それから、黒歌ではなく、黒蘭に修正しました。
俺の家で話を終えた後、目覚めたての身体を動かすために、白老の指導の下、木刀を振う警備隊と討伐部隊の元へと向かった。
そんな彼等を見ながら俺は滅や迅と一緒に、豚頭族について曙彌の見解を聞いていた。
「
「なにそれ」
「数百年に一度生まれると謂われている豚頭族の
「だから、あの数の統率ができていたのか」
曙彌の言葉から俺と滅と迅は大鬼族の里の件を思い出していた。
あの統率力はヴァティスや仮面の魔人が関わっているとしても統率力があまりに高いことに疑問があったが、豚頭帝が生まれているなら、その統率力も頷けるな。
そう思っていると、白老が一通り稽古を終えたのを見たので、白老の前に立った。
俺は白老に木刀を向けた。
「白老。一戦頼めるか?」
「勿論ですじゃ」
そう言って俺達は互いに木刀を振った。
俺達の振う木刀が周囲に剣閃を残しながらも激しい打ち合いが繰り広げられていた。
何度も打ち合っていく中で、俺と白老は同時に居合の構える。
「朧心命流──────朧・流水斬」
「朧・流水斬」
俺の振う木刀には激流の如き斬撃が、白老からは流水の如き斬撃が衝突すると白い光が一瞬だけ発光した。
二つの木刀が砕け散り、砕けた勢いと共に爆風が俺と白老に襲い、俺達は互いに数mほど後ろに飛ばされた。
飛ばされた俺達が地に足を付けると、俺は額に、白老は頬に少しばかりの裂傷がおきていた。
「親方様から聞き及んでおりましたが、まさか朧流を体得されておるとは驚きましたぞ」
「俺も驚きだ。まさか同門とこうして手合わせできるのは久方ぶりだ」
行方不明になった高校生の弟の時から一人で振っていたからな。
白老とこうして朧心命流を震えるのは嬉しいことだ。
「お一つお聞きしても宜しいですかな?オーマ様」
「なんだ?」
「オーマ様はどちらで朧流を体得されたのですか?」
白老の質問に俺は応えた。
「俺の祖先の一人に朧心命流を扱える人がいてな。その人の残した朧心命流を更に改良したら、このようにできたんだ」
「なんと!?朧流を改良してのけるとは、驚きましたな」
朧心命流について話が弾んでいるとウォズが話しかけてきた。
「いいかい?我が魔王」
「どうした?」
「先程、蒼影が戻ってきてね。この付近に
「蜥蜴人族?」
豚頭族じゃないのか。いったいどこの奴らだ?
そう考えていると俺達の元にイズが滅と迅と共にやってきた。
「蜥蜴人族はジュラの大森林の中にある湿地帯を拠点とする名の通り二足歩行する蜥蜴です」
「そんな蜥蜴人族が近くに来ているとなると、豚頭族の件だろうな」
「どうする気?ジオウ」
迅からの質問に俺は答えた。
「一先ず、蜥蜴人族がこちらにやってきた時に目的を訊いてから動くとしよう。あくまで俺達のは予測だからな」
「わかりました」
「わかった」
「あぁ」
皆が了承したことで、俺達はその場から解散した。
俺とウォズと曙彌は食事をする為に給食所に向かう前に、一度朱奈がいる製作所へとやってきた。
製作所にはガルムとドルドに加えて、衣類製作系の女性型
朱奈は鬼人に進化した際に特殊能力<解析者>──────俺の<演算者>とリムルの<大賢者>に準ずる能力──────を手にしたことで様々な試みを短期間で進める事が出来るらしい。
カイジンと黒歌達道具製作側によって造った織機や魔素で動けるように造ったミシンなど問題なく使えるようになったそうだ。
ボロボロな装備を着ていた紅丸達に新たな服を用意するだけでなく、新たな衣類を製作してみせた朱奈の手腕は見事だろうな。
そう思いながら衣類製作所に入った。
「朱奈」
俺の声に気付いて朱奈がこちらへと視線を向けてきた。
「オーマ様。お父様。ウォズさん。いらして下さったのですね」
そう言って朱奈やガルム達が俺達に近づいてきた。
「あぁ。どうだ。織機やミシンは使いやすいか?」
「はい。どちらもとても使いやすいです」
「そうか。それは良かった」
