転生したら、仮面ライダーになった件   作:森雄

16 / 43
三つの戦場・上

 第一陣が出撃して3日後。

 決戦地である湿地帯で、蜥蜴人族は豚頭族の襲撃を受けていた。しかし、首領の判断で戦況は五分五分の状況下にいた。

 しかし、その戦況が一変することになった。

 

 湿地帯を埋め尽くす20万の豚頭族の大軍。

 

 その一角からざわめきが生じた。

 そのざわめきの正体は若い蜥蜴人族の隊が一体の豚頭族を討伐した音だった。

 

 そして若い蜥蜴人族を指示する者は──────

 

「恐れることはない。湿地帯は我らの領域!!素早い動きで豚頭族共を撹乱するのだ!ぬかるみに足を取られるノロマに後れは取らん!」

 

 三つ叉の槍を持ったガビルだった。

 

 なぜガビルが指揮を執っているのか……

 その理由は数分前に遡る。

 

 ────────────────────────

 

 分身体のオーマと蒼影達との会合から4日。

 

 本体のオーマの考えた通りの戦略で複数体の蜥蜴人族が天然の迷路を使って豚頭族一体を相手にしていた。

 息を切らしながら豚頭族とは思えぬ力を発揮する豚頭族一匹に畏怖している若い蜥蜴人族達。

 

「これが本当に豚頭族なのか?まるで大鬼族とでも戦っている気分だ」

「ゾッとするな…………こんなヤツらが20万もいるだなんて」

「それが豚頭帝の能力なんだろう……あと3日も守り通せるだろうか……」

 

 そう不安がる若い蜥蜴人族の元にやってきた者がいた。

 

「守ってばかりでは疲弊するだけだ」

「あなたは……っ」

 

 話しかけた者は蜥蜴人族の首領の元へとやってきた。

 

「親父殿」

「おお戻ったか」

 

 やってきたのは使者として戦力を集めていたガビルだった。

 

「してゴブリンからの協力は上手く取り付けることが出来たのか?」

「は!しかし。豚頭族相手に籠城とは一体どういうつもりなのですか?とても誇り高き蜥蜴人族の戦い方とは思えませんな」

「いや。お前がいない間に同盟の申し出であったのだ。その者の中には蜥蜴人族にある伝承たる"仮面ライダー"の力を有する者達だ。その者達と合流するまでは防衛に徹するのが最善だ」

 

 そう判断した蜥蜴人族の首領の発言に沈黙するガビル。

 そして溜め息をつくような雰囲気でガビルは告げた。

 

「……老いたな。親父」

「なに?」

 

 ガビルが手を挙げると、ぞろぞろと若い蜥蜴人族が首領達の前に現れると、首領と親衛隊長、新鋭副隊長含む中高年の蜥蜴人族に槍の矛先を向けた。

 つまり、ガビルによって叛旗が起きたのだ。

 

 突然の事に困惑する首領達。

 親衛隊長はガビルに問う。

 

「ガビル殿!!これは一体どういう……っ」

「落ち着け、親衛隊長。危害を加えるつもりはない」

「落ち着けるものか!反旗を翻す気か!!」

「手荒な手段になってしまったことは後で詫びる。窮屈な思いをさせるが、我輩が豚頭帝を撃つまで辛抱してくれ」

 

 その言葉からガビルが何を考えているのか容易に想像した首領と親衛隊長。そして副隊長は必死に止めに入った。

 

「ま、待て息子よ!!勝手な真似は許さん!」

「ガビル殿は豚頭帝の恐ろしさを何一つ理解出来ていない!!」

「ガビル殿……いえ、兄上!目を覚まして下さい!」

 

 講義する首領達の言葉など聞く気のないガビルは踵を返し、抵抗する首領達をガビルの意に同意した若い蜥蜴人族が押さえ込んだ。

 

「ガビル様。これを……」

 

 ガビルの部下の一人が三つ叉の槍を捧げた。

 

 それを見たガビルは槍を手に持つ。

 

「これは親父殿の……」

 

 槍を手にしたガビルは、その槍から強力な力がガビルへと注ぎ込まれていった。

 その槍の名は水渦槍(ボルテクススピア)。代々蜥蜴人族の首領が有している武具。

 水渦槍がガビルを主として認めた。

 その事が更に彼の自尊心を高めさせてしまった。

 

 なぜガビル達が叛旗を起こしたのか。

 それはガビルがゴブタに敗れた後のことだった。

 

