ガゼル王と天翔騎士団が俺達の街に来訪していた頃。
ジュラの大森林から南東にある国家にて、ある四人の強者が集まっていた。
その理由はガゼルたちと同じだった。
豚頭帝を倒したことで、四人の強者達の注目を凭れる事になったのだ。
ここはジュラの大森林の南東に建国された国家──────傀儡国ジスターヴ。
魔王クレイマンが統治する国であり、その国に建設された魔王の居城の一室には既にタキシード姿の銀髪の優男と目尻に獣のような二重線が書かれた右肩にアーマーを持つ金髪の大柄な男が椅子に座りながら何かを待っていた。
そして、漸く待っていた何かがやってきた為、話しを始めたタキシードの優男。
「────────何だと!?では豚頭帝を魔王化させるという話しはどうなるのだ?」
タキシードの優男の話を聴いて机に片足を付けながら椅子の上に立ち上がった。
「ですからミリム。豚頭帝が死んだ以上、この計画は白紙に戻すしかないでしょう」
興奮冷めぬピンク色のツインテールの少女こと──────オーマの魔王種への進化と勇者の卵所持となった際に溢れ出た強い気配を察知した──────ミリムを説得するタキシードの優男だが、そのミリムは出されていた紅茶の入ったカップと受け皿をクレイマンの左側を過ぎるように投げ付けてはクレイマンの後ろの壁にぶつかって割れた。
「久々に新しい
怒り心頭なミリムに同調するように、金髪の野性的な男が発言した。
「計画の言い出しっぺが出張って返り討ちに遭うなんざ世話のねぇこった」
「カリオンの言う通りなのだ!フレイもそう思うだろ?」
ぷんすこと怒り心頭に発するミリムはカリオンとやらの発言に同意しながら、背中に鳥のような巨大な翼を生やした豊富な胸部を持つ銀色の髪を持つ妖艶な女性をフレイと呼びながら意見の同意を求めた。
しかし、そんなミリムに対してフレイと呼ばれた魔王は呆れながらに告げた。
「あのねぇ、ミリム。私があなた達の計画とやらを知るわけがないでしょう?」
「む。そうか」
フレイのその発言によって、計画を知らない彼女に同意を求めてもダメだと、怒り心頭なミリムの怒りが収まった。
しかし、カリオンは計画を知らぬフレイがいる事に疑問を抱いていた為、何故いるのかと尋ねると、どうやらミリムに無理矢理連れてこられたらしい。
その返答にカリオンは勿論のこと、共に話しを聴いていたクレイマンまでも片手を眉間に当てていた。ミリムの身勝手な行動に悩まされているのだろう。
しかし、すぐさま受け入れたクレイマンはパチンと指を鳴らすと四つの球体が机に置かれた。
「ひとまず計画は頓挫したわけですが……少々軌道を修正してやれば、まだチャンスはあります。まずはこれをご覧下さい」
そう言って球体に魔力を灯すと球体が光り出すと同時に、球体に映像が流れていた。
「なんだこりゃ」
「ゲルミュッドの置き土産です」
そう言って球体に流れていた映像はゲルミュッドが関係している豚頭魔王ゲルドに関する戦場での映像だった。
蒼影がオーマとリムルに告げていた秘術による記録映像である。
その映像を見せられたクレイマン以外の三人の魔王は興味本位で眺めていた。
鬼人や"爆炎の支配者"
「おいおい……コイツら、ギィと同じ仮面ライダーになれるのか!?」
カリオンは口に出しながら驚いていた。
それもそうだ。カリオン含む魔王達が視た記録映像の中にはウォズ・曙彌達鬼人勢・滅と迅・シズによる仮面ライダーへの変身光景だった。
魔王達はギィが仮面ライダーに変身できる事を知っており、その姿を一度だけ見たことがあるのだ。
特殊な変身方法を行なう為、ただ仮面を付けるだけの魔人と明らかに違うのだ。
それを各々の解析系能力によってウォズ達が仮面ライダーになれることをちゃんと理解したのだ。
そんな時だった。
「うっ……!?」
