友達
世界が魑魅魍魎に埋もれてしまっていた。
大型の蟹や三つ首の犬や数多くの怪人達が人々を襲っていた。
そんな中、とある場所で一人の高校生ぐらいの子が六人の怪人の前に歩いた。
その風貌はまるで霸道を極めた王の風格だった。
青年の腰には黄金のベルトが付けられていた。
彼が雄叫びの如く叫ぶと、大地が独特な時計の形で陥没していた。
青年がベルトの両側を押すと鐘の音が轟いた。
すると、マグマの様なものが陥没した大地に流れ込んでいく。
マグマが青年へと集約していき、彼の身体を覆うように無数の時計のベルトが纏わり付いて、その姿を変えた。
その姿は一言で言えば「悪趣味な高級時計」のような印象を与えそうな程の華美が過ぎる装飾を持つ全身が黒と金で統一されていて、眼の部分に赤く「ライダー」と描かれていた。
変身した青年から放たれた波動が、彼の目の前にいる怪人達を襲う。
波動に襲われた怪人達は後退る。物影から見ていた俺もその波動に襲われて顔を守る様に腕で覆った。
「我が魔王……!?」
そんな言葉が聞こえたので、腕をどけてみると、そこには何処かの制服を思わせる服装にマフラーを身につけ、黒い本を持った美青年がいた。
「ウォズ……祝え」
「は?」
「へ?」
変身した彼の言葉に私も素っ頓狂な声を出してしまった。
「祝えと言っている……!」
そう言われたウォズとやらは移動しながら告げた。
「……祝え!時空を超え、過去と未来をしろしめす究極の時の王者!
その名もオーマジオウ!
歴史の最終章へたどり着いた瞬間である!」
そう言うと、目の前の怪人達の中心にいるマゼンタ色の怪物が笑った。
「フフフ。フハハハハハハハ!!俺はこの時を待っていた!このために、常磐ソウゴを追い詰めてきたのだ……今こそオーマジオウの力を貰うぞ!」
そう言って怪物が両手を変身した青年へと向けると、何かのエネルギーで出来た糸が付着して、そこから黄金色の力が怪物に吸い込まれていた。
「素晴らしい力だ!この力さえあれば妹を凌駕できる。真の王位を継承することができる」
そう言う怪物だったが、突如、身体中に火花を起こしては吸収が止んだ。
そして力を奪われていたオーマジオウが無理矢理繋がっていたエネルギーを吹き飛ばした。
「お前如きが、俺の力を受け止めきれるとでも思ったか?」
そう言う彼の周りには色や形が千差万別な無数の時計が現れた。
「俺の力は……全てのライダーの力だ!」
そう言うと、周りに現れた時計達が全て、オーマジオウへと集中していった。
正しく、自身の力だと言わんばかりに……
それを見た怪物が周りの怪人達にオーマジオウを襲わせるが、オーマジオウはたった一撃で襲い来る全ての怪物を葬っていく。
「凄い……」
余りの凄さに思わず口遊んでしまった。
「何という力だ」
「侮ったな。ライダーの歴史を……!」
オーマジオウを倒せないと判断してなにやら銀色のオーロラのカーテンを出現させて逃げようとする怪物だったが、その後ろでエネルギーで出来た剣で怪物の腹を貫き刺した白色を主とし三日月模様の仮面を付けた女性だった。
「あなたの様な王はいらない!」
「貴様……最初から……俺の隙を狙って……」
刺されたことで苦しんでいる怪物は、我慢して背後にいる女性を紫色に輝くエネルギーを纏った攻撃で殴りつけた。
すると女性は壁にまで吹き飛び、爆発した。
「!?」
「ツクヨミ!!」
オーマジオウが怒りを顕わにベルトの両側を押した。
黄金と黒と赤色のエネルギーを纏ったあオーマジオウが怪物へと飛び込んで右脚を向けた。
黄金のキックと描かれた文字が怪物の周囲を囲いこみ、そして女性を殺害した攻撃でオーマジオウに対抗しようとする怪物の右手に右脚をぶつけた。
黄金のキックの文字が右脚に集約して激しいエネルギーの競い合いが起きたが、すぐさまオーマジオウのキックが怪物の導体を捕えて、吹き飛ばす。その時、何故かわからないが、何か時間が止まったような感覚を覚えた。
「流石だ。我が魔王……世界は救われた」
そう言ってウォズは片膝を着いて忠義を示すような格好を取った。
「改めて忠誠を誓おう。君はこの世界に君臨する。未来永劫に渡って……」
そういうウォズにオーマジオウは答えた。
「そうはならないよ」
否定したのだ。
ウォズもその返答に驚き、立ち上がった。
「何故だい?最強王者になったのに」
「この時空を、俺が破壊するから」
「え?」
オーマジオウの言葉にウォズだけでなく、俺も驚いていた。
「その前に」
オーマジオウが俺が隠れている方へと視線を向けた。
「我が魔王……彼は?」
