ジュモがあらぬ誤解を受けたままというのも問題ですし、そのほうがよさそうですね』
ゼリルはジュモの方から降りると、地面に降り、会釈をする。
ゼリルの光を見ると驚いたような表情をした。
「驚いた……聖力を感じたから、てっきりあなたから放たれているものだと思ったけれど、まさかこの子のものだったなんて……この子……聖獣なの?」
――聖獣 の説明
「それが、知り合ったばっかりで何にも知らないんだ。何より、こいつ自身、記憶喪失になってて、よくわからない」
「なるほど……私も検討つかないわね」
「それよりお前、聖力「感じ取れるのか?」
「ええ、当たり前じゃない。だって私、聖女だもの」
「あ、、あんたが聖女!?」
「ええ、あたしはこの街に配属された聖女ヒルナ。聖女なんだからもっとお淑やかにしなさい、とはよく言われるわ」
栗色の長髪をたなびかせる。
「あなた名前は?」
「オレはジュモ、旅のビーストテイマーだ。こっちはおっぱいのゼリル」
『こら!おっぱいと言うなとあれほど……』
「へぇ。テイマー。なるほど、それで。」
「――なるほど、どうみても信仰深そうには見えない君が教会に来た理由がわかったわ」
ヒルナがミニスカートをつまむ。生足が見えてドキッ。
「その子のために、聖布が欲しいんでしょう」
「ああ、そうだ」
「……たしかに、今の聖力が漏れ出してる状態はすごく危険ね。
「あなたなら、布は少なくてすみそうだけど、それでもこれは聖地でしか作れない超貴重品なの。おいそれとあげるわけにはいかないわ」
「ちぇっ、ケチくせーな」
『こらジュモ、失礼ですよ』
「……でも、なんだか私、この子のこと気になるわ。流石に服ってのは無理だけど、補修用の切れ端くらいならあげられないこともないわ」
「本当かっ! なら」
「た・だ・し、これから私の言う条件を達成できたらね」
「ぐぬぬ……勿体ぶりやがって……いったいなんなんだよ」
「あなた、等級は?」
「ああー、一番下。しかも今はギルドカードない」
「……質問を変えるわ。”あなたが今まで倒した
「……ドラゴンだ。三頭。闇に囚われ、しかたなかった」
――本当であれば、金等級はくだらない。
「あなたには、とってきてほしいの素材を」
「実はここのところ、森に毒が出たって話があって、毒が足りなくなってきてるの。それでっほしいの。値上がりしててね……ここは南部の街だから上から降りてくる予算も少なくてね……」
教会は治療をするのだ。
「聖力の強い、澄んだ場所にしか咲いてない花だけど、見つけられそう?」
「今現物はあるか? 確かに、見た目を知らないんじゃ探しようもないものね」
ヒルナは「ついてきて」というと出る。
入った先は様々な薬草や素材が保管された場所だった。
「聖女は治癒術使えるんだけど、聖女が不在だったり、派遣された聖女が治癒術が使えなかったりした時のために備蓄してあるの。かくいうあたしだって、毒だったり、状態異常の治癒は苦手でね、あると重宝するのよ」
「えーと、ポワラスの花はこれよ」
淡い翠色の花だ。
『この花の見た目を覚えておけばいいのですね。こんなきれいな花、見違えようもなさそうですけれど』
「これ、一個借りてもいいか?」
『一輪、です』
「……一輪、借りていいか?」
「何に使うのかしら?」
「ああ、それはだな――――」
「それと、頼みたい理由はもう一つあるの。危険なのを見たって話がある」
◇
ジュモたちは早速森出た。
「ったく、とんだつかいっぱしりだぜ」
『まあ、それだけ貴重な品を譲りうけるわけですし、こればかりは仕方がないでしょう。正当な対価、というものです』
「はあ、そういうもんかねぇ……」
『そうですジュモ、彼女、南部の街といっていましたが、あれはどういった意味ですか?』
「ああ。
「北になにかあるのですか?」
「何かあるも何も、最北端の聖都では闇の世界の入り口を封印してる。その影響で闇の世界に近ければ近いほど強い
「なるほど……では、ジュモの聖都への旅は相当に危険なものになるのでは?」
