再転生した元神は転スラの世界へ   作:さすらいの旅人

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新たな魔物の来襲

 隆誠はリムルより一通りの事情を聞いた。ファルムス王国のヨウム達だけでなく、ブルムンド王国からもギルマスのフューズや冒険者のカバル達三人が魔国連邦(テンペスト)に訪れている事を。ファルムス王国ではない別の人間が来ている事を知ったことで、隆誠は翌日にリムルを通じて彼等と話をしたのは言うまでもない。

 

 粗相が無いように話す隆誠とは別に、対応しているフューズやカバル達は内心色々と疑問視していた。本当にこの人物が槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)を簡単に倒せるほどの実力があるのかと。非常に清潔感溢れる身なりな上に、端整な顔立ちをした黒髪の男性の立ち振る舞いを見て、何処かの国に仕える貴族だと言われたら信じてしまいそうな程に。

 

 だが、後に相当な実力者である事は分かった。隆誠が冒険者のカバル達の実力を見ようと模擬戦をして、全く本気を出すまでもなく圧勝した為に。それを見ていたフューズは、思わず英雄シズに匹敵しているのではないかと驚愕しながら、もし彼が冒険者になるのであれば丁重に持て成そうと考えている。

 

 それとは別に、隆誠がヨウム英雄化計画に手伝っているのは、主に料理面だった。と言っても、あくまで昼食だけに過ぎない。朝と夜は基本的にシュナやゴブイチと言った調理担当者達が行っている為、期間限定でありながらも彼が昼食担当をする事になった。因みに昼食を取るのが人間だけとは言え、三十人以上の食事を隆誠一人だけでやるのは流石に厳しいと判断したのか、リムルから数名の調理担当を回してくれている。

 

 昼食で出される料理は、殆どが日本で食べる料理メインになっている。異世界で使える材料の範囲で作った和食、洋食、中華はそれぞれ好みがあれど、この世界の人間達には大好評だった。昼食を楽しんでいる人間達の中に、魔物である筈の某盟主(+某魔王)がさり気なく一緒に食べているが、隆誠は敢えて気にしない。補足として紫髪の女鬼人が対抗するかのように料理を振舞おうとしていたが、最悪な事態を避けようと盟主補佐が断固として厨房に立ち入らせなかったのは言うまでもない。

 

 ハクロウの指導による厳しい修行を送り続けた数週間後、ヨウム達は別人と思えるほどに見違えている。今までゴロツキ同然の身なりをしていた彼等は、魔国連邦(テンペスト)から用意された装備を着用した事により、まるで歴戦の勇士のようになっていたから。そして旅立って行くも、今後はこの地を拠点として活動するのである。

 

 

 

 

 

 

「隆誠殿、これが昨日の被害報告です」

 

「………全く、毎度ながらあの魔王少女には困ったものだ」

 

 リグルドから報告用の看板を受け取った隆誠は、内容を見た直後に思いっきり嘆息していた。

 

 現在、魔国連邦(テンペスト)では問題が起きている。

 

 何故か今も滞在しているフューズとカバル達に疑念を抱くも、そこは大して気にしていない。多分此処が大変気に入って滞在期間を延ばしているのではないかと隆誠が推測するも、それを確かめようとリムルの方でフューズに問い質そうとしている。

 

 隆誠やリグルドが一番に問題視しているのは、勝手に住み着いている魔王ミリムの方だった。彼女が来てから数週間、それはもう色々やらかしている。

 

 ミリムがドアやガラス、食器その他を壊すのは当たり前どころか、店舗などの看板や建物半壊、更には建国記念碑を破損等々。加減の調節が全く出来ないのかと突っ込みたいほど、何度修理しても壊し続けている。余りにも酷い為に隆誠が能力(ちから)を使って元に戻していたのだが、あの魔王少女は次から次へとモノを壊し続けている為にキリがない状況になっている。

 

 壊したことに対する反省の色を全く見せないミリムに、隆誠やリグルドが怒るのは至極当然だった。いくら魔王でもこれは流石に看過出来ないと、二人は世話係であるリムルに抗議した程だ。親友(マブダチ)として強く言っておくと約束していたが、あの魔王少女に注意したところで馬耳東風なのが目に見えている。

 

