分身体の俺がリムル達と一緒にイングラシア王国で教師をしている間、本体である俺は魔国の運営を行なっていた。
リムル達が出国してからは平和な毎日だった。
そんな中、白老達に鍛えてもらっていた一誠の一件が解決した。
リムル達がイングラシア王国に向かった直後に件の彼女と決着を付けたのだ。
結果から言って、一誠の勝利だった。
レイナーレは堕天使の持つ翼で飛び立とうとしたが、
一誠は紫苑レベルの胸部フェチという超重度のドスケベだったが、それ以外の精神性は常識的であり、この世界で生きていく事とレイナーレとの決着を付けるという目的のために、まっすぐ努力を厭わない真面目さを見せた事は紅丸や白老も驚いていた。
「あのイッセーがここまで育つとは思いませんでした」
「本当ですな。ヨウムと同じ仙人に進化したようですじゃ」
白老の言った通り、一誠はヨウムと同じく仙人へと進化を果たしていた。
そんな一誠は10秒で倍加一回分を《赤竜帝の籠手》と<増加者>で二回分に増やすという戦闘スタイルが、「赤竜帝の鎧」を纏ったことで10秒という制限を一時的に無くし、10回分の倍加×2を実施したことでレイナーレを有に超えた身体能力と魔力で凌駕した。
一誠の拳がレイナーレの放つ光の槍を打ち消し、彼女の身体へと深く突き刺さり、大ダメージを与えた。
「・・ぁ・・・がはっ・・!」
既に瀕死に等しい一撃を受けたレイナーレはまともに会話もできなかった。
「かけてやれ」
「はっ!」
山兜喇が上級回復薬をかけてダメージを治療した。
しかし、完全回復薬じゃないからダメージを完全に消し去るわけじゃない。ただ敗者が勝者からの意見などを聴くためだけに回復薬を投与した。
上級回復薬をかけられたレイナーレは倒れ伏していた上半身を起こして一誠を恐怖が入り混じった瞳で見つめていた。
「さて、堕天使レイナーレ。一誠の勝利をもって、貴様の処罰は一誠の意志で決まる。一誠、お前はレイナーレに勝利した。こいつの処罰はお前が決めろ」
「えっと・・」
俺にそう言われて一誠は戸惑っていた。
この世界では生きることに必死な人間達が殆どだ。しかし、異世界人の殆どがそうではない。
基軸世界ですぐさま殺し合えるほどの精神性を持つ者が必ず現れるわけじゃない。
シズさんや子供達のようにだ。
いくら白老に頼んで一誠を鍛えたとはいえ、精神まで戦士として育ったわけじゃない。
戸惑うのは当然だ。
それだけじゃない。
目の前にいるレイナーレは偽りとは云え、一誠の恋人になった女だ。
一誠は彼女に楽しんでもらうために全力でデートプランを考えてあげたほど気配りができる男だ。
そのことを知った男性人は一誠の変態部分を除けば好感を抱いたほどだ。そんな一誠を欺し、殺害を企んでいた元凶に対して男性人は自分事のように怒り心頭状態になっている。
そんな男性人からの強烈な殺気を向けられて死の恐怖でも感じたのだろう。
レイナーレは誰もが最悪の行動を取ってきた。
「助けて、一誠君!」
「っ!?」
レイナーレは高い露出度から一変して地球ではよく見た事がある女性服に替わっており、雰囲気までもがお淑やかなものへと変わっていた。
「ねぇ、これを見て!」
そう言ってレイナーレは片手に付けたシュシュを見せつけた。
「あなたがくれたプレゼントよ。私、大事に持っていたのよ!」
必死になってシュシュを大事にしていると告げてはその表情は涙を浮かべて泣き落としをしていた。一誠は戸惑いながらもレイナーレが夕麻として活動していた頃の事を思い出しているのだろう。
そう思っていると彼女はこう告げた。
「ねぇ、助けて一誠君!一緒にあの
「・・・・っ!?」
レイナーレの発言に紅丸達がレイナーレに殺気を向けており、血の気の多い紫苑を初めとした者達が各々の武器を抜き放とうとしていた。
「オーマ様になんと無礼な・・・!」
「オーマ様。今すぐに処罰を・・!」
紫苑や蒼影がそう言ってくるが俺は一誠に視線を向けた。
一誠は俯き、握り拳が震えていた。
「一誠。決めるのはお前だ」
振るえる一誠にそう告げると、一誠は俺に身体を向けた。
「一誠君!協力してくれるのね!!」
一誠を人質にするか、または盾代わりにでもするつもりなのだろう。
そう思っていると一誠が俺に言ってきた。
「後は、お願いします」
「・・・・え?」
一誠がそう言うとレイナーレに背を向けて離れていく。
「ま、待って!一誠君、私はあなたのこと・・・」
レイナーレが醜くも、是が非でも一誠を仲間にして人質か盾として使いたいようだが、一誠は既にレイナーレを助けようなどと考えていない。
「黙れ」
重たく冷たい冷徹な言葉を呟いた。
言葉に込められた感情の重さにレイナーレは声を上げることすらも出来なくなった。
「これ以上、一誠には悪影響だな」
俺はジカンギレードを取りだして心臓に突き刺した。
レイナーレは悲鳴を上げて苦しむ。
