自分をイケメンだと勘違いしていた俺、反省するも口説いてきた美女達が許してくれない。 作:恋愛を知らぬ化け物
木曜日の放課後。俺は舞と一緒に、遊園地に来ていた。
九条の時と同じく、花火大会の埋め合わせだ。
この遊園地の『あるアトラクション』に、どうしても一緒に行きたいとの事。
なお、入場した今でも目的のアトラクションは教えてもらえていない。
「んー、かなり混んでるっぽいね。並ぶ前に、軽食でも買っちゃう?」
「え、良いのか?お目当てが何か知らないけど、絶叫系なら色々大変な事になるんじゃ……」
「あぁ、それは大丈夫。そういう系じゃないから」
公式ホームページにある、アトラクションの混雑状況を確認できる画面を眺めながら、舞が提案してくる。
普段なら、というか、勘違い野郎時代なら俺が率先してそういった情報を調べていたところだが、何が目当てなのかわからない今、珍しくエスコートされる側に回っていた。
「食べたいものとか、決まってる?」
「んー、やっぱりホットドッグかな。ここのヤツ、すっごい美味しいし」
「そっか。俺もそれにしようかな」
当然ながらこの遊園地は何度か訪れた事がある。ホットドッグが売っている場所くらい、地図を見ずとも最短ルートで向かえるのだ。
舞の手を握ると、一瞬小さく揺れたが、すぐに強く握り返してきた。
かと思えば力を緩め手を放し、握り方を変えた。いわゆる、恋人繋ぎだ。
「兄ぃの方から手を繋いでくれるなんて、夢みたい」
「喜ぶにはまだ早いんじゃないか?目的地どころか、その前段階にも着いてないんだぞ」
「もう、わかってないなぁ。花火大会も今向かってるところも、別にそれそのものが目当てって訳じゃないからね?―――私は、こうして一緒にいる時間が欲しいの」
肩と肩をくっつけ、上目遣いで俺の顔を覗き込む。
可愛らしい姿にわずかに心臓が高鳴ったが、それを気取られないように表情を変えず、そうだな、と相槌を打った。
一緒にいる時間が欲しい、か。デートって、普通はそういうものだよな。
今までの俺は、デートを「惚れさせるための手段」として使っていた節があった。
九条や西城、田淵先生に生徒会長………イケメンである俺であっても、そう易々とデレない女たち。俺が俺であるという魅力だけでは落ちない彼女たちをモノにするための、武器の一つ。
勘違いから目覚めた、とか言っていたが、まだまだあの時の感覚が残っているらしい。
―――あの日、九条の抱える問題から目を背けた時の罪悪感も、似たようなものなのかな―――なんて。
いやいや、今は舞とのデート中だ。他の女の事を考えるのは御法度だろう。
「プレシャスドッグを二つと、レモンティーと……何飲みたい?」
「私もレモンティーで」
「じゃあレモンティーを二つ」
「少々お待ちくださいね」
アトラクションはどこも混雑中だが、軽食販売のキッチンカーは驚くほど空いていた。
それどころか、ここに来るまでの道も前に来た時よりも閑散としていて、想像よりも早く到着できた。
恐らく園内レストランが集まっている一角に客が集まっているんだろう。
この時間だと、ちゃんと食事をする方が良いって人も多いだろうし。
笑顔の女性店員から商品を受け取り、舞が財布を出そうとするよりも先に金を払う。
コイツの事だから、誘った自分が払うべき、とか言い出しそうと予想していたのだ。
「もう、代金くらい私が出すのに」
「子供がお金の心配してんじゃねーっての」
「一個しか歳変わんないじゃん!!」
「はいはい。それよりほら、温かいうちに食っとけ」
両手が埋まってたら、繋げないだろ?と、かつての俺を意識したセリフを吐いてみる。
相変わらず痛い。イケメンでもない男が、軽々に吐いて良いセリフではない。
だが、舞は頬を赤らめると、黙々とホットドッグを食べ進め始めた。
「兄ぃってさ。最近、変わったよね」
「………例えば?」
ちゃんと味わったのか?と聞きたくなるような速度で食べ終えた舞が、突然心臓に悪い事を言ってくる。
平常心を意識しようとするが、発した声は我ながら硬く、冷たい。
「んー、私の事を『女』として扱ってくれるようになったのは良いとして………あ、そう。さっきの店員さん」
「何かあったっけ」
「いやいや、何もしてなかったじゃん。おつりを受け取る時に手を握ったり、待ってる間に口説いたり、去り際にウィンクしたり……いつもやってる事、ぜーんぶやんなかったでしょ?」
「ぐはぁっ」
防御も回避も出来ない
舞が目を丸くしてこちらを見てくる。
「ど、どうしたの?」
「い、いや。ちょっとパンのカスが気管に入って、目に砂が入ってさ。あまりの悲惨さに、つい」
「えぇ……大丈夫?」
「うん、平気平気。―――ごめんな、話を遮るような真似して」
