翌日の朝、トレイニーが言っていた湿地帯から少し南西の森の広場に俺達はいた。
俺達だけてなく、蜥蜴人族は首領と親衛隊長と副隊長、豚頭魔王ゲルドの側近を初めとする10名とガビルによって集められた数名のゴブリン、そしてトレイニーが集まっていた。
会議が始まる前にリムルと今回の会議の打ち合わせしていた。
リムルはスライム姿でシズさんに膝枕を受けていた。
「オーマ。俺は豚頭族に罪を問う考えはないんだが、お前はどうだ?」
「問題ない。元々は豚頭族の故郷が大飢饉に陥っていた事とゲルミュッドの暗躍による被害が大きいからな。罪を問う必要は無いだろ」
そう言った俺にリムルはスライム姿で驚愕の表情を浮かべていた。
「どうしてお前が
リムルが驚愕しながら聞いてきたので、<大願者>で知った事を伝えた。
「……本当に、お前ってなんでもありだな」
「本当に凄いね」
俺に呆れた視線を向けてくるリムルと感心した声を出すシズさん。
<大賢者>で圧倒的な習得速度を持っているリムルにいわれたらムカつくな。
「……それで、魔王ゲルドを倒したことで、他の豚頭族は<飢餓者>の影響を失って弱体化する。それは子供や高齢な豚頭族のような体力のない豚頭族から飢え死にする者がでてくるだろうな」
「そうなると、どうやって助けるかだな……」
「それなんだが、俺は今回の一件に関わっている種族で多種族共栄国家を作ろうと思ってるんだが、リムルはどうだ?」
「おぉ!いいな、それ!10万の豚頭族には各地に散って貰って、その土地土地で労働力を提供してもらおう。その見返りに俺達や蜥蜴人族からは衣食住を提供するってどうだ?」
「それだと、10万の豚頭族の飢えを抑えられない」
「じゃあ、どうするの?」
シズさんからそう訪ねられた為、俺が考えていることを伝えた。
「先ずは俺の考えはだな。あれこれかれこれ」
「ふむふむ。なら、ここをああして……」
「ここはこうとかどうかな?」
「おぉ!いいね!」
俺とリムル!そしてシズさんとの打ち合わせは一時間ほど行なわれて、会議の展開を決めた俺達は広場の上座に座っていた。
俺は堂々とした雰囲気で座っているが、リムルは紫苑の膝枕に乗っているのだが、何やらソワソワしていた。
『緊張してるのか?』
そう<思念伝達>で尋ねると、返事が返ってきた。
『当たり前だろ!?戦争の後処理なんてやったことねぇんだぞ……』
『とりあえず、緊張していることはバレるなよ。大丈夫だとは思うが、舐めてかかる奴もいるかもしれないしな』
緊張するリムルにそう注意をしておいた。
『俺から言い始めた方が良いか?』
『緊張してるなら、俺が先に言えば、後は楽だぞ』
俺がそう言うとすまなそうにリムルが頼んできた。
『悪いけど、頼んで良いか?』
『わかった』
俺は了承すると会議を始めた。
「それでは、後処理の会議を始める。先ず、我々議長側の主張を傾聴してもらい、その後は皆で検討して頂きたい」
そう言ってリムルに視線を向けると、リムルが頷いて告げた。
「まず最初に明言するが、俺達は豚頭族の罪を問う考えはない」
その発言に豚頭族は驚愕する。
「被害が大きい蜥蜴人族からしたら不服だろうが、聞いてくれ。彼等が武力蜂起に至った原因と現在の状況を話す」
そこからはリムルによって豚頭族の武力蜂起の理由を簡潔に伝えた。
「──────なるほど。大飢饉……それにゲルミュッドなる魔人とタイムジャッカーの存在ですか……」
「その通りだ。だからと言って侵略行為が許されないのは当然だが、逼迫した状況から分かる通り、彼等に賠償できるだけの蓄えはない」
「しかし、これは建前だ」
元々飢え死にしそうな豚頭族に賠償を求めることじたい無理難題だ。
それに、俺とリムルも最初から彼等に損害賠償どころか、罪に問うことすらするきが無かった。
「建前?では、本音の方を伺っても宜しいかな?」
蜥蜴人族の首領からの問いに返答した。
