2026年も宜しくお願いします。
ジェネシックさん、誤字報告ありがとうございます!
リムルSide──────
エレン達三人の冒険者の案内の上で、俺達はイングラシア王国へと向かっていた。
その道すがらフューズがいるブルムンド王国へと立ち寄り、冒険者登録を行なう事になった。
魔物の生息する森に近いため建物は堅固な造りだ。それに街を警邏している人員もいるし、住民の表情も明るいから良い国だ。
「パパ。とっても良い国ですね」
そう言ってきたのは娘のシンシアだった。
「そうだな」
シンシアやキラには既に人間へと種族転生してるから、シンシアの見た目はただ触覚の癖毛を持つ俺とシズさんに似た子供にしか見えない。
キラも耳に付いているヒューマギアモジュールが無くなっているだけで見た目はオーマに似ている。
シンシアと話しているとブルムンドの自由組合にやってきた。
これは出国する前にシズさんの助言で俺達はフューズの元に行って冒険者用の身分証を貰いに行く事にした。
「よぉっす! フューズ」
「邪魔をするぞ」
「これはリムル殿、オーマ殿」
俺達はシズさんの紹介もあってかすんなりとフューズと会う事が出来た。
そして、冒険者用の身分証を渡された時だった。
「リムル殿、オーマ殿。少し相談なのですが……」
「ん?」
「なんだ?」
フューズが真剣な表情で言ってきた。どうやら俺達の到着を知ってブルムンド王が極秘会談を希望してるそうだ。
これは、人間の国と友好を考えている俺達からすればドワルゴンに続いて二国目の承認が得られるかもしれないチャンスだ。そう思い俺が了承したことで三日後に会合の場を設けられる事になった。
翌日。俺達はブルムンド王国の大臣の一人、ベルヤードさんと合っていた。
執務室で魔国連邦とブルムンド王国の開国条件についての資料を見た。
一つは両国間の相互安全保障。
一つは両国間の相互通行許可。
これが開国の条件だった。
ベルヤードさんの説明を聞いて問題なさそうだと思い俺が了承しようとしたけど……
「待て」
オーマ(分身体)が待ったを掛けてきたんだ。
「オーマ殿。なにか?」
「先から思っていたが、随分と
そう言ってオーマが覇気を出していた。
その質量は魔王種持ち聖人にまで進化したオーマからすれば、魔王カリオンですら冷や汗を流しそうな程の威圧感だ。
異空間で成長している俺達はまだこの威圧感に耐えられるけど、フューズやベルヤードさんには堪えるのは難しいぞ!?
そう思っていると大臣としてのプライドなのか、ベルヤードさんは冷や汗を滝のように流しながらも言ってきた。
「そ……そんなことはありますまい! ブルムンドはジュラ・テンペスト連邦国と対等な関係を……」
「対等だと? 笑止」
オーマが一言一言呟く毎に威圧感が増していく。
オーマの奴、ベルヤードさんやフューズが気絶しないように抑えた状態で威圧してやがる!!
「魔王たる俺に対して出てきたのが
「……っ!?」
「さて、どう落し前を付ける気だ?」
殺意を込めて向けられたオーマの視線を受け止めるベルヤードさんは死を覚悟してるだろうな。
そろそろどうにかしたいけど、国主などの交渉とかはオーマが前世で数多くの場数を行なってきたからな。魔王としての立場と盟主としての立場としても、今のオーマに口出しするのは危ないな。
どうしようかと思っていると誰かが入ってきた。
入ってきたのはまるで絵本から出てくる様な王様と綺麗な王妃様だった。
「こ……っ!?」
「ブルムンド王に王妃様!?」
フューズとベルヤード慌てて立ち上がり姿勢を正して頭を下げていた。
オーマと一緒に俺達も立ち上がった。
「初めまして、魔王オーマ=テンペスト殿。ジュラ・テンペスト連邦国盟主の一人、リムル=テンペスト殿。ワシがブルムンドの王である」
「お初にお目に掛る、ブルムンドの王よ。俺が最近魔王に就任したジュラ・テンペスト連邦国盟主が一人、魔王オーマ=テンペストだ。こっちがもう一人の盟主、リムル=テンペストだ」
