永琳と出会って三年の月日が経とうとしていた。
私もこの都市から離れないといけない日が近づいている。気づけばあっという間だった。
「教官、訓練終了しました!」
そんなことを考えていると一人の男から声を掛けれる。どうやら、部下たちも訓練が終わったようだな。
今私がいるこの場所は高層ビルの一角を改造してつくられた訓練場。主に対妖怪を目的とした部隊の訓練に使われている場所なのだ。
妖怪が妖怪を殺す術を教えているのだからおかしな話ではあるが。
「皆、ご苦労だったな、今日は帰って水でも浴びるといい。解散」
「はっ!!」
「しかし、人数に対して部屋もかなり大きいはずなのに数百人が一斉に声を出すと響くな。――よし、全員帰宅したな。私も帰るとしようか」
あぁ、そういえば今日も永琳は研究で帰れないんだったか……何処かで時間でも潰そうか。
~♪
突然、どこからか曲が流れてくる。この音の発生源は髪留めからだ。この髪留めは同じものを持っている者同士で会話ができるという道具で昔永琳から持つようにと言われてから身に着けているのだ。
「永琳からか。もしもし」
髪留めをを外すと細い棒のようなものが飛び出てくる。完全に棒が出たことを確認し私はそれに向かって声を掛ける。
『もしもし、ラグナ。今日はうちに帰るから早く帰ってきてくれないかしら?』
「わかった、すぐに帰るよ」
通信を切り髪留めを身に着ける。
しかし、本当に永琳の技術力は飛びぬけている。霊力を持たないものでも遠隔で会話ができる機械を作った上でさらにそれを小型化するなんて、まさか私のつけている髪留めが初見で通信機と見破れる者はいないだろう。
◇
「はぁはぁ……やっと……着いた」
まさか、帰る途中でひったくりを捕まえて、迷っている子供を家に帰していたらこんなに遅くなるなんて。あぁ、永琳怒ってるな。
「遅いわよ、ラグナ。まったく、どこをほっつき歩いていたの?」
「仕方ないでじゃないか……訓練が終わって帰ってると途中に色々あったんだから」
「まぁ、いいわ。……ラグナ」
「……? どうした」
「ごめんなさいね、いきなり帰ってきてもらって」
「あぁ、気にしなくていいぞ。私も会いたいと思っていたからな」
「そう、それじゃ。あなたに急いで帰ってきてもらった理由なんだけどね。一週間後に月に移住することが決まったの」
「そうか、もうすぐ永琳ともお別れなのか……悲しいな」
「いやよ! 貴女と離れるなんて!」
「私は妖怪だ。本来、人間のお前と一緒にいること自体が良くないことなんだよ。それに最初であったときに決めた期限がもうすぐ来る」
そして私は永琳に秘密にしていることがある。それは近いうちに人妖大戦が起きるということだ。
「わかっているわ! でもっ」
「なに、大丈夫さ。月は穢れがないんだろ。だから、お互い生きていたらまた会えるさ」
「なら、約束して絶対に死なないって」
死なないでか――。もし、本当に妖怪との戦争が起きたらその約束も守れなくなるかもしれないな。……いかんな、弱気でどうする
「自分で言うのもあれだが私は強いんだぞ? そう簡単に死にはしないさ。さぁ、永琳。もう寝ましょ」
「ええ、ラグナ」
「何?」
「絶対に――絶対に、死なないでよ?」
つづく