テイマー   作:しぃすけ

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2024/09/11

 01 0806ゼリルしゃべる

 

 プロット

 

 

 ●もっと街の人と会話して世界観を出していく。

 なんとなく現状閉鎖的感じがある。

 

 

 聖生物――生きるもの

 ライフ

 魔生物――生きてはいないもの(命のいらない者共)

 

 →聖魔の戦いであることを強調

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 ――昔々ことだ。

 

 ――大陸スピトゥール

 

 ――魔を司る神カオスラボスと

 聖をつかさどる女神ニューリアの壮絶な戦いがあった。

 

 オーク、スケルトン、デーモン、それから、肉の塊に、一つ目の霧。砂の怪物、スライム、サキュバス、

 瘴気を纏った禍々しい軍勢を従え。【魔物】

 

 人間、エルフ、ドワーフ、虫、魚、鳥、トラ、オオカミ、ヘビ、ユニコーン、ドラゴン、サンダーバード、人魚

【生物】

 血の通った軍勢

 

 無数の魔物が塵と化し、無数の命が多くの血を流し、骸となった。となった。

 

 壮絶な戦いの末、女神ニューリアは魔神カオスラボスを滅ぼし、

 

 海に囲まれた世界の大陸の果てに追いやり、

 世界の果て、やめの世界へと追いやり、

 

 光の壁でその扉を封じた。

 

 ――こうして生き物たちの世界に平穏が訪れたのだ。

 

 ――生き延びた生命は、命を紡ぎ続ける。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 〇もっと馬鹿馬鹿しい話に。

 ・俺が好きなのは人間の乳だ!

 でもぱざら入ってたよ。おっぱいはいい物だって。よくしらねぇけどな。人間なんか興味もねぇ

 ・ちっちゃい仲間、乳はでかい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇その昔、光と闇の戦いがあった。光の使い、ビースト。

 闇の使い、魔物(まぶつ)

 戦いの果て闇は討ち滅ぼされ、ニューリアの体は世界中に散った。

 

 

 

 

 

 夜の草原をオレンジ色の髪を逆立て、山賊と武闘家を混ぜたような服装の少年が死に物狂いで駆け抜けていた。

 

「うおおおおおおおおおお!!!!! 一体何が起きてんだよおおおおおーーーー!!!!!!!」

 

 背後からはゴブリン、スケルトン、オーク、ゴースト、コボルトなど、この付近に出現しうるあらゆる魔物(まぶつ)――闇から生み出される異形の怪物――が一目散に“彼ら”を追ってきていた。

 

「おいお前!本当に何も知らねぇのかよ!!」

 

 少年は元々鋭い目付きをさらに細めて、右手で抱えている“彼女”に問いかける。

 

「知らないって言ったじゃないですか! 気がついたら追いかけられてたんですから!!!!」

 

 “彼女”は女騎士を想起させる凛とした声で抗議した。

 

「つーかそもそもお前、一体何の生物なんだよ!」

 

 ――そう、少年が小脇に抱える彼女は人ではなかった。

 

 彼女はまるで、人の顔くらいの大きさの饅頭を横に二つくっつけたようなフォルムをしていて、肌質や体温、なによりその柔らかさは、人間の“とある部位”に酷似していた。

 

 有り体に言って、彼女はどう見てもおっぱいだった。

 

 

 

 ――――この日、少年《ジュモ・オレンジバック》は拾ったのだ。

 

 

 

 ――――世にも奇妙な、喋るおっぱいを。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 多くの生命で満ち溢れ、天高く伸びた木々がどこまでも広がる《オルバ大森林》森の中。木々の隙間から降り注ぐ陽光が、招かれざる客人達を照らしていた。

 

 五人ほどのの深緑色のフードを被った人間の男たちがニタニタとした笑みを浮かべながら森の出口へと向かっている。

 

「ギャハハ! さすがお頭、まさか本当にフォレストドラゴンの赤ん坊が手に入るとは! こりゃ当分酒代には困りませんなぁ!!」

 

 その言葉通り、先頭を歩く“お頭”と呼ばれた男の小脇には、中に小動物が閉じ込められた檻が抱えられていた。

 

「クルルゥ……」

 

 檻の中で不安げに鳴き声を漏らしたのは、山羊のように渦巻いた角を生やし、苔のような深緑色の鱗に覆われた四つ足の竜――フォレストドラゴンの赤子だ。

 

 男たちは《ビーストハンター》。希少な動物(ビースト)を密猟し、時には貴族の愛玩動物として、時には武具の素材として売り払うロクでなしたちだ。

 

 フォレストドラゴンはこの森の長である。そして、その子供が攫われたということは、森の動物(ビースト)達にとっては大事件だった。

 

 次第に騒がしくなっていく森。――そして、その非常事態にいち早く気づきハンターたちを追う者がいた。

 

「――見つけたぜ、クソ誘拐犯ども……!!」

 

 その逆立ったオレンジ髪と凶悪な目付きは見間違いようもない。少年、ジュモ・オレンジバックだ。

 

 ジュモは吹き抜ける風の如き身軽さで木から木へと飛び移り、ハンター達への距離を詰めていく。

 

「お、お頭、何か近づいて……」

 

 ハンターたちが気づいた時にはもう遅い。

 ジュモは木の上から大きく飛び上がると、めいいっぱいの恨みを込めて一人のハンターを踏み潰した。

 

 ドッッッシーーーーーーン!!!!!

 

「ぎゃあああああ!!!!」

 

 突如起こった地響きと仲間の悲鳴。

 混乱するハンター達の前に、砂埃の中からジュモがようやく姿を表した。

 

 薄茶色のサルエルパンツを鋼の多関節のベルトで締め上げ、

 その上からは、髪色によく似たなオレンジ色のベストを着ている。

 そんな野性味溢れる服装とは裏腹に、額には、小さな二本角の付いた鉢金が、手足には鋼色が鈍く光る無骨なガントレットとレガースが身につけられていた。

 

「やっと追いついたぜ誘拐クソカス野郎ども!! さっさとをその赤ん坊を返しやがれ!!」

 

 ジュモはびしっと檻の中の龍の赤子を指さしながらハンターの頭目を睨みつけた。

 

「な、なんだてめぇ!ふざけやがって!!」

 

 ハンターの一人が、ナイフで咄嗟にジュモに襲いかかる。

 

「遅ぇ遅ぇ!!」

 

 だが、不意打ちだったにも関わらず、ジュモは目にも止まらぬ速さのパンチで男の顔面をぶち抜いた。

 

「ぐぎゃあああっっ!!」

 

 殴られた男が意識を失い、地面に倒れ伏す。

 

 ジュモの、子供らしさの抜けきらない顔立ちと言葉遣いとは裏腹に、その気迫にハンターたちは気圧され、確かな恐怖を覚えていた。

 

「ひぃっ……」

 

「な、なんだよこいつ……!」

 

「てめぇら!! なにガキ一人に何ビビってんだ! さっさと殺せ!!!」

 

 頭目が怒号を飛ばすと、残ったハンター達はナイフを抜き、一斉にジュモへと襲いかかった。

 数にして四人。それも、その全員が生き物を狩ることに長けた手練れだ。

 

「へっ……その程度か」

 

 ――だがジュモは全く怯まず、ハンターたちの背丈よりも高く跳び上がると、軽やかにバク宙をした。

 そしてその勢いで、背後にあった木の幹を蹴って反動を得ると、次の瞬間にはガントレットに包まれた両拳でハンターたちを殴り飛ばしていた。

 

「ぐべらっ!!!」

「ゴフッ!」

 

「もう一撃だぁっっ!!」

 

 ジュモは身を捻りながら再び跳び上がると、ムチのごとき勢いの蹴りを放ち、残る二人のハンターを薙ぎ払った。

 

「かはっっ!!!!」

「げはっ!!」

 

 ――一瞬のうちに取り巻きは全て倒され、残るは頭目ただ一人だ。

 

「ば、馬鹿な……たった二撃で……」

 

「うるせぇ、いいからさっさと赤ん坊を返しやがれ。そいつは森の宝だ。てめぇの汚ねぇ手で触れていいもんじゃねぇ。」

 

「獣人じゃあるまいし、サルみたいな動きしやがって!」

 

 獣人。

 ――な生き物人間。――な生き物動物(ビースト)

 その二つの特徴を併せ持つ希少な種族である。

 

 ――外見的な特徴を持つ獣人は

 中でもサルの獣人はその姿が人間とほとんど見分けがつかないことも多く、言い得て妙。

 

 もしもその金属の尾が毛皮に覆われていたら、頭目はジュモを獣人と見間違えただろう。

 

「ああそうだ、俺は獣人にゃなれねぇよ」

 

「ああん? 何言ってやがる。誰が好き好んで“半端モノ”になんかなりたがるかよ」

 

 ――半端モノ。

 

 獣人をそう呼ぶものも、少なからずいる。

 

「…………す」

 

「あ?」

 

「殺す」

 

 頭目は一つ、ジュものスイッチを踏んだ。

 

「ぐはっ!」

 

 ジュモの育ての親は、(パザラという名前の)猿の獣人だった。

 故にジュモは、獣人を愚弄するものを許さない。

 

 勝ち目がないことを悟った頭目は、抱えた檻の隙間にナイフを差し込むと、中のドラゴンの赤子に当てがった。

 

「動くな! 一歩でも近づいたらこいつの命はねぇぞ!!」

 

「くるるぅ……」

 

「ド腐れ野郎が……!」

 

 こいつはドラゴンを守りたがっている。効果覿面だ。

 

 頭目がニヤリと笑う。

 

「そ、そうだ、分かったならそのまま両手を上げて後ろに下がれ」

 

 ジュモは頭目を睨みつけながらも後ろに下がる。

 

 今最も大切なのは赤子の命を守ること。ジュモはそれを忘れてはいなかった。

 

「そうだ、それでいい……。いいか、俺が森を出るまでそこから動くんじゃねぇぞ……!!」

 

 

 やがで、ジュモとの十分な距離が空くと頭目は安堵した。

 

 ――だが、もう手遅れだ。

 

 なぜなら頭目は、ジュモの地雷をもう一つ踏んでしまったのだから。

 

「みんな! あいつをやれ‼︎‼︎」

 

 叫ぶと同時にジュモの身体が一瞬光に包まれ、細い光の線が四方八方に、まるで何かに導かれるように飛んでいった。

 

「な、なんだ⁉︎ いや、所詮こけおどし――」

 

 ジュモが叫ぶと森のあらゆる方向から木々をかき分ける音が聞こえ始める。そして甲高い遠吠えや、地を這うような唸り声が聞こえてきた。

 

 そして、ジュモの声に応えるかのように、小鳥が、リスが、鹿が、イノシシが、ゴリラが、巨大な蝶が、動く植物が、翼の生えたネズミが、翠色の狼が――森の動物達が、頭目を取り囲むように一斉に現れた。

 

 そして、|ビースト(動物)たちは皆一様に、ジュモから放たれた、淡い光を放っていた。

 

 呆気に取られた頭目の腕を小鳥がつつき、頭目はたまらずナイフを取り落とした。

 

「しまった!」

 

 咄嗟にナイフを拾おうとするが、今度はそれをリスが攫って行く。

 

「なにぃっ!?」

 

 そしてとどめとばかりに、鹿や猪が頭目に向かって突撃し、頭目はいとも容易く吹き飛ばされ抱えていた檻をついに手放した。

 

「ぐああああー!!!!」

 

 駆けつけたジュモが放り出された檻を受け止める。

 

「っぶねぇ!……よし、今檻から出してやるからな! そこの猿! 手伝ってくれ!」

 

 ジュモの呼びかけに答えたストレングス・モンキー(怪力猿)が檻を壊すと、ドラゴンの赤子が元気よく飛び出してきた。

 

『くるるぅっ!!』

 

「よっしゃ! 元気そうで安心したぜ!!」

 

「ひっ……ひいいいいいいいい!!!!」

 

 その様子を見てただ1人、一目散に逃げ出したのは、ドラゴンの赤子という人質を失った頭目だ。

 

 

「クソッ! クソッ!! あのガキまさか

 ビーストテイマー動物使い》だったなんて……!! いや!それにしたって一度にあれだけの動物(ビースト)を操るなんてできるわけがねぇ!一体どんな手を使って……ぐあっ!」

 

 転んだ頭目はついに大木を背にして追い詰められた。

 

「どうやら鬼ごっこも終わりみてぇだな」

 

「ま、待て……! お前ビーストテイマーなんだろ……? ならレアなビースト欲しいだろ……? 知ってる情報全部教えてやる! だからビーストどもを追っ払ってくれ! 命だけは助けてくれよ!!

