再転生した元神は転スラの世界へ   作:さすらいの旅人

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魔王ミリム・ナーヴァとの初戦闘

 襲い掛かってくるシオン、ソウエイ、ベニマルの不意打ちを、魔王ミリム・ナーヴァは全く物ともしないどころか、妖力(オーラ)の差を思い知らせるように圧倒していた。

 

 無理矢理避難させられていたランガから離れたリムルは、ミリムが発した衝撃波によって負傷してるベニマル達に手持ちの回復薬(ポーション)を渡している。そしていざ対峙しようとするも、クレーターの中心にいるミリムが、突如視線を反対方向へ向けていた。

 

 リムルも同じく視線を移すも、そこには誰もいない。しかし、彼女はまるでそこに誰かがいると確信しているように、ジッと見ている。

 

 直後、ミリムは何もいない筈の方へ飛び、攻撃を仕掛けた。オーラを纏った拳は何もいない空間へ振るった瞬間――そこから突然誰かが出現する。

 

「リューセー!?」

 

 出現したのは大変見覚えのある人物――隆誠だった。しかも何故か空を飛んでいるが、今の状況に誰も指摘する者がいない。

 

 リムルは今でも鮮明に記憶している。数日前、ガゼル王と手合わせした後に突然姿を現わした事を。

 

 自身の魔力感知(スキル)や『大賢者』ですら全く引っ掛からない事に、一体どうやって搔い潜っているのかを問い質したい気分になるも、そのような案件など今は如何でも良い。隆誠がオーラを纏わせたミリムの拳を防いでいるから。

 

 彼女の攻撃を防いだ瞬間、凄まじい爆音と衝撃を響かせた。

 

 これにはリムルだけでなく、ミリムですらも驚いている。挨拶程度とは言え、脆弱な人間である筈の隆誠が魔王の攻撃を、防具を纏っていない筈の腕だけで真っ向から受け止めたのだ。

 

(嘘だろ!? いくらリューセーが強いからって、生身の腕だけで魔王の攻撃を防げるのか!?)

 

《解。個体名:司波隆誠(リュウセイ・シバ)の腕には、魔素とは異なるオーラが覆われており、相当な防御力があると推定します》

 

 リムルの疑問に『大賢者』が答えている中、空中では凄まじい攻防を繰り広げていた。

 

 隆誠が反撃を仕掛けようと、オーラを纏わせた拳や蹴りを繰り出す。

 

 予想外な攻撃にミリムが再度驚愕するも、慌てる事無く防御と回避をしていた。

 

 互いに武術の心得があるのか、空中に浮遊している二人はまるで演武の如き攻防を繰り広げる。拳と拳、膝と膝、身体の部分が激突する度に凄まじい爆音と衝撃波が、地上にいるリムル達にも充分届いていた。

 

 一見すると互角の戦いをしてるように思われるが、実際そうではない。殆ど(・・)全力に近い隆誠に対して、ミリムは実力の半分すら出していないのだ。

 

 

 

 

 隆誠とミリムの激しい攻防は数分以上続くも、二人は互いに距離を取ろうと一旦後退する。

 

「はぁっ、はぁっ……!」

 

 空中で停止している隆誠は、少しばかり息が上がっている。

 

 開始してから数分経ったとは言え、魔王ミリムの攻撃は想像以上に重いだけでなく、回避するのにも神経を磨り減らすほどだった。

 

 隆誠は二度目の再転生をした事で実力が低下するも、それを取り戻す為に普段から誰にも知られないよう一人で鍛錬している。しかし、元の世界では前世(むかし)と違って、彼の脅威となる存在が誰一人いない。それが原因で実力を取り戻そうと鍛錬しても、更に強くなろうとする向上心が低下気味だった。日本魔法界の頂点に立つ十師族は勿論、世界最強の魔法師と称される司波達也ですら、彼の前ではただの雑兵程度(あそびあいて)に過ぎないのだから。

 

 そんなぬるま湯同然な世界で過ごしている中、突然見知らぬ異世界に飛ばされ、魔物のリムル達と出会った。そして目の前に相当な実力を持っている少女と出会い、今の自分では全く勝てない相手と認識されている。

 

 普通であれば、全く勝てない相手だと分かれば絶望するのだが――

 

(この少女、本当にドライグやアルビオンに匹敵する強さだな。こんな事なら、もっと鍛えておけば良かったか……!)

 

 内心で舌打ちをしながらも、予想外の強敵に心が躍っていた。柄にも無く前世(むかし)(イッセー)みたく、勝てないと分かっていながらもワクワクしてしまっているから。同時に今まで失いかけていた向上心が高め始めており、今後に行う鍛錬内容の更新も考えている。勿論、今の圧倒的不利な状況をどうにか出来ればの話だが。

 

 そんな隆誠の心情とは別に、ミリムは大変面白そうに満面の笑みを見せている。

 

「面白い! 面白いのだ! このワタシの攻撃を防げる人間はお前が初めてだぞ!」

 

「……それはどうも」

 

 ミリムが嘘偽りのない称賛の言葉を述べると、隆誠は息を整えながらも取り敢えずと言った感じで受け取っていた。

 

「しかし分からんな。ワタシの『竜眼(ミリムアイ)』でも、お前の隠している魔素(エネルギー)量が測定出来ない。これは一体どう言う事なのだ?」

 