「……ああ。だが、仕方ねえ」
「うし、あいつらに声かけてみるか」
そういってジュモは蜂の群れに近づいた。
「おーい、お前らこの花しらねぇか? もし教えてくれたらたくさん飯食わせてやる」
『オイシソウ! ニオイ!』
「あー、こらこら、悪いけどこれはあげられねーよ」
◇
「まいったなー、これだけでもみつけられねぇのか……」
『ん?』
「どうした、ゼリル」
『ジュモ、ポワロスの花は聖力の濃い場所に咲く、でしたよね』
「ああ、そういや言ってたな。つっても、オレ聖力なんて感じ取れなかったしなぁ……」
『わたくし、わかるかもしれません』
「まじか!」
『はい。実は、何か気配を感じるのです。街の中に入ったあたりから特に強く感じていた気配。そしてその気配は、聖女ヒルナの中から最も強く感じました。もしかすると、これこそが聖力なのかもしれません』
「おお、多分それだ!」
ゼリルについていく。
「まて!」
闇が現れる。
割って入る。
「
ガントレットが広がり、スクトゥムトータスの腕の甲羅ようになった。
そして右腕は亀の頭部のように小さな牙が無数についた手甲に。
「ゼリルと同行するんだ。オレも戦い方を変えなきゃな」
パリイすると、ゴブリンに噛みつき振り回す。
スクトゥムトータスの戦い方そのものだった。
「オレの戦い方は
エルウェアタイガー!!
蹴散らす!
「よっしゃ、行くぞ!」
次から次へと這い出てくる
「本当に毒を操る
『……ジュモ、おそらくこの先です』
「げぇ……」
目の前には薄暗い洞窟。
闇が濃いほど
「ま、しかたねぇ。隠れながら進むってのはなにより性に合わねぇし、なるべく一気にかけぬけるしかねぇか」
」
ジュモのブーツから爪が生え、地面に食い込む形を取る。
ゼリルをバックパックに押し込むと
ガントレットからも小ぶりな爪が生える。
ジュモは爪を地面くいコマえる、四つ足で駆け出した。
(チーターと同じ方式でダッシュ。)
光が見えた。
その時だった。足を何かにとられた。
蜘蛛だ。
足を取られる。
ジュモは宙ぶらりん。
切って脱出
戦闘開始、
爪を出して飛びかかる。
スキュラと互いに突撃、
腹の下へスライディング爪を突き立てるが、火花がちるだけで今ひとつ。
『こいつ……爪じゃだめだ。ハンマー!』
鋭い前足と何合か打ち合う。
パリイをとる。
しかし尻から糸を出し、後退されてしまう。
ちょこまか逃げ回りやがって
スキュラが糸を吐き足場にねばねばネットを展開。
「ちぃっ!」
空中戦ならオレだって負けてらんねえぜ。
片手のハンマーを解除。
足をサル、しっぽ解除。
壁をけり、岩のつららにつかまり空中でうちあう。
スキュラのバランスをついに崩し、腹を剥き出しにして落ちた。
落下の勢いでハンマーを――!!
スキュラがキエエーーと叫んだ。
すると、ぐいとジュモは後ろに引っ張られ、岩に叩きつけられる。
ゼリルを庇い、とっさに左腕を痛めた。
目の前に、二回りほど小さいが、もう一頭のスキュラが現れた。
「マジかよ……」
追い討ちのようにバックパックに糸をつけ、引っ張ってきた。
「こいつ! やっぱりゼリルを狙ってきてやがる!!」
引っ張られ、キバが飛び出た。身を捻った交わすが、バックパックの間を貫いた。
「くっそ、せっかく治したってのに……」
「ゼリル!!」
ゼリルが転がり出る。
ジュモ、抱き抱え転がる。
意図に絡まる。
運悪く、ジュモの目に絡みつき、視界を塞いだ。
『ジュモ!私のせいで……』(ひどく狼狽)
「ゼリル、力を貸してくれ。外は見えるか?」
「はい」
「やつら、どうしてる?」
「近づいてきます。でももう勝ったといわんばかりにゆっくり近づいてきます」
「……ゼリル、やつらをめいいっぱい引きつけるぞ。」
『オレを信じろ!!』
脇腹かすめる。、
「がはっ!!」
引きつけろ……引きつけろ……。
『やつが口を開けた瞬間を教えろっ!!!』
『今です!!』
つのでひとつき。
弱点を突いて倒す。
ツノが貫いた。
ギャアアアアアアアアア!!!!
