転生したら、仮面ライダーになった件   作:森雄

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注目する者・前編

 リムルの娘・シンシアと俺の息子・キラが街に住み始めて数週間。

 

 その間に、更に俺達の街に仲間が増えた。

 アビルによって追放されたガビルとガビルを慕う若い蜥蜴人族、アビルから見聞を広める様に送り出された親衛隊長とその部下達がやってきていた。

 全員に名付け────ガビルは同じ名で偶然にも上書きになった────を行った結果、全員が龍人族(ドラゴニュート)へと進化を果たした。

 

 親衛隊長と副隊長とその部下数名が人間の姿へと見た目が変わり、龍人族としての角や翼を収納したり出したり出来るようになった。

 そんな親衛隊長__蒼華を初めとする人間姿の龍人族を蒼影をリーダーとする隠密部隊に入れた。

 

「どうだ?」

「オーマ様。悪くないです。特に蒼華は隠密に向いている」

「隠密部隊も軽く10人を超えたからな。今後、この街に近づく不審者を幅広く対応できるだろう」

「えぇ」

 

 蒼影をリーダーとした隠密部隊は蒼華を初めとする龍人族6名と隠密系の力を示している参緑と燃黄を初めとする鬼人10名ほど。

 特別能力<分身>を扱える蒼影達の活動もあって、街を陰ながら支える存在として育ってくれるだろう。

 心強いことだ。

 

 そして、ガビル達には回復薬の原料栽培を任せた。

 ヴェルドラが封印されていた封印の洞窟にて栽培を行なっているガビルの元へと向かった際にヒポクテ草の栽培を見ていたが、ただの雑草を育てていただけだったと知った際は、流石に呆れてしまった。

 

 街造りの音が鳴り響く中、平和を謳歌しながら仕事をしている最中。

 参緑から報告がきた。

 

『オーマ様。緊急事態です』

『どうした!?』

『北の空に武装集団を確認しました。その数はおよそ500います。集団は一直線にこちらへ向かってきています』

 

 500の武装集団か。それに北方から……ゼアとアークと共に予測した通りなら、恐らくあの男が来たのだろう。

 そう思いながら、イズに告げた。

 

「イズ。ゼアを通して避難命令を出してくれ。他の機械人間達にも共有しろ」

「畏まりました」

 

 一礼するイズを背に、俺は現地へと向かった。

 

 ────────────────────────────────

 

 参緑の報告を受けて飛行部隊が降り立とうとする場所へとやってきた。

 

「オーマ!」

「リムルか。どう思う?」

「統制された武装集団だよな。何者なんだ?アイツら……」

 

 そう呟いたリムルの疑問に、なぜか避難せずにやってきたカイジンが望遠鏡を覗いていた。

 

「あれ、もしかして……」

「心当たりがあるのか?」

「昔、酒の席で退役した老松に聴いたんだ。ドワーフ王の直轄に極秘部隊がいるってな」

「奴らがそれかもしれないって言うのか?」

「ああ。なにせ、その部隊は──────天翔騎士団(テンプルナイツ)という名だと……」

 

 そう言って見上げているペガサス500体に騎乗する騎士団が現れた。

 なぜそんな騎士団がやってきたのか。それは今から豚頭魔王ゲルドを討伐してから一ヶ月が過ぎる一週間ほど前の頃の武装国家ドワルゴンまで時間が戻る。

 

 ────────────────────────────────

 

 一週間前の武装国家ドワルゴン。

 

 中立国家でもあるドワーフ王国の王であるガゼル・ドワルゴはある文書を読んでいた。

 

「王よ。暗部はなんと?」

 

 円卓に座する五人の内、金髪褐色肌の男が訪ねた。

 

「……新勢力の介入により、豚頭帝は討伐されたと」

「なんですって!?一体どこの国の部隊が……」

 

 ガゼルの言葉に驚愕すれど、どこの国が既に討伐していたのか。更なる質問をするが、ガゼルから出た返答はこの場にいる者達の予想を上回っていた。

 