 

 頭目の言っていることは全て本当だった。希少なビーストの情報は非常に価値のあるものだ。ひょっとすれば、その交渉を聞き入れるビーストテイマーもそれなりにいるだろう。

 

 ――だが、頭目にとって不幸だったのは、ジュモはそれらに価値を見出さないどころか、嫌っていたことだ。

 

「…………くっっっだらねぇ」

 

「は……?」

 

「くだらねぇって言ってんだ。そんなモンになんの価値がある」

 

「か、価値ってそりゃ…………」

 

動物(ビースト)たちは自分の生まれた場所で、いつだって誰だって必死に生きてんだ。……それをレアだの価値だの、人間の都合であいつらの生活を奪いやがって胸糞悪ぃんだよ!!」

 

「お、お前だってフォレストドラゴンが欲しいんじゃ……」

 

「俺は動物(ビースト)たちが『ドラゴンの赤ん坊が怪しい人間に盗られた』って大騒ぎしているやつがいたから協力して追いかけてただけだ」

 

「なんだって……? 一体、何の話をしてやがる。それじゃあまるで、ビーストの声でも聞こえるみたいじゃねぇか……」

 

 

 

「――ああ、聞こえてるぜ? みんなお前をぶちのめしたがってる」

 

 

 

 ――ジュモは、物心ついた時から動物(ビースト)たちの声を聞くことができたのだ。

 

 

 ビーストテイマーは、ビーストと意思疎通を図ることができる。だがそれはあくまで感覚的なものであり、本当の意味でビーストの声が聞こえるテイマーなど、頭目は聞いたこともなかった。

 

 故に、頭目に向かって響く数々の鳴き声も、ジュモにはこう聞こえていた。

 

『悪イ奴!!』

 

『余所者、追イ出ス!』

 

『敵ダ……』

 

『喰イ殺セーー!!!』

 

 ジュモの耳に森の平穏を見出そうとする余所者に鉄槌を与えよという声が響く。

 

「――なあお前ら。こいつの処遇は森のボスに決めてもらう。それでいいよな」

 

「ボス……だって…………?」

 

 顔面蒼白になった頭目に向かって、ジュモは上を指差した。

 頭目は、恐る恐る首を上げる。

 

 ギロリと自分を睨みつける首長の竜と目が合った。

 

 同時に、頭目が寄りかかっていた巨大な木が“宙に浮いた”。

 

「あ……あぁぁぁ……」

 

 頭目が寄りかかってた木。その正体こそ、誘拐されたフォレストドラゴンの親だったのだ。

 

「あばよ、クズ野郎」

 

「ぎゃ……ぎゃああああああ!!!!!!!!」

 

 頭目が最後に見た光景は、自分を押し潰さんと迫り来る、ドラゴンの足の裏だった。

 

 ◇

 

 ずしーん、ずしーん、ずしーん。

 

 遥か遠くまで広がる平原をフォレストドラゴンの巨大な脚が踏みつけていく。

 

 その苔むした大きな背中の上には、オレンジ髪のツンツン頭の姿があった。

 

「いやあ〜、悪いな、乗せてもらっちまって」

 

 背中にはリュックサック、前には助けた赤子を抱いてあぐらをかくジュモ。

 口では遠慮しつつも、ちゃっかりくつろいでいるのであった。

 

「グルルオオ……」

「くるるぅ……!」

 

 ドラゴンの親子が鳴き声をあげる。

 それもジュモには“言葉”として聞こえていた。

 

 

『オマエ、我ガ息子、助ケテクレタ。感謝スル……』

 

『アリガトウ! ニンゲン!!』

 

「おう、次からは攫われないようにお前も強くなるんだぞ?」

 

『ウン! ツヨクナル!』

 

 ジュモは赤子を助けたお礼に、ドラゴンに運んでもらっていた。

 

『進ム方向ハ、合ッテイルナ?』

 

「ああ大丈夫だ。ちゃんと北に向かってる」

 

 ジュモはこの広大な大陸、スピトゥールの最北端にある街、《聖都》を目指す旅人である。

 オルバ大森林に訪れたのはその途中でのことだった」

 

「もうすぐ日が落ちる。送ってくれるのはここまででいいぞ」

 

『ム? 別二、モット遠クマデ運ンデヤッテモイイノダゾ?』

 

「ありがとな。……でも、夜は危ねえからな。帰りに襲われでもしたら面倒だろ?」

 

『……ソレモソウダナ』

 

 ジュモの言う通り、スピトゥールの夜は恐ろしい。なぜなら夜は、闇から生まれし異形の怪物――魔物(まぶつ)が現れるからだ

 

『デハ、私ノ鱗ヲ持ッテイクトイイ』

 

 ドラゴンが体を震わせると、ペリリと鱗が一枚剥がれ落ちた。

 

「いいのか?」

 

 フォレストドラゴンの鱗は万病の薬になる。それ故に欲しがる人間が後を立たない希少品で、市場では常に高値で取引きされている。

 

 ジュモは鱗の金銭的な価値には微塵も興味がなかったが、旅の途中で病を患った動物(ビースト)に出会うこともある。そういった時、鱗は大変ありがたいのだ。

 

「そういうことなら、遠慮なく貰ってくぜ」

 

 ジュモは拾った鱗を後ろ腰のポーチにしまうと、森へ帰っていく親子を見送った。

 

「達者でなーーーー!!」

 

 やがて母親の背の上から手を振る子供の姿がら見えなくなると、ジュモはまた北へと歩き出した。

 

 ◇

 

 日が沈みきる頃になると、ジュモは辺りで一番背の高い木の上に登った。

 

「うし、この木なら大丈夫そうだな……おーい、お前らちょっといいかー?」

 

 ジュモは木の周りを飛び交うコウモリたちを見かけると声を掛ける。

 

『ニンゲン?』

『ニンゲンダ!』

 

「俺が寝てる間、何かあったら起こしてくれないか?」

 

 危険の多いスピトゥール。

 

 故に、夜になれば街の門は固く閉ざされるし、冒険者は二人以上で行動し、夜は必ず見張りをするのだ。

 

 だから、一人旅を続けるジュモはいつも、夜行性の動物(ビースト)に頼んで見張りをしてもらっていた。

 

『ワカッタ! 起コス!』

『何カ! アッタラ!』

 

「よし、たのんだぞ!」

 

 そうしてジュモはコウモリに手をかざすと、頭目の前で見せた手のひらから光の線が2本飛び出し、二匹のコウモリそれぞれの中に吸い込まれていった。

 

 ビーストテイマーが動物(ビースト)をテイムする際に放たれる光――リンクラインだ。

 

 リンクラインが弾かれず、無事吸い込まれれば、それはテイム完了の合図であり、その動物(ビースト)とは心を通わせることが出来るのだ。

 

 そしてテイムされた動物(ビースト)にはある変化が生じる。

 

『身体ガ軽イ!』

『フシギ!』

 

「だろ? 今のでお前らの身体能力が上がったんだ」

 

 

 》

(この辺の説明、あとで)

 テイムされた動物(ビースト)は能力が上昇するのだ。

 

 おまけに、通常であればテイムを解除すればこの上昇効果は消えてしまうが、ジュモにテイムされたビーストは、解除後でも能力上昇は解除されない。

 ジュモはこの珍しい現象を、力を貸してくれた動物(ビースト)たちへのお礼だと捉えていた。

 ◇

 

「ぐごお〜〜、ぐがあ〜〜」

 

『『オキロ! オキロ!』』

 

「んが……!」

 

 ジュモが眠りについてから一時間ほど。、イビキをたてながら爆睡するジュモの周りでコウモリたちが騒ぎ始めた。

 

「……何があった!」

 

 事態を把握したジュモは瞬時に飛び起き辺りを見渡すと、木の下で妙なものを見た。

 

「あん? なんだありゃ……」

 

 ジュモの視線の先では、緑色の小さな光が二つ跳ねるように移動していた。

 

動物(ビースト)の目か……? それとも、ホタルか……?」

 

 目を凝らしてみるが、目が覚めたばかりで暗闇に慣れていないジュモでは光の正体は判別できない。

 

『知ラナイ! ナンダロウ!』

『モチモチ! プニプニ! ウゴク!』

 

「はあ? プニプニだぁ……?」

 

 コウモリたちの要領を得ない説明に、ジュモはさらに首を傾げた。

 

「こりゃ、自分で確かめるっきゃなさそうだな……」

 

 ジュモは軽々と木から飛び降りると、足音を消して例の移動する光へと近づいていく。

 

 

 ぽよんっ ぽよんっ ぽよんっ ぽよんっ

 

 確かにプニプニモチモチ何かがジュモの目の前を跳ねていた。

 その“何か”は、球体が二つ隣り合っているような形をしていて、左右の球体の全面の頂点あたりで小さな光が輝いていた。

 

「なんだありゃ、珍しいスライムか……?」

 

 スライム――ゼリー状の体に饅頭のような形の代表的な魔物(まぶつ)の一種である。

 知る限り、体の一部が発光するスライムには覚えがなかったが、

 元より、住処や構成素材の違いにより派生種類の多いスライムのことだ、未発見の種がいたとしても不思議ではない。

 

 気になったジュモは、目の前のスライムもどきを、がばりっ!と後ろから掴みあげた。

 

「きゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 すると同時にどこからともなく少女の悲鳴が聞こえてきた。

 

「のわあっ! なんだぁ!?」

 

 ジュモはたまらずスライムもどきを宙に放りだす。すると、スライムもどきは空中で体制を整え、ジュモの顔目掛けて飛びついてきた。

 

「このっ! 不埒もの!!!!!!!」

 

「もがっ! もががっ!!」

 

 再びジュモの耳に、凛とした少女の声が届く。

 

(……まさか! こいつが喋ってるのか……!?)

 

 普段から様々な動物(ビースト)と会話するジュモが驚いているのには理由があった。

 

 普段ジュモがビーストと会話をする際、動物(ビースト)の言葉はジュモにテレパシーとして伝わり、他の人が聞いた場合にはただビーストが鳴き声をあげているだけのように聞こえる。

 

 だが、ジュモはびりびり鼓膜が震えるのを感じたことで、このスライムもどきは、テレパシーではなく、実際にしゃべっているのだと理解したのだ。

 

 そしてジュモは、スライムもどきを引き剥がそうとする最中、さらなる疑問に苛まれる。

 

(なんだこいつの体……スライムのくせに妙にあったかくて弾力があるような……)

 

 いかにスライムが多種多様とはいえ、特有のぬめりとした粘着質の体を持っているという点はどの種類にも共通している。

 

 だが、いまジュモの顔に伝わっているのは、程よい弾力感の何かに柔らかく挟まれているような感覚と、心地の良い温度だった。

 

 ――――――それはまるで。

 

「ぶはあっ‼︎」

 

 ジュモは力任せに、顔にはりついたスライムもどきを引き剥がす。

 そして、ジュモは自分が大きな勘違いをしていたのだと悟った。

 

 ――ジュモに張り付いた彼女はスライムではなく、おっぱいだった。

 

 ――――スライムではなく、おっぱいだったのだ。

 

 その乳房の付け根の先に、本来ついているべき女体はなく、その容貌はまるで、大きな饅頭を横に二つくっつけたような外観をしていた。

 

「………………は?」

 

 ジュモが口をあんぐりと開かれる。

 訳もわからずおっぱいを左右に引っ張ってみるが、不思議なことに左右の乳房が離れることはなく、その谷間が少しばかり深くなるだけだった。

 

 さらに珍妙なことに、ジュモが見た2点の光はそれぞれの乳房の先端から、乳首を覆い隠すように放たれていた。

 

 おっぱい単体とはいえ、完全に人間のおっぱいだ。この光がなければ、公衆の面前に出ることはできなかっただろう。

 

「ちょっ、ちょっと!いい加減私を揉みしだくのを辞めなさい!」

 

 ピシャリと言い放たれたことでジュモは完全に理解する。

 

 ――やっぱり、さっきから喋っているのはこのおっぱいなのだ、と。

 

 ジュモはとりあえず、肺の空気を全て吐き出して叫んだ。

 

「おっぱいがしゃべったあああああああああああああ!!!!!!!!!!!??????」

 

 ……こんな状況で叫ぶのはごく自然なことだ。誰だったジュモのようになるだろう。

 

 だが、今回はタイミングが最悪だった。

 

「そんな大きな声を出しては奴らが……!」

 

 ざりっ、ざりっ

 

 何者かが地面を踏みしめる音が、おっぱいの言葉を遮った。それも、一つだけではない。次第に聞こえる音は数十に増え、それと同時に『ギャルル……』と人でも、動物(ビースト)でもない。”異形“のうめき声が聞こえてきた。

 

 子供ほどの背丈に濁った緑色の皮膚にギラついた瞳をした小鬼――ゴブリン。スピトゥールのどこにでも出現する低級の魔物(まぶつ)だ。

 

 現れたのはゴブリンだけではない。スケルトン(骸骨)ゴースト(霊体魔)オーク(豚頭人)コボルト(犬頭人)……それから空にも飛行系の魔物(まぶつ)が数種類。

 この辺りに出現する魔物(まぶつ)どもがこぞってジュモたちを取り囲むように現れた。

 

「おいおい……」

 

 ジュモの額に冷や汗が垂れた。

 ジュモが肝を冷やしているのは、何もジュモ達を取り囲んでなおまだ余りある数だ。

 

 ――魔物(まぶつ)どもは、まるで何かに誘い出されたかのようだった。

 

「奴ら、私を執拗に追いかけてくるんです! ようやく巻けたと思ったのにあなたが大声で叫ぶから見つかってしまったではないですか!」

 

「あぁ⁉︎ 知るかそんなもん! つーかそもそも先に悲鳴を上げたのはそっちだろうが! いや、そうじゃねぇ! なんでおっぱいの癖に喋ってんだよ! 一体何なんだテメー!!」

 

「それが人に質問をする態度ですか! 貴方! 非常識で無礼な人ですね! 後ろからいきなり触られたら、誰だって叫ぶに決まってるじゃないですか!!」

 

「喋って動くおっぱいがジョーシキどうこう言ってんじゃ――」

 

「ギャアアアア!!」

 

 二人の会話を遮るように飛び込んできたゴブリンが、おっぱいに向かって棍棒を振り下ろす。

 おっぱいは成すすべなく、その身に攻撃を受け――――ることはなかった。

 

 ガギンッ! と金属を殴りつけた音が響く。

 

「っぶねぇ……。油断してんじゃねぇぞ、このおっぱいが」

 

 ゴブリンとおっぱいの間に割って入ったジュモが、ガントレットで攻撃を防いだのだ。

 

「貴方、どうして……」 

 

「なんつーか……。困ってる動物(ビースト)が目の前にいたら助けちまう性分なんだよ」

 

「貴方は……脚も、翼も、尻尾もない。こんな私を見て、私をビーストだというのですか……?」

 

 おっぱいの言う通り、彼女は動物(ビースト)には決して見えない。その奇怪な外見は、ジュモが彼女をスライムだと誤認したように、どちらかと言えば魔物(まぶつ)のように見える。

 

 ――だが、それでもジュモは、彼女を動物(ビースト)だと判断した。

 

「俺は、お前が人間には見えない。……俺は人間が嫌いだ。お前が人間だったら、助けなかった」

 

「そ、そうではなく……!」

 

「――なら!!」

 

 ジュモはゴブリン振るった棍棒を跳ね返すと、ガラ空きになった腹に鋭い蹴りを放った。

 急所を的確に蹴り抜かれたゴブリンは他の魔物(まぶつ)を巻き込みながら大きく吹

 き飛び、崩壊した体は黒い霧となって消滅した。

 

 これこそが魔物(まぶつ)にとっての死だ。闇が形を持って生まれた彼らの死は、一片の肉体も残らず、故にそれに気づき弔う同胞もいない。

 

 ――当たり前だ。そもそも魔物(まぶつ)には、ココロなんてものはないのだから。

 

「お前は死んでも欠片ひとつ残らない、血も涙もない魔物(まぶつ)か?」

 