射出!!
「よしきた!!! カマキリ!!」
消えゆく小さい方。
狼狽える大サイズ。
ジュモは飛び上がり、
両手を合わせ大きな金槌のようにすると振りかぶった。
倒した。
歩くとひらけたところに出た。
まるで花畑だ。
たくさん毒消し草が咲いている。
「おっと……」
ジュモが倒れた。
「ジュモッ!!」
「あのとき毒をもらってたな……」
「これだけ花があれば……」
「……ああ、こいつは塾生させないと意味がねぇ」
ゼリルに天啓。
『ジュモ、わたしがなんとかします』
意識を失うまぎわ
ジュモの中に、口から何かが注がれていく。
ジュモは目を覚ます。
毒がない……?
それどころか、傷も、治っている……?
乳だ。
ぜ、ゼリル!?
恥ずかしそう。
「な、おまえ乳を出したのか!?」
「できるきがして、やれる気がして」
どんな薬だってこんな効果はない。一流の聖術師に匹敵する。
『すみません、なんだか眠く――』
ゼリルは夢を見た。
――大戦。
それはまるで、あの絵画のような――。
◇
「実は気絶系の毒だったので死ぬことはありませんでした。というオチ
「スキュラ……それも二匹だなんて……。ワイバーン便で聖都へは手紙をおくっておくわ。」
「ワイバーン便?」
「ええ、知らない?」
「ワイバーンに手紙を運ばせるのか?? 」
「普通は鳥系なんだけど、タフなワイバーンに運ばせるの」
「気になるなら、一緒に見にくる?」
「手紙書くからちょっとまっててね」
「こちとら、お前のせいで死にかけたんだからな。
「でも、花畑にはたどり着いていたんでしょ? なら大丈夫だったじゃない」
「おい」
「誤解してるみたいだけど、スキュラの毒はせいぜい5分程度よ。危険なのは、巣を張ることと、その凶暴性。ベテランの冒険者でも命を落とすこともあるの」
「約束の聖衣だったわね」
「これだけかよ」
「これ、一着〇〇リアよ??」
「げっ……」
予備もつけてあげるから
「なら…」
◇
昼なと飛行場を見学した帰りのことだ。
街の外側の飛行場を目指す中、男の喧騒が聞こえてきた。
見ると、三人の男と、赤髪を後ろで縛った少女がなにやら揉めているようだった。
少女の身長は男たちの胸ほどもなく、小柄。12歳ごろだろうか。
「てめぇ! 警戒を怠りやがったな!!」
「そんなことない! いつも通りちゃんとやったんだよ!!」
「ならどうして襲われた!!」
仲間一名が死に、一名が毒を浴びる惨事となった。
大損害だ。
理由→さすがにシュロリーが追い出される、
→結構なプレみをした? 仕方なく。
警戒を怠った??
毒?
強いモンスター??
気配を消せる??
ギルドカードがない。
彼らとともに最終戦。
試験は別の人たち。
ヒルナと飛行場に行った
テイマーに出会う
聖女と街を歩く
テイマーが不当な扱いを受けている
クエストに出る。
例のテイマーのビーストと出会う。
「ろくに戦闘の役にも立たないテイマーのくせに、生意気をいうんじゃなぇ」
「……テイマーの役割は、テイムした
「ちっ、……これだから人間は嫌いなんだ。」
『イライラ、するのであればジュモ、彼女を助けなさい』
「あ? なんで俺が人間なんか……」
ジュモの目に、彼女の足元にリザードが見えた
『こいつ……きらい……!! ごしゅじん……いじめる……!!』
「おいてめぇ!!」
「あん? だれだてめぇ、」
「こいつと同じ、ビーストテイマーだよ」
「なんだ、お仲間のピンチに助けにきたってのか?」
「そいつはちょっとちげぇな。俺は、そいつの
「へえ、助けるったて、どうするんだ?」
「あ? そんなん簡単だろ。てめぇをぶちのめせば済む話だ」
男が青筋を立てる。
「獣の力を借りなきゃ何もできないテイマー風情が、『重戦士』のゼイラー様相手になにかできるとでも?」
「あんた! いいから、あんた、鍛えてるんだろうけどテイマーが重戦士に勝てるわけないだろ!」
「あ? そんなんやってみなきゃわからないだろう」
「わかるよ! やつは身体強化に特化したギフトを持っていて、私たちテイマーは一つたりとも持っていない。単純な話だろう! それにあんた、自分の
だがジュモは彼女の言葉に耳を貸さず、ゼイラーの前に出ると、手招きして挑発した。
「こいよ、デクの棒。」
「っ……!! てめぇ……、いいぜこいよ、ボコボコにしてやる」
いつの間にか人だかりができていた。
チョッパーは属性を無効化できるんだぜ。
「おっと、ギルド職員は冒険者の問題には口を挟まない、そうだろう?」
「くっ……」
職員は悔しそうに顔を歪めた。
「いっておくがおれたちゃあいつを助けてやったんだぜ?」
「なんだと」
「弱いテイマーなんざ、俺たちが拾ってやらなきゃ、今頃食いっぱぐれて、ロリコンの変態に拾われてるところだぜ」
「そんなに無駄に振るったら、刃こぼれしちまわないか?」
「心配どうも、こいつは魔法武器でなぁ、刃こぼれしないんだぜ!