オーマの自己紹介に続いて、俺の自己紹介も済ませると話に入った。
「我が大臣が失礼をしました。ブルムンドはジュラ・テンペスト連邦国と敵対する気はない。ただ、我々人間の国はただ魔物を恐れるだけで済む話ではない」
「当然だな。北の武装国家ドワルゴン。中央のジュラの大森林。南の四人の魔王達の支配領域が間にあるとはいえ、人間国家からすれば侵略国家である東の帝国の脅威は小国である貴国は懸念すべきことだ。この条約にも理解は出来る。だが、俺達を見下す免罪符にはならんぞ」
オーマの視線を正面から受け止めるブルムンド王。
「オーマ殿の仰る通りですぞ。ですので、我が国から何か賠償したい」
ブルムンド王がベルヤードさんの発言を聴いてオーマと王妃さん以外の誰もが驚いていた。
特に問題を起こしたベルヤードさんは自身の発言のせいで自国の国王が責任を取ろうとしてるとなったら、居たたまれない気持ちだろうな。
「そうか。聞くが貴国との協定締結を考え、街道の舗装はフューズから話を聞いているのか?」
「勿論じゃ。その提案にはワシも妃も喜ばしく思う」
ブルムンド王の発言に王妃さんも笑顔で頷いた。どうやら本当みたいだな。
「ふむ。では、その街道にに必要経費に関して、貴国に7割持って頂く。それが貴国の大臣による失礼の賠償として要求する」
「なっ!?」
フューズとベルヤードさんがオーマの発言に驚いた。ハッキリ言って俺も驚きすぎて言葉も出なかった。
「わかりました。承りましょう」
「こ、国王!?」
「静まれベルヤード。其方が口を出すことは許さぬ」
オーマの要求を受け入れたブルムンド王に驚くベルヤードさんが口を挟もうとしてたけど、王妃さんが睨み付けながらそう言ったので、黙るしかなかった。
「えぇっと……こっちが要求した側だけど、本当にいいんですか?」
俺は簡単に要求を呑んだブルムンド王に確認するためにそう訪ねた。俺の意見と同じなのかベルヤードさんやフューズもブルムンド王に視線を向けている。
「勿論じゃ。友好な関係を築こうという時に、相手を見下すなど言語道断。安全な街道の経費だけで許して頂けるのならば安いものである」
ブルムンド王の上司としての責任の取り方か。前世の上司に欲しかったな……
俺が前世の上司のことを思い返していると、オーマはブルムンド王の責任の取り方に満足したのか今まで放たれていた威圧感が無くなった。
「いいでしょう。それでは東の帝国の侵攻の際は、
「無論。魔国連邦が西方聖教会の被害を受けるときにはブルムンド王国も積極的に協力しようぞ」
そう言って手を差し伸べてくるブルムンド王の手を握ったオーマ。その後はオーマがフューズに頼んで呼んで貰っていた片足が義足の冒険者ジーギスさんに魔国連邦の特産品である
俺達は条約締結を結ぶ日を早めて、翌日に条約が結ばれた。
条約が結ばれた後の次の日。
冒険者に興味を持ったシンシアがエレン達と冒険したいと言い始めたので、シンシアとキラをエレン達に託した。
エレン達に頼むと「喜んで!」と言ってエレンはシンシアとキラを可愛がっていた。
「それじゃあパパ! 私達行くね!」
「おう! 気をつけてな!」
エレン達の冒険に付いていったシンシアとキラを見送った後に、俺達はブルムンド王国を出国してシズさんの案内の元、数日掛けてイングラシア王国へ入国したのだった。
そして、シズさんやエレン達が所属する自由組合の本部で手続きをした俺達は、すぐさま
案内してくれた人になぜかオーマとウォズが警戒してた。なにかあるのか?
そう疑問に思いながら待合室で待っていると自由組合総帥がやってきた。
見た目は10代後半の若い青少年って感じの男だ。
「久しぶりユウキ」
「お久しぶりです、シズ先生。フューズからある程度は話は聞いてます。イフリートと分離されたとか」
シズさんが自由組合総帥の神楽坂優樹と話始めた。
それにしても……オーマは先からなんか猫被っていそうな気がするけど、どうかしたのか……?