 意識を失っていたガビルが目を覚ました後、彼は自分を制したゴブタこそが街の主だと思い込んでおり、その部下達は弱者が騙して油断を誘ったことを憤慨していたが、その中に道化の仮面をつけた上位魔人がいたのだ。

 

 その者の名はラプラス。

 ゲルミュッドの使いでやってきた魔人だった。

 何を隠そう。ガビルもまたリグルとリチルの実兄同様ゲルミュッドに名付けされた者の一人なのだ。

 

 ラプラスから豚頭帝が存在することを知ったガビルは長年行き続けてきた首領では討伐できないだろうと唆されたガビルは己の無知さもあって豚頭帝を豚頭族とそれ程、実力差が大きくないと考えていた。

 しかも、豚頭族軍を撃退した後に首領の座を受け継ごうと考えていたガビルは豚頭族よりも僅かに優れている豚頭帝がおり、父親では勝てぬと唆された結果。自分が指揮を執り、豚頭族軍を撃退することを決めたのだ。

 

 そんな叛旗が起きていた蜥蜴人族はガビルの指揮の下、豚頭族軍を数を減らしていた。

 しかし、同胞から出た悲鳴を聞いて視線を向けたガビルが見た光景に彼は恐れた。

 討伐された豚頭族を同族である生きた豚頭族が食していたのだ。

 

 ガビル達は豚頭帝の恐怖を知らなかった。

 逆に首領達は知っていた。豚頭帝の恐怖を……

 

 その違いが、結果となって牙を剥いた。

 ガビル率いる若い蜥蜴人族の一人が豚頭族によって生きたまま食された。

 

 すると身動きが鈍いはずの豚頭族に先回りされるという事態が起きてしまった。

 

 その理由は単純だ。

 豚頭帝の特殊能力<飢餓者>の影響を受けた他の豚頭族が蜥蜴人族を食した事で湿地帯での素早い動きを手にした。

 大鬼族の膂力、蜥蜴人族の素早さを手にした豚頭族の圧倒的な軍勢にガビル達は劣性に追い込まれていた。

 

 蜥蜴人族の後ろに集めたゴブリン隊を移動させて豚頭族の包囲を突破しようと考え構えるガビル達だったが、彼等の目の前に黒い重装備を身に纏う豚頭族が数匹現れた。

 

 その豚頭族を見たガビルはこう思った。

 

(先頭の豚頭族……なんとすさまじい妖気であるか!!間違いないやつがそうだ)

 

 黒い重装備を身に纏う豚頭族の中で先頭に立つ豚頭族を呼び止める。

 

「そこの豚頭族。止まれい!ひと目でわかったぞ。貴様が豚頭帝であるな?我輩と一騎打ちを……」

「帝ではない」

 

 先頭に立つ豚頭族の言葉に喋っていたガビルは黙ってしまった。

 

「我は豚頭将軍(オークジェネラル)。豚頭帝様の腹心だが強さでは足下にも及ばぬよ」

 

 自身に匹敵。または凌駕している目の前の豚頭将軍が豚頭帝でないことに驚きの余り言葉が出てこなかった。

 そんなガビルに豚頭将軍が話しかけた。

 

「一騎打ちだったか?面白い。受けてやろう」

 

 この場で未知の化物である本当の豚頭帝に頭を悩ませているガビルと余裕綽々の態度である豚頭将軍との一騎打ちが開始された。

 

 ────────────────────────

 

 街を出発した第一陣は嵐牙狼族と雷爪豹族のおかげで道のりはすこぶる順調に進み続けることができていた。

 

「シズさん。身体は大丈夫なのか?」

「うん。特殊能力のおかげで全盛期以上に戦えると思う」

 

 彼女の服装は街に来た時と同じだが腰部分に片手を形取ったアクセサリーがついており、同じ様な魔法石をつけた指輪をつけていた。

 

「あまり無茶はしないようにな」

「うん。ありがとうリムルさん」

 

 イフリートの件の影響がでていないか心配してくれているリムルに感謝を告げるシズさん。

 

 そんな時、先行して周辺状況を確認してもらっていた蒼影から<思念伝達>がきた。

 

『オーマ様、リムル様。よろしいですか?』

『どうした?』

『交戦中の一団を発見しました』

 

 なに?