「――それは。――それだけは違います」

 

 彼女はきっぱりと言った。その言葉からは、彼女の強い心と、強い意思を感じさせた。

 

 彼女の言葉を聞いたジュモがニッと口角を上げる。

 

「生き物は、人間、魔物(まぶつ)動物(ビースト)、そのどれかに当てはまる。俺みたいな野生児のガキだって知ってる常識だ。――なら、人間でも、魔物(まぶつ)でもねぇお前はきっと……いや、間違いなく動物(ビースト)だ」

 

 ジュモ達を包囲していた魔物《まぶつ》が一斉に飛びかかる。

 ジュモはおっぱいを左腕で抱え込むと、迫るオークを踏み台にして大きく飛び上がった。

 

 

 ^

 

 

「きゃっ!」

「荒っぽくなるから、ちゃんと捕まってろよ!」

 

 ジュモの意思に応じてベルトがほどけ、うねりだす。

 ベルトは後ろ腰の一点で固定されていて、そこから伸びる様は、本物の尻尾のようだった。

 

橙猿の尾(モンキーテール)!!」

 

 ジュモの声に応じ正面の木に向かって勢いよく伸びたベルトが枝に巻き付いた。

 

 ビーストを模した

 絡繰(からくり)武具である。

   

 ジュモの装備、

 

 獣形装(ビースティック・アームズ) である。

 

 

「まずはここを突破するぞ!」

 

 ジュモは体を振り子のようにスイングさせ、勢いよく空中へと飛び出した。

 

「上から来ます!3体!」

 

「オラァ!! 剣虎の爪(タイガークロー)!!」

 

 その合図ジュモは素早く反応すると、右腕のガントレットから三本の鉤爪がせり出し、襲いかかる

 インプ(魔妖精)を切り裂いた。

 

「とにかく今は全力で逃げるぞ!!」

 

 ◇

 

 魔物(まぶつ)の包囲網から一度は抜け出したジュモ達だったが魔物の勢いは衰えず、引き続き追いかけられながら草原を駆け抜けていた。

 それどころか、やっと数を減らしたと思っても新たな魔物がどこからか合流してきて、追手の数は増える一方だった。

 

「次から次へとキリがねぇ!おい、こいつら明らかにお前を狙ってるだろ!お前一体何なんだよ!!」

 

「私だって知りませんよ!!」

 

「はあ⁉︎」

 

「私何も覚えていないんですよ! 目が覚めたら深い洞窟の中にいて、気づいたら追いかけられてたんですから!!」

 

「何言ってんだお前!冗談はそのおっぱいだけにしろ!」

 

「私だって好きでこんなおっぱ……胸みたいな見た目してるわけじゃないんですよ! だからその……お、おっぱいって言うのやめてくれませんか!」

 

「そうは言ってもおっぱいはおっぱいだろうが!」

 

「安直にもほどがあります! 第一、私にはちゃんと名前が……いえ、思い出せないんでした」

 

「なるほどな、要はお前に名前がありゃいいんだろ?」

 

「はい?……いえ、そうかもしれませんが……」

 

 するとジュモは走りながら器用に首を捻り、うんうんと考え始めた。

 

「なあ、パイパイとニュウニュウ、どっちがいい⁉︎」

 

「なんですかその名前は!どっちもお断りです!」

 

「はあー⁉︎折角考えてやったってのに、文句の多い奴だな!」

 

「だってその名前どちらも胸からの連想でしょう⁉︎ 嫌ですよそんなの!! つけるならもうちょっと普通の名前にしてください!」

 

「普通だぁ⁉︎ くっそ……俺苦手なんだよそういうの……!」

 

 再びうんうんと考えた後、ジュモは何かを思いついたようだった。

 

「じゃあゼリルってのはどうだ!」

 

「ゼリル……? 素敵な響きですね――これも胸の別称などではないでしょうね」

 

 おっぱいが訝しげに尋ねる。

 

「うるせぇ、前に人間の町で見かけた菓子の名前からとったんだよ!なんか文句あるか⁉︎」

 

 どうせまたクレームを入れられるのだろうと身構えるジュモ。帰ってきた返事は意外なものだった。

 

「――いえ、あなたが付けてくれたこの名前、気に入りました。今から私はゼリルと名乗ることにしましょう。だからあなたも、私のことはゼリルと呼ぶように」

 

「わ、わかったよ……。ゼリル、ゼリルだな?」

 

「はい、よろしい」

 

 実のところゼリルはジュースなどの飲料を固めた菓子で、適度な弾力がありプルプルとしている。

 つまるところ、それもおっぱいから連想されたものであるが、ゼリルがその事実を知ることになるのは、もう少し先の話だ。

 

「あなたの名前も、教えてくれませんか? 動物(ビースト)の守り手殿」

 

「そんな大層なもんじゃねぇよ。俺はジュモ。ジュモ・オレンジバック。ビーストテイマーってやつらしい」

 

「らしい?」

 

「俺は森でビースト(動物)と一緒に暮らすうちに自然とテイマーの力を身につけてたみたいでな。俺としちゃ、ビースト(動物)と仲良くしてるだけだからあんまり自覚ねぇんだ」

 

「ジュモは、森で暮らしてたのですか?」

 

「ああ。ガキの頃、天蓋孤独になってな。森に住んでたパザラ――オレンジバック(猿)の獣人に拾われて以来、俺は森でビーストと一緒に生きてきた」

 

 オレンジバック――長い尾と、名の通り背中側になるにつれ濃くなっていくオレンジ色の体毛が特徴のサルの一種である。その獣人がジュモの育ての親だった。」

 

「では、ジュモの名前は」

 

「ああ、オレンジバックってのはパザラの種族から取ってる」

 

 

 

 

 

 

「――そんなわけで、俺にとっちゃビースト(動物)と獣人が同族でな。自分たちの都合でビースト(動物)の命を弄ぶ人間が、俺は大嫌いなんだ」

 

 

 だからジュモは、あのビーストハンターのような男は、絶対に許さないのだ。

 

「――ジュモ、あなたのことが今少し、わかりました。その上であなたは伝えておこうと思います」

 

「ああ? こんな状況で何言おうってんだ」

 

「――ジュモ、人間が敵だというあなたの考えには賛成できません。時に悪事を働く人間がいることもまた事実ですが、それは彼らの置かれた境遇や環境が彼らをそうさせたのです。真に悪である人間など――――」

 

「説教垂れてるとこ悪いがゼリル」

 

 ジュモが、足を止めた。

 

「……わりぃ、しくじった」

 

「……はい?」

 

 夜の逃走劇は、追ってが人間ならば逃げ手が有利に進むが、魔物(まぶつ)が相手では大きくなハンデを背負わされることになる。闇の住人である魔物はよく夜目が効くし、反対に人間は夜目が効かない。それがつまりどういうことかと言えば――進む道を、大きく間違える可能性があるということだ。

 

 ――ジュモの眼前には、行く手を遮るようにどこまでも続く、大きく、そして深い谷が広がっていた。

 大型の飛行ビーストをテイムできれば飛び越えることができるのだろうが、運悪く、夜空にはコウモリ一体飛んでいなかった。

 

 振り返ると、合流に合流を繰り返し無数に増えた魔物(まぶつ)たちが赤い目を光らせ、刻一刻と距離を詰めてくる。

 

「この崖を飛び越えるのは無理だ。そしてお前を守りながらこの数の魔物(まぶつ)の中を切り抜けるのも無理だろうな」

 

「……そう、みたいですね」

 

「超ピンチな状況だが、一つだけ助かる可能性のある手がある」

 

「この状況を一体どうするつもりですか?」

 

「このまま向こう岸に向かってジャンプして、落下が始まる瞬間にお前を向こう岸までぶん投げる。それでも飛行型の魔物は追ってくるだろうが、そこは俺に会うまで逃げ切れたお前の手腕に任せる。――じゃ、いくぞ」

 

「待ってください‼︎」

 

「あ?」

 

「それではジュモ、あなたは――」

 

「谷の深さにもよるが、多分死ぬだろうな。だが、目の前で動物(ビースト)が殺されるより、ずっとマシだ!」

 

 ジュモはそう言い切ると、再び助走を付け、走り出そうとした。

 

 

 

「なりません‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 驚いたジュモが、足を止めた。

 

「あなただけが身を投げ打つなど、あってはなりません。……私は、自己犠牲のような考え方は――否定しませんが、私は嫌いです」

 

「ならどうしろってんだ」

 

「――最後の最後まで共に、命ある限り必死に足掻く――というのはどうでしょう」

 

 その言葉に、ジュモはまた、ニッと笑った。

 

「その考え方、気に入ったぜ……‼︎ 俺だってこのまま死にたかねぇ!」

 

 ジュモは、今度こそ助走をつけながら谷へと飛び込んだ。

 

槍蜥蜴の尾(リザードテール)‼︎」

 

 尾の先端がジャギン!と槍のように変形し、壁に向かって勢いよく打ち込まれる。

 だが、尾は岸壁を穿つことなく空を切った。

 

「クソッ!」

 

 ジュモががむしゃらに再び尾を放とうとした時、聞こえたのはゼリルからの助言だった。

 

「ジュモ! ベルトを腰から外して下さい! 腕の長さ分リーチが伸びます‼︎ タイミングは私が合図します!」

 

「そういうことなら任せたぜ……‼︎」

 

 ジュモは外したベルトを手に持ちかえると、ゼリルからの合図を待った。

 

 落下を続けていると、壁が突き出るように大きく隆起した箇所があった。

 

「ジュモ! あそこを狙うのです‼︎」

 

「分かってる! 槍蜥蜴の尾(リザードテール)‼︎」

 

 ジュモが再びベルトを伸ばすと、槍のように尖った先端が壁へと突き刺さった。

 

「よしっ!」

 

 ジュモはそのまま、向こう岸の石壁にとりつくべく、ベルトの先端が突き刺さった箇所を軸にスイングさせた。

 そして、ガントレットから伸ばした爪を壁に食い込まさんとした、その時だった。

 

 ガギンッ‼︎

 

 食い込みが甘かったのだろう。ベルトの先端が岩から外れ、ジュモは再び宙へと投げ出された。

 

「クソッタレが」

 

「ジュモ! 諦めてはなりません‼︎」

 

「んなもんわかってる! けどこの状況で一体何を――」

 

「――祈りましょう」

 

 ゼリルが落ち着き切った、凛とした声色で告げる。

 普段のジュモであれば、素っ頓狂な声を上げるか、文句を言っていただろう。

 だが、ゼリルからは有無を言わせない迫力があった。

 

「……分かったよ、ただ諦めながら死ぬよりかは、いるかもわかんねぇ女神に祈るほうがよっぽどマシだ‼︎」

 

 ――女神ニューリア。

 

 かつての聖と魔の戦いにおいて、魔人カラボスを打ち破った末、傷ついた自らの体を世界中に散らばせたという女神であり、このスピトゥールで広く信じられている『聖教』の唯一神だ。

 

 だが、森で育ったジュモにとって、神だの教えだのと言うものはどれも嘘くさいものであり、当然信じてなどいなかった。

 故に、ゼリルの呼び掛けがなけらば、ジュモが祈ることは決してなかっただろう。

 

 だから、だろうか。

 ジュモたちが谷底に身を叩きつけられんとしていたその瞬間。

 ――奇跡が起きた。

 

 ジュモの体を、淡い緑色に光る球体が包んだ。

 そのまま地面に衝突し、ドガン‼︎ と轟音が鳴り響くが、ジュモは負傷どころか、衝撃一つ感じなかった。

 

「助かった……のか?」

 

 身を包んでいた球体が消滅すると、ジュモは恐る恐る立ち上がった。

 

「おいゼリル、なんだか分からんが俺たち助かったぞ!」

 

 ――返事がない。

 

「ゼリル?」

 

 腕の中のゼリルを見たジュモは、ある異変に気づく。

 

「ち、乳首が――‼︎」

 

 そう。ゼリルの乳房の先端から放たれていた光が消え、隠されていた乳首が露わになっていたのだ。

 

「まさか、死んでねぇよな……?」

 

 ジュモがゼリルの胸に耳を当てると、しっかりと心臓の鼓動が聞こえてくる。

 

「気絶してるだけ……なのか? ったく、目でもついてりゃそれも判るってのに、こう言う時おっぱいってのは不便だよなぁ……」

 

 そして、ジュモは一つ気になることがあった。

 ジュモを守るように、光る球体が現れたかと思えば、ゼリルの光が消えていたという事実を。

 

「……ひょっとして、お前が守ってくれたのか?」

 

 ジュモがぼやくように尋ねるが、ゼリルはまるで寝息をたてるように、静かに胸を上下させるだけだった。

 

 ◇

 

「よっ……ほっ……よっ……はっ……」

 

 一定の間隔で聞こえてくるジュモの声に、ゼリルは目を覚ました。

 

「ん……。えーと……ちょ、ちょっと一体今どういう状況ですか⁉︎ 何も見えません!」

 

「やっと起きたのか、つーかお前の目ってどこだよ」

 

「そ、その……乳首のあたりから視界の情報を得てます」

 

「ああ」

 

 ぺろん、と服を捲り、ゼリルを露出させた。

 見ると、光が灯ってた

 

「……しょうがねーだろ、背中に縛り付けたら落とした時に助けられねぇんだから」

 

 そう。ゼリルが驚いたのは崖を登る上で、ジュモが選択したゼリルを運搬する方法だった。

 

 そびえたつ断崖絶壁を上り切るには両手を空ける必要があった。そして、そのためには、抱えたゼリルを体のどこかに縛り付けておかなければならなかった。

 

 

 考えた末、ジュモが出した結論は、“ゼリルを自分のベストの中に入れる”ことだった。

 

 そして、それはあたかも、ジュモが巨乳……いや、爆乳の持ち主になっているかのようだった。

 

「……! そうです、私たち確か谷底へ落ちて……」

 

「覚えてねぇのか?」

 

「……はい?」

 

 ジュモは、ゼリルに突如現れた光の球体のことを話した。

 

「――光の球体、ですか。私にそんな力があるのでしょうか……?」

 

「さあな」

 

「……もっと愛想のよい返事をしてくれたっていいのではないですか? それに、私の身を案じてくれるのは有り難いですが、私の収納場所は、もう少し何とかならなかったのですか……?」

 

