転生したら、仮面ライダーになった件   作:森雄

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運命の人

 分身1Side

 

 武装国家ドワルゴンへと着いた俺はリムルとゴブタの三人でドワルゴンの入国を待ち続けていたのだが、その際に冒険者の者達に絡まれた。

 

 その際に雑魚と言われてむかついたのか、リムルが嵐牙の父親を捕食して手にした黒嵐星狼(テンペストスターウルフ)に擬態して<威圧>したのだ。

 

 しかし、その際の被害数があまりに多く。ドワルゴンの警備隊に俺達三人は事情聴取として牢に放り込まれた。

 

 ドワルゴンの入り口での出来事をドワーフ王国警備隊隊長カイドウに伝えた。

 

「──────……というのが事のあらましです。ね?俺悪くないでしょ?」

「<威圧>の威力を把握していなかった点を除けばな」

「オーマは黙ってなさい」

 

 リムルが賢明に弁明しているが、<威圧>による被害数の大きさを指摘するとリムルが黙る様に言ってきた。

 

「うーん……まぁ、見ていた者の証言と概ね一致するが……」

 

 リムルの弁明に対して周りからも聴取していた事からカイドウとやらはリムルの説明を信じようとしていた時だった。

 

「隊長、大変だ。鉱山でデカイ事故が起きた!」

 

 そう言って牢獄への扉がドカッと開かれ別のドワーフの警備隊員が入ってきた。

 

「なんでもアーマーサウルスが出たとかで……」

「なんだと!?」

 

 その報告に驚くカイドウは立ち上がる。

 座っていた椅子は彼の勢いに倒れた。

 

「町に出てくる前に仕留めんと……っ」

「いや。そっちは大丈夫。すでに巡回のヤツらが討伐に向かっています。ただ……魔鉱石の採取のため奥まで潜っていた鉱山夫がひどい怪我を負ったようで……」

「なにっ!?ガルム達が!?」

 

 どうやらアーマーサウルスに被害を受けた鉱山夫とやらと知り合いらしいカイドウは更に慌てふためいている。

 

 完全に俺達三人は空気といってもいい程に忘れられている。

 

「戦争の準備だがで回復薬の類は品薄だ。このままじゃ……」

 

 部下から告げられようとしている言葉をカイドウは大声で防いだ。

 

「馬鹿言うな!あいつらは俺の兄弟みたいなもんなんだ。そう簡単にくたばってたまるか!」

 

 どうやら兄弟のように大切な存在のようだ。

 しかたがない。

 俺はリムルに視線を向けると、どうやら彼も同じ思いなのだろう。

 アイコンタクトで頷いた。

 

「旦那。旦那」

 

 ツンツンとリムルが牢屋から出てカイドウに話しかけた。

 俺も縛っていた縄を解き、ゴブタの縄も解いた。

 

 そして、持ってきていた樽一杯のリムル特性の回復薬を見せてやると彼は九死に一生を得るかのようにその回復薬を持って鉱山夫の元へと向かっていた。

 

 結果から言えばカイドウが兄弟のように思っている鉱山夫三人がは助かった。

 この一件で俺達はカイドウ達から信用を得られた翌日。俺達は釈放されてドワルゴン内へと入国した。

 

 カイドウの案内で鍛冶屋に行く事になった。

 

 スチームパンクなどゴブリン村よりも文明的である。

 その中でも武器防具がとても良さそうだ。というよりも、売られている武器の刀身が何やら薄らと光っている。

 

 刀身が薄らと光るなど地球ではないからな。やはりドワーフの技術者は手に入れておきたいな。

 そう思いながらもやってきた鍛冶屋に入るとカイドウがカーン!カーン!と甲高い鉄を打つ音が鳴り響かせているゴーグルを掛けた男に話しかけた。

 

「なんだカイドウか。悪いが今忙しいんだ。急ぎでないなら日を改めてくれ」

 

 そう言う男の名はカイジンというらしい。

 ザ・職人と言わんばかりな姿だ。

 

 それに昨日カイドウが兄弟のように思っている鉱山夫三人も一緒にいた。

 

 三人が俺達が持ってきた回復薬で助けられた事を言った。

 

「そうだったのか。礼を言う。すまんが今ちょっと手が離せなくてな」

「気にしないでくれ」

「邪魔して悪いな」

 

 感謝と謝罪を告げるカイジンに俺達は気にしないように伝えた。

 その後、助けた鉱山夫の一人が何やら俺達に相談する事を提案してきた。彼等の様子から切羽詰まった様子だったので訊いてみると、どうやら長剣を20本納品するのに素材が足りないようだ。

 