 

『片方は蜥蜴人族の首領の側近二人。交渉の折に見かけた二人です』

 

 あぁ。首領の近くにいたあの女蜥蜴人族と男蜥蜴人族か。

 

『もう片方は豚頭族達ですね。上位個体と思しき一体と、その取りまき50体ほどです』

 

 たった二人で上位個体含む50体を相手にしているのは妙だな。

 

『どうやら自分の力を誇示するつもりのようで、上位個体が一人で二人をいたぶっています』

『その豚頭族達に、お前は勝てそうか?』

 

 そう訪ねたリムルに蒼影は容易いと返答した。

 

『わかった。殺されそうなら蜥蜴人族を救助。それまで豚頭族の能力を調べろ。救助後は蜥蜴人族から事情を聞くから必ず生かしておけ』

『御意』

 

 蒼影に指示を出した俺達は、一緒にいる者達に告げた。

 

「皆。蒼影の元へ急ぐ!<影移動>と<電光石火>で向かうぞ!」

「ハッ!」

 

 嵐牙狼族と雷爪豹族の移動手段で蒼影の元へと向かった。

 

 到着した時には上位個体以外の50体の豚頭族が全滅していた。

 

 そして上位個体に関しても蒼影は背中に装備している二振りの刀で大きな切り傷を与えた。

 その傷は正しく致命傷だった。

 

 リムルに蜥蜴人族2人を任せて、俺は蒼影に近づいた。

 

「蒼影。そいつはまだ生きてるな」

「はい。急所ははずしました」

「さすがだな」

 

 蒼影の手腕を褒めているとその上位個体が痛みを我慢して立ち上がった。

 

「貴様程度の非力な腕ではこの俺には通じぬだけよ。主の手前、格好付けたかったのか?残念だったな!」

 

 いきがる上位個体は更に続ける。

 

「豚頭帝様より授かったこの偉大な力を前に、貴様らは敗北──────」

「痴れ者め」

 

 紫苑の声が聞えたから視線を向けると、黒兵衛によって造られた紫苑用の大太刀___剛力丸を振り下ろそうとしていた。

 

「おい。そいつからは情報を」

 

 蒼影が止めようとしていたが、既に遅く。

 

「リムル様とオーマ様を前に不敬ですよ!!」

 

 紫苑の剛力丸が上位個体を両断した。

 

 紫苑の暴走ぐせに呆れてしまう。

 

「リムル様!オーマ様!愚か者を罰してやりました!」

 

 愚か者はお前だ!

 褒めて欲しい表情を浮かべる紫苑に呆れを通り越して怒りが込みあがりそうだ。

 

 自分達が敗北した相手を一方的に倒す光景を目の当たりにした親衛隊長と副隊長は俺達に頭を下げた。

 

「「お願いがございます!」」

「どうか、我が父たる首領と兄たるガビルをお救い下さいませ!!」

 

 まさかの首領の娘で、ガビルの妹とはな。

 そう思っているとリムルが訪ねた。

 

「どういう事だ?何かあったのか?」

「……兄ガビルが謀叛を起こし、首領を幽閉したのです」

「ガビルは豚頭族軍を自らの力で退けるつもりです。ですが、彼は豚頭帝を甘く見ております。このままでは敗北し蜥蜴人族は滅亡するでしょう」

「虫のいい話ではあるのは重々承知しております。力ある魔人の皆様を従えるお二人なら我らを救う御力があるのではと愚考致しました。どうか……」

 

 そう懇願する二人の肩をウォズと紫苑がポンと手を当てた。

 

「よくぞ申しました!」

「我が魔王と相棒たるリムル殿の偉大さに気付くとは見所のある蜥蜴人族だ」

 

 まさかウォズまで紫苑と同じ様なことをするとは……

 

 問題児が二人になったようで頭が痛い……。リムルも二人の行動に頭を痛めていて、リムルの近くにいるシズさんも苦笑していた。

 

 困惑している二人の蜥蜴人族達に俺は話しかけた。

 

「首領の娘」

「は、はい」

「君を首領代理と認め、同盟をここに締結する。異論はあるか?」

 

 そう告げると首領の娘は戸惑いながらも返事した。

 

「いえ……いえ。異論など!では……」

「蜥蜴人族を助けていただけるのですか……?」

「同盟相手なら助けに行く。当然だろ?なぁオーマ」

「あぁ。蒼影。二人を連れて首領の所へ向かい、救助しろ」

「ハッ!」

 

 蒼影に親衛隊長と副隊長を連れて向かわせた後。

 俺達は湿地帯へと向かった。

 

 ────────────────────────

 

 場所が変わり、ジュラの大森林のある所で鳥のような仮面を付けた魔人と道化の仮面を付けた上位魔人がいた。

 

「計画の方、順調に運んどるようやなぁ。ゲルミュッド様」

 

