【コミカライズ】探索者イリアスは人見知り   作:差六

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第四話「地獄の訓練 上」

 家に帰って指名依頼のことを二人に話して早々、アリスがきっぱりと断言した。

 

「十中八九、何か仕込みがありますね」

 

 仕込み。この場合は多分、罠とかそういうもののこと。新人探索者の訓練でどんなことをしてくるのかな。期待を胸に僕が首を傾げるのと同時に、アリスは推測を語ってくれた。

 

「恐らく新人と称して息のかかった者、間者を送り込むつもりなのかと」

「目的はなんだろうな、暗殺か?」

「迷宮協会も先日の決闘を見ておきながら、そこまで浅慮ではないでしょう」

「確かに国も協会も最悪滅ぶだろうしな。なら取り込む方か」

「最終目標はそうかもしれません。ただ、今回は調査が主だと思います」

「なんだ、潜り込む方か」

 

 ぽんぽんと二人が意見を投げ合う。テンポよく終わったから、口を挟む暇もなかった。間者、暗殺、調査。馴染みあるものとないものが入り混じっている。

 

 とりあえず今回は調査が本命らしいけれど、その中身がちょっとよく分からない。

 

「結局どういうこと?」

 

 エリーさんが教えてくれたことを考えれば、迷宮協会が僕のことを危険視して探ろうとしているのは二人の言う通り間違いない。

 

 でもそれだっていつものことだ。わざわざあんな深刻そうに、オウルとアリスもこんな真剣に話し合うほどじゃないと思う。

 

「いくらお前でも、自分があちらこちらから嗅ぎまわられてんのは知ってるだろ?」

「うん。よく尾行とかされてるよ」

「要はそれの強化版だ」

 

 オウルが雑にまとめてくれた。いつもは帰りに、時々迷宮に潜る時も十数人で追跡してこようとする。それが強くなるみたいだから、これからは百人で来るとか、かな。用意するの大変そう。

 

 そんな僕の呑気な感想が伝わったのか、オウルは額を抑えて溜息を吐いた。解釈が違ったらしい。他に強化するところあるのかな。

 

 オウルに倣ってもう一度考えてみる。でも全然出てこない。そんな僕へ次に語りかけてくれたのはアリスだった。

 

「以前の私にもイリアスくん、『竜骸』ダアト様の噂は届いていました」

「えっへん」

「多分それ悪名だぞ」

 

 それでもえっへん。というかむしろ、竜としては悪名の方が誇り高いかもしれない。

 

「ですがそれも単身で三層に潜るほどの強者、あくまで高名な探索者の一人としてです。三大ギルドの一つを滅ぼしたという逸話も聞こえてはいましたが、聖王国では吟遊詩人特有の誇張だと考えられていました」

 

 悪名だとあんまり誇り高くなかった。一層を取り仕切っていたギルド、『ブラウンウィード』をうっかり粉砕し、しばらくの間一層分の物流を大混乱させてしまったこと。誇張でもなんでもない、まぎれもない事実だ。

 

 『ブラウンウィード』は腐敗していた。再生のため一度壊すのも正解だったしれない。エリーさんはそうフォローしてくれたけれど、それはそれ、これはこれだ。そのせいで大変な目にあった人がいることを僕は忘れちゃいけない。

 

 人と人の作ったものは尊い。だけど、どれも恐ろしいほど脆く儚い。ちゃんとそれを意識して、なるべく壊さないように気を付けないと。

 

 改めて力加減の重要性を確認している間もアリスは説明を続いてくれていた。反省も大事だけど、こっちもちゃんと聞かないとね。

 

「けれど先日の一件、聖王国との決闘で認識が変わったのでしょう」

「誇張じゃないって分かったってこと?」

「はい。『聖女』を賭けた戦で聖王国が手を抜く訳がない。この大陸に住まう誰もが知っています。そして、決闘の記録を確認出来る者なら気づくはずです。聖王国がそのために、秘匿すべき最終兵器を持ち出したことも」