少しの間、朱奈と話を終えて給食所へと入るとリムルの近くに顔色を悪くしたゴブタが倒れていた。
その光景に俺達は驚きの余り黙ってしまった。
「……」
「……まさか……」
給食所にいた紅丸と白老達に視線を向ける曙彌。
曙彌が言わんとする事を察したのか、紅丸達は頷いた。
同胞達の頷きを見て、曙彌は冷や汗を大量に流した。
その様子を見た俺とウォズはある解答が頭に過ぎった。
それを確かめるべく、リムルの食卓に置かれた食事を見ると禍々しいヘドロ状の暗黒物質が盛り付けられていた。
「……誰が作った?」
俺の呟きを聞いた鬼人達は一人の鬼人を見た。
その視線の先にいたのは紫苑だった。
<演算者>。口内を<捕食者>でコーティングしてくれ。紫苑の料理の原因を調べたい。
【了。しかし、個体名:紫苑の手料理から測定不能と判定が出ています。更なる鑑定を実行しますか?】
Yesだ。
口内に<捕食者>を展開してリムルに用意された食事を一口食した。
【解。解析不能。測定不能】
測定できないとは、完全に暗黒物質だな……
呆れてしまう俺だったが、リムルや曙彌達が俺を驚いた表情で見ている事に気付いた。
「どうした?」
そう訪ねると、紅丸がオドオドした態度で訪ねてきた。
「な、なんとも……ないのですか?」
「あぁ」
何もないことを告げると、紫苑以外が驚いていた。
そんな中、リムルが<思念伝達>で話しかけてきた。
『大丈夫なのか!?』
『あぁ。口内に<捕食者>で捕食して魔素に変換しておいたぞ』
『その手があったかぁぁあ!!?』
どうやら、手が思いつけずにゴブタに無理矢理食べさせたな。
そう思いながらも俺はゴブタに治癒魔法を施した後、厨房に入った。
「ゴブイチ。厨房を借りるぞ」
「は、はい!」
俺は厨房を借りて黙々と食材を調理していき、ささ身と青菜のすまし汁に牛鹿を粗挽きして焼いて、農産系の機械人間とリリナによって作物できた魔素も吸収したレタスを数枚破いて焼いた牛鹿の焼き粗挽き肉を包んだ食材を皿に盛り付けた。
「できたぞ」
そう言ってリムル達の分を渡した。
香ばしい匂いが溢れる俺の料理に皆がゴクリと涎を呑み込んだ。
「紫苑」
「は、はい!」
「これからは俺がお前に料理を教える。俺が許可を出すまで飲食物を他人に提供は許さん」
「はい……」
ショボンとした紫苑にそう言いながら、調理した料理を食べさせた。
「美味しい……!」
「お前達も食べるといい」
紅丸達にそう告げると、彼等は感謝して食していった。
────────────────────────
食事を終えて、ゼアとアーク用の建築物の建設について匠達と話をしているとラグルドが俺を呼びに来た。
「オーマ様!」
「どうしたラグルド?」
「蜥蜴人族の使者が訪ねてきました」
蜥蜴人族が来たか……恐らく豚頭族に豚頭帝がいることを予想して戦力を集めているのだろう。だが、戦力を集めているのはゴブリンあたりであることを考えると、種族としての誇りの保身だろうな。
そう思いながらウォズや滅達と蜥蜴人族の使者とやらがいる元へとやってきた。
来たのはいいが、いたのは蜥蜴人族一人だった。
その蜥蜴人族が俺達がやってきた事を視認すると自身の背後に視線を向けた。
すると、その視線の先から二足歩行の蜥蜴に搭乗した武装した蜥蜴人族がやってきた。
あまりに演出臭い登場をする奴らだ。
「ご尊顔をよーく覚えておくが良いぞ。この御方こそ次代のリザードマンの首領となられる戦士」
蜥蜴人族の次期首領?
その次期首領とやらは両手を高く上げた。
「我が名はガビル。お前らにも我輩の配下となるチャンスをやろう!!」
他の蜥蜴人族がガビルトやらの周りでパチパチと崇めていた。
「……はぁ?」
あまりの行動に俺達はガビル達に対して汚物を見るような眼で見ていた。
使者などと言っても大方他の蜥蜴人族共におだてられていい気になっている間抜けといったところか……もっとマシな使者はいなかったのか?