「国と呼べるかはまだわからんな。確認できたのは、ホブゴブリンに牙狼族と爪豹族の変異種。それに鬼人と思しき魔人が37名」

「鬼人!?」

「しかも、37名ですか!!?」

 

 驚きの余りガタリと椅子を動かしてしまう家臣達。

 

「その全てが例のスライムと妙な耳当てをした魔人の配下だと思われる……という報告だ。それにその妙な耳当てをした魔人と似た存在が100名ほど発見。並びに10万の豚頭族は猪人族に進化を遂げ、各地に散ったらしい」

 

 ガゼルの発言に魔法使いの服装をした高齢の女性ドワーフと真っ黒な甲冑を着て顔に二つの切り傷を持つ男ドワーフが発言した。

 

「鬼人を従えるスライムと奇妙な魔人だって?豚頭帝よりよっぽど捨て置けないじゃないか」

「どうなさるおつもりですか、王よ」

「見極めねばならぬ。特に奇妙なあの魔人はな」

 

 ガゼルの発言に家臣達は疑問の表情を浮かべていた。

 

「それはどうしてでしょうか?」

「その魔人は仮面ライダーに変身したそうだ」

 

 そう告げたガゼルの言葉に、家臣達は更なる驚愕と動揺が起きた。

 

「何ですと!!?」

「世界中に広まる、あの仮面ライダーですか!!?」

 

 ガゼルに訪ねる家臣にガゼルは「そうだ」と告げる。

 

「しかも、変身できるのは一つではないらしい」

「っというと?」

「その魔人は複数の仮面ライダーに変身できるようだ」

 

 その発言に家臣達は驚愕と動揺が更に広まる。

 

「それではまるで、かの"暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)"魔王ギィ・クリムゾンと一緒ではありませんか!?」

「もし、魔王ギィと同じ存在なら、鬼人37名を従えているのも頷ける」

「だが、その脅威は正しく災禍級(ディザスター)を超えているぞ!!!」

 

 そう話す男性二人に口元を黒い布で隠している耳が長い三つ編みの女エルフが声を出した。

 

「それだけではありません」

 

 そんな彼女の発言に誰もが、彼女へと視線を向ける。

 

「その魔人だけでなく。例のスライムや他の魔物の中にも仮面ライダーへと変身する者もおり、尚且つ、"爆炎の支配者"井沢静江(シズエ・イザワ)までもが仮面ライダーに変身したそうです」

 

 彼女の発言は伝承と噂として流れている伝説上の存在に変身できてしまう人物が、オーマとリムルの所に集まっている事を明確にするものだった。

 

「伝承されている仮面ライダーは、魔物の危険度でいうと災禍級ではなく、竜種と同じ天災級(カタストロフ)!伝承されている仮面ライダーの力を持っているのだとすれば、ドワルゴンの全戦力でも太刀打ちできるかどうか……」

「できないわよ」

 

 ドワルゴンの全戦力で勝利できるか不安に思う金髪褐色肌の男の言葉に返答したのは、円卓がある部屋に勝手に入ってきた褐色肌の若い女だった。

 

「ペス殿!」

 

 ペスと呼ばれたドワーフ特有の褐色肌に白衣を着込んだ黒髪ボブカットの女性が白衣に備えられたポケットに手を突っ込みながら、堂々と円卓に歩み進める。

 

「魔王ギィが仮面ライダーに変身できるという決定的証明を行なった事で、仮面ライダーの伝承・噂が現実となり、その伝承を調査する国が増えていった。このドワルゴンもその一つ。その理由は、貴方方もご存じでしょう?」

 

 まるで目を背けるなと言わんばかりに突き付けるペスの言葉に誰もが沈黙した。

 