 隆誠としては魔王ミリムに本格的な罰として、滅封波を使って小瓶に封印した後、神の能力(ちから)で作成した時間の流れがかなり遅い特殊な異空間に放り込みたい。この世界で一日経っても、向こうでは一年と言う長い時間が経つ為、何もない狭い小瓶の中で何年も過ごす事になる。魔王と言う長命な存在であれば短い時間かもしれないが、ミリムは魔国連邦(テンペスト)で過ごして美味しい食事を知ってしまったから、どこまで耐えれるかは分からない。尤も、そんな事をすれば色々な意味で不味いので、どうしようもない場合の最終手段にせざるを得ないが。

 

「リムルが何とか被害を抑えるように対処するとは言っても、出来れば早くして欲しいですね」

 

「それは確かに。私としても、これ以上の被害は勘弁願いたいものです」

 

「……リグルドさん、実は結構怒ってません?」

 

「いえいえ、滅相もない。ハッハッハッハッハ」

 

 顔は笑顔でも目が全然笑っていないリグルドに、相当頭に来ているのだと隆誠は瞬時に察した。

 

 隆誠が能力(ちから)を使って物を修復させてるお陰で、リグルドは辛うじて怒りを抑えている。しかし、何度も被害報告を聞かされてる事で我慢の限界が訪れているのか、そろそろ爆発してもおかしくない状態だ。

 

 爆発寸前の怒りを抑える為にも、リムルにはミリムの対処を催促する必要がある。そう考えた隆誠は被害報告を一通り纏めた後、盟主がいるであろう場所へ向かおうと考えていた際、少し離れたところから平和な魔国連邦(テンペスト)には宜しくない殺気を感知する。

 

「これは……」

 

「どうかなさいましたか、隆誠殿?」

 

 突如窓の方へ視線を向けながら目を鋭くさせる隆誠に、リグルドは先程までとは打って変わるように異常事態が起きたのだと察した。

 

 離れていても、隆誠はその気配に覚えがある。以前に直接話をした樹妖精(ドライアド)なのだが、殺気立っていても妙に弱っている感じだった。何が遭ったかはまだ不明だが、恐らくもう少しすれば判明するだろう。

 

『リューセー、緊急事態だ!』

 

 その予想が的中したように、リムルからの思念伝達が隆誠に届いた。

 

「リグルドさん、盟主リムルの緊急要請で幹部達を至急会議室へ」

 

「ッ! 承知しました!」

 

 リムルの名が出た直後、リグルドは一切疑う事無く主要幹部達に召集をかけようと即座に動き出す。

 

 

 

 場所は変わって馴染みとなっている会議室。

 

 現在報告をしているのは、隆誠が感知した樹妖精(ドライアド)であってもトレイニーではない。彼女の妹であるトライアであり、ガゼル王とリムルが一騎打ちをしていた時の立ち合いをしていた一人だったのを隆誠は思い出していた。

 

 会議室で聞かされている内容は、『暴風大妖渦(カリュブディス)』と呼ばれる魔物が復活して魔国連邦(テンペスト)へ向かっている。トレイニー達が足止めしても全く歯が立たない状況であり、リムルに防衛態勢を固める他に飛行戦力を用意して欲しいと進言しに来たとの事だ。

 

「あの、カリュブディスとは一体どう言った魔物なんでしょうか?」

 

 隆誠はこの世界の魔物についての知識が皆無である為、訊ねるのは当然だった。因みにカリュブディスと言う名前は聖書の神だった頃に知っているが、自身が知るギリシア神話の怪物ではないのは重々承知している。

 

「カリュブディスは遥かなる昔に生まれ、死と再生を繰り返しております。凶暴なる天空の支配者、流石は森の支配者にして守護者たる『暴風竜ヴェルドラ』様の申し子と言えるでしょう」

 

「ヴェルドラの申し子、ですか?」

 

 またもや知らない魔物、もとい竜の存在に隆誠は思わず鸚鵡返しをしてしまう。

 

 それを聞いたトライアは頷きながら説明を続ける。

 

「カリュブディスは、ヴェルドラ様から漏れ出た魔素溜まりから発生した魔物なのです」

 