そう思っているとリムルを抱いている紫苑がガビルへの怒りの余りに抱き潰しかねない状態になっている。
「貴様らも聞いておるだろう。豚頭族の軍勢がこの森を進行中だという話だ。しからば我輩の配下に加わるがいい。この我輩が!豚頭族の脅威より守ってやろうではないか!貧弱なゴブリンではとうてい太刀打ちできまい?」
格好付けて言ってくるガビルがこちらに視線を向けると、ゴブリンがいない事に気付いた。
ゴブリンがいないことに部下の蜥蜴人族と内緒話をするガビルは一つ咳払いした。
「あーゴホン。聴けばこの村には牙狼族と爪豹族を飼い慣らした者達がいるそうだな。そいつは幹部に引き立ててやる。連れてくるが良い」
完全に自分に酔っている愚者だな。
俺だけでなくウォズや曙彌や紅丸達までも殴りたいとイライラが膨れ上がっている。
「嵐牙」
「爪刃」
「「ハッ」」
リムルの影から嵐牙が現れ、俺の耳元のヒューアギアモジュールから出ている放電から爪刃が現れた。
その光景を初めて見た紅丸と紫苑と白老は驚いていた。
「か、影と放電の中から!?」
「そいつの話を聴いて差し上げろ」
「御意」
「畏まりました」
紅丸と変わらぬ体躯になった嵐牙と爪刃に疑問に思った紅丸が訪ねてきた。
「あれ?あんなにデカかったですかね?」
「嵐牙と爪刃の本当の大きさなんだよ」
「少々訳あって小さくなっていたんだ」
「へぇ……」
そんな事を話しているとガビルが嵐牙と爪刃を褒めてはいるが主が俺とリムル……つまり、人間とスライムである事を罵倒したことで、嵐牙と爪刃は怒りと殺気だっている中、紫苑の料理を食べて悶絶していたゴブタが<毒耐性>を手にして復活してやってきた。
嵐牙と爪刃はゴブタにガビルと戦わせた。
結果はゴブタの勝利だった。
<影移動>を用いての奇襲にガビルは気付くことすらできずに敗北した。
ゴブタには後で黒兵衛と黒歌に頼むとしよう。
敗北した事にガビルを祭り上げていた他の蜥蜴人族がガビルを連れてこの街から出て行った。
────────────────────────
ガビル達が帰ってから少し時間が経った頃。
俺達は会議室にて街繁栄の幹部達を集めて豚頭族の軍について会議をしていた。
「はぁ────────────?20万────────────??」
蒼影を初めとした偵察部隊が確認した豚頭族の軍勢の数に驚くリムル。
万を超える軍勢に曙彌は再確認した。
「俺達の里を襲撃したのは数千程度だったはずだが……」
「あれは別働隊だったようです」
蒼影はジュラの大森林の地図を指差しながら説明した。
「本体は大河に沿って北上している。そして本体と別働隊の動きから予想できます。合流地点はココより東の湿地帯……つまり蜥蜴人族の支配領域という事になります」
「……豚頭族の目的ってなんなんだろうな」
リムルのその言葉に誰もが考え出した時、滅が言ってきた。
「……そう言えば」
「どうかしたのか?滅」
幹部達が全員滅へと視線を向けた。
「大鬼族の里で俺と迅はジオウと離れていた時があっただろ?」
「あぁ。曙彌達がいた家に突入した時の事だな」
俺は大鬼族の里での一件を思い出していた。
「離れていた時になんだが、豚頭族が妙な事を言っていたんだ」
「妙なこと?」
滅の言葉に続く様に迅が告げてきた。
「それがさ。【お前達を喰らって力を手にする】って言ったんだよね」
喰って力を手にする?
リムルの<捕食者>と似た能力を持っているのか?……いや、そういえば……
「そう言えば、ヴァティスの奴と出会った時に、こんなことを言っていたな」
俺は時間停止状態にいた際にヴァティスが言っていた事を話した。
「……子孫を守ろうとする父親の傷つく姿か」
「そもそも豚頭族は知能の高い魔物じゃねぇ。本能以外の目的があるのは間違いねぇな」
「オーマ様。リムル様。もしかしたら豚頭帝が持つと謂われる特殊能力の影響によるものかと思われます」
「どういうことだ?」
曙彌は豚頭帝について語られた。
豚頭帝が持つと謂われる特殊能力についてを……
「<
「それに、ヴァティスと呼ばれる人物の介入もありえます」
イズの発言は尤もだ。
大鬼族の里での二体のアナザーライダーに、シズさんの件といい、その豚頭帝もアナザーライダーにされている可能性が高い。
そう思っていると、蒼影が何やら反応した。
「どうした蒼影?」
「偵察中の分身体に接触してきた者がいます。リムル様とオーマ様に取り次いでもらいたいとの事。いかが致しましょう」
「俺達に?」
「誰だ?ガビルでもうお腹いっぱいだし、変なヤツだったら会いたくないんだけど」
「変……ではありませんが、大変珍しい相手でして。その……
樹妖精?確か森の妖精だったか?