「仮面ライダーとは魔王にして勇者。善と悪・光と闇と相反する力を携えたその力は、元勇者にして現魔王である"白金の悪魔(プラチナ・デビル)"魔王レオン・クロムウェルと同等かそれ以上の異質な存在。加えて、伝承と噂に記された仮面ライダーの中には、世界を変革させる力があるのよ。そんな力を手にし、尚且つ。あらゆる魔物に進化をもたらすスライムと奇妙な魔人にドワルゴン処か、各国の協力を持ってしても勝てると思う?」

 

 そう訪ねられた二人の男性は苦渋な表情を浮かべていた。

 そんな彼等を纏めるようにガゼルは告げた。

 

「ペスの言うとおりだ。対応を誤れば国が滅ぶのは確実だ」

 

 そう言って、ガゼルは立ち上がった。

 

「だからこそ。あのスライムと魔人の正体、余自ら見極めようではないか」

 

 ────────────────────────────────

 

 そういう決断をしたガゼル王が、この地へと降り立った。

 

「久しいなカイジン。それにスライムと奇妙な魔人。余────いや、俺を覚えているか?」

「誰かと思いきや。管理能力のない無能王か。何の様だ?」

 

 正面から挑発行為をした為、ガゼルの後方にいる天翔騎士団から殺気が溢れていく。

 

「なに。貴様等の本性を見極めてやろうと思ってな。今日は王ではなく、一私人として来た。物々しいのは許せ。こうでもせぬと出歩けぬのでな」

 

 しかし、当の本人は俺の挑発など気にも止めていなかった。

 それに騎士団が付いてくるのは仕方ないことだ。

 

 だが、その発言は俺達を貶されたと思わせる発言だ。事実、鬼人37名がそう捉えたのか爆発寸前の者が多い。

 蒼影や参緑に関しては笑顔が不気味だ。

 

 俺とリムルが近づくと、ガゼルの後方にいる黒い甲冑に身を包んだ男が背にある武器に手を添えていた。

 

「下がっておれ」

 

 ガゼルの発言で動くことを止めた。

 そんなガゼルの前にリムルがスライム姿から人間の姿になった。

 化けた事に驚く天翔騎士団の者達。

 

「まず、名乗ろうか。俺の名はリムル。こっちはオーマだ。スライムなのはその通りだが、見下すのは止めてもらおう。これでも俺達は、ジュラの森大同盟の盟主なんでな。これが本性って訳でもないんだが、こっちの方が話しやすいだろ?」

「ほう……人の姿で、剣を使うのか」

 

 人の姿になったリムルの腰にある刀を見てガゼルは腰にある剣を抜剣して、俺達に鋒を向けた。

 

「貴様等を見極めるのに言葉など不要。この剣一本で十分だ」

 

 ニヤリと笑みを浮かべて告げるガゼル。

 

「この森の盟主などという法螺吹きには、分というものを教えてやらねばなるまいしな」

「ほう。無能な王が見極めるか。せいぜい無駄な行動を取り続けるがいい。無能の行き着く先は古今東西決まっている」

 

 不敵な笑みを浮かべながら、こう告げた。

 

「地に伏すがよい」

 

 一触即発の雰囲気がこの場に広がる。

 

 そんな俺達の間に一つの木の葉がヒラリと落ちてきた。

 

「それでは、我らが森の盟主とドワーフ王の立会人は我々がしましょう」

 

 そう言って現れたのはトレイニー姉妹だった。

 樹妖精の出現にガゼルと共にやってきた高齢な魔法使いが大変驚愕していた。

 

 それもそうだろう。樹妖精はジュラの森の管理者。ドワーフ王国含め多くの国家が周知している存在といえる樹妖精が自ら俺とリムルを盟主と言ったのだ。

 驚愕と困惑がドワーフ王国側の心中を広げるのは致し方なしとしか言えない。

 

「よう。トレイニーさん」

「ご無沙汰しておりますリムル様、オーマ様。同盟締結の日以来ですわね」

「元気そうだな」

「はい。お陰様でとても生き生きしております」

 

 そんな彼等の胸中など知る筈もなく、普段通りな会話を行なう俺達を見て剣を持たぬ手で顔を覆うガゼルは笑った。

 