記録映像が収まっている球体型魔導具を両手で掴みながらマジかで見ていたミリムが突如に発生した目の痛みに襲われてしまい、手に収まっている魔導具から手を離して目を押さえた。
突然と目を押さえたミリムに誰もが何事かと訝しんだ。
そんなミリムに同じ女性であるフレイが訪ねた。
「どうしたのミリム?」
「こ、コイツの魔素が一切見れないのだ……見ようとすると頭が痛くなるのだ」
ミリムの持つ特殊な眼で球体に映っている人物を解析しようとした。しかし、ミリムは解析出来なかった。
特殊な眼による解析能力を持つ彼女の許容量を超えてしまったが故に把握できなかったのだ。
そんな彼女の発言に誰もがミリムの見ている人物を見た。
そこにいたのはウィザードラゴンとアカネタカに乗ったオーマとリムルだった。
「コイツらのことか?」
「あまり強そうには見えないけれど……」
「……」
カリオン・フレイ・クレイマンはミリムが鑑定できなかった事に疑問を抱いた。
「それに……コイツなのだ」
解析能力を解除した事で頭痛がなくなった為、魔導具に指差したミリム。そんな彼女が指差した映像に映っていたオーマだった。
「この魔人がどうしたの?」
「一月前に感じた奴なのだ!」
「もしかして、ジュラの大森林で現れたっていう強者かしら?」
「そうなのだ!!」
一月前……つまり、豚頭魔王ゲルドを相手にしていた際に進化を果たした際に放たれた二つの混合覇気。その強大な覇気によって放たれた存在値に気付いたのはミリムは会いに行こうとしたが、フレイに諫められて行くことを止めた事がある。
その時の事を思い出したフレイはその時の存在なのだと認識した。
二人の言葉からカリオンとクレイマンもオーマに対して視線を向けては解析していた。
「確かに、コイツはアルビスと良い勝負をしそうな奴だな」
カリオンはオーマの実力が自身の配下にして選抜された存在である「三獣士」筆頭アルビスと同等の実力を秘めている事に気付いていた。
だが、カリオン達が視ていた映像が途中で切れた。
それは魔法を掛けられていたゲルミュッドが死んだからだ。
「ゲルミュッドが死んだせいで、これ以降の展開は不明ですが、これ程の者達が相手となると、豚頭帝は倒されたと見るべきでしょうね」
「もしも生き残っていた場合、彼等を餌に豚頭帝は魔王へと進化している……そうでなかったとしても、彼等の中には魔王に相当する力を付けている者がいるかもしれない。
つまり、貴方達の計画というのは新たな魔王の擁立……といったところかしら」
「流石フレイ。ワタシ達の目論見を見事に看破するとは!」
ミリム・カリオン・クレイマンの三人で計画した内容を見抜いたフレイを褒めるミリム。
しかし、フレイは彼等の計画に呆れていた。
魔王達にはジュラの大森林に対して「不可侵条約」が定義づけられている。それ故に大胆なことをしていた三人に呆れているのだ。
「
「いいじゃねぇか。別に大軍率いて攻め込もうってワケじゃねぇし。強者を引き入れるチャンスだっつーから俺も乗ったんだ。見た限りじゃ豚頭帝よりこいつらの方が美味い」
そういって再び映像を見ていたカリオンが球体の一つを手にしながら言った。
「よし!では、今から生き残った者へ挨拶に行くとするか!」
「「「……は?」」」
ミリムの発言にカリオンとフレイは勿論のこと、先程までクールな態度を示していたクレイマンまでもが動揺してしまった。
しかし、すぐさま気を取り戻したカリオン達がミリムに抗議した。
「いやいやいや。落ち着けよ、ミリム。ジュラの大森林には不可侵条約があるっつってんだろ」
「そうですよミリム。堂々と侵入しては他の魔王たちが黙ってはいません。まずは私が内密に調査を……」
「何を言っているのだ」
カリオンとクレイマンの抗議をミリムは反論した。
「不可侵条約など今この場で撤廃してしまえばいいではないか。ここには魔王が四人もいるのだぞ?」