「豚頭族の罪は全て俺達が引き受けた。文句があるなら俺に言え」
その発言に豚頭魔王ゲルドの側近が反応した。
「お、お待ち下さい!いくらなんでもそれでは道理が……」
「それが魔王ゲルドとの約束だ」
「なるほど……しかし、それは少々ずるいお答えですな」
「何の不服があるんだい?」
不服な様子の首領に対してウォズはそう言った。
「蜥蜴人族の被害は、ガビルの反逆行為にあるが、我が魔王からの忠告を理解出来ずに反逆を許した首領。君の失態だ。その時点で蜥蜴人族から意見を述べる権利はないと思うがね」
冷酷に告げるウォズに続く様に曙彌と紅丸が告げた。
「況してや、魔物に共通する唯一普遍の法律がある」
「弱肉強食。立ち向かった時点で覚悟は出来ていたはずだ」
三人からの発言を聞き、首領は駄々を捏ねることなどできないことを改めて再認識した首領は頷いた。
「そうですな。この戦の勝者はリムル様であり、立役者はオーマ様です。貴方方の決定に異論などありません。しかし、それはそれとして……どうしても確認せねばならぬ事がございます。豚頭族の罪を問わぬということは、生き残った彼ら全てをこの森にて受け入れるおつもりですか?」
大飢饉になるほどの状態に陥っている豚頭族10万をどうするべきかは、最大難問といえよう。
だからこそ、その問題を解決する為の方法を両手を広げて語った。
「その問題の解決の一つとして、生き残った10万の豚頭族を含めて、この場にいる者達で、このジュラの大森林に国家……というよりも連邦国を建国する!」
「建国……ですか?」
「豚頭族には各地に移住してもらい、その土地土地で労働力を派遣してもらい、働いて貰う」
「その見返りに我らは食糧を提供するということですか?」
「そうであって、そうでもない」
首領の発言を肯定も否定もしなかった。
「トレイニーは知っているだろうが、俺達の住処で衣食住の技術的支援を行なうことができる程の技術力がある」
「もちろん、タダではない。ウチも人手不足だから豚頭族の労働や、ガビルによって集められたゴブリンや蜥蜴人族の移住も許可する。技術を身につけたら各地に散った者達とも一緒に住めるようになるだろう」
「まず最初に、豚頭族の飢餓を抑えるための食料保存として、仮面ライダーギーツの力で樹妖精の地盤内に飢えが絶えない食糧地を創る。これは、あくまで豚頭族が飢え死にしないようにする為の保存食のような役割として扱う」
ギーツの創世の力を「保存食の備蓄」として扱うことを知って、ウォズが大変驚いた表情で俺を見ていた。
そうだろうな。本当なら世界征服どころか、自分の理想郷を創造することすらできる力を、保存食の備蓄のみに使おうとしているのだから、仕方ないだろうな。
「その後は、ゴブリン・豚頭族・蜥蜴人族から各々の分野に分けて、こちらからの技術者による衣食住の技術能力の提供によって、食糧の育成法などの技術を身につけてもらう」
「豚頭族に各地に散ってもらうのも、各分野の技術を受けてもらうためだ。もちろん、苦手分野もあるだろうから、その辺も精査した上で選抜していくが、後にジュラの大森林全域での建国となるため、<思念伝達>ができない相手との意思疎通もできるように努力を重ねることで、更なる成長が望められる」
「各種族の子供達には、ウチの街に学校と呼ばれる施設を建設して、そこで学んだり遊んだりしてもらうつもりだ」
「学校……とはなんですか?」
聞き慣れない単語に気になったゲルドの側近。
学校を知らない者からすれば何なのかわかる筈もないから、聞いてくるのは当然だ。
俺とリムルはシズさんに視線を向けた。
「そこは私が説明するね。学校っていうのは幼児や児童などに対する教育機関のことだよ」
「子供達には生きていく為の方法を教えていた事があるだろう。それを大きな場所で種族問わずに一緒に学習していくということだ」
シズさんから説明を補足して説明した。