2メートルはあろう、自分の身長ほどの剣を高速で振り回す。
「どうだ、これでは俺様に近づくことすらできまい!!」
「なるほど、強いってのは、本当みてぇだな」
「――だがよ」
ジャキッ! と、ジュモのブーツから生え出した爪が、地面食い込む。
それがスパイクとなり、ジュモはゼイラーに飛び込み、急所、腹を殴り抜いた。
「ぐべあぁつ!!」
◇
「絶対に許さねぇからなぁ……!!」
その場には、赤髪の少女だけがとりのこされた。
「……ありがと」
「俺はお前を助けた覚えはねぇ、礼なら、こいつらにしてやりな」
「そっか……うん、ありがとう。二匹とも」
「あいつの言ってた通りだよ。アタシなんか雇ってくれるの、いないから」
「あんたがテイマーなの、わかった。すごいんだね」
ジュモに二匹が懐いているのをみて、ジェロリーは話す。
「私、
幼いころから動物を愛し、愛されていた。
ビーストテイマーの家系。
母親はドラゴンを操るビーストテイマー、英雄。
父親もワイバーンを操る配達テイマー。
武器は槍。母親の影響」
どうしたらあなたみたいに強くなれるの。
「俺は、ギフトを知らなかった。だから、色々できる。」
「わかんないよ」
◇
弓使い、
剣士と一緒に試験を受ける。
ビーストテイマーの侮蔑を受けながら進む。
索敵を潜り抜けてスキュラに襲われる。
一人死亡。
「こいつ! さっきのより強い!!」
「スキュラ!銀等級モンスターです」
「死んだやつは銅等級だったからな……」
「毒ポーションの準備が少ないため、撤退を推奨か……」
「いや、ここで倒せば勲章は確実。」
甲羅にヒビ、
白く柔らかなナニカが、
折り畳まれたいた何かが、ぬるりと飛び出てくる。
女の上半身だ。
アラクネ
超特殊個体――!!
「ヒヒ――コロス」
通常1段階だが、2段階。
つまり――白金級
「撤退です!!」
バラバラに撤退。
すると、チェロリのオウムと、例の男がやってきた。
「た、助けてくれ!!」
『そうだ、こいつを囮にすれば時間を稼げる――!!』
「ひっ!」
『ジュモ! それだけは、なりません』
「なんでだよ!!」
『彼は更生の機会がなかっただけ。彼の境遇を許しなさい』
「慈悲も情けもわかんねぇよ!!」
「うるせえ! とっとと逃げやがれ!!」
ジュモはチェロリの元へ
「毒だ……!!」
草を食わせる。
ーーーーーーーーーーーー
ジュモが吹き飛んだ。私のせいだ。
私がやらなきゃ……!!
「あなた、ジュモのところへ行きたいのね……」
走るチェロリ。
チェロリは、サイコロを投げたときの事を思い出す。
サイコロは、長かった。
一度……そう、一度騎士。
――そう、弓だ。
集中力があがり、スローになる。
目を射抜く!!!
