自分をイケメンだと勘違いしていた俺、反省するも口説いてきた美女達が許してくれない。   作:恋愛を知らぬ化け物

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大会当日………偶然の遭遇?

 

夏休みが明けて早二週間。

西城と約束し、なぜか舞と九条から誘われた花火大会の日が、ついにやってきた。

 

純粋に祭りの規模がデカいからか、それとも今日が日曜日だからか、何とも人が多い。

もうほとんど秋だというのに、よくもまぁこんなに人が集まるものだ。

 

「蓮司!」

 

人混みを掻き分けて、西城が姿を見せる。

明るい色の浴衣を着た彼女は、走ってきたのか僅かに息を切らしつつ、訊ねてきた。

 

「どう、かな?」

「似合ってるぞ。可愛いと思う」

「ほ、本当!?―――あ、あははっ。ボクには少し、可愛すぎるデザインかなー、とは、思ったんだけど………。その、母さんがさ。こういう系で攻め―――じゃなくて、こういうのも着てみたら?って」

 

頬を掻きながら、恥じらうように視線を逸らす西城。

確かに、普段シックで大人しい服ばかり着ている西城にしては、珍しいデザインの浴衣ではある。

 

………『男であること』を求めていた()()西城母が、可愛い服を勧めるようになった、か。

 

西城家の問題は、俺の力があったから解決できた………なんて言うつもりは無いが、俺が関わったから解決へ向かった問題………では、あると思う。

西城も西城父も、西城母に逆らおうとせず、唯々諾々と従っていたわけで。それを辛い事だと感じていた事も、俺に詰め寄られるまでは誰にも、微塵も感じさせていなかったわけで。

 

じゃあ、九条の問題だって―――。

 

「あれ、どうかしたの?」

「え?どうかって、何が?」

「いや………なんていうか、暗い表情をしてる気がしたから」

「あー………予想以上の人の量に少し疲れたのかも」

「もう、花火まであと二時間はあるんだよ?」

「大丈夫大丈夫!最後までしっかり楽しむつもりだから」

 

………デート中に他の女の事を考えるのはダメ、だよな。

 

それは逃げなんじゃないか、と非難する心の声を無視して、西城の手を握り、歩き出す。

 

屋台を見るにしろ、花火が見られる最高のスポットを探すにしろ、歩き出さねば意味がない。

夥しい人の量だが、会場の入り口ですらないのだ。

 

「もう。いきなり手なんて繋いじゃって」

「この人混みだと、はぐれそうだしな。―――それに、プリンセスのエスコートと言えば、俺だろ?」

「………ふふっ。これだけでプリンセス扱いしてやったぜー、っていうのは、ちょっと弱いかなー?」

 

ぽふっ、と俺の肩に頭を乗せ、腕を組む。

腕に胸を押し当てるように密着し、「これくらいはしないとね」と微笑む西城。

 

―――腕に胸を!?

 

嘘だろコイツ、俺が男だって事をまるで意識してないんじゃないか!?

コイツのサイズ感で、その距離感で、当たらないわけがないだろ!?見ないように頑張ってはいるけど、絶対凄い事になってるよ今!!

 

正面から裸で抱きしめられるのとはまた違った緊張感に、つい唾を呑む。

あんまりこういう事を言いたくは無いが、明らかな「むにゅん」という感触が思春期()の心を搔き乱す。

 

「手の握り方も、王子様としては減点だね。こうやって、指と指を絡めて……」

 

両手で俺の指を開き、一本一本を慎重に、指と指の間に挟んでいく。

端的に言えば恋人繋ぎだ。

 

まるで付き合い始めてすぐの、若いカップルのような距離感。

すれ違う親子だのカップルだのが、チラチラとこちらに視線を向けてくる。子供に至っては「ママー、あのひとたちー」とか指さしてくるヤツも居た。

 

あの人達がなんだ。何を思ったんだ少年。

 

「ふふふっ、蓮司ってば、顔真っ赤だよ?」

「ばっ―――!そ、そういうお前も人の事言えた義理かよ!トマトみたいに真っ赤じゃねぇか!」

「………大きく熟れて美味しそう、って意味かな?」

「違ぇよ!?」

 

この前の「体で」と言い、割とシモ(?)な冗談を突っ込んでくるようになったなコイツ。

田淵先生から変な影響でも受けたのか?クラス違うのに?