「学校に通えるのは子供だけじゃないぞ。学習意欲があれば、衣食住の専門的な学習も受けられる学舎だ」
「そこから、大飢饉からの対処法もちゃんと身につけられるようになる。他種族が共に学び歩むことで、今まで自分達の視野の狭い知識が膨れていき、国家として大きく動くことになるだろう」
俺とリムルの発言に豚頭族・ゴブリン・蜥蜴人族・トレイニーはもちろんのこと、曙彌達鬼人も驚いていた。
「そ、その同盟に我々も参加してもよろしいのでしょうか……」
恐る恐る聴いてくる豚頭族にリムルと俺は告げた。
「ちゃんと働けよ?サボることは許さんからな?」
「子供達のためにもな」
参加の許可を得られた豚頭族は瞳を涙で潤いながらも服従の意を示してきた。
「……我らも異論はありません。ぜひ協力させて頂きたい」
そう言って豚頭族と同じく服従の意を示す蜥蜴人族とゴブリン。
それに続く様に鬼人勢とトレイニーも俺達に片膝を着いて服従の意を示し、ウォズといつの間にかリムルを椅子に置いたシズさんが最先頭になって服従の意を示した。
「我が魔王。リムル様。今ここで宣誓しよう。"ジュラの森大同盟"を設立し、二人を新たな盟主として、今回の件に関わりし全ての種族が君達に随順する」
盟主!?
まさか、前世と似た様な職に就くことになるとは……
『お、オーマ!?どうするよ、これ!!?』
『国家を建国することを言ったんだ。俺達が盟主になるのは必然だろうな。諦めろ』
盟主になることに戸惑っているリムルに諦めるよう冷たく言ってしまったが、リムルは諦めて盟主になることを決めた。
「じゃあ。あの、そういうことみたいなんで……」
「これからよろしく頼む」
『ははっ!!』
ジュラの森大同盟が成立し、俺達は盟主となった。
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小休憩を挟んだ後、俺達は更に豚頭族の食糧問題の解決のために、この場にいる全員と街にいる朱奈達の願いを集めて<大願者>の権能:理想郷で、食糧問題を解決した世界をハッキリとイメージして、<大願者>の権能:大願成就によって俺の魔素を大量に消費して、<創世者>の権能:世界創世によって世界を創世し始めた。
ゴーンッ!という轟く鐘の音が世界に鳴り響く。
すると、樹妖精の管理下にある地盤に食糧問題など問題ないほどの作物などが、淡い青白い光と共に創世されていった。
[確認しました。個体名:オーマ=テンペストによってジュラの大森林内の食糧問題が完全解決された世界へと創世されました]
「これは……」
「世界の言葉ですね」
世界の言葉が俺達の脳裏に響く。
だが、俺は片膝を着いて、息を切らしていた。
「我が魔王!?」
「オーマ様!?大丈夫ですか!?」
ウォズ達が心配して駆け寄ってくる。
創世するのに大量の魔素を消費して理を上書きしたが、魔王種であり勇者の卵を手にした仙人という二つの進化へと至った俺の魔素量でも気絶ギリギリの状態に追い込まれるとは思わなかった。
「大丈夫か!オーマ!?」
「あぁ……流石に……魔素を使いすぎた」
残り3分の1ほどの魔素量しかないな。
「我が魔王、少々お休みなるべきかと。リムル様もおられますし、豚頭族の問題はこちらで対応致します」
「ウォズの言うとおりだオーマ。休んどけ」
ウォズとリムルの好意に甘えてウォズのマフラーで街へと強制転移された俺は自室で休んでいた。
「大丈夫ですか、オーマ様」
そう聴いてきたのは朱奈だった。
朱奈は俺が帰ってきた際に、魔素切れ寸前の状態である事に気づき、俺の自室にまで連れて来て貰い、そのまま膝枕をしてくれていた。
「迷惑を掛けて悪いな朱奈」
「いえ。無事お帰りになって頂けただけで、私どもは嬉しいのです」
「……そうか」
無事なことを喜ぶのはどんな世界であろうと同じなんだ。
そう思いながらも俺は瞼を閉じて6時間ほど休むと失っていた魔素量が完全回復した。
なんで6時間ほどで戻ったんだ?