「うっせぇ。俺だって他の方法があるならそうしてる。自分におっぱいがついてる見たいで気持ちワリーし、ずっとふにょふにょしたのが肌に触れてて変な感じするんだよ。文句があるなら他の方法を言ってみろ!」

 

「…………確かに。屈辱ですが、今はこの方法がベストだと、私も同じ結論に辿り着きました。ズボンの中に仕舞われるよりはよかったと考えるようにしましょう。

 

「ズボンか……、それは考えてなかったな」

 

「本当にやめてください‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 売り言葉に買い言葉。その後も乳首の光が戻っただの、セクハラだのと、ゼリルとジュモは喧騒を撒き散らしながら崖を登り切った。

 

「ジュモ、空が……!」

 

「ああ、夜明けだ――」

 

 ジュモが空を見上げると、長かった夜が明け、煌々とした朝日が差し込みはじめるところだった。

 

 集まっていた魔物(まぶつ)も日の光を避け、散り散りに逃げていく。そして、逃げ遅れ、日光に触れてしまった魔物(まぶつ)は、一瞬にして消滅してしまった。

 

魔物(まぶつ)が……」

 

「これでようやく、落ち着いて話ができそうだな。お前これからどうするんだ?」

 

「どうする……ですか?」

 

「ほらアレだよ、目的っつーか、なんつーか。魔物(まぶつ)のこととかは覚えてたみてーだし、自分がどこから来たとか、何か他に覚えてることとかねぇのか?」

 

 ジュモの問いに、ゼリルは「目的、と言ってよいのかはわかりませんが」と前置きをして答えた。

 

「私は、どこかに行かなければならない気がするのです」

 

「へえ、そりゃどこだ?」

 

「それは……わかりません」

 

 それを聞いたジュモは、「ぷっ」と吹き出した 

 

「ぎゃはは! そんなことだろうと思ったぜ」

 

「な……! 何も笑うことはないじゃないですか!」

 

「なあゼリル。俺と来ないか?」

 

「あなたにも、何か目的があるのですか?」

 

「そういや、まだ言ってなかったな」

 

 そういってジュモは、胸元にしまってあったペンダントを引き抜いた。

 

「俺はこいつをパザラの妹に渡すために聖地に向かってる」

     

【パザラの遺言だ】このへんいれる???→読み直して確認

 

 

 

 

 

 続けてジュモは、指で地面にスピトゥールの大地を描いた。

 スピトゥールの大地は海に囲まれており、北に行くにつれ大地が狭まっていく、雫のような地形だ。

 

「で、聖地ってのはここだ」

 

 大陸の最も北、最も細い部分をジュモは指さした。

 

「この天辺の場所がジュモの目的地なんですね」

 

「なんでもここは世界の果てらしい」

 

「世界の果て……ですか?」

 

「……正直俺もイマイチ信じていなんだけどよ、なんでも聖地には強い聖なる力を操る聖女がたくさんいて、闇の国の入り口を塞いでるんだってさ」

 

「なんだか壮大な話ですね……その、闇の国、というのは?」

 

 ゼリルの脳裏に浮かんだのは、先ほどまで自分を執拗なまでに追いかけていた魔物(まぶつ)たちだ。

 

「そうか、ゼリルは『聖魔大戦』も知らないんだったな」

 

「はい……」

 

「このスピトゥールには、反対側があるんだ」

 

 ジュモは雫型のスピトゥールの大地のさらに北に、鏡写しになったもう一つの雫型の大陸を書いた。

 二つの雫型の大陸が線対称につながり、大地の形はあっという間に雫から、八の字型に変わった。

 

「この反対側の大陸ってのが闇の国だ。そして、俺たち住むスピトゥールは昔、『光の国』って呼ばれてたらしい」

 

 そうしてジュモは『聖魔大戦』を語り出した。

 

「その昔、闇――魔物(まぶつ)を司る魔神カラボスと、聖物――俺たち人間や、動物(ビースト)を司る女神ニューリアの戦いがあった。

 戦いの結果、闇の勢力は負けて、光の大陸から闇の力は排除された。

 境目では光の壁を貼って封印している」

 

 

「今、壁の向こうはどうなっているのですか?」

 

「……さあな。復活した魔物(まぶつ)がうじゃうじゃ犇いてるかもしれないし、大陸がなくなってるのかもしれん」

 

「――パザラの妹が聖地にいる、ということは、妹様は、聖女なのですか?」

 

「さあな」

 

「え……?」

 

「パザラが妹の話をするなんて、あの時がはじめてだった。」

 

 

「俺はパザラが死ぬ瞬間まで、パザラに妹がいることすら知らなかった。パザラは俺に語らなかったんだ。……でも、死に際に頼んだ。

  

 ―― だから俺は、いかなくちゃならない。

 

「ジュモ、私の成すべきことがわかるまで、旅にお供してもよろしいですか」

 

「ゼリル……。よし、じゃあ決まりだな。じゃあ次の目的地は――」

 

 ジュモが言いかけたその時、ゼリルから放たれている光が、眩く輝きはじめた。

 

「きゃああっ!」

 

「うおっ! なんだ!」

 

 そして次の瞬間。光はと光線(ビーム)なってジュモの頬を掠めながら、彼方へと放たれ始めた。

 

「熱っ……くねぇ……? つーか、今度は一体なんだよ!」

 

「――ジュモ、分かりました」

 

 慌てふためくジュモとは反対に、ゼリルは落ち着き払っていた。

 

「あ?」

 

「この光が指し示す先に、私が目指すべき場所があります」

 

「そうなのか? でもよぉ……」

 

「信じられないというならジュモ、私の体を反対方向に向けてみてください」

 

「反対に……? まぁいいけどよ」

 

 ジュモは言われた通りにゼリルを持ち上げ、反対側に向けようとするが――

 

「うおっ‼︎」

 

 ジュモの怪力をも上回る勢いで、ゼリルはすぐに元の方向へと向いてしまった。

 それはまるで、方位時針が北を指し続けるかのようんだった。 

 その勢いに振り回され、吹き飛ばされたジュモが地面に転がる。

 

「これでわかりましたか?」

 

「……ああ、まるで何か、強い力に引っ張られてるみてーだった」

 

「私も同じように感じました。――だからきっと、この光は私を導く光なのです」

 

「真北の方角か……確か『ジラーマ』っつー人間の街があったはずだ。避けて通ろうと思ってたが、仕方ねぇ」

 

 ジュモは立ち上がる。

 

「さあ行こうぜ、ゼリル」

 

 こうして、野生児ビーストテイマーと野良おっぱいの旅が幕を開けた。

 

 ちなみに、ジュモがバックパックを、寝床にした木の上に置き去りにしたことに気づいたのは、この直後のことだった。

 

 ◇

 

「はあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜…………」

 

 ジュモは大柄なシカの動物(ビースト)、『ケリュー・ディアー』の背に跨りながら、大きなため息をついた。

 

「さっきからため息ばかりついて……、聞かされるこっちの身にもなってくださいよ」

 

 呆れたように返答するのは、ケリュー・ディアーの首元に跨がった――もとい、へばりついているゼリルだ。ケリュー・ディアーが地面を蹴るたびに、その乳房がばるんばるんと盛大に揺れている。

 

「だってよ〜〜〜〜……」

 

 そうぼやくジュモの背にはバックパックはなかった。

 

 

 ――遡ること、一時間前。

 バックパックを木の上に置き忘れてきたジュモは、大型鳥のビーストの力を借りて谷を超え、寝床にした木まで戻ったのだが……。

 

「――パックがねぇ‼︎」

 

 木の上に登ってみても、そこにパックはなかった。

 

「本当にこの木で合ってるんですよね?」

 

「ああ、それは間違いない。でも一体どうして……」

 

 するとジュモは、パックを盗んだ犯人の痕跡を見つけた。

 

「なるほど、そういうことか……」

 

「ジュモ、何か見つけたのですか?」

 

「ゼリル、これ見てみろ」

 

 ジュモが指差した木の幹には、小さな傷があった。

 そして、よく見ればその傷は、一定の間隔で木の幹についているようだった。

 

「ジュモ、これは?」

 

「一度降りるぞ」

 

 ジュモはゼリルを抱え地面に降り立つと、今度は地面を指さした。

 

「これ見りゃ分かるだろ」

 

 そこには、寝床にした木を登ったであろうお、小さな動物(ビースト)の足跡と、それからバックパックを引きずっていったであろう跡が残っていた。

 

「ひょっとして、この足跡の主が、バックパック消失の犯人だと?」 

「ああ。多分シーフラビットの仕業だな」

 

 シーフラビット――二足歩行に進化したウサギのビーストで、その最たる特徴は珍しい物を見つければ、それが何であろうと巣穴に持ち帰ってしまう手癖の悪さだ。

 

「あいつら、珍しいものを見るとすぐ盗んでっちまうからな」

 

「では、この足跡を追いかければパックが見つかるわけですね」

 

「まあな。だけど、追いかけるのは辞めだ」

 

「え?」

 

「あいつらが物を盗っちまうのは本能だからな。人間が欲に眩んで盗むのとは訳が違う。それにこの跡をよく見てみろ。行きの足跡に比べて、すげぇ地面が抉れてるだろ? 俺のバッグにゃ色んなもんが詰まってた。だから普通には運べなくて、地面を思いっきり蹴って、少しずつ押しながら運んでったはずだ」

 

「凄い、痕跡からそんなことまで……」

 

あいつら(ビースト)と暮らしてきた時間が長いからだろうな、何となく分かっちまうんだよ。どれだけ頑張って運んだのかも。だから、俺はあいつらからバッグを奪って頑張りを無駄にしたくない」

 

 

 

 ――ということがあったのだが……

 

「自分でバッグを取り返さないことを選んだのだから、もっと堂々としてなさい!」

 

「そうは言ってもよぉ、あのバッグには旅の途中で出合ったビーストからもらった物とか、色々入ってたんだぜ? それとこれとは話が違うんだよぉ……」

 

「あっ! こらっ! なんで私を揉むんですか!」

 

 ジュモは腹いせとばかりに無言でゼリルを揉みしだき続けた

 

「……改めて見ても、やっぱ人間のおっぱいだよ……」

 

「やめてください! 私だって、水面に映る自分の姿を見て仰天したんですから」

 

「つーか、この光も一体なんなんだ?」

 

 ジュモは好奇心のままに、両手でゼリルの両の光――すなわち乳首のある位置をつついた。

 

「ひゃんっ‼︎」

 

「なっ、なんだよ妙な声だして!」

 

「あなたこそ何考えてるんですか!」

 

「だっ、だってほら、光ってるに触ったらどうなるのかとか、色々気になるだろ!」

 

「信じられません! 次に同じことしたら絶好――は、私が困ってしまうので――二度と口を聞きませんから‼︎」

 

「分かった、悪かったって……」

 

「それで?」

 

「あ?」

 

「それで、何か分かったんですか、私のちく……胸の光を触って」

 

「あー……いや……」

 

「なんですか、分からなかったのならそれはそれでハッキリ言いなさい」

 

「分かったっつーか、その光を隠してたら、どうなるんだろうなって」

 

「どうなる……とは?」

 

「その光って、聖術の光に似てるんだよ。もしかしたら魔物(まぶつ)どもはその光に誘われてゼリルの元に集まってきてるんじゃないかと思ってよ」

 

 聖術――主に聖女など、素質を持ったもののみが扱うことのできる術であり、その光は淡い緑色をしている。

 

「つまり、私が昨夜追われていたのは、この光が剥き出しになっていたからであり、光を隠してしまいさえすれば追われることもなくなる、と」

 

「まあな。俺も聖術のことはよく知らねーから、多分だけどな」

 

「……しかし成程、試してみる価値はありそうですね」

 

「ただ、光を隠すってなるとどうしたもんかねぇ。バックがありゃ、その中にしまったんだけどよ」

 

「やるからには、徹底的に光を遮断できるようにしてくださいよ。たとえばそう、何かで私の全身をくるんでしまう、とか」

 

「……! なるほど、その手があったか」

 

 ◇

 

 あれから数刻が経ち、草原には、再び夜が訪れようとしていた。

 ケリューディアーはナワバリへと返し、現在ジュモたちは、通常時の速度はイマイチだが、とにかく逃げ足の速さに定評のある馬のビースト、『エスケープ・ホース』の背に乗っていた。

 

「(ジュモ、現在の状況はどうです?)」

 

 ジュモの腕の中から、やけにくぐもったゼリルの声が聞こえてくる。

 

「ああ。まもなく日が暮れそうだ。……それにしても今のお前、“サザダンゴ”みたいだな」

 

 サザダンゴとは、その名の通り、ダンゴをサザと呼ばれる植物の葉で包み蔓で縛った菓子である。

 ジュモが似ているといったのもそのはずで、今のゼリルは植物の葉で全身を包み、蔓で縛ることで光が外に漏れないようにしているのだ。

 

 それからすぐに夕日が沈みきり、いよいよ検証が始まった。

 

「駄目じゃないですかあああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

「俺に聞くなあああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 この阿鼻叫喚の状況からわかるように、検証は大失敗。ジュモは今日も魔物(まぶつ)の大群に追われることとなっていた。

 

「なんであいつらゼリルに気づけるんだよ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

「全身を包んでなお光の遮断が不十分だった、もしくは私が狙われることと光の見える見えないに因果関係はなかったということではないでしょうかあああああああ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」

 

「真面目に言ってる場合かああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎ 頼むエスケープホース‼︎ 全速力で頼む‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

『言ワレ無クテモ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎』

 

 この瞬間、ジュモとエスケープホースの思いが心の底から一致したことで、テイムによる能力上昇が上乗せされ、エスケープホースは見事なまでに魔物(まぶつ)の軍勢から逃げ切り、やがてまた朝が来た。

 

 ◇

 

 朝日が大地を照らす中、ジュモとゼリルの旅は二日目を迎えていた。

 ちなみに、エスケープゴートはあの後すぐに逃げ出してしまったので、現在乗っているのは、背中に大きなコブが一つついた馬、『ハンプ・ホース』だ。

 

「ひ、酷ぇめにあった……」

 

「それは私のセリフですよ馬鹿者!」

 

「お前だって俺の作戦に賛同してただろうが!」

 

「それは……そうですが」

 

「ったく夜になるたびあの調子じゃ命がいくつあっても足りなねぇ。街に行ったらどうにか解決する方法を見つけねぇと……」

 