 

「やっと屋台のある区画か………。盛況なのは良い事だけど、移動だけで一苦労だな」

「そうだね。あ。あの果物ジュースの屋台、寄りたいな」

「了解───いや、どこまでが列だよ」

 

進む度に人が増え、今では朝の通勤ラッシュレベルの人口密度だ。

奥へ進む人、戻ろうとする人、色々な人が無秩序に移動しているせいで、屋台の列がどこからどこまでなのかイマイチ判別できない。

 

とはいえ、このまま屋台を全スルーして花火だけ見るというのは味気ない。

屋台の少し高い飲食物を買ってその場で楽しむのも、こうしたイベントの醍醐味なのだ。

 

―――と、言うことで。

 

「………な、何とか買えた」

「ジュース、たこ焼き、焼きそば、綿あめ、焼き鳥………大体、お祭りの定番メニューは買えたかな」

「フランクフルトとフライドポテトも忘れるなよ?俺は正直これを目当てに祭りに来ているといっても過言じゃない」

「そんなに好きだったっけ?」

「おう。この前の祭りじゃ、どっちも無かったからな………割とショックだった」

 

並んで、並んで、ひたすらに並んで、欲しい商品を手当たり次第に購入。もちろん、全額俺が負担した。

 

………あの、気にしてはいないんだけどさ。最近の屋台商品って、高いな。

前までの俺なら気にしなかっただろうけど、バイトを辞めた今の俺にはちょっと………いや、かなり厳しい。

 

俺を知る人がいないような場所で、バイト探すか……?

 

「それにしても、道中の混雑具合からは想像もできないくらいスムーズに場所取りが出来たね」

「だな。それもこんな良い場所が空いてたなんて、中々珍しいよな」

 

今俺達が座っているのは、いわゆるベストポジションでは無いものの、花火の全貌が(一応は)見ることができる位置。

普段なら早々に取られているだろう良ポジだが、何故か綺麗に、俺達の今いる場所だけが空いていた。

 

特に汚れているわけでも、何かが置かれているわけでも無かったが、ではなぜ空いていたのだろう。

 

「もしかして、曰く付きのスポットだった、とか」

「ぷっ。何それ」

「そんな事はありませんよ、()()()

 

聞き覚えのある声が俺の名前を呼ぶ。

冷たさと重圧を伴ったその声に、思わず硬直する。

 

「せ、生徒会長………」

「奇遇ですね、御堂君。それと、西城さん」

 

我らが生徒会長、西園寺貴音。偽装恋人の申し出を断った時のような威圧感が、言葉に詰まらせる。

 

別に何か悪い事をしたわけでも無いのに。

 

「どうしてここに?」

「どうしても何も、花火を見に来ただけですよ。一部生徒が『あの王子様とエセホストが花火デートだって!』と噂していた事は一切関係ありません」

 

浮かべているのは穏やかな笑みだが、瞼を閉じているようで、その実うっすらと目を開けてこちらを見ているのが恐ろしい。

言外に「謝るべき事がありますよね?」と責められているような、そんな気にさせられる。

 

………ていうか、噂になってたのか。

何より生徒会長の口からその呼び名が飛び出してくるとは想像もしていなかった。

 

「生徒会長様は、お一人で?」

「ええ。お父様とお母様も来てはいますが、大会運営の方々とのお付き合いがありますから」

 

西条の慇懃無礼気味な問いかけに答えつつ、隣のブルーシートに荷物を置き、俺のすぐ隣に座る。

途端に西条の顔が不満げな色を帯びるが、生徒会長は、気にすること無く口を開く。

 

「あなた達が座っている場所は、先程まで大学生のグループが利用していたのですが………周りの方々のご迷惑になるような行為を繰り返していましたので、立ち去っていただいたんです」

「立ち去っていただいたって、まさか生徒会長が追い払ったの?」

「いえいえ、そんなまさか。沼垂(ぬったり)

「はっ」

 

生徒会長が名前を呼ぶと、燕尾服姿の男がどこからともなく現れた。

オールバックの黒髪が、強面な彼をさらに威圧的に演出している。

 

「えっと、どちら様?」

「私の側仕えの、沼垂です。使用人というよりはボディガードに近いですね。大学生グループを追い払ったのは、私ではなく彼ですよ」

 

沼垂さんが静かに一礼する。

西条は片手で頭を押さえたかと思うと、俺に耳打ちしてきた。

 

「生徒会長って、そのレベルのお嬢様だったの?」

「ああ。俺も最初はビビった」

 