「俺と同じく、ジオウの力を持った別時空の住人だよ」
俺に手を向けてきたオーマジオウ。彼から放たれた波動が優しく俺を包み込み、オーマジオウ達の前へと連れてこられた。
「この時空を破壊して、君を元の時空に戻す」
「あの……」
そう言うオーマジオウに俺はどうしても聴いてみたかった。
「時空を破壊する必要なんてあるんですか?」
「……あるよ。君のためだけじゃない。この世界を救えたのは、ゲイツや……ツクヨミや……ライダー達、皆のおかげだ。
皆のいない世界で、俺一人が王様になったて仕方ない」
先程までの彼は正しく霸道を極めた王。
しかし、今の彼は霸道ではなく、王道の王だった。
「創造の前に、破壊が必要だから……歴史を創り直す」
「また……王になれるんですか?」
「なれるよ。なんだかいける気がする」
確信めいたその発言は、正しく王様だった。
「時計の針はさ。未来にしか進まない。グルッと一周して元に戻った様に見えても未来に進んでるんだ」
俺は言葉が出なかった。
「俺にも出来るんでしょうか?貴方達のように、
「出来るよ。なんだかいける気がする」
そう言って、オーマジオウから放たれた黄金色のエネルギーが世界を包み込んでいく。
壊された町などが新しく創られていった。
そんな光景を見ながら、俺の意識が薄れていった。
────────────────────────
「……生。起き……起きて下さい先生!」
そう言われて、暗くなっていた目の前がハッと明るくなった。
「……すまん。居眠りしてしまったようだ」
「いえ。最近お疲れでしたから、本日は早退してはどうでしょうか?」
そう言ってくるのは眼鏡を掛けたザ・女秘書と言わんばかりの格好と容姿をした女性だった。
「そうだな。お言葉に甘えるとしよう」
そう言って帰り支度をしているのは茶髪に少々日焼けした肌色をしている70代男性だった。
男はスーツを綺麗に着こなしており、左胸の所にバッジが付けられていた。
「
「お疲れ様、浅香さん。お先に失礼するよ」
サラリーマンが持つバックを手にして扉に手を掛けて開いた瞬間だった。
ドゥン!
何か大きな騒音が鳴り響いた。
すると胸の辺りから鋭い痛みが走り続けていた。
開いた扉の向こうには煙を放っている拳銃を向けている警備員の姿をした者がガタガタと震えながら構えていた。
ジンワリと痛みがある場所から熱くなってきた。
そして、耐えていた脚に力が入らず倒れてしまった。
「刻統先生!?」
浅香さんの慌てた声が聞こえる。
口から何か鉄臭い味が込み上がる。
まさか、死ぬのか。
そう思いながらザワザワと雑音が聞こえる。
恐らく死ぬんだろうな。総理大臣として国のために、民のために働けただろうか……
AIやパソコンのようにバックアップできれば、まだ国民のために、民のために働けたのになぁ……
[確認しました。魂を
続いて、<令和
人間の悪意や善意もちゃんと理解し、成長できればAIだろうと人と変わらないだろうなぁ……
[確認しました。スキル<衛星ゼア>と<衛星アーク>を獲得……成功しました。続いて<衛星ゼア>と<衛星アーク>を統合……成功しました。
【
なんだろう。この声……
まぁ、いいか。今度は魔王の様に厳しく、勇者の様に慕われる存在になりたいな。
【学習完了。特殊能力<
もう意識が無くなりそうだ。
手伝ってくれた皆に感謝しながら、目を閉じた。
【告。魂を機械人間へと転生を申請】
[<演算者>からの申請により、転生を開始します]
その言葉だけが聞こえた。
────────────────────────
重かった瞼が軽くなったな。
そう思い、閉じていた瞼を開けた。
そこは洞窟だった。
「ここは……一体どこだ?」
それに何か空中に奇妙なモノが漂っている。
【告。漂っているのは魔素と呼ばれるものです】
そう脳内に突然声が聞こえた。その声は意識が消える前に何度か流れていた声だった。
誰なんだ?
【解。我は特殊能力<演算者>の効果だ。能力が定着した為、速やかな反応が可能となりました】
なんか二重の声に聞こえるんだけど……
【解。
仮面ライダー!?
マジか。死ぬ直前まで見ていた人物も確か……
【是。主人の記憶から力の干渉を確認。仮面ライダーオーマジオウの影響で<仮面ライダージオウ>の獲得を確認しました。仮面ライダージオウに変身が可能】
……マジ。
あまりの出来事に驚いていた。
それに……
「ジオウ。あの夢に出てきた彼と同じ名前じゃないか……」
そう思いながら彼の事を思い出していた。
そんな時だった。
『聞こえるか?小さき者よ』
「!」
誰の声だ?
