再転生した元神は転スラの世界へ   作:さすらいの旅人

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暴風大妖渦(カリュブディス)

(何なのだ、あの途轍もない威力は!?)

 

 隆誠がカリュブディスに向けて無数の光の槍と光の剣を放ち、突き刺した瞬間に巨大な爆発を発生させていた事に、天翔騎士団(ペガサスナイツ)の騎士団長ドルフは驚愕する余りに混乱していた。

 

 彼はリムルからの救援要請を受けた際、ガゼル王より密命を帯びていた。『弟弟子(リムル)の補佐を務めている人間、司波隆誠(リュウセイ・シバ)の実力を可能な限り調査せよ』と。

 

 ガゼル王はリムルや魔国連邦(テンペスト)に所属する魔物達は危険な存在じゃないと認識しても、隆誠に関しては別だった。弟弟子と手合わせ中に一切気付かれずに接近していただけでなく、会話をする時に深層意識まで読み取ることが可能な『読心スキル』を使用しても一切読む事が出来なかった為、全く油断出来ない人間だと警戒している。楽観的な考えを持っているリムルだからこそ、ああ言う者が補佐として必要だろうと考えながら。

 

 あの弟弟子が実力者揃いの配下が多くいるにも拘わらず、人間の隆誠に自身の補佐として選出させたのには何か理由がある筈だとガゼルはそう推測している。そんな中、リムルがカリュブディス討伐の救援要請されて、これを機に隆誠の実力を調査するよう騎士団長に命じた。彼の配下であるドルフとしても気になっていたのか、疑問を抱かずに了承している。

 

 そして調査対象である隆誠が戦闘に参加すると判明して調査するドルフだったが、全く予想外な光景を見せられる破目になった。魔法道具(マジックアイテム)を一切使わずに空を飛ぶだけでなく、メガロドンを炎魔法で焼き尽くした後、襲い掛かってくる五匹を両断する魔法も放った。たった一人で複数のメガロドンを簡単に倒せる実力者だと分かれば充分なのに、更にはカリュブディスに向けて凄まじい爆発を起こす魔法まで使う始末。戦略兵器に等しい魔法を使う隆誠に、ドルフは本国に戻り次第ガゼル王に必ず報告しようと決意している。

 

 

 

 

 

『グッ。グギュ……ギッ……!』

 

 爆発が収まり、煙が晴れた先にはカリュブディスがいた。

 

 リムル達の攻撃を受けても全く動じていなかったが、今回は全く別になっている。

 

 身体が黒焦げどころか、光の剣と光の槍によって刺された部分が抉られている箇所が多数ある。普通なら『超速再生』による治癒と鱗の再生をしてもおかしくないのに、それを行う気配が全く無かった。

 

「思った通り、もう再生出来ないようだな」

 

「再生出来ないってリューセー、さっきの攻撃は一体……?」

 

 負傷しているカリュブディスの姿を見た事で確信する隆誠とは別に、近くにいるリムルは驚愕しながらも問い質そうとする。

 

「あの光はチョッと特別製でな。一度喰らえば身体が蝕み、それどころか再生も受け付けなくなる」

 

「マジかよ!?」

 

 隆誠が先ほど放った光には聖書の神の能力(ちから)も含まれており、受けてしまったら凄まじい激痛と同時に徐々に全身を蝕まれていく。

 

 本来は対悪魔用に特化しているが、悪魔以外にも充分に通用する。現にカリュブディスが『超速再生』しても発動出来ないのがその証拠なのだ。

 

 余りにも規格外な威力と状態異常まで付与させる技を持つ隆誠に、リムルは内心冷や汗を搔いていた。スライムである自身に通用するかは不明であっても、敵に回したらとんでもない相手である事を心底痛感する程に。

 

 ミリムと戦える実力を持つだけでなく、チート同然の魔法や能力(スキル)を持っている同郷人に凄過ぎるとリムルは驚くも、それは当人も同様である事に全く気付いていない。

 

「そんな事より、『超速再生』が使えない今がチャンスだぞ」

 

「え、ああ、そうだったな」

 

 隆誠の出鱈目ぶりに言葉を失うリムルだったが、目の前のカリュブディスを倒す事が最優先だと認識する。

 

