「はぁ……」
とある日の麗らかな午後、雲一つない晴れやかな空から心地よい日の光がトリニティ学園の美しく手入れされている草花たちを照らしている中庭の一角。
設置されているテーブルで、私は目の前の悪魔を睨み付けながら、陽気とは対照的な重いため息をつきました。
私は先程まで、一人優雅にティータイムを楽しんでいました。
私のお気に入りの茶葉の紅茶と私のお手製スイーツに舌鼓をうちながら、とある友人からお借りしたモモフレンズ大百科なる書物を読む時間は、私にとって至福の時間でありました。(少々、本の内容が不可思議でしたけど……)
そんな私の下に今日も今日とてあの角付きが能天気そうな表情を浮かべて「あっやっぱりここに居た!」と声を上げながらやってきました。
はあ、全くゲヘナ生徒はこの様な場で大声を上げるなど品がありませんね。
おまけに何故私がここにいる事が分かったのか問いかけると、
「えへへ♪何となくだよ!すごいでしょ!」
と、答えになっていない答えを平気な顔で言ってくるしまつ、ゲヘナ生徒はもう少し常識というものを学んだ方がいいのではないでしょうか。
まあ、私も色々と学習致しましたので、呆れはしますが、この程度のことで一々心を乱されたりはいたしません。
ゲヘナ生徒は私の傍までやって来ると、そのまま私の対面の席に腰掛けてきました。
私はゲヘナ生徒と一緒にティータイムなど心底嫌ですが…………今の状況、相手は仮にも客人の立場にいます。
如何にゲヘナ生徒といえど、客人に対してちゃんとした持て成しもできないことなど、トリニティ総合学園の生徒としてあってはならないことです。
それに考えてみれば、これは我がトリニティが如何に優れているのかこのゲヘナ生徒に思い知らさせる絶好のチャンスでもあります。
ええ、そうです。それだけが理由です。他には一切このゲヘナ生徒とのティータイムをする理由などありません。
今淹れている紅茶に、リラックス効果があり心身ともに癒してくれると評判があることも
今食べているスイーツがゲヘナ生徒が好きだと言っていたものばかりなのも
私が最近、紅茶の淹れ方を勉強し特訓していることも
全て今の状況に関係ありません!!
それに紅茶の勉強をしているのもより完璧な淑女になるためであって、
以前行った喫茶店で出された紅茶より、私の淹れた紅茶の方がおいしいなどといった舌バカっぷり全開の発言など全く気にしていませんし、関係ありません!!
………って私は一体誰に言っているのでしょうか。
「マヨイどうかしたの?」
目の前のゲヘナ生徒が私の名を呼びながら、心配そうにこちらを見てきました。
ふんっそうやって心配そうな顔を浮かべて相手を油断させる気ですね。その手は食いません。
………しかし、要らぬ心配をさせてしまいましたね。これは反省し、今後気を付けねいといけませんね。
「何でもないありません。……それとこんな所で名前を呼ばないでください。」
「あ、うん。ごめんねー」
「分かればいいんです………はい、どうぞ。」
「ありがとう!うわ~いい香り。(コクコク)それにとっても美味しい!!ホント君紅茶淹れるの上手だね!」
「お世辞などいりません!だっ黙って飲んでください///」
相変わらずの舌バカっぷりに呆れかえりながら、紅茶に口を付けます。
おっと、少々暑かったからか飲み干してしまいました。
私が自分のカップに紅茶を注いでいると、再びゲヘナ生徒が話しかけてきました。
「うわっこのお菓子すっごく美味しい!ねえ、どこのお店で買ってきたの?」
本日二度目の舌バカ発言に私は最早言い返す気も起きませんでした。
全く毎度食べさせているというのに、一向にこの様な発言がなくならないのはなぜでしょうか?
そもそも、私の体からバニラエッセンスの香りがしている時点で気付くべきなのでは!?
本当ゲヘナ生徒はその程度の観察力もないんですか!?
だいたい私がどれだけ試行錯誤して、このレシピを考えたか!!……っと何でもありません。関係ないことです。
……………ともあれ、このまま誤解させておくのも面倒ですね。
私は先程の質問に答えようとゲヘナ生徒の方を向くと、あることに気づきその顔を覗き込見ました。
「え、えっと……どうしたのかな?そんなに見られると照れるんだけど。」
ゲヘナ生徒が何やら隠す様に私から顔を背ける。
…………この反応……やはり、そうでしたか。
私は席から立ちあがり、ゲヘナ生徒の傍に行くとその顔を両側からがっしりと掴み私から顔をそらせないように固定する。
そしてそのままゲヘナ生徒の顔を真っ直ぐ見つめながら、私は問いかけた。
「それで……今回は何日寝てないんですか?」((¬_¬)ジトー…)
「えっ……ええっと、1日だよ…」( ̄▽ ̄;)アセアセ
「正直に…」(ギチギチ)
「あたたった!ご、ごめんなさい!ごめんなさい!!3日です!三徹しました!!」(アワアワバタバタ)
「はぁ……」
私はため息を吐きながら、このバカを解放する。
またか……これで何度目だと思っているのか……
「全く……何度言えばいいんですか!?そんなんじゃ何時か体を壊すからちゃんと生活管理しろと言っていますよね!!」
「い、いや~今回のは、ほら突然というか、不幸が重なったというか…」
「言い訳はいいですよ。」
私は目の前のバカの見苦しい言い訳を聞き流しながら、再度大きくため息を付くと、テーブルの上を片付け始める。
「えっえっ」とバカが困惑している間に手早く片付けを終わらすと、私はバカの手をとって歩き出した。
「ええっと……私は何処に連れて行かれるんでしょうか…」
「……黙ってついてくる!いいね!」
「はい…」
私は引きずるように急いで、自分の部屋に戻って行った。
もう、折角の午後の優雅な一時が台無した。