再転生した元神は転スラの世界へ   作:さすらいの旅人

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久しぶりに更新しました。


戦いの後始末

 落下するフォビオを見付けたリムルは慌てながらも飛翔し、地上に激突する前に回収した。

 

 フォビオは生きている。

 

 隆誠が最初に放った二つの金色の光弾は、内部爆発の被害に免れないように憑代を守る為のシールドとして放った。もしやらなければ、再生能力を失ったカリュブディスと一緒に崩壊する事になっていただろう。

 

 しかし、完全に助かった訳ではない。カリュブディスから引き剥がしても、あくまで表面上の身体だけに過ぎなかったのだ。本体であるカリュブディスの核が、憑代となっているフォビオと融合しているから、時間が経てばまた復活してしまう。そうならないよう、リムルの方でスキルを使った分離作業を行っている。

 

 万が一に失敗した時に備えて、隆誠の方でも神の能力(ちから)を使う為に待機していたが、それは杞憂となった。リムルが見事にフォビオからカリュブディスを分離する事に成功したから。

 

「はぁ~、何とかなったぁ~」

 

「お疲れさん、リムル」

 

 リムルに労いの言葉をかけながらも、隆誠はフォビオの状態を確認した。

 

(……一体どうやって分離させたんだ? 今の聖書の神(わたし)ですら多少は(・・・)梃子摺ると言うのに)

 

 スキルによるモノとは言え、リムルの力は規格外だと内心危惧する隆誠。

 

 彼が嘗て聖書の神として君臨していた頃、自身の愛があれば幸せになると思いながら地上の人間(こども)達に神器(セイクリッド・ギア)を与えていた。その所為で不幸を招く要因となってしまったと、人間に転生してから果てしなく後悔する事になったが。

 

 そんな隆誠の心情とは別に、リムルが使っているスキルは神器(セイクリッド・ギア)に匹敵すると確信していた。それどころか、神滅具(ロンギヌス)に値するかもしれないと。

 

 まだリムルとの付き合いが短いとは言え、色々話を聞かせて貰っていた。嘗て平凡なサラリーマンとして生きていた何の力を持っていなかった人間だった事も含めて。

 

 そんな平凡な人間であった筈の彼が、多くの魔物達に慕われる魔国連邦(テンペスト)の盟主になっているのは、間違いなく規格外なスキルがあったからこそだ。もしスキルを持たない単なるスライムとして転生すれば、今頃は野垂れ死ぬか、そこら辺の魔物に食われて二度目の生をあっと言う間に終えていただろう。

 

(リムルがこの先、スキルに頼り過ぎなければ良いのだが……)

 

 強力な力に頼り過ぎる人間ほど脆い、と言う事実を隆誠は知っていた。数年前に相手をした異母弟の司波達也が最も良い例だろう。

 

 圧倒的な力で何度倒しても、達也は『再成』と言う反則染みた魔法で不死身のように立ち上がっていたのだが、『精霊の眼(エレメンタル・サイト)』を封印した後から一気に変化した。たった一撃当てただけで『再成』が発動しないまま、意識を失い倒れてしまったのだから。

 

 もしもリムルが何らかの原因でスキルが急に使えなくなってしまえば、間違いなく狼狽するだろう。流石に異母妹が視れない理由だけで大袈裟になる達也ほどではないにしても。

 

 隆誠としては盟主のそんな見苦しい姿など見たくない為、今後は盟主補佐として諫める必要がありそうだと思いながらも、意識を失っているフォビオに完全回復薬(フルポーション)を与えるのであった。

 

 

 

 

 

 

「説明してもらえますでしょうか?」

 

 天翔騎士団(ペガサスナイツ)の騎士団長ドルフが、隆誠に説明を求めていた。

 

「説明と言われても、あの時ご覧になった通りとしか言えませんが」

 

 隆誠はドルフの言いたい事を察している。カリュブディスを倒す時に使った技についての詳細を知りたいのだと。

 

