トレイニーも参加した会議を続行する事になった。
「さて、豚頭帝とタイムジャッカーがいることは確定なのだか……わからないことが一つある」
「なんだよ、それ」
「20万の豚頭族の食事をどうやって集めているのか。でしょ?オーマ様」
俺が疑問に思っていることを正確に把握していたアズからの言葉に朱菜が発言した。
「それなら、一つ心当たりがあります」
「ん?」
そう言って、朱菜は蒼影に視線を送った。
「蒼影。大鬼族の里は見に行きましたか?」
「はい」
朱菜の質問に答えたものの、その言葉には覇気が感じられなかった。
「その様子からして、なかったようだな」
曙彌は朱菜の聞きたいことがわかったのか、蒼影の覇気のない言葉から予想通りと言わんばかりに呟く。
「なにがなかったの?」
蒼影の肩に手を置いて尋ねる迅。
そんな迅の代わりに曙彌が答えた。
「死体だ」
「死体だと?」
言ってることがわからない為、雷は曙彌の言葉を訝しむ。
「大鬼族の里にあるはずの我らの同胞達の遺体は勿論。豚共の遺体までもが綺麗に消えていました」
「お、おい……それってまさか……」
「そのまさかだろうな。<飢餓者>で遺体を食すことも、同胞を食べることへの嫌悪感と罪悪感が浮き出てない為、食しているんだ」
兵站の概念がないようだな。
「特殊能力<飢餓者>。食べた魔物の性質を自分のものとする。リムル様の<捕食者>と似ていますわね。一度で確実な奪取とは鳴りませんが食欲に任せて数多く食せばその確率も上がるというもの」
「これで、ハッキリしたな。豚頭族の目的は豚頭帝の持つ<飢餓者>による森の上位種の力を奪うこと。そして豚頭帝がこれ以上上位種や仮面の魔人のような上級魔人を食せば、確実に手に入れることになるだろうな」
「魔王の種……ですか?」
トレイニーの質問に俺は頷いた。
俺の頷きから、曙彌達もその可能性が高いことを考え始めた。
「魔王の種か。確かにその可能性が高いな」
「しかし、なぜそうまで力を奪いに来ているのでしょうか?」
「どこかの魔王が戦力欲しさに豚頭帝を勧誘したのか?」
「それとも……──────」
あれこれと意見が飛び交う中、リムルがポテチを食しながら意見を言った。
「どちらにしても。ウチも安全とは言い難いな。
「一番ヤツらの食い付きそうなエサを忘れてやしませんか?」
「んー?」
「誰のことだ?」
紅丸が一番のエサとやらが誰のことなのかをわからなかったので訪ねた。
「いるでしょ。最強のスライムに全ての仮面ライダーの力を持つ新種族が」
「スライムなんて無視されるよ」
「お前も仮面ライダーの力を持ってるだろ」
人ごとのように告げるリムルに呆れる。
「どちらにしろ。豚頭帝がアナザーライダーになっているなら、仮面ライダー以外に対応できないし……」
「アナザーライダーは元となるライダーの力でしか倒せない。そうなると、必然的に我が魔王が討伐することになるでしょう」
「そうだな」
やはり出向くしかないか。そう思っているとトレイニーが言ってきた。
「改めて豚頭帝の討伐を依頼します。暴風竜の加護を受け、牙狼族・爪豹族を下し、鬼人を庇護する貴方様方なら、豚頭帝に後れを取ることはないでしょう」
そう言ってくるが、彼女の依頼の報酬は、タイムジャッカーによるアナザーライダー化した豚頭帝の討伐の危険性を考えると、こちら側のデメリットが大きすぎる。
そう思っていると、紫苑がリムルを抱きながら勝手に答えた。
「当然です!リムル様とオーマ様ならば、豚頭帝など敵ではありません!」
「まぁ!やはりそうですよね」
勝手に返答しやがって!!