 そうしてジュモが何か策を考えようとした時、ジュモはあることに気づいた。

 

「あーーー‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」  

 

「どうしました⁉︎」

 

「そうだ、ギルドカードもバッグの中なんだった……!」

 

「ギルドカード……?」

 

「ギルドカードってのは、自分がどの程度の冒険者かって情報を書いてくれて……まあ俺はそっちのほうはどうでもいいんだけどよ……それがないと街に入るにも金が必要なんだよ!」

 

 そう言ってジュモがポーチの底から出したのは、数枚の硬貨だった。

 

「これじゃ、〇〇〇〇が買える程度だ……」 

 

「なるほど、このままでは街に入ることすらできない、ということですね」

 

「そういうことだ。街に入りたかったらお前も何か作戦考えてくれよな」

 

「そうですね、うーん……」

 

「あ! 天才的な作戦を思いついたぜゼリル。お前の魔物(まぶつ)を引き寄せる特性を利用するんだ」

 

「私の……ですか?」

 

「ああ、まず適当な商人か何かの馬車を見つけるだろ? そして『今夜お前は魔物(まぶつ)に追われる。死にたくなければ俺を護衛につけろ』って言うんだ。一度は断られるかもしれねぇが、夜になりゃゼリルのせいで大量の魔物(まぶつ)が押し寄せてくる。そうなったら商人は俺たちを雇うしかなくなるわけだ。どうだ、俺のこの名案は」

 

「却下です」

 

「なんでだよ」

 

「相手に不条理を押し付けるそのやり方が気に入りません。それに、商人を連れて魔物から逃げ切れる保証はありません」

 

「……やり方が気に入らねぇってのは知ったこっちゃねぇが、逃げきれない可能性があるってのは確かにそうだな」

 

「そこはシンプルに、商人に物を売るというのやり方でもいいのではないでしょうか」

 

「……! 確かにそうかもしれねぇが、売るっつっても何売ればいいんだ? 知っての通り俺は今何にももってねぇぞ」

 

「そうですね……道中、薬草や果実を採っていっていはいかがでしょうか」

 

「その手があったか! よしゼリル、その作戦でいくぞ」

 

 ◇

 

 ジュモ達は街までの道中、薬草や果実を、動物(ビースト)に在処を尋ねながら集めた。

 現在、ジュモが背負ったお手製の植物のツルで作ったカゴの中には、それらがぎっしりと詰め込まれていた。

 

 そして、街に大分近づき、街道に差し掛かったところで、ジュモたちはついに二頭の馬が率いる荷馬車を見つけた。馬車の手綱を握っているのは、顎髭を蓄えた男だ。きっと商人だろう。

 

 ジュモはハンプ・ホースを馬車の横に付けると、商人との交渉を始めた。

 

「おいテメェ!」

 

「ヒッ! と、盗賊‼︎」

 

「誰があんな奴らと!」

 

「こらジュモ!」

 

「うわあ! おっぱいがしゃべった‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 動揺した商人が手綱を無理やり引っ張ったことで、混乱した馬は暴走し、街道から外れた明後日の方向へと走りだしてしまった。

 

「馬鹿野郎‼︎」

 

「ジュモ追いかけてください!」

 

 岸壁が迫っていた。

 

「うわあああああ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 ジュモはハンプ・ホースの背から飛び出し、暴走する馬車の正面へと周りこんだ。

 

「止まれえぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎‼︎」

 

 ジュモの両手からに伸びたリンクラインが馬に届き、理性を取り戻した馬が必死にブレーキを掛ける。だが勢いは戻らない。

 

「大樹象の足棘《エレファントスパイク》 !」

 

 ジュモはレガースの足の裏からスパイクを迫り出させ、正面から馬車を抑え込む。

 

「うぎぎぎぎぎぎ……!」

 

 そして、すんでのところで馬車は踏みとどまった。

 

「っぶねぇ……」

 

「ジュモ、大丈夫ですか……!」

 

 ゼリルもハンプホースに乗り、ジュモのところに歩いてくる。

 

 おっぱいが喋っているところを再び目撃し、それが現実だと悟った商人は、力なく馬から降りた。

 

「あ、あんたら何もんだ……何が目的なんだ……」

 

「俺たちは、あんたに物を売りたい」

 

 ◇

 

 再び街道近くまで戻った一向は、改めて顔を合わせていた。

 

「……で、その喋るおっぱいは一体なんなんだ」

 

「おっぱ……まあいいでしょう。私のことは珍しい動物(ビースト)とでも思っておいていただければ。それから、おっっぱいではありません、ゼリルです。そしてこちらはジュモです。」

 

「お、おう……。ビーストとこんなに流暢に会話するなんて、妙な感じだ。……こんなビーストがいるなんて、聞いたこともねぇけどよ……つーことは兄ちゃんがテイマーか?」

 

「ああ」

 

「……分かった。まずはその売りたいものとやらを見せてくれ」

 

 結局、商人は少し考えたあと、ジュモ達の取引を聞くことにした。 ジュモ達が幸運だったのは、この商人が生粋の珍しいもの好きのギャンブラー気質だったことだ。

 

 ジュモは、リュックから道中で採っておいた果物を見せた。

 

「ふむ……、どれもこの辺りで採れるもんではあるが、質がいい全部合わせて2000リアってところだな」

 

「……それじゃ足りねぇ。もっと高くならねぇのか」

 

「無茶言うな。その変の商人じゃ、難癖つけてもっと安く買い叩いてるところだ。交渉に応じてやってるだけでも有り難く思って欲しいもんだ」

 

「ぐぬぬ……」

 

「それより、そんな珍妙なビースト連れてるくらいだ。もっと珍しいもん持ってないのか? 毛皮とか鱗とか」

 

 そう言われ、ジュモは自分のポーチにフォレストドラゴンの鱗が入っていることを思い出し、取り出した。

 

「そ、そいつはフォレストドラゴンの鱗じゃねえか! そうそう、そういうのを待ってたんだよ! さあ交渉をはじめようじゃねぇか」

 

「――いや駄目だ。こいつは金に換えるためにもらったもんじゃねぇ」

 

「……そうかよ、それじゃあ交渉は終わりだ。珍しいもん見せてもらった例に、それは2100リアで買い取ってやる」

 

 そうして、商人は荷物をまとめ始めた。

 

「待てよ」

 

「なんだ? これ以上値段を釣り上げろってのは無理だぞ」

 

「あんたの荷物の中、バレちゃ不味いもん詰んでるだろ、クスリだな?」

 

「へぇ、カマかけて脅そうってか」

 

「カマじゃねぇさ、実際聞いたんだ」

 

「聞く? 誰に」

 

「カーマとルーシュ」

 

「……あ?」

 

 商人の顔からサアっと血の気が引いていく。

 なぜなら、その名前は、実際に馬に付けた名前だったからだ。

 

「俺はビーストの声が聞こえてなぁ。あんた感心したぜ、見かけによらず、あいつらのこと大事にしてんだな。こまめに蹄の手入れしてくれてありがたがってるぜ」

 

「そんな……ばかな」

 

「ただ、手入れの時、ガールフレンドの愚痴を言ってくるのは不満だってさ。商人のグルゼさんよ」

 

 それは、二頭の馬しか知り得ない事実であり、ついでのように名前を言い当てられたのでは、商人――グルゼは信じざるをえなかった。

 

「……参った。こっちも訳ありでね、チクられて商人免許を剥奪されちゃ困るのさ」

 

 そういってグルゼは5万リラを差し出した。

 

「毎度――例に教えておいてやる。ルーシュの後ろ右脚が痛むらしい。街に行くんだろ? 診てやってくれ」

 

「お、おう……」  

 

「あんな奴に弱みを握られるとは、最悪の日だ」そう思いながらジュモ達の背を見送るグルゼ。

 

 一応ジュモの言う通り、獣医にルーシュの足を見せたところ、本当に骨のヒビと関節の炎症が見つかったのは、別の話だ。

 

 

 

 

 

 

 02 ジラーマの街

 

 ジュモ達は、ゼリルのことを不審に思った衛兵と一悶着あったものの、無事街に入ることができた。

 

 ジラーマの街は、スピトゥールの大地の南部に位置するため強力な魔物(まぶつ)も少なく、なおかつ東西の中心にあるため来訪者が多く、交易の盛んな街である。

 また、周辺に村が多いため、お登りで冒険者になる物が多い街でもあった。

 

 そんな街で、ジュモ達がまずするべきことはゼリルの目的地を探す――ことではなく、ギルドへ行き、ジュモのギルドカードを再発行することだった。

 これからの旅、身分証であるギルドカードがないと、また面倒な事が起こりかねないからだ。

 

「さて……ギルドギルド……」

 

 どこからどう見てもこの街に来たばかりのジュモを見兼ねた男がジュモに話しかける。

 

「ああ、ギルドなら通りを真っ直ぐ住んで、宿屋を曲がった……うわおっぱい⁉︎」

 

「おう」

 

「ジュモ! お礼を言いなさい!」

 

「……ありがとよ」

 

「お、おっぱいがしゃべったあああああ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 仰天する男もつゆ知らず、ジュモたちは周囲の建物よりも一際大きく、屋根の上には六角形のシンボルのついた建物の前に来ていた。ギルドである。

 

「ところでジュモ」

 

「なんだ、ゼリル」

 

「先ほど親切にも私たちに道を教えてくださった方、私を見てとても驚いてましたね」

 

「そりゃな」

 

「衛兵の方も、とても驚いていましたね」

 

「だろうな」

 

「ひょっとして、このままギルドに入っては、大騒ぎになってしまうのでは?」

 

「…………籠の中のサザダンゴ作戦でいくか」

 

 気を取り直して、ゼリルをサザの葉で包み籠にいれて見えないようにし、ジュモはようやくギルドへと入った。

 

 巨大な木製の扉を引き、中に入ると、その賑やかさにジュモは思わず顔を顰めた。

 

 中では、武具を装備した人々が。談笑する者、飯を食う者、酒を飲む者。

 

 中には巨大なボードに、魔物(まぶつ)の討伐や、それから凶暴な動物(ビースト)の討伐の依頼書後が張り出されている。

 

『随分と賑やかなんですね』

 

 ジュモの脳内にゼリルの声が響く。

 

「うおっ!」

 

 突然声を上げたジュモを不審がる視線が向けられる。

 

「げぇ……」

 

『ひょっとして、私の声が聞こえてしましたか?』

 

「(まあな。お前そんなこともできんのかよ)」

 

『自分でも驚いています。……ジュモからはテレパシーできないんですね」

 

「(当たり前だ。そんな事、そうそうできてたまるか)」

 

 ジュモは受付の指示に従って、取得試験の受付を行なっている二階へと上がった。

 

 開けた間取りとなっていた一階とは異なり、二階はいくつかの部屋に分かれている。

 

 受付前の椅子には、真新しい軽装備の少年やおどおどした少女といった、初めてカードを取得するであろう面々から、見るからに荒くれ者のような風貌の者までいる。こちらはおそらく,ジュモと同じように再取得する者だ。

 

 ジュモが窓口に向かい、眼鏡をかけた職員へ早速話しかけた。 

 

「なあ、ギルドカード作り直したいんだけど」

 

『ジュモ! 敬語!』

 

「……ですけど…………」

 

「は、はい。ギルドカードの再発行ですね。まずはお名前を伺ってもよろしいでしょうか」

 

「おう、ジュモ・オレンジバックだ」

 

「ではジュモ様、以前、当ギルドでカードを発行されたことはありますでしょうか?」

 

「ねぇ……ですけど、それが何か変わるん……ですか?」

 

「はい、当ギルドでの発行履歴がある場合、既に身元が確認済みとなり、再発行試験が免除となります。履歴がない場合は、発行試験を受けていただくこととなります」

 

「試験だあ……? あの面倒なのをもっかい受けなきゃならねぇのかよ……です」

 

「ジュモ様が仰っているのはおそらく、ギルドカード初発行時に行う、三日間に渡る試験ですね。今回は再発行とのことですので、ジュモ様に受けていただくのは一日間の実地試験となります」

 

「一日くらいならまあ、いいか……。どっちにせよ面倒だけど」

 

「かしこまりました。お一人での申請でしょうか」

 

「ああ」

 

「そうしますと、本試験は三人で受けていただく試験のため、他の受験者と合同で行っていただくこととなります」

 

「げっ……」

 

「試験内容は、ジュモ様を含めた三人パーティでのDランクの魔物(まぶつ)討伐依頼となります。予め組んだパーティでの受験が推奨されておりますが、どうなさいますか」

 

「その場で出会した人間と行動するのは面倒だが、予め仲間をつくるのはもっと面倒だ。このまま受ける」

 

「かしこまりました、本日は適性検査のみ行い、出発は明日早朝となります。よろしいですか?」

 

「いーよ。どうせ駄目っていっても日付は変わらねぇんだ」

 

「では、適性検査を行いますので、あちらへお進みください」

 

 ジュモは受付の案内に従って廊下を進んでいる最中、ゼリルが久しぶりに話しかけてきた。

 

『なるほど、再発行には試験を受ける必要があるのですね』

 

「ったく、見ず知らずの人間と試験だなんてやってられねぇぜ」

 

『初回の時はどうだったのですか?』

 

「あー、確か初回の時は、他のやつらがへっぴり腰のザコで使い物にならねぇから一人でさっさと終わらせちまったよ」

 

『ジュモ、そういった言葉遣いは慎みなさい。皆駆け出しなのですから、弱いのは当たり前でしょう』

 

「へいへい、さっきからお前は母親かよ……」

 

『共に行動する以上、人様に迷惑を掛けることは許しませんからね』

 

「そう言うのを言ってんだよ……」

 

『それにしても、ジュモは試験を受けた時から強かったんですね』

 

「まあな。俺はずっと森で暮らしてて、魔物(まぶつ)と戦うなんざ日常茶飯事だったからな」

 

『……? 魔物は暗闇があればどこからでも出現するのですよね、ならば魔物と戦う機会があるのは街で暮らしていても同じでは?』

 

「それがどうも、街の中には魔物が湧かないらしい。それに、外から入ってこようとする魔物は、壁と衛兵が全部食い止めるからな」

 

『街の中に湧かない、とはそれまた珍妙な』

 

「あー……なんだったか。そうだ、逆だ」

 

『逆、ですか?』

 