そう言われた三人の魔王達は漸く気付いた。
条約の可否には提案した魔王と他二名の賛同者が必要なのだ。つまり、この場で一人の魔王が提案して他三名が賛同すれば条約を撤廃される事になる。
「あの条約はそもそも、暴風竜ヴェルドラの封印が解けないように締結されたものなのだ。暴風竜は消えたというウワサだしな。もう必要なかろう?」
そう言われると三人の魔王達が賛同する事になった。
よって条約の撤廃が可決された事で魔王によるジュラの大森林への出入りを自由なものとなった。
その事を他の魔王に知らせる書類を書記した一紙を記したミリムがクレイマンの城から出て行った。
「ワタシはもう行くのだ!またな!!」
そう告げたミリムは窓から出て行った。
────────────────────────────────
ミリムが立った数分後、ジュラの大森林の街。
ガゼル達を迎え入れた俺達はというと、天翔騎士団の来訪時とは違って団欒の雰囲気にあった。
そんな中、俺とリムルはガゼルから来訪理由を聞いていた。
まぁ。聴いた所によると豚頭帝を討伐し、尚且つ街まで作って勢力を拡大している俺達を見極めるためだった。
ガゼルが俺達を見張っているであろうと、ドワーフ王国から追放された時点でオーマは予測していた。
そして予測していた通り、ゼアとアークによって把握していた上で放置していた。
「さて、ガゼル。一つ貴様に提案がある」
「なんだ?」
酒を飲みながらも俺はあることを提案した。
「俺達と盟約を結ぶつもりはあるか?」
「ほう」
俺がそう言うとガゼルの目が鋭くなった。逆に隣で話しを聴いているリムルが「何言ってんだ」という表情をして俺を見ている。
「貴様はあの裁判の時に失った俺達の技術が喉から手が出るほどに欲している。俺達はこのジュラの大森林を支配下に置き、巨大な交易路の中心地とする。後ろ盾となる国があるのは便利だ。故に提案した」
「ふむ……よかろう。貴様の提案に乗ろう」
「いいのかよ。それは魔物の集団を国として認めるということだぞ?」
「無論だ」
俺の提案に乗ったガゼルに驚き尋ねるリムルだが、ガゼルはその言葉に二言はないという笑みを浮かべた。
「これは王としての決断だ。双方の国に利がある」
「では、条約は二つ。一つ・国家の危機に際しての相互協力。一つ・相互技術提供の確約でどうだ?」
「異論はない」
提示した二つの条約にガゼルも異論はないらしい。
明日にでも盟約を結ぶとしよう。
「で。お前達の国の名は何というのだ?」
「そうだな……リムル。良い名前はあるか?」
「俺に振るのかよ!!?」
思いつかなかったからリムルに訪ねてみたが、話を振られた事に驚愕するリムル。
しかし、リムルは諦めてこの国の名前を考えてくれた。
「ジュラ・テンペスト連邦国ってのはどうだ?」
「成る程。盟主である俺達の共通する名を入れた連邦国か。確かに良いな」
俺を初めとした多くのこの国の者達から国名について称讃した。
「良い名前だね、パパ」
「そうか?」
シンシヤもリムルのネーミングセンスを褒めている。
そんな時にガゼルが気になったのか訪ねてきた。
「先から気になっていたが、その者共はお前達の子か?」
「あぁ。俺の息子とリムルの娘だ」
俺が二人の子供を紹介するとお互いに自己紹介をしたようだ。
話は進んでいき、一晩はガゼルの酒に付き合った。
その際に、先の条約の一つである相互技術提供の担当者としてカイジンを選抜し、ガルム三兄弟をその補佐として選抜するため、四人のドワーフ王国追放処分の撤回を申し渡した。その代わりにこの街でのベスターの受け入れを許可する事にした。
その事を伝えたガゼルは頬に少量の汗を流し、目を見開いていた。
恐らく技術提供に関してベスターを送りつけようとでも考えていたのだろうが、彼は俺とリムル達がドワーフ王国へと入国した際に冤罪を掛けたことがある。