 因みに魔物側のリムル達も同様だった。メガロドンを倒しただけでも充分過ぎる戦果なのに、自分達が苦戦していたカリュブディスをあっと言う間に倒してしまったのだから。特にベニマルは力の差を見せ付けられた事で火が点いたのか、完全に隆誠をライバル視している始末。

 

「ははは、隆誠殿は随分と人が悪いようだ。それにリムル殿も、あのような高出力の魔法兵器を所持していたのなら、最初にそう申して欲しかったですぞ!」

 

「いやいや、俺もあれは予想外でしたから……!」

 

 要らぬとばっちりを受けたリムルは即座に否定する。

 

「成程。兵器については秘密、と。分かりますぞ。奥の手は隠しておくに限りますからな」

 

 しかし、ドルフは全く信じないどころか全く筋違いな解釈をしていた。

 

「人類にとっても災禍となり得るカリュブディスを始末できたのは僥倖でした。私も王への報告がありますれば、今回はこれにて失礼いたします」

 

 結局は誤解を解く事が出来ないまま、ドルフはそう言って一礼した後、団員達を連れて帰国の途につく。

 

「はぁっ……。リューセー、後で話があるからな」

 

「はいはい、分かってるよ」

 

 リムルも流石に今回ばかりは見過ごせない為、じっくり話し合う事を決めた。隆誠も既に予想していたのか、盟主の命令を素直に従う姿勢を見せている。

 

「だけどその前に……よう、目覚めたか?」

 

 スライムの姿に戻りながら、リムルは目覚めようとしているフォビオにゆっくりと声を掛けた。

 

「くっ、ここは……何処だ? 俺は、俺は一体……」

 

「自分が何をしたか、覚えているか?」

 

 混乱したように呟くフォビオに、隆誠もリムルと同じく声をかけた。

 

 朦朧としていた彼の意識が漸く覚醒する。そして、自分が何をしたのか思い出したのか、突然リムル達に向かって土下座した。

 

「す、スミマセンでした! 俺はミリム様だけでなく、貴方達にもとんでもない迷惑をかけてしまったようで――!」

 

 フォビオは顔を青褪めて早々、真っ先に頭を下げながら謝罪していた。

 

「何故こんな事を――」

 

「何故カリュブディスの封印場所を知っていたのですか?」

 

「偶然見つけた、などとは言わせませんよ?」

 

「――だそうだ」

 

 隆誠が問い質そうとするも、樹妖精(ドライアド)のトレイニーとトライアが割って入るように質問してきたので、二人に合わせる事にした。

 

 樹妖精(ドライアド)姉妹の問いは尤もだと言えよう。魔王カリオンに絶対の忠誠を誓う誇り高い魔人である筈のフォビオが、封印されていたカリュブディスの力に頼って復讐に挑むなど不自然にも程がある。

 

「ああ、それは――」

 

 フォビオは隠し立てする事無く、素直に話してくれた。仮面を被った怪しげな二人組がカリュブディスについて教えてくれたと。

 

「ティアとフットマン、と名乗る仮面の道化……。もしや、こんな仮面でしたか?」

 

 名前を聞いたトレイニーは心当たりがあったのか、地面に左右非対称の人を舐めたような仮面を描いて尋ねた。

 

「いや。俺の前に現れたのは、涙目の仮面の少女と、怒った仮面の太った男だった」

 

「っ……」

 

 特徴を答えたフォビオにベニマルが急にハッとするも、一緒に聞いていたガビルが手を上げながらこう言った。

 

「あの~、そのラプラス殿も……」

 

「ラプラス?」

 

 聞き覚えの無い名前にリムルが反応して聞き返したから、ガビルは改めて説明しようとする。

 

「ラプラス殿はゲルミュッドの使いとして吾輩の前に現れた者なのですが……トレイニー殿が描いた仮面を被っておりましたぞ。それに『中庸道化連というなんでも屋の副会長』だと名乗っておりましたな」

 

 隆誠がこの世界に来る前、リムル達は豚頭帝(オークロード)の事件に巻き込まれていた。その事件の黒幕が中庸道化連だと分かったリムルは、漸く点と点が繋がったと確信する。

 