「ああ。スピトゥールには”魔除け地”つって、どういうわけか、夜になっても魔物(まぶつ)が湧かないどころか、近寄りすらしない場所がたまにあってな。そこを見つけて街をつくったらしい。

 

『なるほど、理解しました』

 

「そりゃよかった、もう着くぞ、またしばらく黙っててくれよな」

 

『そんな言い方はないでしょうに』

 

 ゼリルは不満げに言うと、また黙ってしまった。

 

 廊下の突き当たりの部屋には、大きな机、手前側には金属性の防具に剣を背負った冒険者の男が、奥にはギルド職員の女性。

 

 男が手に持った拳大の大きさの八面サイコロを振るう。

 目が出ると、

 

「職業適性は『戦士』、『聖力』は一。自己申告通りですね」

 

 

「次の方〜、えーと、ジュモ・オレンジバック様ですね」

 

「おう」

 

「ではこれよりジュモ様には適性診断を行っていただきます。適正検査についての説明はご必要ですか?」

 

「いらな――」

 

『要ります』

 

「……やっぱ聞かせてくれ」

 

「はいはい、わかりました〜。ではすでにご存知かもしれませんが、『適性診断』を改めて説明させていただきまーす!」

 

 そう言って職員はサイコロを手に取った。

 

「ジュモ様には今から、机の上でサイコロを振っていただき、その結果であなたの職業適正と聖力をジャッジすることができちゃうのです!」

 

 

 そう言って職員が卓上にひかれたシートを指す。

 シートには、紙面いっぱいの三角形が描かれており、三角形の頂点にはそれぞれ、『力』、『技』、『精神』の文字が描かれている。

 そして、三角形の中に描かれているものこそ、様々な職業の絵が絵だ。

 

「そしてこれが職業表です! サイコロを振ってもらって、力のカテゴリには剣士や武闘家みたいな筋力が求められる職業が。技のカテゴリにはシーフやアサシン、アーチャー、レンジャーみたいな器用さが求められる職業が、精神のカテゴリには魔法使いや、踊り子、歌姫なんかの、精神力を使用して、不思議な力をあやつる職業が描かれています!」

 

「サイコロの出目は、聖力の強さを表しています。サイコロの出目が四以上でですと、適性があるとみなされ、剣士ならば聖剣士。特に、魔法使いや踊り子ならば、聖女や聖人となります。ジュモ様、以前の結果は?」

 

「ああ、ビーストテイマーで、聖力は二だったな」

 

「かしこまりました。テイマーですと、ここになりますね」

 

 職員は『技』と『精神』の間。そして、『力』からは最も離れた場所を指し示した。

 

「では、ダイスロールを」

 

「おう」

 

 ジュモがダイスを転がすと、サイコロはまるで意志を持っているかのようなら挙動で、三角形の最も外側にあるビーストテイマーの絵柄へ向かって転がっていく。

 勢いをつけすぎたのか、サイコロは一度三角形の中から飛び出したものの、再び中に戻りテイマーの絵柄の上に戻った。

 

 そして、後はサイコロが止まり出目が出るのを待つだけというところで、異変が起きた。

 

「お?」

 

「ええっ⁉︎」

 

 起きたこと、それは――

 

「――サイコロが止まりません!」

 

 職員が目を見開いた。

 その言葉通り、サイコロは止まらずに、ビーストテイマーの絵の上で回り続けていた。

 

「前はこんなことなかったぞ、どうなってんだ」

 

「え、えーと私にもわかりません! こんな事初めてで……。おかしいですね、サイコロは絶対のはずなんですが……」

 

 その間も、サイコロが止まる気配はない。

 

『ジュモ、私を置いてもう一度サイコロを振ってみてください』

  

「あ? ……やってみるか」

 

「はい?」

 

 不思議そうに首を傾げる職員をよそに、ジュモが再びサイコロを振るう。

 すると、先ほどと同じ挙動で転がったサイコロは、今度はすぐに“二”の出目を出して止まった。

 

「お、できたぞ」

 

「ああ……! 先輩たちにも見てもらおうと思ったのに! ……失礼しました。たしかに……ジュモ様は聖力二のビーストテイマーとしての適性があるようです」

 

「おう。じゃあもう帰っていいのか?」

 

「は、はい……」

 

「そうだ、この辺に上手い飯屋はあるか?」

  

 ◇

 

「『〇〇』、『〇〇』……どれもうまそうだな……」

 

 職員の勧めで入った食堂でメニュー表を眺めるジュモ。

 

 

 入店時、ゼリルの姿を見た店員に当然ギョっとされたが、「ビースト連れ込みしていいんだろ?」の一言で押し通した。

 

「なあ、さっきの適正検査のとき、なんでお前を置けばサイコロが普通の動きになるってわかったんだ?」

 

「うーん……強いていえば、なんとなく、でしょうか。前回ジュモが検査を受けた時と明確に違うことといえば、私がいることくらいでしょうし」

 

「それもそうか……。でもなんでだ……?」

 

「さあ……? ……! ジュモ、誰か来ます」

 

 ジュモとゼリルは共に首を傾げる。

  

 

 

「理由、知りたい?」

 

 そんな声が聞こえたと同時に、ジュモの視界に栗色のロングヘアが映り込む。

 

「あ? 誰だアンタ」

 

 声の主は、修道服“らしき”ものを身につけた二十歳ごろの女だった。

 “らしき”――というのは、彼女の服が、修道服というにはあまりに着崩されていたからだ。

 

 通常、教会の修道服は、頭に頭巾を被り、上下一体となった純白の貫頭衣の形状で、足首を覆うほどの長い丈が特徴である。

 これは肌の露出を減らすため、この形状なのである。

 

 だが、彼女の服は上下で別れている上、上半身は半袖、下半身にいたっては、大胆に太ももが露出したミニスカートとなっており、実際のところ着崩すというよりも、別物といったほうがよいほどだった。

 

「まぁまぁ、話はご飯でも食べながらしようよ。おいしいんだよ? ここのカレイ」

 

 女はジュモの問いには答えないまま、しれっとゼリルの隣、ジュモの斜め前の席へと座った。

 

「おい」

 

「すみませーん、注文いいですかー! あ、そうだこの子は何食べるの?」

 

 女は給仕を呼ぶと、ジュモに問いかけた

 

「いえ、私は食事を取りませんので」

 

「うわあ! この子しゃべるんだー! すみませーん! カレイ二つでー!」

 

「おいって!」

 

「なによー、さっきから」

 

「こっちの台詞だ、座っていいなんて、俺もゼリルも言ってねぇぞ」 

「へぇ、この子ゼリルって言うんだ。……ところでこの子、一体ナニ?」

 

 女の目が細められる。   

 

「……どういうことだ」

 

「そうね、キミ思ったより頑固そうだし、先に名乗ったほうが早そうかな。――私はヒルナ。ジラーマの聖女よ」

 

「あ、あんたが聖女……?」

 

「ジュモ、聖女というのは確か……」

 

「ご存知の通り、一人前の聖術使いに与えられる称号ね。そして、私にはこの街を魔物から守る使命があるの。だから、魔物を誘き寄せる聖力を放つその子――ゼリルをどうにかしなきゃならないの」

 

「やっぱゼリルの光は聖力の光だったのか……」

 

「そ、ほら同じでしょ?」

 

 ヒルナはジュモたちに手のひらを見せると、ゼリルと同じ淡い緑色の光を持つ光球をつくってみせた。

 

「聖力は魔物への特効になる反面、魔物を引き寄せる性質もあるから下手に扱われると危険なの。街中は魔避地だから大丈夫だけど、

 それでも何があるか分からないからね」

 

 

「選択肢は二つ。その子を教会で保護するか、責任を持って君が管理するか」

 

「……ご提案ありがとうございます。しかし、私はジュモと共に旅をすることに決めていますので、」

 

「……そう、でも、聖力を出しっぱなしで行動されるわけにはいかないんだ」

 

「じゃあどうすりゃいいってんだよ」

 

「私が今から出す条件を呑んでくれたら、彼女用の聖衣を渡すよ」

 

「聖衣?」

 

「今私が着てる服のことよ」

 

「あ? 教会の服ってことか……?」

 

「ちょっと違うかな。私たち聖女は街の外に出ても魔物を引き寄せることはない。なんでか分かるかな?」

 

「あ? えーと……」

 

「ひょっとして、その服に何か細工が?」

 

「その通り! 実はこの服、聖力を外に漏れさせないようにする効果があるんだ」

 

「なるほど、つまり私がその服を身につければ街の外で活動しても問題ない、ということですね」

 

「……でも、あんた条件って言ったよな」

 

「うん。何と言ってもこの聖衣は聖力を込めた糸から作られた超高級品だからね。切れ端だってタダであげるわけにはいかない。そこで君たちには、薬草を取ってきて欲しいんだ」

 

「聖衣とやらの代わりにお使いを頼まれてくれってわけか……」

 

「端的にいえばそうなるかな。君……えーと」

 

「ジュモだ。ジュモ・オレンジバック」

 

「ジュモくん、等級は?」

 

「等級?」

 

「ほら、ギルドカードの等級」

 

「ああー、カード無くしたからそんなもんねぇぞ」

 

「……じゃあ、無くす前でいいから」

 

「確か、一番したのやつだ」

 

「……となると鉄等級ね。それだと、お願いするには少し――」

 

「昇格試験とか言われてたけど、なんか面倒だったからそのままにしてあんだ」

 

「……はい?」

 

「あ? どうかしたか……?」

 

「ね、ねぇあなた……今、昇格試験を受けてない、って行ったかしら……?」

 

「おう」

 

「はあ〜〜」

 

 ヒルナが頭を抱えるのも無理はない。なにせ、冒険者にとって等級とは最も重要視されるものだからだ。

 

 鉄→銅→銀→金→プラチナ→ミスリル→オリハルコンからなる等級は、冒険者の能力と功績を示すものであり、当然等級の高さによって受けられる依頼、収入、待遇などが大きく変わる。

 

 だがそれはあくまで、人間の中での話だ。

 人間の街に滞在することを好まず、金銭にも執着のないジュモにとってそれはあまり関係のない話だったのだ。

 

「……じゃあ質問を変えるね。あなたが今まで倒した魔物の中で、最も強かったのは何?」

 

「あー……、あのゴツい鎧つけたオーガかな」

 

「アーマーオーガ⁉︎ 銀等級でも上澄みじゃない!」

 

「あいつらに囲まれたときは流石にヤバかったな……」

 

「しかも集団個体……。そうなると実力はおそらく金等級、もしくはそれ以上ね……」

 

「よくわからんが、すごいのか?」

 

「鉄等級から金等級まで上がるには、筋のいい冒険者でも数年掛かるからね……ともかく、それならお願いしても大丈夫そうね」

 

「それで、お使いってのは何なんだ?」

 

「あなたに採ってきて欲しいものはポワラスの花。解毒薬の材料」

 

「解毒?」

 

「この街の付近には、毒を持った魔物が以前から多かったんだけど、ここ最近急増しててね。ポワラスの花の備蓄が不足しているの。だけど、ポワラスの花は外れの洞窟の先にあるから」

 

 「アンタが聖女ってなら、聖術で治せるんじゃんないのか?」

 

「それができれば本当はいいんだけど、私の聖力量にも限りはあるし、それに、私がしばらく出払っていることもある。だから、聖術に頼らなくても対応できるようにしておく、ということはとても重要なの」

 

「そういうもんなのか。……わかった、人間を助けることになるのは癪だが、これもゼリルのためだ。やってやるよ」

 

 そういってジュモは席を立とうとする。

 

「ジュモ!」

 

「あ?」

 

「ジュモは、ポワラスの花がどんな見た目をしているのか、ご存知なのですか?」

 

「…………」

 

 ジュモは、無言で席に戻った。

 

「ええと、じゃあ気を取り直して……」

 

 ヒルナが胸の谷間から手帳を取り出す。

 

「おっ、おま、どこからそれ出して……!」

 

「ナ・イ・ショ」

 

 ヒルナは手帳をパラパラと捲り、翡翠色の花が一輪描かれたページをジュモたちへ見せた。

 

「これがポワラスの花」

 

「『大気の聖力が濃く、空気が澄んだ場所に生息』か。この手の植物は大概数も少ないんだ。案外骨が折れそうだな」 

 

「察しがいいね。その通り! ……だから私たちも困ってるわけななんだ。君たちにこの仕事を頼むのは、君たちなら、案外苦労せずに見つけられる可能性があるから、だね」

 

「俺たちが?」

 

「うん。鍵になるのはキミだよ」

 

 ヒルナがゼリルを指さした。

 

「聖力の適正が高い者は、聖力を感知できる」

 

 -「……! そういえば、私も貴女が近づいてくるのを感知できました」

 

「そう。だからキミたちに頼みたいんだ。それと、一つ忠告しておきたいことがあって――」

 

 

 

 

 

「なあ、だけど魔物に襲われるんじゃ?」

 

「あ……」

 

「おい、アンタ忘れてたろ。」

 

「仕方ない、じゃあ折衷案って言うのはどうかな」

 

「あ?」

 

「先に聖衣を渡す。その対価として、君たちにはポワロスの花を採ってきてもらう。……そういうことにしようと思う」

 

「聖衣ってのは希少なんだろ? いいのか、そんな安易と渡して」

 

「それに関しても考えがあってね」

 

 ヒルナは今度は、太ももからナイフを抜くと、スカートの一部を少しばかり切り取った。

 

「おい! 何やってんだ!」

 

 ジュモの声も無視して、ヒルナはそこから硬貨ほどの大きさの円を二つ切り抜いた。

 

「はい、できた」

 

 そしてそれをゼリルに見せつける。

 

「はい?」

 

「ほいっ」

 

 ヒルナは、切り出した聖衣をゼリルの光――乳首へ押し当てた。  

「ひにゃんっ! な! なにするんですか!」

 

「うん、これで聖力の放出が止まったね。成功成功!」

 

「どういうことだよ、説明しろよ」

 

「まあまあ、そう焦らないでって」

 

 ・それと、解毒薬を渡しておくよ、

 

「毒のポーションだからね。」

 

 

「ジュモ、今度は私が助ける番です。」

 

「」

 

 

 先に喘げる。

 

 

 

「本物の花をくれ」

 

「俺に考えがある。」

 

 

 

「試験が三日後ぉ⁉︎」

 