そう思っているとユウキが俺達に話しかけてきた。
「お二人がリムルさんとオーマさんですね。挨拶が遅れました。僕が
ユウキが俺達に頭を下げてきた。
「初めまして、魔国連邦の盟主の一人リムル=テンペストという。俺のこともリムルと呼んでくれ」
「同じく、魔国連邦の盟主のオーマ=テンペストだ。俺に関しては"
「ま、魔王ですか……!?」
オーマが魔王だと知って驚くよな。お茶菓子を持ってきた案内人の人も驚いているみたいで、無表情だった顔が少しだけ驚いた様子を見せている。
「フューズに聞いてはいましたが、リムルさんはスライムだと……」
「あぁ。これか?」
ユウキが気を取り直すと俺がスライムだとフューズから聴いていたみたいだ。
スライム姿になるとユウキはまたも驚愕した。
「噂の魔物の国を興した一人がまさか……その……」
「スライムだとは思わなかったって? でも俺の方も驚いたよ。シズさんの話じゃ20代後半だって聞いてたけど……」
「ああ。僕は異世界からの転移者なのですが、この世界に来た時、能力を獲得できなかったんです」
「ほう。能力を獲得できてない」
オーマが何か気になるような物言いで呟いた。
「え? えぇ。そのせいなのか年齢と見た目が違ってしまってるんです」
ユウキも戸惑いながらも応えた。まさか見た目と年齢が異なるような状態にもなるなんてな……
「その代わりなのかなのか、身体能力は異常に発達しまして、肉体の清張もそこで止まってしまったようなんです。そのせいにするのもなんですが、なかなか大人の男としては見てもらえず、今だに女性と付き合ったこともなくて」
ほほぅ!?
「いやー。そうかね? 残念だったね、それは。なーに、その内いいことあるさ?」
スライムスマイル全開で笑った。
「まぁ、兎に角。俺は"悪いスライムじゃないよ"」
「ぶっ!?」
ユウキはぷるぷると震えながらも笑い堪えていた。
「…………っ。そのネタ……!!」
「あぁ。俺達も元ネタを知ってるよ」
「ということは、リムルさんとオーマさんも……」
「元日本人だ」
俺とオーマが元日本人だと言っても魔物に転生した元日本人に会ったことがないユウキからしたら疑うよな。
そう思って、以前から魔国連邦でちょいちょい増やし始めている物をユウキに渡した。
それは地球の作者達の創作物を魔国連邦で創った紙に複写した漫画だ。
その漫画を見ると、ユウキの目がキラキラと輝いて漫画を読み漁っていた。
「ありがとうございます師匠!! 先程までの無礼の数々解雨かご容赦ください!!」
出した漫画を数本読み終えたユウキは俺達に土下座をして感謝と謝罪をしてきた。その光景にシズさんが苦笑していて、ウォズとオーマが無表情になっていた。
たかがスライムから師匠になった。漫画って凄いなと地球にいる作者さん達に敬意を表した。
「それでユウキ。あの子達は今どうしてるの?」
「シズ先生が離れてからは他の教師達にも頼んでみたけど、シズ先生以上の期待をされても困ると断られました」
ユウキは自分の不甲斐なさを痛感しているような態度で言っているけど……
「ちょっと待った。いくらシズさんと比べられちゃ敵わんっといっても無責任すぎるだろ」
「引き受ける者がいない理由はそれだけではないんです」
そう言ってユウキが先程からお茶菓子などを持ってきてくれている従業員さんから渡された。
資料を見ながらもユウキの話を聞いていた。
生来能力を持たない人間は能力を獲得するだけでも苦労しており、強大な魔物に対抗できるほどの能力を得るものは簡単には現れない。
逆に魔物は強靱な肉体と数多の能力を使う脅威な存在と見られている。
そんな脅威に毎日のように襲われる場所もある。
襲撃によっては被害規模も大きい。国家としては問題軽視する事は出来ない案件だ。
そこでこの世界の人間はたった一人の英雄を生み出すことにしたらしい。
それが、異世界人の召喚術。
異世界からこの世界へとやってくる際に魔素が異世界人に大量に取り込まれて、強力な
しかもヴェルドラが自身を封印した勇者が召喚者で、召喚者は召喚主に逆らえないように強力な呪いを魂に付与されて召喚されている事から、明らかに人扱いしていない。
「国がらみの誘拐じゃねぇか。標的になった方はたまったもんじゃないな」
「人間とはそう言う者だ。問題を解決したいが、自分達よりも強い力を手に入れられる方法があるなら、楽な方に逃げて利益を得ればいい。異世界人には強力な力を得られる選ばれた存在だとでも言って持ち上げればいい。異世界人が死んでも更に召喚しなおせばいい。不要になれば殺すか、奴隷として扱えばいい。大義名分さえ手に入ればどんな手法を用いても赦されるという腐った考え方しか出来ない屑共が国の上層部を担っているんだろ」
オーマがこの世界の国家に対して容赦のない辛辣な言葉を告げた。
「お、オーマさんって凄く言いますね」
辛辣な発言をするオーマにユウキが苦笑している。
俺やシズさんも苦笑してるから気持ちは分かるぞ。唯一人ウォズだけは誇らしくしてるけど……
ウォズに呆れていると、オーマが天に指差した。
「祖父が言っていた。強きを助け、弱きをくじけ。強い者だけが生き残ればいい。国家規模の誘拐しか出来ない弱者の国が滅ぼうと問題ない」
国家規模の誘拐する国の上層部に苛つくのは俺も同じだけど、国ごと滅ぼす気か!?