しかし、ベスターの腕前はカイジンからも聴いていた通りに優秀な研究者だ。
有能な部下を遊ばせることなど国家としては損失以外しかないからな。
ガゼルとしてもカイジン達を失ったこととベスターの研究者としての実力を埋もれさせる事に損するよりも活かす事こそが会社であり、それを支えるのが国家だからな。
特にカイジンとベスターも国家に関係する職業者だからな。ガゼルとしてはあの一件は大損害しかなかったんだ。その時の損失を補填する処か、鰻上りになるならばこの提案を受け入れる事にしたようだ。
そんな事がありながらも翌朝。
俺達ジュラ・テンペスト連邦国こと「
ドワルゴンの幹部である魔法使いである老婆ことジェーンと朱奈が用意してくれた魔法陣が刻まれた台座に協定の書類を一国ずつ用意されていた。
協定に国主の名前を記載することで、魔法陣がつけられた台座が光り出して、魔法が発動した。
この魔法陣の効果は協定の証を魔法的に保証される事が出来るらしい。
これにより、ジュラ・テンペスト連邦国は初めて世に知られたのだった。
余談だが、
ドワルゴンと協定を結んでから二日後。
一度帰国したガゼルが今度は丸められた布ぎれと一人の女性と共にテンペストへとやってきた。
「来てやったぞリムル、オーマよ」
「おう。連れて来たのか?」
「うむ」
ガゼルが来訪理由を知っているため、確認する様に告げるとガゼルが手にしている布ぎれを放り投げた。
すると、布ぎれの一部がめくれて、その中身が目の前に広がった。
そこにいたのはベスターだった。
「えええっ!?」
「ベスター!?それにペス殿まで……!?」
ベスターを誘拐したように連れて来た事に困惑するリムルとカイジン。
カイジンに関してはガゼルと共にやってきたペスと呼ばれる女性までもいる事にも困惑していた。
「久しぶりねぇ、カイジン。そして、ジュラ・テンペスト連邦国の国主リムル=テンペスト様、オーマ=テンペスト様。我が愚弟が冤罪を押し付けようとしたらしく、姉として謝罪させて下さい。申し訳ございません!」
ペスは綺麗なお辞儀で謝罪をしてきた。
まぁ弁護士を買収して暴行したカイジンの怪我の具合を捏造していたからな……
「謝罪は受け取っておくが、誠意のみならず結果でも果たすべきだと思われますが?」
「その通りですね。私と愚弟はガゼル王の命令のもと、この
「本当に申し訳なかった!!」
ベスターの姉というペスと共にベスターがガゼルからの派遣を受け入れた。
「それでは、まず最初に」
受け入れて貰えた事でペスは満面の笑みを浮かべながら俺達に近づいた。
「是非!是非とも、仮面ライダーについて研究させて頂きたいのです!!!」
まるで新しい玩具を貰って喜ぶ子供のような笑みと瞳を輝かせて俺とリムルにサムズアップしてきた。
「お、おう。それなら」
ペスに案内人を呼ぼうとした時だった。
「それなら、この仮面ライダーを研究したらどうだい?」
俺達の近くに突如として現れたのが、アウだった。
タイムジャッカーを敵対視する俺達テンペスト側はすぐさま攻撃体勢に入ろうとしたが、アウが手を翳したことで時間が停止させられた。
クソッ!?気配すら感知できなかった。
「安心しなよ。用があるのは……」
アウは時間を止めた空間内を歩き続けては手にアナザーウォッチを手にしていた。
「君だよ。ガゼル・ドワルゴ」
アナザーウォッチのボタンを押したアウがそのウォッチをガゼルの体内へと無理矢理入れた。
アナザーウォッチを入れた事で時が動き始めた為、ガゼルが胸を押さえて苦しみだす。
禍々しい時計のベルトが身体を覆い、その姿を新たなアナザーライダーへと変貌させた。
ガッチャード
「今日から君が、仮面ライダーガッチャードだ」
ガゼルがアナザーガッチャードへと変身させられたのだった。
次回~アナザーガッチャード~