 

 石化した『聖女』を材料にした時と因果を操る兵器、擬神『デミウルゴス』。光速移動やクラスとスキルの無効化に加え、時間逆行による無限の再生能力を持つあのゴーレムは確かに最終兵器と呼ぶにふさわしいものだった。

 

 ライラックさんの言う通りあれを使えばデルファを、夢幻迷宮を征服することも不可能じゃないだろう。もっともあのゴーレムでも召喚者を即死させれば停止するはずだから、結局は一時的な支配に留まると思うけれども。

 

「その全てを、『竜骸』ダアト様はたった一人で打ち砕いた。個が国を超越するという絵空事を、英雄譚を現実にしてしまったのです」

「えっへん」

 

 英雄譚だから今度は悪名じゃないはず。今度こそ心置きなく胸を張る。それなのにアリスはどう見ても沈んだ、曇った眼差しで瞳を伏せていた。

 

「……ごめんなさい、イリアスくん」

「えっ急にどうしたの?」

「調査の激化は迷宮協会に限りません。必ず聖王国を含めた他国他勢力も、今後執拗に究明を繰り返すことになるでしょう」

「うん」

「私のせいで、またしてもこのようなご迷惑をおかけしてしまいました」

 

 思い切り腰を曲げて頭を下げるアリスを前に、思わずオウルと目を合わせてしまった。いつも通りのアイコンタクト。結果もいつもと同じ、僕が言うことになった。

 

 今から伝えることは多分、悪口に近い内容だ。それでも、これからも一緒に暮らしていくため、いつかは絶対言わなきゃいけないこと。

 

 意を決した僕はしゅんとしているアリスに向け口を開いた。

 

「ずっと前から思ってたんだけど、アリスってさ」

「……はい」

「なんていうか、結構じめじめしてるよね」

「じ、じめじめ。えぇと、辛気臭い、ということですか?」

「そうそう。あとは、あれ。くよくよとかねばねば」

「く、くよくよ。ねばねば」

 

 アリスが顔を上げてくれたのはいいけれど、ショックのあまり固まってしまった。ついでに気のせいか、後ろにガーンって文字が見える。

 

 あんな表情よりはまだいいよねと思いつつ、追撃になるかもしれないことを続けた。

 

「あとアリスはね、すっごい勘違いしてる。僕が決闘したのは、アリスのためでもせいでもないよ。あれは僕がムカついて、僕が欲しくて、僕が戦いたかったから戦ったの」

 

 アリスと聖王騎士団が僕のことを舐めてたからムカついた。只人が僕の、竜の宝物に手を出したから取り戻そうとした。お返しに報いを与えるため、全員纏めて叩きのめした。

 

 全て僕の気持ちと僕の行い、僕の理由だ。そこにアリスは関わっていても、アリスの責任は何一つ無い。責任も全部僕のものだ。

 

 納得していないのか、そもそも言いたいことが伝わっていないのか。アリスは未だ落ち込んだまま。そのアリスの頭に、オウルがぽんと手を置いた。

 

「イリアスの言う通りだ。毎度毎度一々湿るな、その内カビ生えるぞ」

「……生えませんっ」

「怪しいとこだな。んでそれでも責任感じてんなら、ぜひやってもらいてぇことがある」

 

 オウルがアリスにお願いすること、一体何だろう。細かい日常のあれこれは除くと、オウルが僕達に望むことなんてまったく思い浮かばない。アリスも同感みたいで、オウルの手の下で眉毛を斜めにしていた。

 

 僕達が予想を立てる前にオウルが視線を移す。胡乱気な土色の目が僕を映していた。

 

「つー訳でスパイの類が紛れ込んでる可能性が高いらしいぞ。どうするつもりだ?」

「どうって。依頼はちゃんとやるよ。オウルがいつも言ってるじゃん。引き受けた仕事はちゃんと責任持ってやれって」

「まあ、そりゃそうなんだが」

「それにスパイの人でも、ずっと一緒にいれば仲良くなれるかもしれないし」

「は?」

「なんでもかんでもやってみろ試してみろって、こっちもこの間言ってたでしょ!」

「……あー、全部俺かー」

 