【告。<継承者>で更に特殊能力を複数継承しました。その中に<
自然に魔素が回復した時より、どれだけ速くなったんだ?
【告。以前の12倍です】
かなり速いな。
そう思いながらも俺は帰ってきたリムルから後処理の結末を聴いた。
どうやら創世の力で街と樹人族の集落の中間地点にできた食糧が無限に増え続ける泉「食の泉」がトレイニーの妹達によって発見されたそうだ。
紅丸が運搬の指揮を執ることになり、ラグルド含む豹鬼兵部隊が運搬に参加しているようだ。
そして、豚頭族に関してもう一つ保険を付けることになった。
豚頭魔王ゲルドの特殊能力<飢餓者>による影響を失ったため、弱体化してしまっている。
その中にはギリギリ飢え死にせずにいる老若男女がいる為、名付けを行うことで必要な魔素を俺達が供給することになったそうだ。
つまり、今から俺とリムルでそれぞれ5万の豚頭族の名付けが行われた。
俺もリムルも魔王種に進化した事で名付けによる魔素消費量が少なくて済んだ。
リムルに関しては豚頭魔王ゲルドの側近にゲルドの名を与えたらしく、ゲルドに対してかなりの魔素を消費したそうだ。
名付けされた豚頭族は種族進化して
会議の際に告げた通り、建設業・農業・漁業と仕事を務めて貰っているが、その仕事ぶりはカイジンを初めとする職人達を唸らせるほどの学習能力と吸収力を持っていた。
街で建設している最中にガビルが集めたゴブリン達が一族郎党を連れて街にやってきた為、リムルとまた名付け地獄に入ったがなんとか名付けを終える事が出来た。
そして蜥蜴人族の首領にアビルの名を名付けたことで、アビルは
どうやらシス湖という場所があり、魚系の魔物がいるそうだ。
そのシス湖でならば養殖場としても使えるだろうと思い、養殖魚職員の男型機械人間「養殖魚男」を教育係として派遣して養殖を試みている。
そう色々と業務を行なうこと早3ヶ月。
街に住む者全員に家が行き渡り、各家庭に水道を引くことが出来なかった為、各所に汲上げ式井戸を設置し、汲み水によるトイレの水洗なども出来上がった。
言い忘れていたが、今回の一件でウォズ達に役職を付ける事にした。
ウォズは「大臣下」
シズさんは「教官」
滅は「元帥」
迅は「陣頭指揮官」
亡と雷は「調整技師統括」
イズとアズは「秘書」
曙彌は「大剣豪」
紅丸は「侍大将」
朱奈「巫女姫」
紫苑と山兜喇と牛千呂と屍馬は「武士」
白老は「指南役」
黒兵衛と黒蘭は「刀鍛冶」
蒼影と参緑と燃黄は「隠密」
更にゴブタを狼鬼兵部隊のリーダーに、ゴブエモンを豹鬼兵部隊のリーダーに、猪人王であるゲルドも建設部門のリーダーに任命した。
紫苑に関してはリムルの秘書も兼ねることになった。
新たな役職を手にした者達を幹部と認定した。
軽く1万を超える魔物達によって街が漸く出来た。
後は国家として建国するだけだが、ゼアとアークと共に出した予測だと、あの国を出てから監視をしている輩があの王様に報告をしている頃だろうな。
恐らく近い内にやってくるだろうな。
その前に、盟約の条件を考えておくか…………
そう思いながら資料の精査をしていた。
まさか、ゼアとアークも予測できなかった思わぬ人物が街に来るなど、この時の俺は思いもしなかった。
来年からは更なるお気に入り登録数と評価を頂けるようより一層の努力を努めます。
次回は次章に入りますので、お楽しみ!
次回~盟主の子~