再転生した元神は転スラの世界へ   作:さすらいの旅人

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魔王来襲

 べスターが仲間になった事で、リムルは前々から考えていた回復薬の作製を任せる事にした。面識が無い隆誠は知らないが、彼は元々研究職なので打ってつけの仕事らしい。

 

 過程は省くが、現在べスターは封印の洞窟で業務に従事している。そこには彼の部屋と研究施設が作られている為、寝泊まりするには何の問題も無い。他にも魔物の襲撃に関しては、ガビルを含めた龍人族(ドラゴニュート)が護衛も兼ねた助手役もいるので心配無い。

 

 それとは別に魔国連邦(テンペスト)でも大きな変化が訪れていた。

 

 調印式が終えて以降、中央都市リムルに多種多様な種族が来ている。行商として活動する犬頭族(コボルト)を始め、恭順の意を示す小人族(ハーフリング)、庇護を求める魚人族(マーマン)などが移住してきた。その中で珍しいのが蟲型魔獣(インセクト)と呼ばれる二匹の魔蟲を、偶然発見したリムルが保護した。

 

 一匹目は体長五十センチ程で、カブトムシとクワガタを足して割ったような魔蟲。リムル曰く『心(くすぐ)る格好いい姿』と言っていた。

 

 二匹目は体長三十センチ程で、ハチのような外見をした魔蟲。普通なら恐怖の対象でしかないが、この世界では大きな蟲が当たり前のように存在している。

 

 その二匹の魔蟲を保護する際に治療も兼ねて名前を与えていた。一匹目には『ゼギオン』、二匹目には『アピト』と名付けられてリムルの配下+ペットになったのであった。ゼギオンには樹人族(トレント)が住まう集落の守護、アピトには希少花の蜜を集める事になったようだ。

 

 友好的で協力的な者達との交流が増えているが、必ずしもそう言う訳ではなかった。某世紀末の漫画やアニメに出てくるチンピラみたいな外見をした魔物の集団がやって来る挙句、身勝手な理由で侵略しようとしていた。当然、そんな愚か者達は悲惨な末路を迎える事になっている。圧倒的な力で黙らせるシオンと、恐怖心を植え付けながら徹底的に甚振るソウエイによって。

 

 この時に隆誠は、シオンを護衛に専念させるべきではないかと考えた。身勝手な愚か者相手とは言え、会話による交渉を一切せずに問答無用で黙らせるなど、とても秘書のやる事じゃないから。それをリムルに進言するも、聞いていたシオンから『リムル様の秘書を務められるのは私だけです!』と反論された。

 

 隆誠が盟主補佐を任命されて数日経ち、シオンの行動を一通り観察するも、大抵はリムルの側にいるだけで、秘書としての仕事は全くやっていないのが現状だ。隆誠のいる世界なら即日解任(クビ)になってもおかしくないのだが、リムルより『まだ国が出来たばかりだから、もう少し様子を見よう』と有耶無耶にされるのであった。

 

 

 

 

「ッ!」

 

 隆誠がリグルド達の執務を手伝っている最中、強大な魔力がとんでもない速度で魔国連邦(テンペスト)へやって来るのを感知した。

 

「隆誠殿、如何なされました?」

 

 ゴブリンキングのリグルドが、何やら只事ではない様子と思いながらも訊ねた。彼だけでなく、一緒に執務をしている四人のゴブリンロード(ルグルド、レグルド、ログルド、リリナ)も不安そうに見ている。

 

 強大な魔力はリムルも気付いている筈だと思って隆誠は探知してみるも、案の定と言うべきか、もう既に町から出ていた。その直後には強大な魔力を持った存在と対峙している。

 

「リムルの奴、一人であんな恐ろしい魔力を持った奴と……!」

 

「っ! リムル様に一体何が……!?」

 

 隆誠の呟きにリグルドがリムルについてだと分かった瞬間、一気に危機感が募った。

 

「悪い、リグルドさん。チョッとリムルの助太刀に行ってくる!」

 

「ちょっ、隆誠殿!?」

 

 行儀の悪いことだと自覚しながらも、隆誠は窓を開けて、そこから出ようと勢いよく跳躍(ジャンプ)する。普通なら落下していくが――

 

「なぁっ! そ、空を飛んでいるですと!?」

 

「「「「ええっ!?」」」」

 

 リグルド達は信じられないモノを見ているように仰天していた。隆誠が空を飛んでいる為に。

 

 現在魔国連邦(テンペスト)で空を飛べるのはリムルや限られた種族だが、人間の隆誠も飛べることを周知されていない為に誰一人知らない。

 

 地上では多くの種族が飛翔している隆誠に驚きの表情になるも、注目されている彼は全く気にせずにリムルがいる森へ向かっている。

 

 あと少しで到着する寸前、大きな衝撃と突風が襲い掛かった。

 

(何だよこの大きなオーラは!? 聖書の神(わたし)がいた世界の二天龍(ドライグとアルビオン)に匹敵してるぞ!)

 

 強大な魔力を持った存在の底が未だに見えないが、相当な実力を秘めていると隆誠はそう読んだ。同時に今のままの自分では絶対に倒せないと悟ってしまう程に。

 

 久しぶりの強敵を知った隆誠は、前世(むかし)の血が騒ぎそうになるのを抑えながら辿り着く。そこは惨状と言うべき光景になっている。

 

 ツインテールでまとめられた桜金色(プラチナピンク)の髪をしてる少女の前に、シオンやベニマル、そしてソウエイが倒れ伏していた。少し離れた所ではリムルを守ろうと覆いかぶさっているランガもいる。

 

(状況からして、恐らくリムルを守ろうとしたんだろうな)

 

 シオン達がああなっているのは、間違いなくクレーターの中心にいる少女が原因だと隆誠は察した。

 

 無謀な行為だと理解しながらも主の安全が第一優先。隆誠もその気持ちは分からなくもないが、もう少し考えてから行動して欲しいと内心突っ込む。

 

(さてどうするか。もういっそ『(めつ)(ふう)()』を使って――)

 

「ん?」

 

 すると、少女は気付いたのか、空に留まっている隆誠の方へと視線を向ける。

 

(もしかして、俺に気付いてるのか!?)

 

 隆誠は此処へ来る途中、騎士団を連れたガゼル達の時と同様に神の能力(ちから)を利用した『認識阻害』を使っていた。

 

 因みに倒れ伏しているシオン達も同じ方向へ視線を向けてるが、少女と違って何も視えていない。少し離れているランガやリムルも同様に。

 

 そして、少女は笑みを浮かべながら、狙いを定めたかのように突如飛んだ。

 

「わはははは! 誰かは知らないが、お前強そうなのだ!」

 

「くっ!」

 

 少女の速い先制攻撃に、隆誠はオーラを纏わせて防御せざるを得なかった。

 

 後で彼は知る。今対峙しているのは、ただ一人の『竜魔人(ドラゴノイド)』にして『破壊の暴君(デストロイ)』の二つ名を持つ魔王ミリム・ナーヴァだと。




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