 深い深い溜息がオウルの口から吐き出される。まだまだ子供の、それも人見知りの僕が誰かの先生役をすることが心配なんだろう。僕も少しだけど不安なところがあるから、その気持ちはよく分かる。

 

 けれども今回の依頼内容ならきっと平気。だってこれは僕の一番の得意分野だ。

 

「安心してオウル。スパイがいてもいなくても、結局やることは変わらないから」

「聞きたくねぇが聞いとく。やることってなんだ?」

 

 そんなのは当然決まっている。胸を張って宣言した。

 

「依頼は戦闘訓練みたいなものだったから、とりあえず全員ぶっ飛ばす!」

 

 僕だって先生にぶっ飛ばされて鍛えられた。だから新人探索者の人が相手でも、人間相手でも同じようなことすれば強くしてあげられる。

 

 もっともなことを言っているはずなのにオウルは呆れ、アリスは目が点になっていた。

 

「……とっくに分かってるとは思うが、この通りこいつはとんでもない脳筋のアホだ」

「え、えっと」

「『竜骸』に関しちゃもう諦めてる。いい息抜きになってる節もあるしな。だがこのままだと、そうじゃねぇ時もいつか絶対やらかす」

 

 今度オウルが手を置いたのは、アリスの頭じゃなくて両肩だった。もっと違うのは手つき。さっきよりもずっと重々しくて、よほど切実な感じだった。

 

「期待してるぞ、ブレーキ役」

「が、頑張ります」

 

 

 

 夢幻迷宮の出入口、『門』の管理を主目的として設立された迷宮協会。現在では迷宮の管理に加え、各種研究や調査など多岐にわたる業務を行っている。

 

 その中でも重要な一つ、近年迷宮協会が特に力を入れて取り組んでいるのが、ギルド無所属の新人探索者に向けた教育である。

 

 これまでは慣習上、新人探索者の教育はそれぞれのギルドが各自行うことになっていた。何故なら数多く存在するギルドの役割、職務はまったく異なるからだ。

 

 再編直後に迷宮全体を調査し地図を作製するギルド。その地図を頼りに採取を行い市井へ届けるギルド。迷宮を闊歩する魔物を討伐するギルド。他にも例をあげればキリがない。

 

 木こりに潮風の読み方を教える意味が無いように、ギルドによって知識の要否は大きく変わる。だからこそ長年この体制は保たれていた。

 

 ただし、そもそも探索者登録直後にギルドへ所属出来る新人はスカウトされた実力者や探索者専門学校の卒業生、もしくはコネの持ち主が多い。つまりは元々、それなりの知識や技量が保証されている。

 

 このためそれ以外の持たざる者、ある意味ではもっとも訓練を必要とする者達に、今まで救いの手は差し伸べられていなかった。

 

 これを問題視したのが現ギルド長、シルヴァだ。

 

 彼は夢と希望を抱えたまま散る無知な若者の姿に胸を痛め、信頼のおける友人と共に対策を考えた。こうして試行錯誤の上開催されるようになったのが迷宮協会主催の新人講習、本日地獄が生まれる現場である。

 

 その会場である迷宮協会の一角にある訓練場には三十人ほどの参加者、新人探索者達が既に集まっていた。

 

 粗末な皮鎧に身を包む痩せた少年、銀の鎧に着られている野暮ったい少女、ぼろ布のようなローブの何某かなど、背格好も含めて色とりどりだ。一部は顔を隠しており不明だが、概ね新人らしく成人を迎えたばかりの者が多い。

 

 通常年若い彼らが集まれば良くも悪くも活気に溢れ、訓練場は喧騒に塗れる。しかしざわめきこそ起きているが、今日はどこか遠慮した空気が漂っていた。

 