「現在、待遇が上がったことで、冒険者になろうとするものが増えてきているのです。」(回収できる魔霧)

 

 昼だからといって油断してはならない。昼でも洞窟や深い木陰からは湧き出てくるのだから。

 

 

 ポワロスの花は聖力を放ってるから、花の近くまで行けば自ずとわかるわ」

 

「まてよ、それじゃ結局花の近くまでは自力で探さなきゃねぇんじゃねーのか?」

 

「あはは、まあそうだね。さすがに聖力といっても遠くから感知できるほど強くないし」

 

 

 ◇

 

 薄暗い森。

 

 ジュモはゼリルを背負っている。

 

 乳首が目になっており、そこを中心に見ることがかのう。

 

  ――ジュモの考えとはそう、ビーストの力を借ることだった。

 

 ジュモたちの足元を一匹のネズミ系ビーストが通り過ぎていく。

 

「おーい、ちょっといいか?」

 

 ジュモはネズミに話しかけながら地面に伏せる。ネズミの視線を合わせるためだ。

 

『ワ! オオキナ動物!』

 

「わりいわりい、怖がらせちまったな。これやるから、ちょっと力貸してくれねぇか?」

 

 そういってジュモは腰のポーチからナッツを取り出し、ネズミの前にパラパラと置いた。

 

『ワア! カリカリ! ゴチソウ!』

 

 すぐにナッツを齧り出すネズミ。警戒が解けたのを確認したジュモは、ヒルナからもらったポワロスの花をネズミの鼻先に差し出した。

 

「この花探してるんだけど、どこにあるか知ってるか?」

 

 ネズミがすんすんと花の匂いを嗅ぐ。

 

『知ッテル!』

 

「本当か!」

 

『アッチ! 暗クテ ジメジメノ先!』

 

「分かった、ありがとな」

 

「ジュモ、今ので分かったのですか?」

 

「ああ、こいつらの言う暗くてジメジメってのは、洞窟のことだ。多分この先に洞窟があるんだろう」

 

『デモ……大キクテ、怖イ奴、イル』

 

「……魔物か、分かった、気をつけるよ」

 

「――それにしても、ジュモが花を貰った理由はこういうことだったのですね」

 

「ああ、普通に探してたらそれこそ日が暮れちまうからな。それにしてもまったく、とんだ使いっぱしりだぜ」

 

「仕方がないでしょう。どうやら、この聖衣というものはよほどの貴重品みたいですから。それにしても、もう少し面積を多くいただけたらよかったのですが……」

 

「いいじゃねぇか、それでもちゃんと効果はあるみたいだしよ」

 

 ジュモに言われ、ゼリルははっと気づく。

 

「そういえば、さっきから魔物(まぶつ)に遭遇していませんね。……たしかに効果はあるみたいです」

 

「ああ。昼とはいえこれだけ薄暗い森。魔物だってそこらに湧いてるんだ。昨晩までの調子じゃ、今頃とっくに追いかけられてるはずだぜ」

 

「……でも、魔物というのは本当に不思議ですね。何もないところから湧いてでてくるなんて」

 

 《ここまでで足りなかた魔物(まぶつ)の説明を入れる〉

 

「――つっても、やっぱり完全に聖気を抑えられるものでもないらしいみたいだな」

 

 ジュモたちの前に、ゼリルの聖気を嗅ぎつけてきた数体のゴブリンがあらわれた。

 

『ギャルルル……』

 

 そして、次の瞬間には一斉にジュモたち目掛けて襲いかかってきた。

 

『ギャアアッ!』

 

 ジュモの爪攻撃 

 

「今更てめーらごときに遅れをとるかよっ!」

 

 ジュモの鋭い横薙ぎに、ゴブリンは跡形もなく消え去った。

 

 だが、騒ぎを聞きつけてか、茂みから次々に増援が現れる。

 ――サソリ、キノコ、カエル、ポイズンスライム。

 

 歩くキノコ、トキシック・マッシュ

 毒ガエル ポイズン・トード

 毒サソリ ヴェノムスコーピオン

 蛇

 

 

 

 

 

 ヴェノム

 ポイズントード、

 

「本当に毒を操る魔物(まぶつ)がうじゃうじゃいやがる……」

 

(……一人なら楽勝だってのに、こいつ(ゼリル)を守りながら戦わなきゃならねぇのか)

 

 誰かを守りながらの戦い。それは、ジュモにとって初めてのものだった。

 

「ジュモ後ろ!」

 

 ジュモは咄嗟に反転

 

「まずいっ! 亀の盾!」 

 

 サソリが飛びかかり、

 防ぎ、ガキン!

 

 その好きを見て、ポイズンマシューが毒の胞子を撒き散らす。

 

「ちいっ!」  

  

 ジュモは大きく横に飛び回避。

 

 

「なにっ!」

 

 ジュモが足を掬われる。

 

 見ると、木に擬態した魔物(まぶつ)、『トレント』が伸ばしたツルがジュモの足を絡めとられ、地面にうつ伏せになった。

 

(くそッ! 背後に気を取られて足元の警戒を怠った!)

 

「ジュモ! 上です!」

 

「わかってらぁ!」

 

 コボルトが飛びかかってくる。

 

 だが、ジュモは振り返るように体を大きく捻り、ツタを水平斬りにすると、その勢いで逆立ちの要領で天に向かって蹴りを放った。

 

「『馬の足蹴り!』」

 

 勢いよく突き出されたソールがコルトの顎を砕きながら蹴り飛ばした。

 

 トレントの枝に尻尾を巻きつける。

 

 トレントが振り払おうと大きく枝を揺らした勢いを利用して、ジュモは別の木へと飛び移りその場を離脱した。

 

「っぶねぇ……! このまま離脱するぞ1」  

 

 ◇

 

 

 背中のゼリ、どうするか。

 

「私がジュモの言うバリアを任意で貼れるようになればいいのですが」

 

 

「……まあできねぇもんは仕方ねぇ。」

 

 

「では、私が指示を出す、というのはどうでしょうか」」

 

「はい、今は攻撃の方向のみ指示を出していますが、私が直接指示をすれば、自ずとジュモの対応は早くなるはずです。」

 

「……確かにそうか、分かったそれでいこう」

 

 

 

 

 

 

 ジュモはそのまま追ってくる魔物たちを振り切り、ネズミが差した洞窟の前まで来ていた。

 洞窟はさほど長くないようで、向こう側にはかすかにだが、反対側の出口から差し込む光が見えている。

 

「この先か……」

 

 だが、森よりも数段暗闇の濃い洞窟は、魔物の巣窟である。

 そのため、洞窟での戦闘は複数人で万全の状態で挑むのが鉄則である。

  

「隠れながら進むのが安全だろうが、ゼリルの聖力に気づかれるだろうし、何よりコソコソ進むってのは性に合わねぇ。」

 

「 (モード・チーター)!!」

 

 ジュモのブーツから爪が生え、地面に食い込む形を取る。

 

 ゼリルをバックパックに押し込むと

 

 ガントレットからも小ぶりな爪が生える。

 

 ジュモは爪を地面くいコマえる、四つ足で駆け出した。

 

(チーターと同じ方式でダッシュ。)

 

 光が見えた。

 その時だった。足を何かにとられた。

 

 蜘蛛だ。

 

 足を取られる。

 

 ジュモは宙ぶらりん。

 

 切って脱出

 

 戦闘開始、

 

 爪を出して飛びかかる。

 

 スキュラと互いに突撃、

 腹の下へスライディング爪を突き立てるが、火花がちるだけで今ひとつ。

 

『こいつ……爪じゃだめだ。ハンマー!』

 

 

 鋭い前足と何合か打ち合う。

 パリイをとる。

 しかし尻から糸を出し、後退されてしまう。

 

 ちょこまか逃げ回りやがって

 

 スキュラが糸を吐き足場にねばねばネットを展開。

 

「ちぃっ!」

 

 空中戦ならオレだって負けてらんねえぜ。

 

 片手のハンマーを解除。

 

 足をサル、しっぽ解除。

 

 壁をけり、岩のつららにつかまり空中でうちあう。

 

 スキュラのバランスをついに崩し、腹を剥き出しにして落ちた。

 

 落下の勢いでハンマーを――!!

 

 スキュラがキエエーーと叫んだ。

 

 すると、ぐいとジュモは後ろに引っ張られ、岩に叩きつけられる。

 

 ゼリルを庇い、とっさに左腕を痛めた。

 

 目の前に、二回りほど小さいが、もう一頭のスキュラが現れた。

 

「マジかよ……」

 

 追い討ちのようにバックパックに糸をつけ、引っ張ってきた。

 

「こいつ! やっぱりゼリルを狙ってきてやがる!!」

 

 引っ張られ、キバが飛び出た。身を捻った交わすが、バックパックの間を貫いた。

 

「くっそ、せっかく治したってのに……」

 

「ゼリル!!」

 

 ゼリルが転がり出る。

 

 ジュモ、抱き抱え転がる。

 意図に絡まる。

 

 運悪く、ジュモの目に絡みつき、視界を塞いだ。

 

『ジュモ!私のせいで……』(ひどく狼狽)

 

「ゼリル、力を貸してくれ。外は見えるか?」

 

「はい」

 

「やつら、どうしてる?」

 

「近づいてきます。でももう勝ったといわんばかりにゆっくり近づいてきます」

 

「……ゼリル、やつらをめいいっぱい引きつけるぞ。」

 

『オレを信じろ!!』

 

 脇腹かすめる。、

「がはっ!!」

 

 引きつけろ……引きつけろ……。

 

 

『やつが口を開けた瞬間を教えろっ!!!』

 

『今です!!』

 

 

 つのでひとつき。

 

 

 

 弱点を突いて倒す。

 

 ツノが貫いた。

 

 ギャアアアアアアアアア!!!!

 

 射出!!

 

「よしきた!!! カマキリ!!」

 

 消えゆく小さい方。

 

 狼狽える大サイズ。

 

 ジュモは飛び上がり、

 

 両手を合わせ大きな金槌のようにすると振りかぶった。

 

 倒した。

 

 歩くとひらけたところに出た。

 まるで花畑だ。

 たくさん毒消し草が咲いている。

 

「おっと……」

 

 ジュモが倒れた。

 

「ジュモッ!!」

 

「あのとき毒をもらってたな……」

 

「これだけ花があれば……」

 

「……ああ、こいつは塾生させないと意味がねぇ」

 

 ゼリルに天啓。

 

『ジュモ、わたしがなんとかします』

 

 意識を失うまぎわ

 

 

 ジュモの中に、口から何かが注がれていく。

 ジュモは目を覚ます。

 

 毒がない……?

 それどころか、傷も、治っている……?

 

 乳だ。

 

 ぜ、ゼリル!?

 

 恥ずかしそう。

 

「な、おまえ乳を出したのか!?」

 

「できるきがして、やれる気がして」

 

 どんな薬だってこんな効果はない。一流の聖術師に匹敵する。

 

 

『すみません、なんだか眠く――』

 

 ゼリルは夢を見た。

 

 ――大戦。

 

 それはまるで、あの絵画のような――。

 

 

 ◇

 

「実は気絶系の毒だったので死ぬことはありませんでした。というオチ

 

「スキュラ……それも二匹だなんて……。ワイバーン便で聖都へは手紙をおくっておくわ。」

 

「ワイバーン便?」

 

「ええ、知らない?」

 

「ワイバーンに手紙を運ばせるのか?? 」

 

「普通は鳥系なんだけど、タフなワイバーンに運ばせるの」

 

 

「気になるなら、一緒に見にくる?」

「手紙書くからちょっとまっててね」

 

 

「こちとら、お前のせいで死にかけたんだからな。

 

 

「でも、花畑にはたどり着いていたんでしょ? なら大丈夫だったじゃない」

 

「おい」

 

「誤解してるみたいだけど、スキュラの毒はせいぜい5分程度よ。危険なのは、巣を張ることと、その凶暴性。ベテランの冒険者でも命を落とすこともあるの」

 

 

 

「約束の聖衣だったわね」

 

「これだけかよ」

 

「これ、一着〇〇リアよ??」

 

「げっ……」

 

 予備もつけてあげるから

 

「なら…」

 

 ◇

 

 

 昼なと飛行場を見学した帰りのことだ。

 

 

 街の外側の飛行場を目指す中、男の喧騒が聞こえてきた。

 

 見ると、三人の男と、赤髪を後ろで縛った少女がなにやら揉めているようだった。

 

 少女の身長は男たちの胸ほどもなく、小柄。12歳ごろだろうか。

 

「てめぇ! 警戒を怠りやがったな!!」

 

「そんなことない! いつも通りちゃんとやったんだよ!!」

 

「ならどうして襲われた!!」

 

 仲間一名が死に、一名が毒を浴びる惨事となった。

 大損害だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 理由→さすがにシュロリーが追い出される、

 

 →結構なプレみをした? 仕方なく。

 

 警戒を怠った??

 毒?

 強いモンスター??

 気配を消せる??