「心臓を貫いた。もって5秒といったところだな。さて、改心するというなら癒やしてやるぞ」
「お、お願いします!魔王オーマ様!!どうかお情けを・・・!」
口から血を流しながらも命乞いをするレイナーレに俺は剣を抜いた。
「心にもないことをほざくな。嘘つきの行く末は地獄だ」
「そんな・・いやだぁぁあああっ!!?」
ジカンギレードに<暴食者>を集約して首を斬り落とした。すると彼女の首が落ちると同時にその身体が<暴食者>によって身体中を食い尽くしていった。
「・・・グッバイ。俺の初恋・・・」
一誠がボソリと呟いたのを聞えた。
「ゴブタ。ガビル」
「「はっ/はいッス!」」
ゴブタとガビルを呼んだ。
「一誠のケアを任せる」
「了解ッス!」
「お任せあれ!!」
ゴブタとガビルは快く了承してくれた。
「それじゃイッセー。温泉に入るッスよ」
「お、温泉?」
「そッス。疲れも癒えて最高ッスよ!」
「そうですぞ!男同士、背中を流し合いましょうぞ」
ガビルとゴブタが分け隔て無く一誠を誘っていき、二人の気持ちを感じてか一誠も少しだけ明るく振る舞い温泉宿へと向かっていった。
「ゴブタ達で良かっんですか?」
そんな一誠のケアをゴブタ達に任せた事を紅丸が気にしていた。
「ゴブタとガビルは一誠と性格が似ている部分がある。一誠も性格が似ている奴と触れ合うのは心のケアにもなるからな。あの二人が適任だ。心配ならお前達の方でも気遣ってやってくれ」
「はい」
その日の夜。
女風呂を覗こうとする一誠とゴブタがおり、居合わせた紫苑や朱奈達によって大きな鉄槌を受けたらしい。
二日後。
リムルがドワルゴンから連れて来たガゼル王の息子のヴィゼルは、ケミー達の研究していた。勿論、対話やケミー達の日常から研究をしてもらっており、一切ケミー達への暴行の類いは起こさないようにしてもらっている。
次に亡や緑咲が集うシステム開発部がゼアとアークを用いてオープン型パソコンを魔国内の建造物内に余すことなく増設することができた。
続いて、亡達と一緒に開発部にやってきた。
「よぉ。新しいシステム導入した製品が出来たんだって?」
「はい。オーマ様」
俺の質問に答えたのは新しく現れた開発担当用の機械人間だ。
「えぇっと・・」
「彼は開発用ヒューマギア、開発
「為太郎。それで新しく開発した製品はなんだ?」
イズの紹介で開発用ヒューマギアが開発した製品を見せて貰った。
「コレです、オーマ様」
見せてもらったのはモノクルだった。
「これは?」
「拡張現実展開用眼鏡。通称:
為太郎の説明では魔国連邦内に建設した教育施設内で使用する為に提供を思考した製品。
その効果はモノクルに専用小型チップを搭載して教室一室分に展開して、地球などで資格が必要な分野に関する実験場や一室を拡張現実として展開して勉強できるようにしている。しかも勉強内容は実戦形式レベルの実技も含まれている。
勿論、これは国家資格・民間資格・調理免許なども含まれる。
「成る程。これなら専用の機械人間を大量に生産するだけでなく、生まれてきた子供達が自分の意志で選択して資格免許を獲得できるレベルに勉強出来るわけだな」
「はい。しかもゼアとアークによって合格基準を設定してもらってますので、合否判定は問題ありません」
「・・・よし、生産を頼む。これで教育機関のレベルも上がるな」
「わかりました」
為太郎の製品紹介を終えると続いて、ときめが持っていた破損したガイアメモリの修復について訪ねた。
「修復はどうだ?」
その事について応えてくれたのはイズだった。
「オーマ様が仮面ライダーWの力を手にしたことでジョーカーメモリの修復作業をゼアとアークが試みていますが、一時的な修復はできましたが、完全な復元には時間が掛るようです」
「・・・」
修復時間が掛ることにときめは沈黙していた。俺やウォズがその現場にいたとはいえ、彼女の記憶喪失はまだ続いている。オーロラドーパント達と敵対していたとはいえ、敵対理由もオーロラドーパント達の正体も不明だ。自分が善であるかもわからなければ、
「そうか。ときめが使っていたドライバーの解析は終わったんだろ?」
「はい。機能としてはロストドライバーに近しいですが、他のガイアメモリを一時的に使用するシステムがあったようです」
「そのシステムを解析してロストドライバーにも使えるように改良を施してみてくれ」
「かしこまりました」
イズにときめが使っていたドライバーをロストドライバーとして改良した変身ベルトに改良するように告げた。
「ときめ」
「なに?」
「そんなに思い詰めるなよ。たとえどんな過去だろうが、お前はお前だ。記憶が戻り、お前がどのような決断をしても俺は支持するだけだ」
「・・ありがとう、オーマ」
ときめは頬を紅潮させて俺に背後から抱き締めてきた。
「なんだ・・いきなり・・」
「ううん。なんでもない!」
満面の笑顔でそういうときめにフッと微笑んだ。
そんな時だった。アズが俺達の前に現れた。