「お、オーマ。もしかして国を滅ぼそうと動こうなんて思ってないよな」
「必要なら滅ぼす」
……マジかぁ。オーマの奴、本当に総理大臣だったのか疑問に思う程の躊躇の無さだぞ。
「流石だ。我が魔王。それでこそ王の器」
「お前は何感心してんだよ!」
感心するウォズにツッコミを入れた後、俺は名簿を読んだ。
五人の異世界人の名前と重要な特記事項が書かれていた。
その特記事項は「全員、推定余命一、二年」だった。
これがシズさんが言っていたことか。
「推定余命が一、二年……か。シズさんが言っていたことだよな?」
「うん。私もイフリートがいたお陰で長く生きながらえられたけど、私と同じで子供が召喚されると、魔素を能力に変換できずに死んでしまうの」
「だったら、魔素を効率よく消費できるようにしてやればいいだけだろ?」
オーマが何ともないような発言をした。あまりの何の問題もないという簡単な発言に俺がツッコんだ。
「阿呆か! それができたらシズさん達は悩んでねぇだろ!!」
「お前こそ馬鹿か? 既に同じ召喚者で長く生きている異世界人が目の前にいるじゃないか」
オーマが俺に呆れたように言ってくる。
誰のこと言ってるんだ。オーマの奴……
俺が何も気付いてないのか、本当に呆れたような様子を見せていた。
「はぁ……本当に気付いてないなら後で教えてやる」
オーマの呆れの籠った発言にイラッとする所があったけど、兎に角。俺とオーマはシズさんと一緒に失敗した勇者召喚で喚ばれた子供達の教師になる事になった。
ユウキの計らいで教師個室付きの寮に住み着きながら翌日シズさんが担当しているクラスに挨拶しに行ったのだった。
「ちーっす。今日から君達の担任になる──────」
そう言って教室に入ると、茶髪の子供が俺に向けて勢い良く炎纏った剣を振るってきた。
「どぉりゃぁぁああっ」
俺はその場から回避したけど、オーマは指二本で剣を掴み、消火まで終わらせた。
「はぁあっ!?」
「全く……教育がなっていないな。ウォズ、槍を下ろせ」
オーマが攻撃してきた子供に呆れながらもウォズに注意した。
そのウォズは子供の後ろに回り込んでいて、槍モードのジカンデスピアの鋒を向けていた。鋒から濃厚な殺意を乗せて向けていることがわかる。
それが伝わってるんだろうな。子供の方も冷や汗を大量に流していた。
「下郎。我が魔王の寛大な心に感謝しなさい。次奇妙な事すれば死を覚悟しろ」
「は、はい……」
子供はウォズからの忠告にオドオドしながらも返事を返した。
「ケンヤ。やってきた先生にそんな事したらダメでしょ!」
入ってきたシズさんが叱っていた。
攻撃してきたケンヤという子供と他の生徒達は、シズさんの姿を見るや歓喜と涙目になりながら彼女へと走っていく。
『シズ先生!』
「ただいま、みんな」
シズさんはまるで聖母のように子供達を受け入れていた。
十数分かけて子供達を宥めたシズさんの紹介で俺やオーマが新しい教師だと伝えられた。
因みにウォズやシズさんは補助として動いて貰うことになっている。
「二人は私よりも強いんだよ」
「えぇ!? 本当かよ……っ!?」
ケンヤが俺とオーマがシズさんより強い事が信じられないのか懐疑的な発言をすると、ウォズが槍の刃筋をケンヤの首元に突き付けた。
「下郎。何か言ったか?」
「い、いえ……なにも言ってないです」
ウォズからの殺気と武器に怯えたケンヤは、何も言ってないと訂正した。
その言葉を聞いて武器を収めるウォズ。
「け、ケンちゃん……」
黒髪の少年___リョウタ・セキグチが心配そうに呟いており、他の子供達もウォズに少々恐怖していた。