 国が各職人に割り当てた仕事であり引き受けた以上、出来ないとなればどうなるか……まぁ、爪弾き者にされるのは避けられないだろうな。

 

 そう思っているとリムルが鋼で出来た剣を発見した。

 

 カイジンが出来たという長剣とやらを見せて貰った。するとその剣の刀身も光って見えた。

 

「魔力を馴染ませやすい魔鋼を芯に使ってある。簡単に言うと使用者のイメージに沿って成長する剣のなのさ」

 

 ファンタジーあるあるな剣だな。

 

「先ず引き受けなきゃ良かったのに」

「俺だって最初は断ったさ。したら、あのクソ大臣のベスターの野郎が……

【名高いカイジンともあろうお人がコノ程度の仕事も出来ないのですかな(笑)】とか。こともあろうに国王の前でいいやがって……!」

 

 期日まで5日もなく、採取以来や融通までも絶望的で、ベスターという大臣とやらがわざわざ挑発行為をしたとなると、恐らくだがカイジンを陥れたい何かがあるのだろう。

 況してや戦争の準備で回復薬が品薄だと言っていた事と考えて大臣なら干渉は出来るだろう。

 

 そう思っているとリムルが何時の間にか只の鋼の剣を魔鋼の長剣へと変質させた。

 

「技術指導として俺達の村に来て欲しい。勿論、無理強いはしないさ。でも検討してみてくれ」

 

 そう言って20本の長剣を完成させた。

 

 ────────────────────────

 

 魔鋼の長剣を納品したカイジン達から打ち上げの誘いを受けた。恩を受けたからご馳走したいということだ。

 上手い酒があると聴いて俺は許可したが、味覚を持たないリムルからすれば乗り気ではなかったが、従業員が美人だと知ると参加する事になった。

 

 そして、カイジン達の行きつけの店へとやって来た俺達を待っていたのは女性エルフだった。

 

 露出度が少々高い服装を着ている女性エルフ達はリムルに抱き付いていた。

 リムルが<魔力感知>を全開にしている。あのスライム、どれだけ煩悩なのだ……

 

 リムルに呆れている中、他のエルフがやってきた。

 

「わぁ!見たことのない耳」

「本当だ!」

 

 ヒューマギアモジュールを見て興味を持ってくるエルフ達が俺を挟む様に両側から抱き付いていた。

 女性特有の弾力が腕に伝わるが、何とも思わずに俺はリムルを膝に乗せているエルフの横へと座って酒を楽しむことにした。

 

「しかし恐れ入ったよ。俺の渾身の一振りが、まさか数秒で量産されちまうとはね」

「カイジンの一振りが素晴らしかったからな」

「カイジンが職人として最高峰だと言う事だ」

 

 そう言って俺は酒を、リムルは女性エルフを楽しんでいた。

 そんな時、褐色の黒色エルフが水晶玉を持ってきた。

 

「ねぇねぇ。スライムさん。お兄さん。これやってみない?」

「ん?」

 

 水晶玉でやること……異世界である事を考えるならもしかして……

 

「占いか?」

「お兄さん正解!ご褒美に私が酌をしてあげる」

「あぁ。ありがとう」

 

 何やらリムルが妙な期待から落胆した様子があった。エルフ達に抱き締められていた事から変なことを考えていたんだろうな。

 占いだと当てると水晶玉を持ってきたエルフに酒を注いで貰った為、飲んでいた。

 

「何を占ってくれるんだ?」

「そうねぇ。何がいい?」

 

 占いの内容を考えているとリムルを乗せているエルフが提案してきた。

 

「スライムさんとお兄さんの運命の人とか!」

「あ。それいいかもー」

 

 運命の人ね。普通に考えたら「嫁」ということになるが、前世ではアイツ以外に交際したこともないし、アイツ以外を愛せそうにもなければ……前世は未婚で死んでいるから興味を持てないな。

 

 そう思っているとリムルの運命の人とやらが水晶玉に映し出された。

 

 水晶玉に映ったのは左目の目尻に火傷の痕を持つ黒髪の日系女性がなにやら制服姿の五人の子供達を相手していた。

 

「おい。その人もしかして……爆炎の支配者、シズエ・イザワじゃねえか?」

「有名なのか?」

「自由組合の英雄だよ。見た目は人間の若い娘さんだが何十年も活躍してたんだ。今はもう引退してどっかの国で若手を育ててるんじゃなかったかな」

 

 シズエ・イザワ……井沢静江か?日系の容姿とヴェルドラが言っていた異世界人の一人なのかもしれないな。

 そう思っているとどうやらリムルが深くなにやら考え込んでいたようでエルフが話しかけた。

 

「スライムさん。運命の人が気になるんだ?」

「え?あ、いや」

「ずるーい」

 

 何か思い当たる何かあったのか?