 この微かな緊張感の理由は、彼らが先ほどからちらりちらりと視線を送る先にある。いとも珍しいエルフの女性、先日と異なり動きやすい服装をしたユズリハがそこに立っていた。

 

「ふふん」

 

 古来より眉目秀麗と書き記されてきたエルフ。その末子であるユズリハの容姿も、当然のごとく非常に整っていた。また、蝶よ花よと育てられたおかげか、彼女もその美貌には大層な自信がある。そのためこうして注目されること自体はまんざらでもなかった。

 

 ただしそれはそれとして、遠巻きということには大きな不満があったが。

 

「まったく。気になるのであれば、声をかければいいものを」

 

 まるで見世物小屋の珍獣にでもなった気分だ。独りごちた後、あながち間違っていないことに彼女は気づいた。

 

 出奔するような変わり者を除いて里の外、人間社会にエルフは存在しない。そしてここ百年誰一人としてそのような者はいなかったと、彼女は大人達から教わっていた。

 

 だから多くの人間にとって、エルフはおとぎ話の中の存在に近いのかもしれない。そんな兄の言葉も思い出す。

 

 なるほど、それならしょうがないな。素直に納得した上で改めて彼女が感心したのは、先日エリーに紹介された二人の子供、アリスとイリアスのことだった。

 

 ユズリハの少ない経験則からすると、エルフを見た人間の反応は二つに大分される。端的に言えば好奇と恐怖だ。

 

 そのどちらもアリスは見せなかった。正確には一瞬だけ興味の光を瞳に滲ませたが、瞬きと同時に沈ませた。ユズリハはそれを親切心だと、子供では、大人にも難しい気遣いによるものだと思っている。

 

 加えてその後の優雅な物腰と豊かな知識。詮索こそ咎められたが、あの子はきっとどこか名家のご令嬢、いやどこぞの姫君か何かに違いない。あながち間違っていない妄想を彼女は抱いていた。

 

 なお実のところ、ユズリハに限らずエリーやアリスの治療をしていたウィザなども、似たような認識を抱いている。ただし、彼女達の想定はより具体的なものだ。

 

 先日『聖女』アカシアが率いた革命の気配を察知した聖王国の貴族、あるいは豪商が、念のために子供を外国へ避難させていた、という筋書きである。もっともアカシアの行動に予兆など無かったため、こちらもある意味では的外れだった。

 

 さて一方、イリアスは大げさなほど緊張していたが、それが単なる人見知りによるものということを彼女は理解していた。前もってエリーから聞いていたことに加え、視線の種類が違ったからだ。

 

 エルフを見かけた人間がどこを見るか。彼女の出会った多くはむき出しの好奇心を耳や顔、体に向けるか、もしくは恐怖から目を逸らすかの二択ばかりだった。

 

 しかしイリアスはどちらでもなかった。一目耳を見はしたものの、それ以降は一切興味を向けなかった。その上気まずそうにしながらも、懸命に目を合わせようと試みる。怯えの中にも誠実さを感じるその姿勢は、ユズリハ的には高得点であった。

 

 エリーの言う通り、二人ともいい子だった。そして何よりも。

 

「全員揃ってるか?」

 

 しみじみと浸るユズリハの耳を低い声が通り抜ける。気づけば新人探索者達の注目は彼女からその声の主、いつの間にか訓練場に到着していた教官へ移っていた。

 

 彼はその視線を一つ一つ確認するよう、新人探索者達の顔を確認していく。それがユズリハのところへ届いた途端、彼は思い切り眉をひそめた。

 

「珍しいお客さんだな。こんなところにいていいのか?」

「ああ。里長と協会長の許可は得ている」

 

 迷宮及び探索者について学ぶことは、人間の理解に必要不可欠である。そんなご題目を彼女が兄へ語り、条件込みだが強引に許可をもぎ取ったのが数日前のこと。

 

 その条件とはこの日、この講習への参加。普通に考えればいささか妙なものだったが、生まれてこの方素直な彼女は言われた通り申し込んでいた。

 