「まぁ、君達が信じられないのも仕方ない。俺かリムルが君達五人と模擬戦を行なう。どちらと模擬戦するかは君達自身で決めるといい。10分以内に俺かリムルに降参させた子には一つ、願いを叶えてやる」
「願いを叶えるって……」
「どうやってそんなこと……」
「願いを叶えることなど俺の前では造作もないぞ。地球に帰りたいとそう願えば叶えるし、死なない肉体を求めれば不死が得られるということだ」
オーマが自信満々にそう言うけど、子供達は難色を示した。
オーマの能力を知らないと詐欺師にしか見えないよな……
「信じられなさそうだな。だったら……」
オーマが片手で狐型のハンドサインをすると轟く鐘の音が鳴り響いた。鐘の音と同時に水色のエネルギー体が現れて、形を創り出していった。
エネルギー体が消えると、それは十冊以上の漫画本へと変わった。
「うぉおっ!? すっげぇええ!!」
「漫画本だ!」
「ちょっと、何よコレ!」
「いったいどうやったんですか!?」
「……面白い」
子供達は興奮して漫画本に手を伸ばしてるけど、オーマが張った結界に阻まれて取る事が出来なかった。
「これでわかったろ? お前達の実力を持って俺かリムルに勝ってみせろ。勝てなかった場合はこの漫画本は没収だ」
『えぇ~!!?』
オーマの発言に子供達が文句を言っているけど結局、俺とオーマと子供達との模擬戦が行なわれた。
初めの相手はケンヤ・ミサキ。さっき俺達に剣を振り下ろしてきた異世界人だ。
その相手は俺だ。
ケンヤの相手は俺だ。
「へっ! 俺の必殺技を慌てて
そう言って剣で斬りかかってくるケンヤの攻撃を簡単に回避し続ける。
全然当たらないから痺れを切らして剣に炎を纏わせて、炎の斬撃を繰り出してきた。
その攻撃も簡単に回避していくけど、随分と魔素の消費効率悪いな。
「シズさんに憧れるのは分かるけど、扱い慣れてないなら炎は止めとけ」
「五月蠅い! シズ先生の炎は凄いんだ!」
それはイフリートを宿したシズさんだからこそなんだけどなぁ……
そう思っていると十分が過ぎたので、俺の勝利だ。
「くそぉ……覚えてろ!」
涙を流しながら待機してる子供達の元に戻った。
次はオーマとクロエだった。
にしても、クロエを見ると何故か身体が反応するんだよな……ヴェルドラが反応してるのか?
そう思っていると、クロエが本を持ち上げながら詠唱して水の元素魔法を使った。
"
水の檻に囲まれたオーマ。その内側には水流で出来た水の刃が無数に展開されていた。
「降参しないと死んじゃうよ?」
「そうでもないぞ」
大人しそうな子が恐ろしい事を言っている!? クロエ、恐ろしい子!!
クロエの冷酷な一面に衝撃を受けていると、オーマが内側の水流の刃に触れた瞬間に、無数の水の龍が合わさったような巨大な竜となってクロエの周りを囲んだ。
その竜は漆黒で、まるで光を呑み込むブラックホールのような黒さだった。
"
「魔力操作は悪くないが、魔法の発想力が足りないな。相手を囲んで攻撃の手を出させないようにするにはこれぐらいがいいぞ」
そう言ってオーマは"
そして、クロエの頭を撫でた。
「だが、魔力操作は良かった。もっと精進するといい」
そう言って二人の模擬戦はオーマの勝利で終わり、他の三人も模擬戦を終えた。
結果から言って俺とオーマの勝利だ。
「これでシズさんの言っていた事を信じてもらえたかな?」
俺がそう言うと子供達は俺達を信じてくれるようになった。
「……オーマ先生。魔法を教えて!」
大人しそうなクロエがオーマにそう言って手を握って引っ張った。
オーマはなんか驚いていた。
大人しそうなクロエが積極的に話てきたのが意外だったんだろうな。
そう思っていた俺だけど、オーマは別の思いだった。
俺やシズさんも気付かなかった。オーマの瞳に灯る深刻な感情を……
次回~恩人~