 

「それじゃあ。次にお兄さんの運命の人ね」

 

 そう言って水晶玉の中の映像が変わると、そこには白色を基調とした服に鎧を少々取り付けた何処かの一団だった。

 その一団の中に目つきの悪い日系の女性が多くの男女から慕われているような光景だった。

 俺はその女性を見て驚いてしまい、持っていたグラスを落としてしまった。

 

 そのグラスが割れてしまったのかパリン!と鳴ってしまった。

 

「キャッ」

「お、おい。オーマ!大丈夫か?」

「あ……あぁ……すまない。グラスの弁償代は出すよ」

 

 俺は冷静を装って割れたグラスを処分し、<鉱物作成>で地球産のグラスを十個ほど作って女主人に渡した。最初は遠慮していたが、弁償代として受け取って欲しいと頼み込むとやむなく了承してくれた。

 地球産のグラスを見てカイジン達も興味を示していたのは余談である。

 

 冷静にグラスの弁償代を渡したが、内心はかなり同様している。まさかアイツが……この異世界にいるなんて……

 

「本当に大丈夫か?」

「あぁ」

 

 心配してくれるリムルに返事をしているとお客が入店したようだ。

 

「おい女主人(マダム)!この店は魔物の連れ込みを許すのか?」

「え?い、いえ。魔物といいましても紳士的なスライムですし……」

 

 困った表情で対応する女主人に絡んでいるのは何やら貴族そうなヒゲ面の男だった。

 

「まずいな……大臣のベスターだ」

 

 ほう。アイツがベスターか……

 

 そう思っているとベスターがカウンターに置かれているお冷やのボトルをリムルに掛けた。

 

「ふん!魔物にはこれがお似合いよ」

 

 そう言うベスターに少々怒りが沸いてくるが、それよりもカイジンがベスターを殴った。

 その事に鉱山夫達が喜んでおり、エルフ達は驚いていた。

 

「よくも俺の恩人にケチ付けてくれたな」

「き、きっ、貴様!誰に向かって、そのような口を……」

 

 あまりに五月蠅いからベスターを一睨みした。

 すると、何故かわからないがベスターだけでなくカイジンや鉱山夫、エルフ達も冷や汗を流しながら俺を見ていた。

 

「お、オーマ……?」

「喋るな汚物」

 

 疾く失せろと告げるとベスターは悲鳴を上げながら颯爽と店から出て行った。

 

「お、おい。オーマ……」

「どうしたリムル?」

 

 何故かわからないが、全員が俺に対して恐れたような表情をしていた。

 

「お前……なにしたんだ?」

「何ってただベスターという汚物を睨んだだけだぞ」

 

 そう言うとリムルは唖然としていた。

 

(嘘だろ!?オーマから感じたアレは何だったんだ……?)

 

 リムルは先程のオーマの事を思い出していた。

 あの時のオーマから圧倒的な威圧感を感じていた。オーマの背後から感じたのは金と黒色の覇王のような幻影が見えたぞ!

 妖気かなにかか?

 

【否。個体名:オーマ=テンペストから感じたのはただの気配です】

 

 嘘だろ!?ただの気配だけで、あんなに凄い威圧感を放ったってのか!?

 

 そうリムルが<大賢者>から聴いているなど、知る筈もない俺は空気が悪くなった場を元に戻して酒を楽しんでいた。

 

 会計を終えた俺達が店を出るとそこにはカイドウ達が待ち受けていた。

 

「兄貴にオーマの旦那とリムルの旦那……何をやっているんだよ」

「フン!馬鹿にお灸を据えてやっただけよ!」

「汚物に常識などいらん」

 

 カイドウが呆れていた。

 

 俺達は王宮へと連行されていき、二日後。裁判が始まった。

 ドワーフ王国の裁判は自由に発言できるのは伯爵胃以上の貴族のみで、当事者であろうと王の許し無く発言がゆるされていないらしい。

 

 発言した時点で有罪。冤罪も何も関係ないらしい。全く以て愚かだ。

 

 そう思っていると俺達の意見を代弁する弁護人が発言した。

 

「──────と。このように見せでくつろいで居られたベスター殿に対し因縁をつけ、カイジン達は複数で暴行を加えたのです」

 

 やはりそうきたか。

 

 胡散臭い弁護人が事実無根な事を語っていた。

 被害者であるベスターはカイジンに殴られた部分以外の箇所に包帯を巻いており、右手を吊っていた。

 そんな彼の表情はニヤニヤと自身のシナリオ通りに陥っているカイジン達を嘲笑していた。

 