「そんなの俺が知る訳無いだろ」

 

 身に覚えが無いように否定するも、内心では少々厄介な眼だと内心顰めている。恐らく彼女の眼は異母弟の達也が使う『精霊の眼(エレメンタル・サイト)』と似たようなモノだろうと思いながら。

 

「俺からも訊きたい。貴女は一体何者だ?」

 

 隆誠は途中から来た為、ミリムの素性や目的を全く知らない。

 

 余りにも予想外だったのか、彼女はキョトンとしながらも答える事にした。

 

「ん? ワタシは魔王ミリム・ナーヴァだと既に名乗った筈だが?」

 

「…………」

 

 不可解ながらも名乗ったミリムに、隆誠は一瞬何の冗談かと思うも即座に事実と認識した。強大な魔力を持ち、自分以上の実力を持つ少女が魔王を名乗っても不思議ではないから。

 

 この世界に魔王が存在しているのは、既にリムル達やドワルゴンのガゼル達から聞いている。最初は思わず前世(むかし)に会った当時の四大魔王を連想する隆誠だが、この世界は冥界(あそこ)と全く違うのを理解しているので、余り関わらない方が良いだろうと隆誠はそう結論していた。それがまさか、向こうから接触してくるとは完全に想定外だったが。

 

「そんな事よりお前、まだ何か隠しているだろう。とっとと見せるのだ」

 

「ッ!」

 

 ミリムの発言によって隆誠は目を見開く。

 

「何故そう言い切れる? 俺は全力でやっているんだが」

 

表情(かお)を見れば分かるのだ。お前はワタシを魔王ミリム・ナーヴァと分かっていながらも、全く恐怖していないではないか。であれば、ワタシと対抗出来る手段がまだあるのであろう?」

 

(この魔王少女、見た目とは裏腹に観察眼が優れているな)

 

 隆誠は考えを改めた。目の前の少女は無邪気で天真爛漫な子供でも、「見た目に騙されるな」を見事に体現していると。

 

 確かにミリムの言う通り、隆誠にはまだいくつか対抗出来る手段を持ち合わせている。自身の影に潜ませている四体の『神造精霊獣』、相手を封印する為の『滅封波』以外にも、前世の(イッセー)が使っていた当時の『奥の手』、更には全力形態の『真の姿』も一時的に戻る事が出来る。だが四つ目の方は未だ制御が出来ない為、今の段階では出来るだけ避けたい。

 

 余り手の内を見せたくないのだが、自身より実力が上の魔王相手に下手な誤魔化しせず、敢えて答える事にした。

 

「流石だな。そこまで言われたら見せざるを得ないのだが、魔王である貴女は待ってくれるのか?」

 

「面白い。いいだろう、受けて――」

 

「ちょっと待ったぁ!」

 

 ミリムが了承の返事をしてる最中、突然割り込みの声が入った。

 

 背中に両翼を展開させながら飛んでいるリムルは、隆誠の前で止まってミリムと対峙する。

 

「何だ? 今いいところなのに邪魔立てする気か?」

 

「悪いけど、これ以上俺の大事な部下に任せっきりにする訳にはいかないんでな」

 

 中々の部下思いな姿勢を見せてくれるリムルに隆誠は思わず感心するが、すぐに思念伝達を使う。

 

『リムル、下がっていろ。自分でも勝てない相手だと分かっている筈だ』

 

『大丈夫だ。この魔王に通用しそうな攻撃がある』

 

 リムルが自信を持って答えた事で隆誠は一体何をするのかと疑問を抱くも、当の本人はミリムの方へ視線を向けたままこう言った。

 

「魔王ミリム、お前がリューセーと戦ってる間、通用しそうな攻撃を思い付いたぞ」

 

「ほう?」

 

「自信があるなら、受けてみるか?」

 

「わはははは! いいだろう。そこまで言うからには、受けてやるのだ」

 

 興味深い内容だと思ったのか、ミリムは隆誠からリムルへと切り替えた。

 

「ただし、それが通用しなかったなら、お前やそこの人間はワタシの部下になると約束するのだぞ?」

 

「おいおい、勝手に俺まで巻き込まないで欲しいんだが」

 

 自分も強制的に部下にさせられる事に納得が行かない隆誠は抗議しようとするも――

 

「大丈夫だ、リューセー。何かあっても全ての責任は俺が取るからさ」

 

「………はぁっ、分かったよ」

 

 自分を信用してくれと目で強く語ってくるリムルを見た隆誠はその熱意に負けたのか、嘆息しながら託すことにした。

 

 リムルは盟主補佐からの了承を得た事で一旦地上へ降りると、ミリムも追いかけるように降下していく。

 

(念の為にミリムを封印する為の準備をしておくか)

 

 空中から見守っている隆誠は決して疑っている訳ではないが、失敗した場合に備えての手段について考えている。

 

 地上でのやり取りを見守りながら、封印術である『滅封波』を使う為の小瓶を用意するも、予想していたよりも早く決着がついた。リムルが魔蟲アピトに採取させていたオヤツ用の蜂蜜を使って、ミリムを見事に懐柔させていたから。

 

(成程、そう言う手段もあったか)

 

 完全にミリムを手懐ける策を見せたリムルを見た隆誠は、良い意味で感心させられた。相手は魔王でも中身が子供であれば、甘い物で餌付けさせれば有効である事を。

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