「今よ!!」
チェロリはゼリルを投げた。
ーーーーーーーーーーーー
ジュモは大量失血。
『ジュモ……!!』
授乳。
立ち上がる。
ジュモに、力がみなぎってくる。
前とは、明らかに何かが違った。
全身が回復。
ゼリルが眠りにつく。
――ジュモの体を、安らかな緑の気が、聖気が包んでいた。
「これなら――!!」
ーーーーーーーーーーーー
チェロリ、接近されている。
目を瞑る。
空から降っていたジュモが、アラクネを殴り抜く。
「悪い、待たせた」
「モードゼリル……!!」
――もしあの会話がなければ、ジュモはこの件のことを思い出していなかったかもしれない。
てめぇのおっぱいには、チェロリみてーな未来もなければ、ゼリルみたいな希望もねぇ!!!
パンチ!倒す!!
●報いの件はどうしよう。
消滅を確認すると、ジュモの全身から力が抜けた。
――子蜘蛛が這い出てくる。
「やべ……」
――光が、降り注ぎ、薙ぎ払った。
「ごめん! まだ生きてる!?」
どこまでも陽気で能天気な声。
聖女ヒルナ。
「はは……聖女すっげぇ……」
「アラクネが出たって聞いて、聖なるオーラを感じてきたんだ。」
エピローグ
「弓使い募集!!」という張り紙が貼られていた。
「うん、見たところ漏れ出る箇所ははっきりしてるし、その部分だけ当ててやれば」
ヒルナは補修用の当て布を持ってくると、丸く切って当てた。
ぺたり
どう見てもアレだ。
どんな気分だ。
…不思議と落ち着きます
(連れ歩くこととする
◇
『ジュモ! ジュモ起きなさい!!』
「んだよぉ」
「時間ですよ」
ジュモが眠い目を擦りながらギルドの2階にあがると、受付止めが立っていた。
「よっす」
『おはようございます。あちらの部屋に行ってください。』
⚪️もっとジュモとゼリルの関係に尺を割くべきだよなぁ
部屋に入ると、一匹のサラマンダーと、一話のオウムがいた。
「なんだ! 人間かと思ったけど、お前らが一緒の仲間か!」
『いえジュモ、違うと思いますが……』
「あ?」
『おまえ! なんだ! やるのか! ご主人の敵か!』
『ヤルノカ! ヤルノカ!』
「やらねぇよ〜。お前ひょっとして人間に使えてるのか?」
「ネルメル様! いい人!」
『イイヒト! イイヒト!』
「ご飯おいしい!」
『ゴハン! ゴハン!』
「へ〜! お? ご主人はどこだ?」
「トイレ!」
『トイレ!』
すると、手を拭きながらネルメルが現れた。
「ちょっとあんた! うちの子たちに何してるのよ!」
「ああ、あんたがネルメルか」
「あなた、私のこと知ってるの?」
「ああ、こいつらがいってたぞ」
『ご主人! ネルメル!』
「ちょっと待って、あなたこの子達の言葉がわかるの⁉︎」
「そりゃぁ、俺もビーストテイマーだからな」
ジュモが振り向くと、ネルメルはギョッとした。
「な、なによ、その子も
「って言うか、
「あ? 別に普通じゃないのか?」
「普通じゃないわよ!」
「あ?じゃあお前はどうやって話すんだよ」
「別に普通よ、言葉はわからないけど、怒ってるとか、喜んでるとか、そういうのはわかるもの」
「へぇ、そうなのか」
『ジュモはやはり珍しいのでは? 森で育った、と言っていたから
「ああ、確かに。森で育ったからな。ガキの頃からそうだった」
「森!?」
「はっはっはー、待たせてすまないと思ったが、賑わってるな…む、珍しいものを連れているな!」
やってきたのは剣士。
「揃ったようですので行きましょう」
◇
徒歩移動。
「それにしてもテイマーとはな。せいぜい落とされんようにな」
「ちっ……タークス、索敵お願い!」
「なるほどなぉ」
「あなたもやったら? 自分の仕事しなきゃ落ちるわよ?」
「よくわかんねーけど、オレもお前みたいにすりゃいいんだろ?」
ジュモは空を見て鳥の群れを見た。
「なあ! ちょっと力貸してくれないか!」
小鳥があつまってくる
「見つけてきてほしい」
小鳥がいろんな方向に飛び立った
「あんた今何したの!?」
「? 頼んだだけだが」
「一斉テイムなんて、聞いたことない……」
「テイマーは基本、数日かけてテイムします」
「この子テイムするのに1週間かかったのよ!」
「はぁ、そうなのか」
紛失の方向け試験(やや高難易度)
つよめの魔物出る
「撤退!私たちで叶う相手ではありません!」
「やってやるぜ」→死亡
VSミノタウロス
『BUMOOOOOOOOOOOO!!!!』→こっちのほうが話通じなさそう
「あなた!少しはできるようですね」
「まあな」
「では、」
「あなたはギルドに要請を!私たちで足止めをします!」
「おうよ!」
「やつはミノタウロス。ーーランクモンスターです!」
(テイマーから学んだ先方で撹乱しつつ戦う)
「プロリア!」
「私は防御魔法のギフト持ち。援護します。前衛はお願いします」
「牛野郎!こっちを狙えよ!」
「はは! こりゃいけるぜ」
仲間狙われる。
魔力が切れる
ジュモ、
大量失血。
「ジュモ!しっかり……!」
「こんなに血が失われては……!