 

 

 

 

 

 ギルドカードがない。

 彼らとともに最終戦。

 

 試験は別の人たち。

 

 

 

 

 ヒルナと飛行場に行った

 

 

 テイマーに出会う

 

 聖女と街を歩く

 テイマーが不当な扱いを受けている

 

 クエストに出る。

 例のテイマーのビーストと出会う。

 

「ろくに戦闘の役にも立たないテイマーのくせに、生意気をいうんじゃなぇ」

 

「……テイマーの役割は、テイムした動物(ビースト)を使っての索敵や斥候が主な役割。そのため戦闘能力が低く、重要度を低くみられてしまい、ああいった事態に発展することもしばしばあります」

 

「ちっ、……これだから人間は嫌いなんだ。」

 

『イライラ、するのであればジュモ、彼女を助けなさい』

 

「まあ、ここは私が…って聞いちゃいない」

 

「あ? なんで俺が人間なんか……」

 

 ジュモの目に、彼女の足元にリザードが見えた

 

『こいつ……きらい……!! ごしゅじん……いじめる……!!』

 

「おいてめぇ!!」

 

「あん? だれだてめぇ、」

 

「こいつと同じ、ビーストテイマーだよ」

 

「なんだ、お仲間のピンチに助けにきたってのか?」

 

「そいつはちょっとちげぇな。俺は、そいつの動物(ビースト)を助けにきたんだ」

 

「へえ、助けるったて、どうするんだ?」

 

「あ? そんなん簡単だろ。てめぇをぶちのめせば済む話だ」

 

 男が青筋を立てる。

 

「獣の力を借りなきゃ何もできないテイマー風情が、『重戦士』のゼイラー様相手になにかできるとでも?」

 

「あんた! いいから、あんた、鍛えてるんだろうけどテイマーが重戦士に勝てるわけないだろ!」

 

「あ? そんなんやってみなきゃわからないだろう」

 

「わかるよ! やつは身体強化に特化したギフトを持っていて、私たちテイマーは一つたりとも持っていない。単純な話だろう! それにあんた、自分の動物(ビースト)だってろくに連れていやしないじゃないか」

 

 だがジュモは彼女の言葉に耳を貸さず、ゼイラーの前に出ると、手招きして挑発した。

 

「こいよ、デクの棒。」

 

「っ……!! てめぇ……、いいぜこいよ、ボコボコにしてやる」

 

 いつの間にか人だかりができていた。

 

 両手剣(ツヴァイヘンダー)をふるう。

 

 

 チョッパーは属性を無効化できるんだぜ。

 

 

 

「おっと、ギルド職員は冒険者の問題には口を挟まない、そうだろう?」

 

「くっ……」

 

 職員は悔しそうに顔を歪めた。

 

 

 

「いっておくがおれたちゃあいつを助けてやったんだぜ?」

 

「なんだと」

 

「弱いテイマーなんざ、俺たちが拾ってやらなきゃ、今頃食いっぱぐれて、ロリコンの変態に拾われてるところだぜ」

 

 

 

 

 

「そんなに無駄に振るったら、刃こぼれしちまわないか?」

 

 

 

「心配どうも、こいつは魔法武器でなぁ、刃こぼれしないんだぜ!

 

 2メートルはあろう、自分の身長ほどの剣を高速で振り回す。

 

 

「どうだ、これでは俺様に近づくことすらできまい!!」

 

「なるほど、強いってのは、本当みてぇだな」

 

「――だがよ」

 

 ジャキッ! と、ジュモのブーツから生え出した爪が、地面食い込む。

 

 それがスパイクとなり、ジュモはゼイラーに飛び込み、急所、腹を殴り抜いた。

 

「ぐべあぁつ!!」

 

 ◇

 

「絶対に許さねぇからなぁ……!!」

 

 その場には、赤髪の少女だけがとりのこされた。

 

「……ありがと」

 

「俺はお前を助けた覚えはねぇ、礼なら、こいつらにしてやりな」

 

「そっか……うん、ありがとう。二匹とも」

 

「あいつの言ってた通りだよ。アタシなんか雇ってくれるの、いないから」

 

「あんたがテイマーなの、わかった。すごいんだね」

 

 ジュモに二匹が懐いているのをみて、ジェロリーは話す。

 

「私、

 幼いころから動物を愛し、愛されていた。

 ビーストテイマーの家系。

 母親はドラゴンを操るビーストテイマー、英雄。

 父親もワイバーンを操る配達テイマー。

 

 武器は槍。母親の影響」

 

 どうしたらあなたみたいに強くなれるの。

 

「俺は、ギフトを知らなかった。だから、色々できる。」

 

「わかんないよ」

 

 ◇

 

 弓使い、

 剣士と一緒に試験を受ける。

 ビーストテイマーの侮蔑を受けながら進む。

 

 

 索敵を潜り抜けてスキュラに襲われる。

 

 一人死亡。

 

「こいつ! さっきのより強い!!」

 

「スキュラ!銀等級モンスターです」

 

「死んだやつは銅等級だったからな……」

 

「毒ポーションの準備が少ないため、撤退を推奨か……」

 

「いや、ここで倒せば勲章は確実。」

 

 甲羅にヒビ、

 

 白く柔らかなナニカが、

 折り畳まれたいた何かが、ぬるりと飛び出てくる。

 

 女の上半身だ。

 

 

 

 

 

 

 アラクネ

 

 

 超特殊個体――!!

 

「ヒヒ――コロス」

 

 通常1段階だが、2段階。

 

 つまり――白金級魔物(まぶつ)――!!

 

「撤退です!!」

 

 バラバラに撤退。

 

 すると、チェロリのオウムと、例の男がやってきた。

 

「た、助けてくれ!!」

 

『そうだ、こいつを囮にすれば時間を稼げる――!!』

 

「ひっ!」

 

『ジュモ! それだけは、なりません』

 

「なんでだよ!!」

 

『彼は更生の機会がなかっただけ。彼の境遇を許しなさい』

 

「慈悲も情けもわかんねぇよ!!」

 

「うるせえ! とっとと逃げやがれ!!」

 

 

 ジュモはチェロリの元へ

 

「毒だ……!!」

 

 草を食わせる。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 ジュモが吹き飛んだ。私のせいだ。

 

 私がやらなきゃ……!!

 

「あなた、ジュモのところへ行きたいのね……」

 

 走るチェロリ。

 

 チェロリは、サイコロを投げたときの事を思い出す。

 サイコロは、長かった。

 一度……そう、一度騎士。

 

 ――そう、弓だ。

 

 集中力があがり、スローになる。

 

 目を射抜く!!!

 

「今よ!!」

 

 チェロリはゼリルを投げた。

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 ジュモは大量失血。

 

『ジュモ……!!』

 

 授乳。

 

 立ち上がる。

 

 ジュモに、力がみなぎってくる。

 前とは、明らかに何かが違った。

 

 全身が回復。

 

 ゼリルが眠りにつく。

 

 ――ジュモの体を、安らかな緑の気が、聖気が包んでいた。

 

「これなら――!!」

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 チェロリ、接近されている。

 

 目を瞑る。

 

 空から降っていたジュモが、アラクネを殴り抜く。

 

「悪い、待たせた」

 

「モードゼリル……!!」

 

 

 

 ――もしあの会話がなければ、ジュモはこの件のことを思い出していなかったかもしれない。

 

 てめぇのおっぱいには、チェロリみてーな未来もなければ、ゼリルみたいな希望もねぇ!!!

 

 

 

 

 

 パンチ!倒す!!

 

 ●報いの件はどうしよう。

 

 消滅を確認すると、ジュモの全身から力が抜けた。

 

 ――子蜘蛛が這い出てくる。

 

「やべ……」

 

 ――光が、降り注ぎ、薙ぎ払った。

 

 

「ごめん! まだ生きてる!?」

 

 どこまでも陽気で能天気な声。

 

 聖女ヒルナ。

 

 

「はは……聖女すっげぇ……」

 

「アラクネが出たって聞いて、聖なるオーラを感じてきたんだ。」

 

 

 

 

 

 

 エピローグ

 

「弓使い募集!!」という張り紙が貼られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、見たところ漏れ出る箇所ははっきりしてるし、その部分だけ当ててやれば」

 

 ヒルナは補修用の当て布を持ってくると、丸く切って当てた。

 

 ぺたり

 

 どう見てもアレだ。

 

 どんな気分だ。

 

 …不思議と落ち着きます

(連れ歩くこととする

 

 ◇

 

『ジュモ! ジュモ起きなさい!!』

 

「んだよぉ」

 

「時間ですよ」

 

 ジュモが眠い目を擦りながらギルドの2階にあがると、受付止めが立っていた。

 

「よっす」

 

『おはようございます。あちらの部屋に行ってください。』

 

 ⚪️もっとジュモとゼリルの関係に尺を割くべきだよなぁ

 

 部屋に入ると、一匹のサラマンダーと、一話のオウムがいた。

 

「なんだ! 人間かと思ったけど、お前らが一緒の仲間か!」

 

『いえジュモ、違うと思いますが……』

 

「あ?」

 

『おまえ! なんだ! やるのか! ご主人の敵か!』

 

『ヤルノカ! ヤルノカ!』

 

 

「やらねぇよ〜。お前ひょっとして人間に使えてるのか?」

 

「ネルメル様! いい人!」

 

『イイヒト! イイヒト!』

 

「ご飯おいしい!」

 

『ゴハン! ゴハン!』

 

「へ〜! お? ご主人はどこだ?」

 

「トイレ!」

 

『トイレ!』

 

 すると、手を拭きながらネルメルが現れた。

 

「ちょっとあんた! うちの子たちに何してるのよ!」

 

「ああ、あんたがネルメルか」

 

「あなた、私のこと知ってるの?」

 

「ああ、こいつらがいってたぞ」

 

『ご主人! ネルメル!』

 

「ちょっと待って、あなたこの子達の言葉がわかるの⁉︎」

 

「そりゃぁ、俺もビーストテイマーだからな」

 

 ジュモが振り向くと、ネルメルはギョッとした。

 

「な、なによ、その子も動物(ビースト)なの……?」

 

「って言うか、動物(ビースト)の言葉がわかるビーストテイマーなんて、聞いたこともないわよ!」

 

「あ? 別に普通じゃないのか?」

 

「普通じゃないわよ!」

 

「あ?じゃあお前はどうやって話すんだよ」

 

「別に普通よ、言葉はわからないけど、怒ってるとか、喜んでるとか、そういうのはわかるもの」

 

「へぇ、そうなのか」

 

『ジュモはやはり珍しいのでは? 森で育った、と言っていたから

 

「ああ、確かに。森で育ったからな。ガキの頃からそうだった」

 

「森!?」

 

「はっはっはー、待たせてすまないと思ったが、賑わってるな…む、珍しいものを連れているな!」

 

 やってきたのは剣士。

 

「揃ったようですので行きましょう」

 

 ◇

 

 徒歩移動。

 

「それにしてもテイマーとはな。せいぜい落とされんようにな」

 

「ちっ……タークス、索敵お願い!」

 

「なるほどなぉ」

 

「あなたもやったら? 自分の仕事しなきゃ落ちるわよ?」

 

「よくわかんねーけど、オレもお前みたいにすりゃいいんだろ?」

 

 ジュモは空を見て鳥の群れを見た。

 

「なあ! ちょっと力貸してくれないか!」

 小鳥があつまってくる

 

「見つけてきてほしい」

 

 小鳥がいろんな方向に飛び立った

 

「あんた今何したの!?」

 

「? 頼んだだけだが」

 

「一斉テイムなんて、聞いたことない……」

 

「テイマーは基本、数日かけてテイムします」

 

 

「この子テイムするのに1週間かかったのよ!」

 

「はぁ、そうなのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紛失の方向け試験(やや高難易度)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つよめの魔物出る

 

「撤退!私たちで叶う相手ではありません!」

 

「やってやるぜ」→死亡

 

 VSミノタウロス

 

『BUMOOOOOOOOOOOO!!!!』→こっちのほうが話通じなさそう

 

「あなた!少しはできるようですね」

 

「まあな」

 

「では、」

 

「あなたはギルドに要請を!私たちで足止めをします!」

 

「おうよ!」

 

 

 

「やつはミノタウロス。ーーランクモンスターです!」

 

(テイマーから学んだ先方で撹乱しつつ戦う)

 

「プロリア!」

 

「私は防御魔法のギフト持ち。援護します。前衛はお願いします」

 

「牛野郎!こっちを狙えよ!」

 

「はは! こりゃいけるぜ」

 

 仲間狙われる。

 

 魔力が切れる

 

 ジュモ、

 

 大量失血。

 

 

「ジュモ!しっかり……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなに血が失われては……!

 

「ジュモ……ジュモ起きて……!」

 

 ドクン、

 

 ――やれと、

 

 おっぱい。それは生命の重点。

 

 ――それは母乳。

 

 ゼリルの体――その乳房につまった母なる神聖は魔力が、

 ジュモの体に流れ込んでいく。

 

 シュウウ

 

 ジュモの傷が癒えていき、たちまち血の気が戻ってくる。

 

 はっ!

 

 ジュモが目を覚ます。

 

 っぶねぇ……

 

 ジュモ! ――がミノタウロスと交戦中です。

 

 

 

 

 ここまでか――。

 

 ガキィン!!!

 

 雄々しい背中。

 

「わりい!油断した!」

 

 

 

 

 

 なあゼリル俺になにかしたか?さっきから力がみなぎってやがる。

 

 な、なにもしてません!

 

 まあいいや、

 

 がきいん!

 

 

 防御魔法があった時と同等、いや、

 それ以上に衝撃がすくなく感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 実技試験、三人パーティゴブリンの予定がちょいつよでてくる。

「回復は試験管の私が行うので」

 

『ジュモ、これを気に他の方ビーストテイマーの戦いかたを見たいのです』

 

『ジュモ、あなたの戦いかた、珍しいのですね』

 

「お前、友達を戦わせるのか?」

 

「じゃあ、【ギフト】もなくてどうやって戦うんだよ」

 

『ギフト?』

 

『――みたいなもんだ』

 

 

 

 

(やっぱゼリルのせいか…)

 

 魔法の説明パート。

 

 

「あとは筆記試験です。と言ってもあくまで常識的な者ですから」

 

 

 

 

『――ジュモ』

 

「……はい」

 鑑定

 色?

 

 黄色から白に

 

 

 

 ・ビーストテイマーの定義、できることを定時。

 

『ジュモはなぜ??』

 

「仲間を傷つけたくない」

 

『ジュモについてこようとしたビーストたちもいたのでは?』

 

「いたよ、でも断った」

 

 

 

 ・もっとおっぱいを活かした設定に?→できること羅列する

 

 知識、(ジュモ10回落ちた)

 

 俺、10回落ちてるんだよな

 

 街は聖なる力のたまった場所を中心に発展。

 つよい神聖力は逆に避けていくのだ。

 夜でも寝られる

 

 ゼリルは章ごとにレベルが上がる。

 各レベルにつき一度ビームを打てる

 

 

 

 

 聖女が駆けつけたときにはもう戦いは終わっていた。

 

「やはり、魔神が目覚めようとしています」

 

 ◇

 

 最北端の地、聖地。

 

 ここ数年。いや、

 

 ――”数百年ぶり”の慌ただしさを見せていた。

 

 壁が揺らいだのだ。

 

 ”泉”

 

 泉。聖力の泉としか形容できないほどの聖力だまりがあったのだが、

 揺らぎを感じた聖女がみにいったところ、顔が落ちていた。

 

 頭の月桂樹の飾り。それは本に書かれていた女神に似ていた。

 

 頭は目を開いた。

 

「――私はニューリア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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