 教官はそんな経緯など当然知る由も無い。しかしユズリハの自信満々な断言を聞き、あっさり信用することにした。

 

「……よし言ったな、得てるって言ったな。何考えてんだろうな。でも俺はもう知らん!」

 

 もしくは考えと責任を投げ出したとも言える。

 

 面倒くささを隠しもしない彼は再び別の新人へ視線を移動させ、申し込みの人数と一致することを確認した。更に懐から懐中時計を取り出し、針を見てからすぐにしまい込む。定刻である。

 

 こうして新人探索者のための講習会、教官以外予想もしていないが、悪夢の時間が始まろうとしていた。

 

「改めて俺は今回の講習を担当するソドランだ。さてひよっこども、早速だが今日の講習内容を聞いてる奴はいるか?」

「申込書には危機的状況への対処法と書いてありました」

「その通り。やけに難しく書いてあるが、言ってみりゃ死なないための訓練だ」

 

 ソドランの説明を聞いても新人達はこれといった反応を見せない。ピンと来ていないからだ。幸運なことにこれまで死と直面した経験のある者は、今日この場にほとんどいなかった。

 

 その平和ボケした面立ちの列を眺め、彼は心中で軽く息を吐いた。確かにこれは、荒療治が必要かもしれない。

 

「お前達がどんな探索者を目指すのかなんて俺は興味ないしどうでもいい。だが迷宮に潜る以上、何をしようと必ずいつかどこかで死にかける。罠か魔物か、とにかく何かでな」

 

 腕に残る無数の傷跡をソドランは無意識に撫でる。どれもかつて彼に死が襲い掛かった証、そして全てに抗い切ったという誇りである。

 

「その時冷静さを保てるか。生きて帰れるかどうかはそこで決まる。だから今日の講習でお前達の体に、出来る限りそのための力を刻みこむ。で、経験上この手のは机にかじりついても覚えられねぇ。体で覚えんのが一番効率いい」

 

 ソドランの口ぶりに、突如一部の新人達が寒気を覚え始めた。未来予知染みた危機への直感、ある種の貴重な才覚である。

 

 ただし目覚めるのが遅かった。申し込む前に、訓練場に足を運ぶまでに覚醒していれば、今日を平和に終えられていただろう。

 

 こうして生まれた不安は、瞬く間に新人達の間に伝播する。

 

「体でってことは、臨死体験するとか?」

「いやいやまさか、そんな訳」

「……………………ふっ」

「きょ、教官?」

「あー、時間がもったいねーなー。ぐだぐだ話すよかさっさと実践するべきだよなー」

「教官!?」

「そんじゃもう始める! 入ってくれー!」

 

 新人の驚愕を努めて無視し、ソドランは訓練場の入口に叫んだ。ますます大きくなるざわめきも、今呼びかけた相手を思えば些事であった。注意するまでも無くこの騒ぎは止まる。

 

 そんな彼の思考はすぐに裏付けられる。それが訓練場に姿を見せた途端、全ての音が消失したからだ。

 

 講習会への期待で高鳴る胸が、恐怖により更に大きく跳ねる。訓練場に満ちる緊張感が、身を縛るほど張りつめていく。冗談に上がっていた口角が引きつり、元に戻らなくなる。新人達の間に漂う雰囲気が、体が異常に悲鳴を上げ始める。

 

 全てを齎した黒きヒトガタは、ゆっくりとソドランの方へ歩んでいく。鎧を身に纏っているのにも関わらず、音一つ立てない歩き姿は幽鬼の類を思わせた。

 

 そしてそれはソドランの横、新人探索者達の前で止まった。息を飲み固まる新人達を見て見ぬふりをし、彼はなるべくなんでもないように化物を紹介する。

 

「そういう訳で今日の特別講師、『竜骸』ダアト先生だ。お前ら、頼むから死ぬなよ」

 

 思ったよりヤバいのが来たな。新人達は素直にそう思った。

 




次回「地獄の訓練 下」です。
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