【解。近くに膨大な
<演算者>に頼んでその場所まで案内してもらった。
そこにはとても奇妙な光景が広がっていた。
なんと……そこには特殊な空間内にいるドラゴンと空間外にいるスライムが親しく話し合っているという状況下だった。
『む?もう一人いるな。おい!そこにいる小さき者よ。お主も出てこぬか』
「!?」
岩陰に隠れているにバレたのか!?
『おい!さっさと出てこぬか!』
ドラゴンから催促されたため、やむなく現れる事にした。
『ほう?見慣れぬ種族だな。新しい種族か?』
『耳の部分以外は人間の姿だな。変わったイヤホンを付けてるな』
イヤホン?それにスライムが喋った!?
【解。スライムの魂を解析完了。スライムは元人間の可能性が高いと思われます】
どうやって話してるんだ?
【解。魔素によってスライムのように視覚や聴覚のない存在でも
そうなんだ……
それにしても、元人間か。もしかしたら……
「なぁ、そこのスライム。何か面白いネタある?」
そう訪ねた。
ネタと言われて何やら驚く様子を見せるスライム。
『コホン……初めまして、俺はスライム!悪いスライムじゃないよ!』
スライムの言葉にツボってしまった。
「そ、そのネタ……やっぱりか……」
笑いを堪えるためにビクビクと振るえる身体をどうにかして押さえ込もうと必死になっていた。
『え?このネタが通じたっ!?』
俺が笑いを堪える姿を見て驚くスライム。
『お前、もしかして……異世界人なのか?』
そう聴いてくるスライムに漸く笑いのツボから脱出できた俺は返事した。
「あぁ。
『マジか!!?』
スライムは眼を飛び出しながら驚いていた。
肉眼はないが……
『おい。さっきから二人で話すでない』
そんな俺達にドラゴンが話しかけてきた。
「そう言えば、このドラゴンはなんだ?」
俺がドラゴンに指を指して質問した。
『よくぞ聴いた。我が名は暴風竜ヴェルドラ。この世に4体のみ存在する"竜種"が1体であるクァーハハハハ!!』
「五月蠅い!」
あまりに笑い声が五月蠅かったので、五月蠅いと言った。
『なっ!?う、五月蠅いとはなんだ!?』
「五月蠅いを五月蠅いと言ったまでだ。何か問題があるのか?」
『ぐぬぬ……』
ヴェルドラは何も言えずにいた。
『そ、それで……希な生まれ方をしたってどういうことですか?』
そうスライムがヴェルドラに尋ねた。
『うむ。転生者はたまにうまれてくるし異世界人も時たまやってくるが、異世界から転生者は我の知る限り事例はない』
『異世界人って自分以外にもいるんですね』
『うむ。ヤツらはこちらの世界に渡る時、望んだ能力を得るらしいぞ』
そうなると俺が得た仮面ライダージオウや<演算者>も世界を渡った影響なのか?
そう思っていると<演算者>が答えた。
【否。主人の全
そう言われた。
まさか、あのオーマジオウ……いや、常磐ソウゴさんが必要な能力を与えたのか?
【是。その可能性が特に高いと思われます】
態々そんなことをした理由っていったい……?
そう考えていると、スライムから話しかけられた。
『お前もヴェルドラと友達にならないか?』
「友達?」
『あぁ。多分こいつは人間が好きなんだよ。だから俺達と友達になろうぜってこと』
『なっ。ス、スライムと機械人形の分際でこの暴風竜ヴェルドラとトモダチだと!?』
一々声高らかに喚くな。
にしても友達か。嫌な理由などないから別に構わないな。
「嫌なら嫌だと言えばいいだろう」
『馬鹿お前!誰も嫌だなどと言っておらぬだろうが!!』
『え、そう?じゃあどうする?』
『そうじゃなぁ……どうしてもと言うなら考えてやってもいいんだからね……』
誰得なツンデレなんだ?
況してや300年も封印されている竜がツンデレを知っているのか?
ん?なんで300年前に封印されている事を知っているのかって?考えこみながらも話は全て聴いているし、<演算者>が記録してくれている為、聞き逃しは教えて貰えばいいだけだ。
ということで、話はついていけている。
『どうしてもだ。決定な!』
「嫌なら絶交。ただ封印され続けている日々を謳歌するだけだ」
スライムの言葉に続くように冷たく告げた俺の言葉に本気だと感じたのかヴェルドラが呼び止めた。
『ちょっ……し、仕方ないな。我が友達になってやるわ』
『おう!よろしくな』
そうヴェルドラの爪とスライムボディー、そして俺の手が触れ合った。
触れ合った俺達の間に光が溢れた。
この時、世界最強種族の竜と世界最弱種族のスライム、そして新しい種族たる機械人間が友達となった瞬間であった。
次回~"預言者"たる家臣と名付け~