勝手に返答した紫苑に対して怒りが沸くが返答してしまったからには致し方なしか……
諦めて腹をくくることにした。
「……わかったよ」
「豚頭帝の件は俺達が引き受ける。皆、戦の準備を始めろ!」
『わかりました!リムル様。オーマ様』
曙彌達が了承の返事をした。
「20万もの相手だ。ヴァティスのようなタイムジャッカーの相手も加えるなら蜥蜴人族との同盟を前向きに検討したいが……」
「使者がアレだもんなー……」
「そうなると、蜥蜴人族の湿地帯にこちらから交渉するか」
そう話していると蒼影が席から立った。
「リムル様。オーマ様。自分が交渉に向かいます。蜥蜴人族の首領に直接話を付けても宜しいですか?」
「できるのか?」
「はい」
自信ありげで告げる蒼影。
「待て蒼影。俺の分身も連れて行け」
そう言うと他の皆も驚いていたが、機械人間……つまり地球の知識を知る者からすれば俺の発言から意味が理解出来ていた。
「何故オーマ様が?」
「同盟を組む団体の長が向かわなければ蜥蜴人族の首領も同盟を結ぶのは難しいことだ。ならば向かうのは必然だ」
「畏まりました。それでは、我々が護衛も務めます」
了承した蒼影と三つ編み緑色の二本角の若い男鬼人────
蒼影と同じく忍者の血縁者らしく、蒼影と一緒に街の周りを見回ってくれていた者達であり、今なお分身が警戒しているほどの実力者だ。
「それじゃあ頼むぞ」
「「「はっ!」」」
「くれぐれも舐められるなよ」
「あぁ。職業柄慣れているから問題ない」
そう言って俺の分身体を連れて蒼影達と共に蜥蜴人族の支配地である湿地帯へと向かっていった。
本体である俺は地図に置いた湿地帯付近の周辺状況を見ていると、あることに気付いた。
「……拙いな」
「どうした?まさか舐められたのか?」
そう聴いてくるリムル。
「いいや。このコマなんだが、ガビルの隊だったな?」
そう確認するように曙彌に訪ねた。
「はい。周辺のゴブリンを取り込んだガビルの隊ですが、それがなにか?」
「……オーマ。これって拙くないか?」
「やはりそう思うよな?」
リムルも感づいたのかそう言ってきたので、同意した。
「どうかされましたか?」
「豚頭族を迎撃するための蜥蜴人族の本体は、俺達と同盟を結んだ際に地の利である天然の迷路を利用して豚頭族一体を相手に複数体で相手するはずだ。それをガビルの隊が謀叛でも起こせばどうなるか。わかるか?」
「……確実に本拠地が落とされる布陣になる」
滅もガビルの隊の危険性に理解したようだ。
「……急いだ方がいいな。滅、曙彌、紅丸。すぐさま戦に向かう者と非戦闘員達を護る側を選抜してくれ」
「わかった」
「はっ!」
「あぁ!」
滅達にすぐさま選抜を行なってもらった。
そうこうしている間。交渉に向かわせた分身はどうしているかな?
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本体がそう思っている時、分身は蒼影と参緑と燃黄は蜥蜴人族の首領と会っていた。
「初めまして。私はオーマ=テンペスト。要件を言おう。我々は蜥蜴人族との同盟を望む」
そう言うと首領が反応した。
「はて、そちらの勢力がいかようなものか、儂は知らんのだがね」
「存じているか知らないが、多種族が共存を行っている街の当主であり、私と私の相方であるリムルは樹妖精より直に豚頭帝討伐の要請を受けて確約した身だ」
「森の管理者が直接……!?それに豚頭帝と申したか!?」
トレイニーからの要請に豚頭帝の存在を知って驚愕する首領。
「ふんっリムルにオーマだと!?聞いたこともない!どうせ貴様等も豚頭帝を恐れて我らに泣きついて来たのだろう?素直に助けてくれと言えばいいものを」
「やめろ」
若い蜥蜴人族がそう言ってくるが、首領が止めた。
「え?」
「今すぐ口を塞ぐのだ」
「首領。そのような態度では舐められ……」
首領が口を塞ぐことを告げてきた事に抗議しようとする若い蜥蜴人族だったが、その蜥蜴人族の首もとから切り傷ができて出血が始めた。
痛みが走ったのか首元に視線を向ける若い蜥蜴人族が見えたのは粘鋼糸によってしめられていた。
若い蜥蜴人族の背後には右手に風を凝縮させて纏わせた参緑の手刀が、左手に電気を纏わせた燃黄の二本の指が突き付けられていた。
そして蒼影が首もと粘鋼糸で縛り付けていた。
三人が殺気だって若い蜥蜴人族を殺めようとする。
そんな三人に俺は睨み付けながら言った。
「待て。私がいつ、そのような事をしろと言った?」
妖気と魔素を解放した上での威圧は三人も自身の行動を後悔した。
その妖気や威圧は蜥蜴人族達にとっても判断を間違えれば死は免れないことを察した。
「申し訳ございません!」
三人は蜥蜴人族への攻撃を止めて俺に謝罪した。
三人の殺気が消えた事を確認した俺は威圧や妖気を抑えた。
「蜥蜴人族の首領。我が配下の非礼を詫びる」
