東方狐著聞集   作:稜の幻想日記

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古代神話大戦編
七尾 人間に振り回される狐と哀れな神


 現在進行形で私は困っていた。なぜなら……。

 

「守り神様。ありがたや~」

 

「ありがたや~」

 

 拝まれているからだ。事の始まりは少し前に遡る。

 

 ◇

 

 

「ん……ここは──あぁ、かなりの間眠っていたのか」

 

 

 私は立ち上がって体を伸ばした。久々に体を動かしたことで骨が鳴った。どうやら長い間、私は眠っていたようだ。

 零季と戦った後妖力が底をついてしまい自動的に休眠状態に陥っていたがまさか復活するのにこんなに時間がかかるとは思わなかった。さて、何をしようか、すでに守るべき都市は私の放った攻撃により零季と共に消え失せてしまったし。そんなことを考えていると……二組の人間がこちらに歩いて来るのが見えた。人間! そう、人間だ。久々に見る人間たちに私の目は釘付けになった。私はすぐにでも人間たちに話しかけようと口を開いた。

 しかし、私が話そうとした瞬間、人間たちは突然私の前で跪き始めた。

 ……は? 何なんだ? この人間たちは。私は人間に話しかけようとしただけであって別に跪かせたかったわけではないのだが……。

 私は跪いた人間たちの内の一人の男が私に向かって何か言っていることに気づいた。

 ……ん? この人間今なんて言った? 男は私に向かってこう言った。──守り神様と、

 

 

 ◇

 ……という訳で、今に至るのだが。さて、どうしたものかな。

 

「守り神様。ありがたや~」

 

「ありがたや~」

 

 この二人の男女はものすごい笑顔で私を拝み続けている。これじゃあ話をしようと声をかけることも出来ない。

「なぁ、守り神ってのはどういうことなんだ」

 

 とりあえず私が守り神と呼ばれている訳を聞いてみた。しかし、この二人は首を傾げている。そうして何か思ったのか男のほうが話し始めた。

 

「私たちは下のほうに住んでいる村のモンでさ。貴女様が張った結界が私たちを妖怪から守ってくださっているのでしょう。なので私たちは貴女様を神様だと代々拝んでいるでさ」

 ……ん? 結界が私たちのことを守ってくれている? まさか、休眠状態に入る前に張ったあれのことか? 私は混乱していた。確かに、私が張った結界があの村のことを守っているのならここにいる人間たちは守り神と私のことを崇めるだろう。しかし、あれは私を守るために張った物で範囲もかなり絞っていたはずなのになぜ? 

 

「まってくれ代々拝んでいたといったか?」

 

「えぇ、私の爺様のそのまた爺様が生きていたころから貴女様を拝んでいたと言ってました」

 男に代わり女のほうが答えた。

 ……あぁ、つまりはそういうことになるな。恐らく眠りに入る前に張った結界の範囲を間違えたか、結界の範囲が時間とともに広がっていったかのどちらかだろう。それよりもだ、気づいたら神様になっていたのがやばい。私はただの妖獣だぞ。それが神になるなんてありなのか?! いや、お母さ……母様も一応神獣だったから素質はあったのかもしれないが。

 

「守り神様、これからも私たちにご加護をお願い致します」

 そう言って二人はまた私に拝みだした。……まぁ、なってしまったものは仕方ないし受け入れよう。そんなことを考えているとこの場にふさわしくない気配が一つ近づいてきていた。

 

「お前がこの村の神とみた!」

 

「あんた……だれ?」

 そう言って空気を読まずに現れたのは、注連縄を背負い二本の柱を携えた少女だった。また変なのが湧いてきた……。

 

「我が名は八坂神奈子。大和の国の神だ!」

 

「私はラグナと言います。普通の人間(ようかい)です。まさか、大和の国の神様を一目できるなんて私はなんて幸運なんでしょう!」 

 まんま棒読みな言葉をを吐い私に八坂神の拳はぷるぷると震わせていた。

 

「嘘を吐くな! それほど神力を蓄えておいてなにが人間だ」

 神奈子の言葉に私は首を傾げた。神力だと? そんなものいつの間に……私は神力を蓄えていた記憶はないのだがな……。だがしかし、確かに神力らしいものが体の内側から感じられる。どうやら長い間拝まれていたことで信仰が集まり神力が蓄えられていたというわけか。

 

「勘違いでございましょう。私は神なんかではございません。普通の人間(ようかい)でございますよ」

 だが今は神力などどうでもいい。目の前の神をどうやり過ごすかのほうが重要なのだから。しかし、そんな私の企みを破壊する伏兵が潜んでいることに気がつかなかった。

 

「なにをおっしゃいますか! ラグナ様は我らの村の神様であられますぞ!」

 

「他の国の神様であろうと、ラグナ様を馬鹿にするのは許しませんよ!」

 なにこれこわい、え? なんでこの折で言ってしまうんだこの者たちは! ほら、見てみなよ。八坂神のほうなんか目が点になっているよ? まさか人間から叱咤されるとは思わなかったんだろうな……。さてと、どうやってこの場を切り抜けようか。

 

「やはり神ではないか!!」

 いやどうやら違ったようだ。私の嘘を半分信じかけていたが先ほどの村人のせいで完全に嘘だと気づいたみたいだ。……面倒なことになったな。このまま行くと戦闘になるのは間違いないだろう。

 

「ッチ……そうだ、私がこの村の神だ、文句あるか!!」

 

「文句はいろいろあるが……ゴホン。貴様の信仰を我に譲るがいい!」

 ……はぁ? 信仰を譲れだと。私は神として崇められる気はさらさらないが、この八坂神奈子という神はどうやら私の信仰を狙っているようだ。しかし、なぜ? だがまぁ、妖獣である私に信仰など無用の長物だろう

 

「勝手にしろ! 欲しいのならくれてやるだから私の邪魔をするな!」

 

「え……いいのか?」

 今度は目を丸くさせてる、この(ひと)忙しいな……。

 

「そんなこと言うわけがないだろ! せいやっ!」

 掛け声と共に私の放った右の拳が八坂神の鳩尾にめり込んだ。そして殴られた八坂伸は妙な呻き声を上げその場に倒れ伏す。……ふっ、他愛もない。

 

「これにて一件落着!!」

 

「「さすが守り神様!」」

 

 そして、片手を上に上げるラグナとそれを拍手する二人の人間の謎な空間が広がっていた。

 

 

 つづく

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