【是。樹妖精は森の最上位の存在であり、"
成る程。
俺が納得しているとリムルが呼ぶように告げた。
「ほ。ほほう、お呼びしたまえ」
「は」
蒼影の分身が了承したのか。俺達の目の前に突風が起きた。
曙彌や紅丸達が俺とリムルを守る様に目の前に立つが、敵意はない。ただ転移するのに風が出てしまっているだけだ。
そう思っていると、風の中から一人の樹妖精が現れた。
緑色のロングヘアーをした複数の蔦を身体の周りに纏う女性だった。
「突然の訪問相すみません。わたくしは樹妖精のトレイニーと申します。どうぞお見知りおき下さい」
「俺はリムル=テンペストです」
「初めましてトレイニー殿。オーマ=テンペストだ」
樹妖精を初めて見たリグルド達は何やらこそこそと騒いでいた。曙彌達も少々緊張した様子を見せているな。
恐らく<演算者>が言っていた森の最上位ということから考えて、転生前の世界で言う所の社長の訪問のようなものだろう。
「それで、何ようでしょうか?トレイニー様」
「本日はお願いがあって罷り越しました。リムル=テンペスト……魔物を統べる者よ。オーマ=テンペスト……王の器を持つ者よ。あなた方に豚頭帝の討伐を依頼したいのです」
突然やって来た
「豚頭帝の討伐……?」
「俺達にか?」
そう訪ねるとトレイニーは社交辞令のような笑みを浮かべて答えた。
「ええ、そうです。リムル=テンペスト様、オーマ=テンペスト様」
「いきなり現れてずいぶん身勝手な物言いではないか」
「樹妖精のトレイニーとやら、なぜこの町へ来た?ゴブリンよりも有力な種族はいるだろう」
トレイニーにそう質問する曙彌と紅丸親子。
「そうですわね。あなた方……元オーガの里が未だ健在でしたらそちらに出向いていたかもしれません。まぁそうであったとしてもこの方々……特にオーマ=テンペスト殿の存在を無視することは出来ないのですけれどね」
そう言ってくるトレイニーに山兜喇が訪ねた。
「オーマ様の何が無視できぬと申されるのか?」
山兜喇だけでなく、ライダー系の能力を手にした黒蘭や牛千呂や屍馬やラグルドなどは森の最上位の存在であろうと許さぬと言わんばかりな表情と態度で睨み付けていた。
「オーマ=テンペスト。あなたは仮面ライダーに変身できますね?」
「それがどうした?」
「ジュラの大森林には三つの伝承があります。その伝承に共通する名こそ、"仮面ライダー"なのです」
!!
トレイニーの発言に驚愕を隠しきれなかった。
ジュラの大森林にある三つの伝承に共通する名が"仮面ライダー"だと!?どういうことだ?この世界はどう考えても仮面ライダーが存在しないはずだ。
なのになぜ……?
そう疑問に思考を馳せる俺の代わりにイズがトレイニーに訪ねた。
「トレイニー様。なぜ伝承に"仮面ライダー"の名が共通しているのですか?」
「残念ながら、わたくしにもそれは把握しておりません。ですが、世界各地には"仮面ライダー"の名を持つ伝承が多くあるのです。そして、その伝承が事実であることを証明した魔王がいるのです」
「へぇ。いったいどこの魔王なのかな?」
アズも興味を示したのかトレイニーに訪ねると彼女は素直に答えた。
「最古の魔王が一人。"
『なっ!?』
その名を聞いた俺とリムル。そしてイズ達機械人間以外の者達が全員驚いていた。
「最初に現れた魔王が!?」
「なぜ魔王ギィ・クリムゾンが!?」
ザワザワと騒ぐリグルド達。
誰だ?そのギィ・クリムゾンって……
【解。この世界に存在する魔王の中で最初に現れた魔王にして、最強最古の魔王です】
そんな奴が仮面ライダーを証明できたんだ。
「魔王ギィ・クリムゾンは"仮面ライダーディケイド"と呼ばれる仮面ライダーに変身することができると聞き及んでいます」
「ディケイド?ウォズ、確かディケイドって……」
俺はディケイドの名前を聞き、ウォズに確かめるように尋ねた。
ウォズは手に持つ本を開いて皆の前で答えた。
「仮面ライダーディケイド。平成10番目に現れた世界を破壊する力持つ仮面ライダーだ」
「最古の魔王が世界を破壊する力を持ってるのか!?」
ウォズの発言にリムルは声を出しながら驚いた。
無論、驚いているのはリムルだけではない。リグルド達も同じく驚いていた。
最古の魔王が世界を破壊する力を持った仮面ライダーの力を有しているのだから仕方ない。
「それで、魔王ギィと同じ"仮面ライダー"を持っているから、依頼するということか?」
「そうなりますね。しかも、樹人族の集落に伝承された仮面ライダーの名は"鎧武"。そちらの元大鬼族が手にした力であり、オーマ様は魔王ギィと同じく他の仮面ライダーの力を有しているほどの強き者。樹人族の集落が豚頭帝に狙われれば樹妖精だけでは対抗できませんの。ですからこうして強き者に助力を願いに来たのです」
そう言いながら俺達が作った異世界版ポテチを食しているトレイニー。
「……とりあえず、返事は保留させてもらう。鬼人達の援護はするが率先して藪を突くつもりはない」
「情報を整理してから答えさせてくれ」
「……承知しました」
次回~戦準備・後編~