西園寺貴音がお嬢様である事は周知の事実だが、側仕えがいる程だと知る人間は少ない。

実家だと思われてる豪邸が別荘に過ぎない事も、毎食コース料理を食べている事も、沼垂さんを含め十五人の側仕えがいる事も、ごく一部の人間しか知らないし、想像すらされていないのである。

 

このレベルの金持ちとなればフィクションの世界の住民ってイメージが勝るし、無理もない。

俺だって生徒会長の家に呼ばれるまでは「金持ちって言っても………」と高を括っていたし。

 

「ていうか、沼垂さんが居るなら一人じゃ無いでしょ」

「言葉の綾という物です。少なくともその問答の時には一人でしたから」

「………言っておくけど、これはボクと蓮司のデートだから」

「ええ、わかっています。デート()譲りますよ」

 

俺を挟んで睨み合う二人。

なんで喧嘩腰なんだ………と思いつつも特に何も言わず、ジュースを飲む。

 

「相変わらずですね」

「どういう意味ですかソレ」

「いえ。ただ、流石だな、と」

 

沼垂さんは苦笑いを浮かべ、そのまま半歩後ろに下がる。

意味深な発言の真意を追求しようと口を開きかけた俺だったが、それを遮るように、西城が俺の腕を掴んだ。

 

「蓮司、場所を変えよう」

「い、いきなりそう言われてもな………」

「見たところ、もうこの辺りに空きは無さそうですよ?この辺り以外のスポットに向かうにしろ、そろそろ花火が打ち上がる頃合いですし………あっ」

 

ひゅるる、という甲高い音に、生徒会長が言葉を止める。

視線を上げると、まさに花火が炸裂したタイミングで、カラフルな火花が夜空を綺麗に照らしていた。

 

「始まりましたね」

 

俺の手の甲を、生徒会長の手が撫でる。反射的に彼女の方を向くと、悪戯っぽく口角を上げていた。

 

揶揄われた………?生徒会長に、こんな方法で?

 

西城も俺と生徒会長の手が触れあっている事に気づいたようで、「あっ」とも「うっ」ともつかない呻き声を上げたかと思うと、もう片方の手を引き寄せた。

 

言葉は無いが、何かを訴えるような―――そんな視線が俺を射抜く。

 

「………生徒会長」

「はい、どうかしましたか?」

「ちょっと屋台の方に行ってきます」

「えっ?」

 

西城の手を握り返し、立ち上がる。

ぽかん、と口を開ける二人だったが、すぐに生徒会長が我に返り、俺を引き止める。

 

「あ、あの。花火が打ち上がっている最中ですよ?」

「はい。だからまぁ、今なら屋台の方も空いてるかなって」

「そうかもしれませんが………」

 

一瞬言葉に詰まるも、俺と西城の手が繋がれている事に気づくと、すぐに表情を険しい物へ変えて、低い声で訊ねてくる。

 

「………欲しい物があるだけなら、二人で行く必要はないのでは?」

「デートですから」

「っ!」

 

真っすぐに彼女を見つめながら即答すると、西城から震えが伝わってきた。

同時に、生徒会長がこの世の終わりみたいな顔を見せる。

 

まさかそこまでショックを受けられるとは思っていなかったので、思わず沼垂さんの方を見てしまう。

生徒会長に少しでも何かあれば過剰に反応する彼が、黙っていないだろうと思ったのだ。

 

しかし意外にも彼は苦笑交じりに首を横に振るだけで、何も言わない。

 

「―――えっと、じゃあ行こうか」

「う、うんっ!」

 

やや上ずった声で返事をしつつ、急いでその場を離れようとしているのか、強く俺の手を引く西城。

それに半ばされるがままの状態でその場を去りつつ、ほんの一瞬生徒会長の方を見る。

 

そこにあったのは、俯き、ブツブツと何かを呟き続ける、恐怖心を煽るような姿。

沼垂さんは困ったように彼女へ声をかけているが、なんの反応も返そうとしない。

 

―――俺、やらかしたのか?







はい、すみません。めちゃくちゃ遅れました。
もう、書いても書いても満足いかず、気が付けば一か月以上もお待たせしてしまって………本当、申し訳ございません。

それと、あらすじにも書いてありますが、カクヨムでも投稿を開始しました。
基本的な話の流れは(今のところ)同じですが、セリフとか地の分とか、一部変更がありますので、良ければ見比べてみてください。
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