「ジュモ……ジュモ起きて……!」
ドクン、
――やれと、
おっぱい。それは生命の重点。
――それは母乳。
ゼリルの体――その乳房につまった母なる神聖は魔力が、
ジュモの体に流れ込んでいく。
シュウウ
ジュモの傷が癒えていき、たちまち血の気が戻ってくる。
はっ!
ジュモが目を覚ます。
っぶねぇ……
ジュモ! ――がミノタウロスと交戦中です。
ここまでか――。
ガキィン!!!
雄々しい背中。
「わりい!油断した!」
なあゼリル俺になにかしたか?さっきから力がみなぎってやがる。
な、なにもしてません!
まあいいや、
がきいん!
防御魔法があった時と同等、いや、
それ以上に衝撃がすくなく感じる。
実技試験、三人パーティゴブリンの予定がちょいつよでてくる。
「回復は試験管の私が行うので」
『ジュモ、これを気に他の方ビーストテイマーの戦いかたを見たいのです』
『ジュモ、あなたの戦いかた、珍しいのですね』
「お前、友達を戦わせるのか?」
「じゃあ、【ギフト】もなくてどうやって戦うんだよ」
『ギフト?』
『――みたいなもんだ』
(やっぱゼリルのせいか…)
魔法の説明パート。
「あとは筆記試験です。と言ってもあくまで常識的な者ですから」
『――ジュモ』
「……はい」
鑑定
色?
黄色から白に
・ビーストテイマーの定義、できることを定時。
『ジュモはなぜ??』
「仲間を傷つけたくない」
『ジュモについてこようとしたビーストたちもいたのでは?』
「いたよ、でも断った」
・もっとおっぱいを活かした設定に?→できること羅列する
知識、(ジュモ10回落ちた)
俺、10回落ちてるんだよな
街は聖なる力のたまった場所を中心に発展。
つよい神聖力は逆に避けていくのだ。
夜でも寝られる
ゼリルは章ごとにレベルが上がる。
各レベルにつき一度ビームを打てる
聖女が駆けつけたときにはもう戦いは終わっていた。
「やはり、魔神が目覚めようとしています」
◇
最北端の地、聖地。
ここ数年。いや、
――”数百年ぶり”の慌ただしさを見せていた。
壁が揺らいだのだ。
”泉”
泉。聖力の泉としか形容できないほどの聖力だまりがあったのだが、
揺らぎを感じた聖女がみにいったところ、顔が落ちていた。
頭の月桂樹の飾り。それは本に書かれていた女神に似ていた。
頭は目を開いた。
「――私はニューリア」
ぱいぱい――
ちち
ぺぇ
にゅう
ちちまる
――求める物^_^
――記憶なき物
聖女
生乳
「胸から離れなさい。」
「あ、じゃあゼリルってのはどうだ」
動物の名前の方がまだマシです。 似てる動物がぁ。
ヒトだよなあ。スライムっぽい名前
マンジュウ
水饅頭
ゲル
ぷるる
カンテン
プリン
タルリル
『ゼリル』
そもそも私のことは、なんと説明すれば
そりゃ……なんだろうな
やっぱ基本は隠しとくしかないだろうな
胸。
サキュバスに呪いをかけられた――とか。
そして、呪いを解く金もない