「ふはっ。ふはははは。森の管理者がいうのであれば、真実なのであろう。法螺吹き呼ばわりは謝罪するぞリムル、オーマよ」

 

 一頻り笑ったガゼルはすぐさま真剣な表情へと変わり、未だに鋒を向けていた。

 しかし、その行動はトレイニー達の怒りを買う行動だった。

 

「まだ無礼を重ねると……」

「いいよ。トレイニーさん」

 

 怒りの余り、力を行使しようとしていたトレイニーを止めたリムルが腰に携えた剣を抜いた。

 

「俺達が無害だってことは剣で証明するしかなさそうだ。俺からでいいよな?」

「構わんぞ。先であろうと後であろうと、俺達の勝利は揺るがん」

 

 ガゼルと同じく傲岸不遜な態度で告げると、天翔騎士団から放たれる殺気が増えるが、同時にそれ以上の殺気をウォズや滅達が放った為、黙殺された。

 

 リムルが両手で構えたのを確認したトレイニーが開始の合図を告げたと共に、二人の攻防が行なわれた。

 リムルの攻撃はどんな角度・スピードで切り込んでも簡単に受け流されている。それもその筈だ。ガゼルは先程から少量の覇気を剣を通してリムルに放っている。リムル自身でも気付かない程に……な。

 

<大賢者>なら簡単に気付いて、対処するだろう。

 だが、今のリムルは能力を使おうなどと考えていない。剣以外を用いて勝ったとしても精神的敗北と考えているのだろう。仮面ライダークローズに変身しないのも、精神的敗北が関わっている。

 

 能力を切っているが故に、ガゼルからの覇気によって内心萎縮してしまっている。

 覇気を纏った剣で相手の攻撃を見抜いている。今の状態ではリムルは勝てんな。それよりも、驚くべきなのはガゼルの方だ。

 

 最初にあった頃から強者の枠にいるのは感じていたが、剣士としての実力は確かにある。だが、あの受け流し……白老に似ているな。

 どういうことだ?

 

 そう悩んでいると、俺の背後から最近覚えた気配が近づいてきた。

 

「パパ!オーマおじさん!」

「シンシヤにキラ。お前達は避難していろと言っただろ?」

 

 俺の背後にスライム姿のシンシヤを抱えてやってきたキラがいた。

 

「私も手を……」

「手を出すな、シンシヤ」

 

 手を貸そうと人の姿へと変わろうとしたシンシヤを止めた。

 

「でも……!?」

「安心しろ。リムルは負けん」

 

 確信めいて言ってのける俺を見て、シンシヤは不安そうにキラを見つめるが、キラが自信満々な笑みを浮かべて頷いたため、信じてリムルを見守ることにした。

 そんなリムルはというと、ガゼルから放たれた<英雄覇気>で萎縮してしまい、身体を硬直させてしまっていた。

 

<英雄覇気>のような覇気は一種の魅了状態にも陥る能力だ。同種である<魔王覇気>や<勇者覇気>も同じだ。

<英雄覇気>は"勇者の卵"や"魔王の種"を持たずに、強者として進化した存在が扱える覇気だ。能力を介さなければリムルとガゼルの実力差はガゼル>リムルの数式になる。

 

 しかも、転生した異世界人であり、戦場など関わっていない時代で生活していたリムルが、日常が死地とも言える異世界では、リムルの精神では萎縮されてしまうのも、無理はないが……

 

「うおおおおあああっ」

 

 リムルが気合いを乗せた声と共に萎縮されて硬直していた身体を解除して見せた。

 そうだ。それでいい。

 

 流石にガゼルも解かれるとは思っていなかったようだ。

 

「……解けたぞ」

「……そうこなくてはな。では次はこちらからだ」

 

 そう言ったガゼルの姿が一瞬の内に消えた。高速で動く技術(アーツ)・瞬動法と呼ばれる移動技術で近づいているだけだ。

 それよりも、あの剣術はやはり……

 