 道化の魔人____ラプラスがまるでピエロのように踊っていた。

 

「うむ。豚頭帝の出現は予想外だが幸運だった。豚頭帝(我が子)が森の派遣を手に入れる日も近いだろう……!」

 

 そうすれば俺の野望も……と告げた時だった。

 

「なかなか楽しそうな話をしていますね」

 

 そう言って現れたのはトレイニーだった。

 

「わたくしの名はトレイニー。この森で悪巧みは見逃せません」

「こりゃヤバイでゲルミュッド様。森の管理者(ドライアド)や」

「何だと!?」

 

 樹妖精の出現に驚くゲルミュッドだったが、驚愕は更に増すことになる。

 

「おや。それだけではありませんよ」

「なんやって?」

「トレイニー殿の言うとおりだ」

 

 森の影から突如として現れたのは参緑であり、参緑の影から曙彌・山兜喇・滅・迅の第三陣に選抜された者達が現れた。

 参緑の<影移動>によって<影移動>を持たぬ曙彌達を連れてきたのだ。

 

「お、お前達は……!?」

「ゲルミュッドだったか……大鬼族の里で全員に突っぱねられた名付けは順調のようだな」

「多くの同胞が、貴様の計画によって死んだ」

「ぜってぇ!許さない」

 

 そう言う曙彌と山兜喇。そして参緑の腰には各々の変身ベルト「戦極ドライバー」とタイクーンのIDコアが装填された「デザイアドライバー」を装着していた。

 曙彌はメロンを思わせる錠前を、山兜喇は蜜柑を思わせる南京錠型アイテム「ロックシード」を手にしていた。

 参緑は緑色の手裏剣を象った牛千呂が使っていたバックルに似た形状のバックルを持っていた。

 滅と迅も腰に滅亡迅雷フォースライザーを装着しており、紫色とピンク色のプログライズキーを既に手にしていた。

 

 五人は自分達の変身アイテムを起動した。

 曙彌と山兜喇は錠前部分にあるボタンを押すとツルの部分が上がった。

 滅と迅はプログライズキーを起動させて、参緑はデザイアドライバーの右側にニンジャレイズバックルを装填した

 

メロン

 

オレンジ

 

POISON

 

WING

 

SET

 

「「「「「変身!」」」」」

 

 曙彌と山兜喇はそれぞれの錠前を戦極ドライバーのバックル中央に嵌め込み、ツル部分を錠前に付けると、ドライバーに付いている「カッティングブレード」を倒してロックシードを展開した。

 滅と迅は滅亡迅雷フォースライザーへ装填してフォースエグゼキューターを引いてプログライズキーをエクスパンドジャッキで強引に開き、露出した接続ポートに強制接続した。

 参緑はニンジャレイズバックルの円型の空洞になっているクナイ型の柄頭部分を引っ張るとレイズバックルに付いている手裏剣が回転した。

 

ロックオン!

ソイヤッ!

メロンアームズ!天下・御免!

オレンジアームズ!花道オンステージ

 

 

FORCE RISE!

STING SCORPION!

FLYING FALCON!

BREAK DOWN.

 

 

NINJA

READY FIGHT

 

 

 曙彌は仮面ライダー斬月に、山兜喇は仮面ライダー鎧武に、滅は仮面ライダー滅に、迅は仮面ライダー迅に、参緑は仮面ライダータイクーンニンジャフォームに変身した。

 

「同胞達の仇。取らせてもらう!」

 

 曙彌は刀型のアームズウェポン「無双セイバー」とメロンとシールドを合わせたアームズウェポン「メロンディフェンダー」を両手に構える。

 山兜喇は輪切りのオレンジを模した刀「大橙丸」と無双セイバーの二刀流で構え、参緑はニンジャレイズバックル用の拡張武装「ニンジャデュアラー」を分離した状態で山兜喇と同じく二刀流で構えた。

 

「ゲルミュッド様!早く逃げ……っ!」

 

 ラプラスが逃げるようゲルミュッドに言おうとしたが、彼の目の前には既に曙彌が移動していた。

 瞬動法と呼ばれる技術によってラプラスの懐へと移動していた。

 

「朧・焔月斬」

 

 まるで燃えた三日月の如き斬撃がラプラスを襲う。

 しかし、ラプラスは上空へと回避するとゲルミュッドの近くに降り立った。

 

 そんなラプラスと困惑しているゲルミュッドに既に近づいていた山兜喇と参緑がそれぞれの武器の必殺技を行使した。

 

オレンジスカッシュ!