 彼のお陰で再生出来ないのが確かなら、配下のベニマル達やドワルゴンの天翔騎士団(ペガサスナイツ)が一気に総攻撃を仕掛ければ勝てるだろう。

 

 そう考えたリムルは『思念伝達』で総攻撃の指示を出そうと――

 

 

『グ。グギョ、グガ、お、おのれ――』

 

 

「ん?」

 

「何か聞こえたような……」

 

 突如、聞き覚えの無い声が耳に入ったリムルと隆誠が振り返った。

 

 

『おの……れ、ミ、ミリ……ミリムめ!!』

 

 

「おいリムル、カリュブディスがミリムって言わなかったか?」

 

「ああ、俺も聞こえた」

 

 隆誠からの問いに答えながら、リムルは『大賢者』に『解析鑑定』を実行させていた。

 

 数秒後、リムルは『大賢者』から得た回答をそのまま隆誠に話そうとする。

 

「リューセー、カリュブディスから憑代(よりしろ)となった素体の生命反応を感知した。どうやらその素体には強烈な怒りの感情を持っているらしい」

 

「強烈な怒りだと?」

 

 隆誠はリムルに解析スキルがある事を聞かされている。しかし、予想外な返答だった為に不可解な表情となっていく。

 

「となれば、カリュブディスは魔王ミリムがいたから魔国連邦(テンペスト)に向かってきた、と言う事か?」

 

「そうなるな。………てっきり俺の中にいるヴェルドラを察知したかと思ったが」

 

「何か言ったか?」

 

「いや、何でもない」

 

 小声を耳にした隆誠が振り返るも、リムルは誤魔化すような感じで話題を無理矢理戻そうとする。

 

「つまりカリュブディスはミリムに用事が――」

 

「うむ。覚えがあるのだ、この感じ!」

 

 リムルが言ってる最中、地上で待機していた筈のミリムが待っていたと言わんばかりに飛んで、二人の元へ来ていた。

 

「アイツは確か、この前来たフォビオとかいう魔人を憑代にしているようだな」

 

(フォビオだと?)

 

 『竜眼(ミリムアイ)』を使って正体を正確に把握したミリムに、隆誠は改めて神の能力(ちから)を使って調べてみた。

 

 調べた結果、以前に魔国連邦(テンペスト)で無礼な振る舞いをした魔人のオーラを感知する。今になって漸く判明したことに、隆誠は何故気付かなかったのかと少しばかり自己嫌悪してしまう。

 

 だがフォビオの目的がミリムであっても、魔国連邦(テンペスト)へ攻め入った事に変わりない。個人的な理由があろうと、上司である魔王カリオンに落とし前をつけさせなければならない。

 

「なぁなぁリムル、ワタシが相手しても良いよな?」

 

「ああ、ミリムの客と分かった以上は――」

 

「待て二人とも。カリュブディスは俺が仕留める」

 

 期待を込めて訊いてくるミリムにリムルが了承の返事をする寸前、隆誠は待ったをかけた。

 

 いきなりの事に二人はすぐに彼の方を凝視する。

 

「何故なのだ!? アレはワタシ私の客なのだぞ!」

 

「リューセー、ここはミリムに任せよう。と言うか何でお前が倒すんだ?」

 

 納得行かないと断固抗議するミリムと、疑問を抱くリムル。

 

「アレの正体がフォビオであれば、奴は魔国連邦(テンペスト)に攻め入って来たんだ。その落とし前を付けさせる他、魔王カリオンとの交渉で有利に運ぶ事が出来る」

 

「あ、それもあったか……!」

 

 フォビオの主が魔王カリオンだと忘れていたのか、リムルは今になって事の重大さを理解した。

 

 ここで魔国連邦(テンペスト)の客人扱いされてるミリムにカリュブディスを倒したら、フォビオの不始末を有耶無耶にされてしまう恐れがある。リムルの親友(マブダチ)であっても、彼女は他国に干渉出来る立場ではないのだ。魔王としての権限を使えば何とかなるかもしれないが、隆誠としては余り使いたくない手段だから、出来るだけ魔国連邦(テンペスト)側で解決させたい。

 

「そんなの知った事ではないのだ! ワタシはやるからな!」

 

 しかし、やっと相手をする機会を得たミリムからすれば如何でも良い事だった。ここで止めようとしても何が何でも実行するだろう。

 

「ならば魔王ミリム、少しだけ待ってもらえないか。その間にコレを食べても構わない」

 