 リムルの真下から斬りつけるが、リムルは紙一重で回避するも、下方からの斬撃は相手の態勢を崩す為の最初の一手だ。

 そして態勢を崩した相手にトドメの一撃として上段から振り下ろして兜割りする。

 

 それが、朧地天轟雷という技だ。

 

 ガゼルの使った剣術は正しく朧心命流の一つだ。

 そんなガゼルの上端から振り下ろされた剣を受け止めて見せた。

 

「……はは。クロベエの刀じゃなかったら真っ二つだったな」

 

 クロベエの拵えた刀の刀脊でガゼルの剣を受け止めたリムルを見て笑うガゼル。

 

「……ふっ。ふははははははッ。こやつめ、俺の剣を受け止めおったわ!!」

 

 そう言ってガゼルは剣をリムルから離した。

 それを見てトレイニーが告げる。

 

「勝者 リムル=テンペスト!」

 

 トレイニーの宣言によってリムルとガゼルの立ち会いは終わった。だが、俺とガゼルの立ち会いはまだな為、俺はリムルと交代した。

 

「次はオーマだ。剣を抜け!」

「抜く必要はない」

 

 剣を抜くように告げるガゼルに俺は拒否した。

 

「……なに。どういうつもりだ?」

「どうもこうもない。剣を抜く必要がない程に、俺とお前とでは圧倒的な実力差があるというだけだ」

 

 俺の発言が気に触ったらしく、天翔騎士団の者達から先程以上の殺気が向けられてくる。それは目の前にいるガゼルも同じだった。

 

「その発言を悔やむがよい」

 

 そう言ったガゼルの<英雄覇気>が俺を襲うが、一切怯むどころか恐れることすらなかった。

 首をコキッと鳴らした事で、最初から覇気が通じていない事に気付くガゼルは内心驚いていた。

 だが、すぐさまガゼルは両手で構え直した剣で、瞬動法で俺の懐に入り込んだガゼルは朧地天轟雷を使ってきた。俺は上体だけを後ろに逸らすことで躱すと、ガゼルが上段から剣を振り下ろした時だった。

 

 

 俺の身体に剣が振り下ろされる事はなく、ガゼルの首元に鋒が突き付けられていた。

 

「っ!?」

 

 振り下ろしたガゼルは勿論のこと。天翔騎士団やリムル達も何が起きたのか分からなかった。

 

「何が起きたんだ!!?」

 

 リムルは理解出来ず、声を出して騒いでしまった。しかし、それは誰もが思ったことな為、誰も咎めることなどない。

 俺は鋒をガゼルの首もとから離した。

 ガゼルは信じられない様子で、俺が持つ剣に視線を向けていた。

 

「……なぜ」

 

 信じられないのも無理はない。一剣士でもあるガゼルにとっては、これは信じられないものだ。

 

「なぜ……貴様が俺の剣を持っている?」

 

 そう。俺の手にはガゼルの剣が握られていた。

 その光景を見ているこの場にいる者達にとっては理解出来なかった。

 

 そんな彼等の疑問を最初に解明したのはリムルの<大賢者>だった。

 

【解。個体名:オーマは個体名:ガゼル・ドワルゴが剣を振り上げる際に、抜き取ったと考えられます】

(いやいや!そんなのできるわけないだろ!!)

 

 リムルは<大賢者>からの報告を聞いても信じられなかった。

 そんなリムルや、疑問の渦に呑まれてしまっている周りの者達に告げた。

 

「簡単なことだ。お前が切り上げた際に刀を取っただけだ」

 

 そう告げると天翔騎士団の方から「馬鹿なっ!」「ガゼル王の剣技から剣を抜き取れる筈がない!!」と現実逃避したくて堪らない発言がチラホラ聞えてくる。

 

「"無刀取り"というただの技術だ」

「無刀取りだと!?」

(なんだ?その無刀取りって?)