「なるほど。あの者の名は、ラプラスというのですね」

 

「フットマン、ね。その名、覚えておくとしよう」

 

 トレイニーの目に剣呑な光が宿っているとは別に、ベニマルの方も不敵な笑みを浮かべていた。

 

「俺はソイツ等の事を知らないが、話を聞く限りでは厄介そうな相手だな」

 

 協力する風を装って自分の手を汚さずに相手を利用して目的を果たす下衆な連中だな、と隆誠は内心そう思った。

 

 すると、リムルは蜂蜜を食べ終えて此方に来ているミリムに何か知らないか聞いている。

 

「むむ? 私は何も知らないのだ。寧ろそんな面白そうな奴等がいるなら、是非とも会ってみたかったのだ」

 

 ミリムがこう言う性格な為、中庸道化連は彼女の前に姿を現わさないようにしているのだろう。下手に彼女を利用すれば、とんでもない竹箆返しを受ける事になると分かっているから。

 

「もしかするとゲルミュッドではなく、クレイマンのヤツが何か企んでいたかもしれないな。内緒で」

 

 あっけらかんと言うミリムに、隆誠はすぐに気付く。

 

「チョッと待て、魔王ミリム。そのクレイマンと言うのは、もしや魔王の一人だったりするか?」

 

「おお。その通りだぞ、リューセー。ヤツはそういう企みが大好きなのだ」

 

 何でもないように気軽に暴露したミリム。それを聞いた隆誠は勿論のこと、リムルも簡単に話して良いのかと少々不安に思っていた。

 

 仮に魔王クレイマンが今回の黒幕だったとしても、明確な証拠が無い為、今の時点では手の出しようがないが。

 

 隆誠とリムルはそう考えているから、何とも言えない顔になっている。

 

「誰の企みに乗せられたと言えど、今回の一件は俺の責任だ」

 

 すると、フォビオは全ての責任を自分で負うように言ってきた。

 

「魔王カリオン様は関係無い。だから、俺の命一つで許して欲しい!」

 

 土下座の姿勢を崩さず、そう言い切るフォビオ。

 

「なら次からはもっと用心して、騙されないように――」

 

 盟主リムルであれば許しているが、

 

「残念だが、それは無理だ。いくら独断でやったとは言え、お前は魔国連邦(テンペスト)を危機に陥れようとした。既に個人の命一つだけで済む問題じゃない」

 

 盟主補佐である司波隆誠は許さなかった。

 

「おいリューセー、何もそこまでしなくても……」

 

「リムル、貴方はもう少し盟主としての自覚を持て」

 

 もしも単なる個人の問題だけだったら、隆誠もリムルと同じく軽い注意程度で済ませていただろう。

 

 しかし、民が危険に晒される問題になれば話は別になる。何らかの落とし前を付けさせなければ、被害を受けた民は到底納得しない。隆誠はそれを理解しているから、未だに自覚が足りないリムルを窘めていた。

 

「隆誠。補佐である筈のお前がリムル様の考えに背くなど……!」

 

 スライム姿のリムルを持っているシオンが、黙っていられないと言わんばかりに隆誠を殺気を漂わせながら睨みつける。

 

「ならば聞くが秘書、もしリムルが命の危機に晒した原因がフォビオだと分かっても簡単に許す事が出来るのか?」

 

「そ、それは……!」

 

 極端な例を出した事でシオンは理解したのか、途端に言い返せなくなった。

 

 聞いているベニマル達も、隆誠が盟主補佐として当然の事を言っているのだと理解しているから、誰も反論の言葉を口にしない。

 

「そうは言うけどな、リューセー。いくら落とし前を付ける必要があっても、先ずは向こうと話をすべきじゃないか?」

 

「だから魔王カリオンには一度此処へ来るよう、フォビオの部下に書状を出して――」

 

「いいや、その必要はないぜ」

 

 リムルと隆誠が話してる最中、突如第三者の声がした。

 

 この場にいる全員が振り向いた先には、品の良い気性を着崩した、野性味がある金髪の男が木陰から現れる。




今回は原作と殆ど同じです。
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