TACTICAL SLASH

 

 大橙丸と無双セイバーにオレンジ色のエネルギーが凝縮されて両側から輪切り一閃する山兜喇と緑色のエネルギーを纏ったニンジャデュアラーで乱切りする参緑。

 二人の斬撃をラプラスがゲルミュッドを庇ったことでゲルミュッドは左腕に掠り傷を受ける程度で済んだが、ラプラスは左腕を切り落とされ、身体に三本の剣閃の痕が残り、血が噴出した。

 

「お、おい……」

「はよ逃げた方がええで……ゲルミュッド様」

 

 息切れをしながら逃げるよう勧告するラプラスだったが、そんな二人の魔人を前にトレイニーが立ちはだかる。

 

「断罪の時です。罪を悔いて祈りなさい」

 

 トレイニーがそう言うと彼女はシズと同じく上位精霊を召喚した。

 

「精霊召喚・風の乙女(シルフィード)。"大気圧縮(エアリアル)"……ッ!?」

 

 風の上位精霊を召喚したトレイニーが精霊魔法を発動しようとしていたが、突如。どこからか無数のエネルギー弾がトレイニーを襲ってきた。

 そのエネルギー弾を滅と迅が各々のアタッシュウェポンを使って打ち落としていた。

 

「……誰だ?」

 

 滅が攻撃が来た方向へと視線を向けながら尋ねるように問い質すが、誰も現れなかった。

 いや、既に現れていた。

 

 

 ────────ラプラスの隣に。

 

 ラプラスの隣に平然と立っていたのは、ヴァティスの着用した服と同じ素材で創作された淡い赤色のワンピース型の服を着用し、右肩にかけるようにある髪の毛に一房の黄色のメッシュが混じった三つ編みのヘアースタイルを持つ女性だった。

 

「大丈夫かしら?」

「助かったわ。エラの姉ちゃん」

 

 エラとラプラスに呼ばれた女は滅達に視線を向けた。

 

「……その服装。タイムジャッカーか」

「ヴァティスが言っていたジオウの配下ね」

 

 三つ編みをくねくねと触りながら彼女は見下す様な態度で滅達に視線を向けていた。

 

 曙彌と山兜喇、そして参緑が一斉に襲い掛かるがエラと呼ばれた者が手を翳すとピシッ!と音が鳴ると共にノイズ混じりになりながら、曙彌達が停止していた。

 

「ホンマ、とんでもない力持ってありますなぁ。タイムジャッカーの皆はんは」

 

 ラプラスはその光景に兎耳を思わせる帽子のつばを掴みながらそう言う。

 

「さて、ゲルミュッドだったかしら?さっさと行きなさい。邪魔だから」

「っ!?」

 

 エラの言い方にゲルミュッドは腹が立つも目の前の鬼人三人と森の管理者がいては死ぬ可能性が高いことを天秤に掛けて撤退の一択を選びこの場からラプラスと共に姿を消した。

 

 それを見送ったエラは懐から禍々しいウォッチを取りだした。

 

「ヴァティスの指示通りに味方同士で争っていなさい」

 

 そう言ってエラはアナザーウォッチを起動させた。

 

鎧武

 

「大鬼族の長は無理そうね。貴女にしとくわ。森の管理者さ・ま」

 

 エラはトレイニーへとウォッチを埋め込んだ。

 

 すると停止された時間が動き始め、トレイニーが苦しみだした。

 

「うっ!?……ぁあ!?……」

「トレイニー殿!?」

「お前!……何をした!!」

 

 トレイニーの近くへと何時の間にか近づいていたエラに対して問い詰める。

 

 そんな滅達にエラは笑いながら告げた。

 

「せいぜい味方同士で傷つけ合いなさい」

 

 そう言うと霞のように姿を消した。

 エラが姿を消したと同時に、ウォッチを埋め込まれた場所から禍々しい果実の果汁が溢れて、その姿を禍々しい鎧武者へと変えた。

 

 トレイニーがアナザー鎧武へと変貌した直後。風が吹き荒れて二人の樹妖精が現れた。

 

「お姉さま!?」

「しっかりしてください」

 

 どうやらトレイニーの妹のようで、彼女と似た容姿を持つ短髪の樹妖精と手を覆うほどの裾を持つロングヘアーの樹妖精だった。

 

「森の秩序は、私が守る!」

 

 そう言って、大橙丸を大剣にしたような武器を構えたアナザー鎧武が、滅達に牙を向けた。

 




次回~三つの戦場・中~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。