「いや、それは別に良いけど………」
黒歴史を突き付けられるのが苦しいという話は、良く耳にしていた。
だが実際味わってわかった。これは、死人が出るレベルのダメージだ。
フラッシュバックや自主的な反省でさえ、恥ずかしさのあまり顔から火が出そうになるのだ。
第三者から冷静に言われては、こうなっても当然と言えよう。
「……やらなかったのは、ほら。今はデートだから」
「え?でも西城さんの時はやったんじゃないの?」
やってました。
だが聞いて欲しい。これには一応理由がある。
かつて、アイツはライバルだった。
惚れさせるべき異性であり、イケメン力を競う『偽物の王子様』だった。
イケメンかどうかなんて話は、結局のところ第三者の意見が決定する。
俺にとっては全くもってそんな事は無いのだが、西城蒼は世間一般には『美男子』であり『王子様』。
つまり、俺の勝利には『西城をお姫様だと知らしめる』のみならず『西城の王子様力を叩き潰すイケメン力を見せつける』事が必要不可欠だったのだ。
………だから、まぁ。西城を見て露骨にデレデレする店員さんやら道行く人やらに「俺の方がイケメンだろ」って意味を込めて、口説くような真似をしていました。はい。
とは言え、この話をそのままするのは色々不味いので、いつもの「隠し事をしていますが何か」作戦で押し通る事にした。
舞は若干不服そうにしつつも、特に追及せずに話題を変えた。
そうして話しながら歩いていると、段々と目的地が見えてくる。
長蛇の列と、最後尾を示す看板。そして、どこか禍々しいオーラを放つ廃校。
『日本一怖いお化け屋敷』として正式に認定されている、この遊園地一番のアトラクション。
その名も、地獄廃校。
「ここが?」
「うん!やっぱり、夏のデートと言えばお化け屋敷でしょ!」
俺の手を引いて、意気揚々と最後尾に並ぶ舞。
そのハイテンションがいつまで持つのやら、と内心苦笑いしていると、前に並んでいる人がこちらを見てきた。
綺麗な金髪に、グラマラスなボディ。
パンクな私服姿ながら、へそを出すように裾を結んでいるのは変わりない。
どこからどう見ても、磯垣魅空だった。
「なっ―――御堂蓮司!」
「フルネームで呼ぶ必要ないだろ、磯垣」
こちらを指さし、無駄に響く声で叫ぶ磯垣。
その声量に、列に並ぶ人たち、近くを通りがかる人たち、看板を持ったスタッフが一斉にこちらを見てくる。
なんでもないですよー、という意味を込めて会釈するも、大半の視線はこちらに向いたままだ。
「まさかこんなところでテメェに会うとはな……!一体なんのつもりでここに来た!!」
「遊びに来ただけに決まってるだろ」
「それに、その隣の女は誰だ!?」
「妹だよ」
淡々と答えるも、磯垣の怒りは収まらず、俺の胸倉を掴んできた。
親の仇でも見るような、恨みがましい視線が俺を射抜く。
「アタシがそんな言い訳で騙されるとでも思ってんのかよ……!」
「言い訳も何も事実だって。御堂舞、一個下の妹」
「は、はい。私、御堂舞って言います。これ、学生証です」
「あ?―――チッ」
学生証を確認すると、一応は納得できたようで、乱暴に俺を突き放した。
紛らわしいんだよっ、と悪態を吐きつつも、バツが悪いのか後頭部を掻いてそっぽを向いている。
「……で、何をそんなに怒ってたんだよ」
「アタシの事を好きな癖に、他の女とデートしてるのが気に食わなかった」
「兄ぃ、どういう事?」
「落ち着け舞。そして磯垣、その件に関しては色々と言いたいことがあるが………」
眉間を揉みほぐしながら、磯垣……の隣を指さす。
「
「あ?」
指さした先には、細身の少年。
色白で、見た目には「病弱な美少年」と言った印象を与えてくる。
磯垣が彼の方を不機嫌そうに見やると、先になぜか舞が口を開いた。
「デートは無いんじゃない?見た感じ、
「はぁ?あり得たとして姉弟だろ」
「………良くわかったな。コイツはアタシの弟だ」
え゛!?と驚く舞。磯垣の発言もあって、何となく理解する。
多分これは西城の逆パターンだ。俺にはまるで男にしか見えないが、他の奴らには女に見えているんだろう。
彼は軽く会釈しつつ、微笑んだ。
「どうも、磯垣いろはです。初めまして、御堂蓮司さん。お噂はかねがね」
「………どういう噂なのかはさておき、ご丁寧にどうも」
絶対に良くないヤツだ。エセホストか、それに類する何かだ。
嫌な確信があるが、ここは触れない。舞に過去の振舞いをほじくられてダメージを受けたばかりなんだ、俺は。
「西城さんと言い、兄ぃの性別判定センサーってどうなってるの……?」
「骨格と顔つきでわかるだろ」
「両親でさえ、良く間違えるんですけどね……」
両親が間違えるってのはどういう事なんだ?間違えようがあるか?