 拘留中にカイジンから聴いたベスターの印象はその通りに狡い男だった。

 昔、王宮の工作部隊の団長をしていたカイジンと副官をしていたベスター。ベスターは侯爵家の出であり、庶民の出であるカイジンの元で従うことを面白く思っていた無かった。

 そんな時に功を焦ったベスターは独走し"魔装兵計画"を失敗させた。

 

 失敗の責をカイジンに押し付けたそうだ。そんなカイジンを擁護したのが鉱山夫の三人だったそうだ。

 

 しかし、カイジンはベスターが研究熱心で努力家である事を知っており、功を焦ったのもドワーフ王の期待に応えようとしたからだったらしいが、今のベスターにはそれに気付くほどの思考など持ち合わせてはいない。

 唯々、己の愚行など尊敬する者から叩き潰されなければ目も覚めんだろうな。

 

 そう思っているとベスターがドワーフ王へと意見した。

 

「王よ!この者達への厳罰を申し渡して下さい」

「ほう。冤罪を掛けることでしかカイジンに叶わぬ無能者がよく吼えるじゃないか」

 

 ベスターが王へと懇願する言葉に呆れた様に告げる俺。

 発言した裁判所に参加している他の貴族達が言ってきた。

 

「貴様!伯爵位以上の貴族以外の発言を許して居らん!」

「弁護士が貴様等の発言を代弁したのだ。黙って」

「貴様等が黙っていろ」

 

 全く以て五月蠅い屑共に対して魔素を解放した。

 すると、ベスターと悪徳弁護士含めたドワーフ王以外の全員が青ざめ、結界を張って影響を受けないよう護っているリムル達は青ざめることはなかった。

 

「おい。ドワーフの王」

「……何だ?」

「貴様は最初からベスターが魔装兵開発を失敗させた事を気付いていたのだろ?ベスター自ら謝罪報告をしてほしかったのだろうが、貴様の采配ミスで有能な臣を二人も失うとは……無能もいいところだな」

 

 魔素と威圧感を醸し出した俺の発言に反応を示したくても、俺が恐ろしいのか発言しようにもできずにいた。

 

「……そうだな。カイジンよ」

「……は!」

「久しいな、息災か?」

「は!王におかれましてもご健勝そうで何よりでございます」

 

 カイジンが頭を下げて告げる。

 そんな畏まるカイジンにドワーフの王は頭を下げることを止めさせた。

 

「よい。それよりも戻ってくる気はあるか?」

「王よ。私は既に主を得ました。王の命令であれど、主を裏切ることは出来ません」

 

 そう告げたカイジンの後に俺が発言した。

 

「事前に事情を把握していた無能の王の采配ミスによるものだ。カイジン達が戻る必要もなければ責任を負う必要もない。自称の英雄王よ。貴様が全責任を負う側だ。有能な臣下を永遠に失う事でな」

 

 睨み付けながら今回のべスターの行動を収めようともしなかったドワーフ王の責任である事を示し付けた。

 

「…………判決を言い渡す。カイジン及びその仲間は国外追放とする。今宵日付が変わって以後、この国に滞在することを許さん。以上だ。余の前より消えるがよい」

「あぁ。すぐさま消えよう。無能王に統治された可哀想な国民を嘆きながらな」

 

 嫌みたらしく告げながら、俺はリムル達と共に裁判所から出て行き、カイジン達は荷物を纏めてから武装国家ドワルゴンから出て行った。

 

「おいオーマ!いくらなんでも言い過ぎだろ!?」

 

 ドワルゴンから出るとリムルからお叱りを受けていた。

 

「勝手に発言したら有罪なんだぞ!?追放だったから良かったものを、なんであんなに喧嘩腰なんだ!」

 

 そう怒鳴りつけてくるリムル。

 

「そう怒るな。ドワーフ王がカイジン達を国外追放とすることはわかっていた。だからこそ、あの王に自身が臣下を失うという責任を取ってもらっただけだ」

「は?なんでガゼル・ドワルゴンの処分内容がわかったんだ?」

 

 大変疑問そうに聞いてくるリムル。彼だけでなくカイジン達も気になるのか俺を見ていた。

 

「獄中の際にカイジンの話からドワーフ王がどういう人物なのかはわかったからな。加えてカイジンがベスターを暴行したことで必ず俺達が持ってきた回復薬と機材(パーツ)を確認する。

 