「ん? 何だそれは……って、蜂蜜ではないか!」

 

 隆誠が容器に入っている蜂蜜を見た事で、ミリムは途端に目の色が変わって凝視した。

 

 初めてリムルから貰ったことで、彼女は蜂蜜が大好物の一つになっている。それ欲しさに蟲型魔獣『アピト』から強請っている事があるも、そこはシオンが何とか阻止して事無きを得ていた。

 

 今も虎視眈々と狙っているミリムとしては、隆誠が蜂蜜を上げようとしているので願ってもない展開だった。

 

「この蜂蜜を頂いてる間に俺がカリュブディスを仕留めれなければ、その時に改めて貴女に任せたいが如何かな?」

 

「むぅ……し、仕方ないのだ」

 

 不承不承みたいな感じでありながらも、隆誠が持っている蜂蜜の容器を受け取るミリム。

 

「今回はこれで許してやるが、次は無いと心得るのだ!」

 

 ミリムが釘を刺した後、颯爽と地上へ向かって蜂蜜を貪り始めようとする。

 

「おいリューセー、お前にあげた蜂蜜は今も貴重な物なんだけど」

 

 交渉材料で利用とは言え、リムルからすればお礼も兼ねて特別にあげた貴重な蜂蜜を、隆誠が何の躊躇いなくミリムに渡した事に少しばかり不満気な表情だった。

 

「悪い悪い。後で埋め合わせするから、な」

 

「……だったら揚げたての唐揚げと冷たいビール用意してくれ」

 

「了解」

 

 許してくれる条件を提示された隆誠は、一切文句を言う事無く了承する。

 

「さてと、さっさと倒すか」

 

 ミリム(+リムル)の機嫌が良い内にカリュブディスを仕留めようと、抑えているオーラを解放する為に両腕両脚に装着してる(バンド)を外した。直後、隆誠の全身から凄まじいオーラが吹き荒れる。

 

「おわっ!」

 

「リムル、下がってろ。今度はさっきみたいに守れないから」

 

 突然のオーラにリムルは何とか踏ん張るも、隆誠から下がるよう言われたので、巻き添えを喰らわないよう地上へ降下する。

 

 移動中に『思念伝達』をしていたのか、ベニマル達は取り敢えずと言った感じで離れている。天翔騎士団(ペガサスナイツ)の方は、リムルから離れるよう言った後、騎士団長ドルフが不承不承の様子で部下達に撤退指示を出していた。

 

 それらを確認した隆誠は、全身に噴き出していたオーラを収束させようと、両手から二つの大きな金色の光弾が形成されていく。

 

 

『グ。グギョギョ! ニ、ニンゲン――ッ!!』

 

 

「ほう、俺の事を憶えていたか」

 

 隆誠は感心するように言ってると、カリュブディスは別の憎き対象を見付けたかのように彼を正面に睨む。

 

「見せてやるよ、フォビオ! お前が侮っている人間の力を!」

 

 そう叫んで突進しながら二つの金色の光弾を投げつけてカリュブディスに命中するも、爆発する事無く体内へ侵入していく。

 

 そして――

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

 追撃として両手から無数の光弾を連続で放ち、カリュブディスの全身に浴びせている。だが同じく命中しても、全ての光弾は爆発しないまま体内に侵入するように消えていくだけだった。

 

「これで終わりだぁぁぁッッ!!」

 

 隆誠の右手から先程撃っていた金色の光弾とは違って、虹色に輝く球状の光弾が形成していた。

 

 それが止めの一撃なのか、放たれた虹色の光弾はカリュブディスの単眼に命中する。

 

 

『グ、ギ、ギィァァァアアアアアアアッッ!!!』

 

 

 直後、カリュブディスの全身が途端に輝き出し、悍ましい悲鳴を上げながら巨大な内部爆発が発生する。

 

 内部爆発によってカリュブディスの巨体は再生する事無く消え去り、憑代となっていた魔人――フォビオが地上に落下していくのを確認した。




隆誠がカリュブディスを倒すのに使った技は、ゴジータブルーが使っていたゴッドパニッシャーです。

おまけではありませんが、活動報告で小ネタを出しています。
古いゲームですが、『バハムートラグーン』を御存知の方であれば分かるネタです。
此方を参照下さい
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