【解。"無刀取り":白刃取りと呼ばれる技術の一種とされており、自分が無刀で相手を制する技術の事です】

 

<大賢者>からの報告を更に聴くリムル。

 

【個体名:オーマは個体名:ガゼル・ドワルゴが振り上げた際に、相手に気付かれない程の速度と精密性と隠密と共に剣を強奪したと推測します】

(嘘だろっ!?あの一瞬で、それを全部やり遂げたってことか!?)

 

<大賢者>からの報告を受けて信じられない表情を浮かべているリムル。

 前世では爺さんからの攻撃を防ぐのに必死で習得したからな……一般的な生活をしていたであろうリムルからすれば信じられないのも無理はないだろうな。

 

「……ふっ。ふははははははっ!まさか、"剣聖"や"英雄王"と呼ばれる俺の剣を簡単に盗み出すとは!!」

 

 無刀取りを知っているガゼルは俺がやった事に驚愕しながらも、愉快に笑っていた。

 

「お前達は邪悪な存在ではないと判断した。良ければ、話し合いの場を設けてもらいたい」

「よかろう。話し合いの場を設けてやる」

 

 俺がそう言ったのを気に、トレイニーが俺の勝利を宣言した。

 その後。俺達に話しかけてきた白老が、リムルの修行内容を厳しくする事を宣言した事と、なんとガゼルが白老の弟子であった事が判明したのだった。

 

 似た剣技をしているからもしかしたらと思ったが、まさか弟子だったとはな。

 思考している俺に話しかける者がいた。

 

「父さん!」

「ん?どうした?」

 

 話しかけたのはキラだ。

 

「後で、剣を教えて!」

「あぁ、いいぞ」

「やったぁ!!」

 

 満面の笑みを浮かべて喜ぶキラに、口角が上がる。

 

「流石でしたな、オーマ様」

 

 そんな親子の会話の中に白老が話しかけてきた。

 

「無刀取りまで体得されておられたとは……いやはや、感服致しましたぞ。流石は儂以上の武術使いですな」

「何ですとっ!?」

 

 白老の言葉を聴いて、ガゼルがとても驚いていた。

 

「剣鬼殿!それは本当(まこと)ですか!?」

 

 その問いに白老は頷きながら肯定した。肯定された事でガゼルはこちらに顔を向けてきた。

 

「オーマよ。すまぬが、剣鬼殿を超える剣技を見せてくれぬか?」

 

 そう頼んできたが、見せてやる必要がないのだが、何やらキラと人型になったシンシヤの瞳がキラキラと幼子特有の期待の眼に曝されて流石に断れそうになかった。

 

「……はぁ。わかった。一度だけだぞ」

「「やったぁ!」」

 

 大変に喜ぶキラとシンシヤ。

 そんな二人に呆れているとリムルから<思念伝達>が繋がった。

 

『落ちたな』

 

 ニヤリ顔でこちらに<思念伝達>を送ってくるリムルに『黙れ』と送りながら、ジカンギレードを具現した。

 

 その後。俺はガゼルが使っていた剣技────朧地天轟雷────を見せた。俺が振り上げた時には何一つ音がなる事はなかったが、振り下ろした際には正しく轟雷といえる轟音が鳴り響き、振り上げと振り下ろしの二撃の動きが電光石火の如く繰り広げられた。

 

 そんな剣技を見たキラとシンシヤは「凄い!」「格好いいです!」と褒めてくるが、剣聖や英雄王と称されるガゼルやその部下達は驚愕の余り、目を見開いていた。

 

「……ふっ。ふははははははっ!まさか、これ程までの剣技を持っていようとはな。剣鬼殿が褒めるのも無理はないな!」

 

 驚愕から立ち直ったガゼルは大いに笑った。

 

「──────さて、リムルとオーマよ。早く案内してくれ。上空から見たかぎりじゃ美しい町並みだったぞ?美味い酒くらいあるのだろう?」

「無論だ。だが、随分と偉そうだな」

「そいつはスマンな」

 

 ハッハッハッハ!と笑うガゼルに呆れながらも俺達はガゼル達を街へと案内した。

 




次回~注目する者・後編~
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