「オーマ様。急ぎの要件です」
アズには魔王関連の秘書として動いてもらい、イズには国主関連の秘書の役割を担ってもらっている。
「何があった?」
「魔王フレイ様より魔法水晶から連絡がきております」
そう言ってアズが魔法水晶を持ってきた。
魔法水晶からは魔王フレイの顔が映っていた。
「いきなり俺の元に連絡を入れてくるとは何の様だ。フレイ?」
水晶ごしに会話をしているのは魔王の一角である"
『いきなりごめんなさいね。貴方に協力をお願いしたいことがあるの』
魔法水晶に映るフレイがなにやら申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「それで、協力してほしい事とはなんだ?」
『つい最近、私の領地に宣戦布告してきた不届者がいたのよ。不届者共の名は‟ハンドレッド„。奇妙な甲冑を纏った奴らが1万近く襲ってきたのだけど。物理も魔法も効果がとても薄いのよ。だけど、仮面ライダーなら可能性としてはあると思ったのよ』
「成る程な。だが、仮面ライダーの力を手にするには条件が存在するため、フレイの戦力がすぐさま手にできる力じゃないから、俺に協力を頼んできたわけか」
『えぇ。勿論、貴方への協力の感謝に一つ要求を呑むわ』
ほう。随分と気前の良いことを言う。
魔導王朝サリオンと協定を結ぼうと考えている魔国としては魔王間の不可侵条約でサリオンとの協定を結ぶ前に侵略行為を行なっているフレイに手を退いてもらうほうがいいな。
「わかった。協力しよう」
『ありがとう。待ってるわ』
フレイとの魔法通話を終えてからアズに頼んで戦力を招集した。
つい最近構成した滅を隊長、亡を副隊長とする1000人の機械人間部隊「
「オーマ様、私とときめさんも連れて行って下さい!」
「わたしも?」
「ただの予感ですが、私達もついていくべきだと思ってるのです」
「・・・・」
朱奈がそこまで言ってくると、何か異様な気配でも感じているのかもしれないな。
「わかった。二人の参加も許可する。一緒に来てくれ」
「はい!」
「うん!」
二人が頷いたことで俺はある人物を用意して貰った。
その人物とは最近になってやってきた三人の少女。
一人は
蒼影の話では三人はミリム、カリオン、フレイの支配領域から送られた偵察者であり、ネムは天翼国フルブロジアに詳しい事を知っている。
フォスとステラは何かとネムと行動を一緒にすることがあるから一緒に誘った。
「よし、行くぞ!」
『いってらっしゃい』
そして出発の準備が出来たことで、魔国に残る曙彌と紅丸達に国を任せて天翼国フルブロジアへと出発した。
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俺達はスチームライナーに乗って、天翼国フルブロジアへと空を掛けながら向かっているのだが、同じ車内にいるフォスが何やらカチコチと緊張していた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だぞ」
「は、はい!!」
だめだ。フォスは目上の人物に対して緊張しやすいタイプのようだ。いや、地球人の殆どがそういう内心で緊張する者や表立って緊張しやすい者に別れている。
だが、ここは異世界だ。
地球人のような常識が通じない部分が大半な基軸世界には珍しいタイプなのかもしれないな。
まぁ、珍しいタイプというならネムもそうだろうな。魔国の盟主にして魔王である俺の前で寝ているのだ。
「ZZZ・・・・」
「ちょっとネム!いい加減に起きなさいよ!」
眠りについているネムに対してステラが肩を揺らしていた。
しかし、それでも寝続けるネム。
眠ることに関した有翼族の女の子だ。正しく名は体を表すのような子だ。
そう思いながらもスチームライナーに元素魔法で地図を投影して目的地をマッピングしておいたことでネムの案内は天翼国フルブロジアに到着するまでは必要はなさそうだ。
「まぁそう怒ってやるな」
「いえ、ネムは寝過ぎなので起こすべきですよ」
ネムを無理矢理起こそうとするステラを止めてやろうと思ったが朱奈がステラ側に回ってしまっている。確かネムは朱奈の元で働いていたな。恐らく彼女の怠惰に等しい惰眠に関して苦労しているんだろうな・・・
ネムの睡魔はディーノと同等だろうな。
そう思いながらも時間が過ぎていき、天翼国フルブロジアへと到着した。
「これは・・・」
「・・うそ」
睡魔に襲われているネムですら、目の前の光景を見て衝撃を受けていた。
当然だろう。
天翼国フルブロジアは居城が天高く聳える岩山に都市を造り、有翼族を主とする種族が生息している国だ。
「フルブロジアが・・」
震えた声でネムは目の前の現実を受け止めていた。
魔王フレイの支配領域である天翼国フルブロジアが・・・・
「・・・・奪われて・・る」
落城していた。
次回~ハンドレッド~