「いや。こちらこそ同族の非礼を詫びよう。ジュラの大森林に暮らす魔物で森の管理者を語る愚か者はいない。だが、オーマ殿は人間の様に見えるが……」
「私は機械系の魔物と人間の要素を併せ持った新たな種族・
「人間と魔物の要素を併せ持つ種族!?」
首領含む蜥蜴人族達は人間にしか見えない俺の種族に驚いているが、右手を機械の状態にすると俺が人間ではない事を自身の眼で把握することになった。
「それに、オーマ殿と共にいる者達は私の知るそれとは内包する妖気が大きく異なるが、南西に暮らす大鬼族であろう?」
そんな首領の言葉に蒼影が否定した。
「今は違う。オーマ様とリムル様より蒼影、参緑、燃黄の名を賜った折、我らは鬼人となった」
「鬼人!?」
首領は思った。
大鬼族の中から希に生まれるという上位種族……鬼人。
名付けによる進化は名付け親の魔素が与えられるわけだが、俺とリムルの名付けが鬼人に進化させる程の強大な力を有していることを意味している。
「言っておくが、鬼人は3人ではなく、36人だ」
「36……!?」
参緑の言葉に首領やその側近であろう女蜥蜴人族までもが驚愕の余り言葉が続かなかった。
それもそうだろう。朱奈曰く名付けは命がけの行為であるのに、種族が進化する程の成長を36人も起きている事に驚くなということのほうが無理だろうな。
まぁ、大鬼族の進化体である鬼人が36人もいるとなれば、蜥蜴人族の全勢力をもってしても俺達に勝てない事はガビルのような馬鹿以外は理解できただろう。
「……オーマとやら、一つ条件を出してもいいだろうか」
「聞きましょう」
「我々は同盟の話を受けてもいいと思っている。その際に貴殿の相方……リムルとおっしゃったか。その方も出向いていただきたいのだ」
「……いいでしょう。どちらにしろ豚頭族とは湿地帯で決着を付けることになるでしょうから。そうですね……こちらの準備と移動に掛る時間を考えて7日後といったところでしょうか」
「それでは……」
「えぇ。7日後にこちらに合流します。その時こそ私の相方に目通りしてもらうとしましょう。それまで決して先走って戦を仕掛けることのないように」
「うむ。承知した」
首領の了承を聞いて踵を返した俺達だが、俺は一つ忠告した。
「あぁ。一つ忠告しておこう。若者に豚頭帝の危険性を徹底的に教育しておくことだ」
「……そうしよう」
「では……」
「オーマ殿」
「なにか?」
首領が真剣な眼差しで俺を見ながら言ってきた。
「貴殿はいったい何者なのだ?」
首領の質問に俺は答えた。
「"仮面ライダー"だよ」
その言葉に首領達は大いに驚愕していた。
そんな姿を見てから俺は蒼影達と共に街に戻った。
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分身体が首領と話をしている間の頃。
本体の俺とリムルは街の広場に住民達を集めた。
「──────そういう訳で、豚頭族軍を相手にすることになった。決戦は蜥蜴人族の住む湿地帯で行なう。だが、敵は豚頭族だけではない。大鬼族の里で二度、シズさんをアナザーライダーへと変貌させたタイムジャッカーの存在がある」
俺がそう言いながらも集めた村人達に告げていた。
「奴は時間を停止させて世界に伝承されている数多の"仮面ライダー"の力を歪め、混沌を招いている。豚頭族を相手にするが、恐らくアナザーライダーが出てくるだろう。だが、タイムジャッカーが戦場に必ずいるとは限らない。戦場に意識を向けてこちらにアナザーライダーを生み出してくる可能性もある。これより第一陣、第二陣、第三陣を発表する!」
「勝てれば良し。もし負けたら速やかにここを放棄し、樹人族の集落へ落ち延びるように。状況は<思念伝達>で知らせる。皆、落ち着いて決められたとおりに行動するように!」
そう告げた俺とリムルは第一陣から発表していった。
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第一~第三陣までを発表し終えた俺達はカイジン達の工房へと立ち寄った。
そこには朱奈や黒兵衛や黒蘭、カイジン達が待ていた。
「お待ちしておりましたオーマ様、リムル様」
「出撃用の武具は全て整えてます」
カイジン達が用意した武具を見て喜ぶ戦闘に参加する者達。
俺達はカイジン達の用意した武具を身に纏った。
俺が着用した服は黒色と金色を基調としたタキシードだった。
各々が着替え終わり、武具を装備し終えた第一陣────俺・リムル・シズさん・ウォズ・紅丸・蒼影・紫苑・白老・牛千呂・屍馬・ラグルド率いる100騎の
武装した第二陣────非戦闘員・リグル・リチル・朱奈・イズ・アズ・亡・雷・黒蘭・燃黄・緑咲・街の護衛を務める他鬼人────は街に残り、第三陣────曙彌・山兜喇・参緑・滅・迅────はトレイニー達樹妖精と共にゲルミュッドと仮面の上位魔人を捜索し討伐へと向かった。