 完全回復薬(フルポーション)と地球産の機材(パーツ)の製造方法を知りたいが、ベスターがリムルに水を掛けた事が発端の事件だ。向こう側は責任を負わなければならない。しかもベスターのミスをわかっていながら無視を貫いた国王の責任だ。中立を謳う国の王が強行に生産知識を求めれば、中立の存在意義がない。

 

 ならどうするか……それは、俺達を国外追放処分を言い渡しながらも監視させて、頃合いを見たところで国交樹立を持ち掛ける事で、カイジン達の技術だけでなく、こちらの生産技術の恩恵を受けられる様にする。

 

 その際に追放処分を撤回させればカイジン達はドワルゴンの行来が許されて、カイドウにも会えることになるというわけだ」

 

 そう言ってやると、リムル達は驚いていた。

 カイジンからガゼル・ドワルゴンのことを聞いただけで、今回の筋書きを通そうとすることを予見し、その様に進むよう発言をした事に漸く理解できたのだろう。

 

「だったら<思念伝達>で前もって教えてくれたっていいだろ……」

 

 愚痴る様に告げるリムル。

 

「そう怒るな。カイジン達も時が来るまで少々待ってくれ」

「わかったぜ、オーマの旦那」

 

 カイジン達が了承してくれた。

 その後、カイジン達にリグル達を紹介したが、カイジン達四人は嵐牙狼族に絶句しており、言葉を発せずにいたが、俺達は本体がいる村へと帰っていった。

 

 ────────────────────────

 

 分身1が裁判所を出て行った後、静まりきった裁判所内で、ベスターはカタカタと足下を小さく震わせていた。

 

「ベスターよ」

「……っ」

 

 ガゼル王に呼ばれた事で俯いていたベスターの顔が王に向かれる。

 

「これを見よ」

 

 ガゼル王が見せたのは液体が入ったビンと機械的に創作された鉱物だった。

 

「そ、それは……」

「液体は警備隊長より余ったものを預かった。鉱山夫達の傷を完全に治したそうだぞ」

 

 そう教えられるとベスターは驚愕した様にその液体こと回復薬(ポーション)を見た。

 

「まさか、完全回復薬(フルポーション)!?そんな……ドワーフ(われら)の技術を持ってシテも上位回復薬(ハイポーション)までしか創れないというのに一体どうやって……」

 

 次ぎにガゼル王は機械的に創作された鉱物を見せた。

 

「警備隊長が回収した機材だ」

 

 その機材を見せられたベスターはマジマジと見続けた。

 

「これは、何かのエンジン部でしょうか。見たこともない製造方法で作られている……いったい何のエンジンなのでしょう……」

 

 異世界では見たことのない乗り物のエンジンの機材を見せられても、理解出来たのはエンジンである事だけで、どのような事に扱うエンジンなのか理解出来ていなかった。

 

 未知なる二つの製造方法の謎を知りたいと、正に研修者たる目をして観察するベスター。

 そんなベスターの目を見てガゼル王は告げる。

 

「……惜しいものだ。そのような目ができる臣を失う事になるとは」

 

 そう言われてベスターはガゼル王に抗議した。

 

「!!王よ、お待ち下さい。私は……っ」

「その薬はあのスライムが、そして奇妙な機材はあの魔人がもたらしたのだ」

「!!」

「お前の行いが、あの魔物達との繋がりを断った。ベスターよ。何か言いたいことはあるか?」

 

 そう告げられたベスターは譫言のように「私は……」と溢すが、吊っていた右手の包帯を筈して膝を地に着けた。

 

「何も……何もございません王よ」

 

 そう言ったベスターにガゼル王は告げた。

 

「そうか。王宮への立ち入りを禁止する。二度と余の前に姿を見せるな。だがベスターよ。これまでの働き、大儀であった」

 

 最後に告げられた言葉に、ベスターは己の愚行を大いに恥じるのであった。

 

 そして裁判所から出て行ったガゼル王は物陰で見えもしない誰かに向けて言った。

 

「暗部よ。あの魔物共の動向を監視せよ」

「は!」

「決して気取られるなよ。特にあの魔人にはな」

「この命に代えましても」

 

(あれらは一種の化物だ。まるで彼の暴風竜が如き存在感。余の力でもその心の深奥を覗けぬとは……それに、あの魔人はその暴風竜すらも超えている。況してや我の判断を最初から誘導しておった。あの大妖(おんな)を相手にしているようだ)

 

 そう考えているガゼル王だったが、その思考さえもオーマによって誘導されていた事に気付くのは、次に出会う時だった。

 

 ────────────────────────

 

 分身1がリムル達と一緒にドワルゴンを追放された頃。

 

 分身3は大変な事件に遭遇していたのだった!

 




次回~オーガの里~
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