困ったように頬を掻く磯垣弟を、磯垣は軽く叩く。
彼女にしては本当に珍しく、優しい一撃だったが、彼はそれだけで咽た。
「アタシがここにいるのは、コイツが『パワーアップした地獄廃校を見たいけど、一人だと気絶しちゃう』とか泣きついてきたからだよ。コイツ、こんな見た目だから友達居ねぇんだ」
「なるほどな。確かに、そうでも無けりゃ来なさそうだ」
「喧嘩売ってんなら買うぞコラ」
「誰も売ってねーよそんなもん」
話している内に、列はかなり進んでいた。
俺達の番も、あともう少しと言ったところだろう。
磯垣に例の誤解の話をしたいが、この強情なバカに懇切丁寧な説明をするには少々時間が無い……ように見える。多分。
「……ってか、パワーアップ?そんな話あったっけ」
「知らなかったの?前バージョンのクリア者が二十人になったから、大規模改装が入ったんだよ」
「テーマは変わらず、驚かしの技術だけが大幅強化……!前回は入って二分でリタイアしたので、多分今回は一分も持たないと思います!」
「あ!?んな情けねぇ真似させると思ってんのか!」
「それ、楽しい?」
入って二分って、多分入口部分しか見てないと思うんだけど。
まぁ、実際ここは怖い。前バージョンに入った事があるが、勘違いイケメンの俺でもメッキが剥がれかけたレベルだ。
一応、クリアはしたけどね。鋼のイケメンメンタルで。
「舞は大丈夫なのか?ホラーは苦手だって言ってたけど」
「アレは兄ぃが勧めてきたのがスプラッターだったからだし。私、グロくなかったら全然余裕だから」
「あ~、だからかぁ」
俺の好きなゲームを教えて欲しい、と頼まれた事があり、その時にあるホラーゲームを紹介した。
かなりグロいが、シューティング・デッドを楽しんでくれたくらいだし、きっと大丈夫だろう、と思って勧めたのだ。
カセットを貸した初日で返されたが。
あの時は確か「私こういうの無理!本当に無理!!」とか言ってたっけ。
てっきり「こういうの」はホラーの事かと思ったが、凄惨な描写の方だったとは。
「地獄廃校はどのバージョンでも、ジメジメしたジャパニーズホラーですからね。派手なスプラッターとは無縁でしょう」
「入って二分でリタイアしてるヤツが何を堂々と語ってんだ」
「入口だけでも窺い知れる事があるの!!」
どこか可愛らしい怒り方をする磯垣弟。やはり姉と全く似ていない。
そうこうしている間に、次が磯垣達の番になった。
奥から聞こえてくる断末魔のごとき悲鳴に耳を塞ぎつつ、スタッフに会釈する。
「何名様での挑戦でしょうか?」
「
「かしこまりました」
「違います。俺達二人は別グループで―――」
何言ってんだコイツ、と訂正しようとするも、磯垣に止められる。
彼女は俺と舞を一瞥すると、ニヤリと笑ってこう言った。
「別にデートでもなんでもねーんだろ?ならアタシらと一緒に行こうぜ。―――お前も嬉しいだろ、なんせお前が好きなアタシと一緒に回れるんだからな」
「ふ、ふざけないでください!!さっきから、兄ぃがあなたを好き?そんな話聞いてないんですけど!!」
「そりゃ好きなヤツの話なんざ普通はしちゃいけねぇだろ。言ってるアタシだって、正直恥ずい。―――けど、お前が素直になれないあまりにこんな真似をしてるってんなら仕方ねぇ。今回はアタシの方から誘ってやる」
それだけ言うと、俺達が止める間も無く財布を取り出し、四人分の料金を払った。
俺と舞は言葉も無く顔を見合わせるしかできず、スタッフに促されるままに、磯垣達と一緒に奥へと進んだ。
………また今度、別の埋め合わせをしてやらなきゃな。
話の流れ的に仕方ないとは言え、どうしても魅空が嫌なヤツに見えてしまう書き方になっちゃうんですよね………本当は不良娘ながらに良い子なので、早くそういうシーンを書きたいものです。
あと、磯垣いろは君は正真正銘の男の娘です。蓮司のセンサーが異常なだけで、普通は男物の服を着ててもまずわかりません。
ヒロインの設定資料的なヤツ
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すぐにでも欲しい
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ヒロイン全員の心情描写やってからで良い
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正直要らない
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ヒロイン以外の情報も含めて欲しい(早)
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ヒロイン以外の情報も含めて欲しい(遅)