 誰もが聞いている中、上座の椅子に座っているリムルだけは、ヴェルドラと言う単語を聞いてから妙な反応をしていた。それに気付いた隆誠は少々気になるも、一旦後回しにしようと会議に集中する。

 

「カリュブディスが復活したのなら、魔王以上の脅威となりますよ。何しろ魔王と違い、話が通じる相手では無いのです」

 

「言ってみれば、知恵なき魔物。固有能力の『魔物召喚(サモンモンスター)』で空永巨大鮫(メガロドン)と言う鮫型の魔物を異界から召喚して暴れる、と伝えられています」

 

 会議に参加しているフューズに続き、べスターもカリュブディスの能力について補足していた。

 

(やはり聖書の神(わたし)が知る怪物とは全くの別物、か)

 

 聞けば聞くほど特徴が全く異なる魔物の存在に、自身の知識では全く当てにならないと改めて確信する。

 

 この町へ来る目的が未だに不明とは言え、どの道戦うしかない。それは隆誠が考えずとも、戦う気満々のベニマル達を見れば一目瞭然だ。

 

「状況は最悪です。召喚されたメガロドンは、何故か近くにあった下位龍族(レッサードラゴン)の死骸を依り代にした模様。その数は十三匹です」

 

 魔王並みの魔物一体だけでなく、その配下の魔物が十三匹。端から聞けば、それは一体何の冗談かと突っ込まれてもおかしくはない。

 

「リムル、どうする?」

 

「いや、どうするって……」

 

「フッフッフ」

 

 判断を仰ぐ隆誠にリムルが返答に困っている中、近くにいるミリムが途端に得意気な表情となっている。

 

「お前達、何か重要なことを忘れていないか? カリュブディス如き、このワタシの敵ではない! 軽く捻ってやるのだ!」

 

 ミリムは自信満々にそう言いながら、シュナお手製の普段着を脱いで、魔王としての衣装を見せていた。

 

(おお、その手があったか!)

 

「では魔王ミリム、出来れば早急に片付けて――」 

 

 渡りに船と言わんばかりに喜ぶリムルと、自ら協力を申し出たミリムに始末してもらおうと考える隆誠だが――

 

「何を腑抜けた事を言っているのですか、隆誠。これは私達の町の問題だから、リムル様の補佐として断るに決まっているでしょう」

 

「は?」

 

 何故か突然シオンが隆誠を咎めながら、ミリムの申し出を断っていた。

 

「そうですよ、隆誠さん。いくらリムル様の友達だからと、何でも頼ろうとするのは間違いです。どうしても困った時はリムル様より、ミリム様にお力添えをするのですから」

 

「いや、俺は……」

 

 シュナも頷きながらダメ出しをしていた。

 

 隆誠が魔王ミリムにカリュブディスを始末させるのには理由がある。魔国連邦(テンペスト)は現在も彼女の度重なる破壊行為の被害を受けている為、それを清算させる意味合いも兼ねて任せようとしたのだ。

 

 だと言うのにシオンとシュナは、自分達の町の問題だからと言ってミリムの介入を断った。隆誠としては余計な気遣いをしないで欲しいと文句を言いたい。

 

 リムルは当然察している筈だから、隆誠がすぐに撤回して欲しいと願いながら視線を送るも――

 

「……あ、あはは。ミ、ミリム、俺が困った時に頼むな」

 

(この野郎……)

 

 事情を知っている筈のリムルが寝返った為、隆誠は内心毒づく。後で覚えてろよと思いながらも、盟主が下した決定に隆誠は一応従う事にした。

 

「折角、折角、ワタシの見せ場がやって来たと思ったのに……」

 

 断られてしまったミリムは、分かり易いほど落ち込みながら項垂れて涙目にもなっていた。

 

 結局のところ、カリュブディスはミリム抜きで倒す事が決定となり、戦闘準備を行う為に一旦解散となる。

 

「リューセー、さっきは悪かったな。戦うのが嫌なら、お前はフューズさん達の護衛として――」

 

「そんな気遣いは無用だ。俺も戦いに参加する」

 

 本当ならカリュブディスを魔王ミリムに任せて、隆誠はリムル達と一緒に十三匹のメガロドンと戦う予定だった。

 

 その計画が大きく狂う結果に未だ納得行かないが、盟主が決めた以上やるしかない。




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