再転生した元神は転スラの世界へ   作:さすらいの旅人

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その後

 リムルからの説教(と言う名の夜食会)が終わり、魔国連邦(テンペスト)は寝静まる夜となっていた。

 

 殆どの住民が明日に備えて就寝しようとしている中、隆誠は寝室にあるベッドに座ったまま、何かを呼び出そうとしている。

 

「出てこい、『ブレイズ』」

 

 隆誠がそう言った瞬間、彼の影から何かが飛び出した。そして目の前には、背中に翼を持つ赤い獅子が姿を現わす。

 

 狼犬のフェンと同じ巨大サイズであり、一切力を持たない普通の人間が見ただけで確実に恐怖してもおかしくないだろう。以前に威嚇していた樹妖精(ドライアド)のトレイニーですらそうなったのだから。

 

「ブレイズ、今日は手伝ってくれてありがとな」

 

「~~♪」

 

 空永巨大鮫(メガロドン)との戦闘で力を貸してくれた事を感謝をしようと、隆誠は元の世界で造った炎の神造精霊獣を呼び出した。

 

 顔周りを優しく撫でている隆誠に、赤い獅子は気持ち良さそうに喉を鳴らしていた。トレイニーを威嚇していたのとは別人じゃないかと思うほど、大好きな主人の前では甘えた表情になっている。

 

 ブレイズの性別は(メス)である他、他の神造精霊獣達の中で最後に造られた存在。人間の視点で言えば末娘だからか、主人の隆誠に対しては最初に造られたフェン以上に甘えん坊なのだ。それを影の中から見ている長女(?)の狼犬は面白くなさそうに唸り声を上げており、長男(?)の怪鳥と次男(?)の大蛇が必死に宥めようとしている事を補足しておく。

 

 自身の影が何やら騒がしい事に気付いていながらも、気持ち良さそうな顔をしているブレイズが隆誠に話しかける。

 

「グルル~」

 

「ん? 一緒に寝たいって……」

 

 端から聞けばブレイズが何を言っているのかは不明だが、神の能力(ちから)によって造られた隆誠と回路(パス)が繋がってる事で言葉が通じている。

 

「良いよ。それくらいはお安い御用だ」

 

 隆誠は以前にフェンと一緒に寝た事がある。普通の狼犬とは異なる柔らかな被毛で、抱き枕として非常に最適だったから。それは獅子のブレイズも同様で、向こうが一緒に寝たいと言われたら断る理由もないから承諾する事にしたのだ。

 

 久しぶりの抱き枕だなと思いながらブレイズと一緒に寝ようと抱き寄せる隆誠だが――

 

「………え? お前、そんな姿になれるの?」

 

「~~♪」

 

 予想外な展開に目が点になってしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 暴風大妖渦(カリュブディス)一件から数日が経ち、魔国連邦(テンペスト)はすっかり落ち着きを取り戻していたが色々あった。

 

 最初に以前から悩みの種となっていたミリムの破壊活動は、漸く解決の糸口を見つけた。ドワーフのカイジン達の監修により、リムルが作成したドラゴンナックルをプレゼントした事で威力を抑制することに成功したから。その武器の中心部には『減速』と『脱力』の効果を刻んだ魔鋼を忍ばせ、殴る威力を十分の一くらい抑制すると作成者は語っていた。本人がちゃんと加減すれば良いだけの話なのだが、あのお子様思考の魔王に言っても無駄だと悟った隆誠は敢えて何も言わないでいる。

 

 戦いを見届けたフューズ一行は、既にブルムンド王国へ帰還している。友好関係を結べるように国王や貴族らを説得する為に。普通なら相応の時間が掛かるのだが、彼曰く『貴族共に関しては弱みを握っているから、どうとでもしてみせる』と悪い顔をしながら言っていたので、それを知ったリムルと隆誠は内心頼もしい奴だと思った。

 

 武装国家ドワルゴン側の方では、戦闘によって壊された街道は順調に修理するどころか間もなく通じる予定になっている。だがそれとは別に、ガゼル王から戦闘の件について詳しく聞きたいとの事で、リムル宛に正式な招待状を送られている。その内容に暴風大妖渦(カリュブディス)を倒した隆誠も出席するよう書かれていたのは言うまでもなく、立場上は盟主補佐として同行しなければならなくなった。

 

 最後に獣王国ユーラザニアからは、魔王カリオンの言葉を携えフォビオが再び使者として来た。本人が志願したらしく、初めて来た時とは別人のように慇懃な物腰で対応したのを見た隆誠は、きちんと反省しているようだと認識する。渡された書状には『互いの国から使節団を派遣して国交が有益か見極めようではないか』と書かれており、魔国連邦(テンペスト)もいよいよ『国』らしくなってきた事に、盟主リムルは緊張の色を見せていた。

 

 色々とやる事があり過ぎて忙しい日々を送っているが、日々の戦闘訓練は欠かせないのがお決まりだ。隆誠がいる異世界は、戦いで物事が決まる場合が多いから。

 

 盟主リムルも戦闘訓練を行っており、ドラゴンナックルを嵌めている魔王ミリムに模擬戦をしてもらっている。彼女は久しぶりに隆誠も相手したかったみたいだが、当の本人に辞退されて少々剥れ気味になるも、リムルとの模擬戦が面白いみたいで気にしなくなっている。

 

 その肝心の隆誠も時間が空いてる時には訓練をしてるが、この数週間の間、鬼人達との模擬戦が日課となっていた。ベニマル、ソウエイ、シオン、ハクロウの四名が。

 

 特にその中で一番に模擬戦をしたのはベニマルだった。盟主補佐が空永巨大鮫(メガロドン)を炎で倒したのを見た事でライバル視しており、時間が空いた時には模擬戦をしてくれと自ら申し出る程だった。格闘だけでなく、剣劇も必要だと思っていた隆誠としても問題無く承諾している。

 

 相手をする鬼人の中で、剣技に関しては一番強いのはハクロウだった。ベニマル達の指南役でもある事で、単純な力や能力に頼らずに技量が途轍もない。因みに以前軽く手合わせをした事はあったが、その時は互いに小手調べで全力でやってはいない。彼に本気で勝つには、斬撃を三つ同時に繰り出す秘剣、九つの斬撃をほぼ同時に繰り出す『九頭(くず)(りゅう)(げき)』、神速の抜刀術『(あま)(かける)(りゅうの)(きば)』を使わなければ無理だと既に諦めている。

 

 

 

 

「ベニマルって本当に甘い物好きだな。教えてないのに、俺が昼食用の甘いデザート作ったのをどうやって気付いたんだか」

 

「単なる偶然だ」

 

 訓練を終えた昼頃。隆誠は昼食を済ませようと家に戻る途中、ベニマルも同伴していた。

 

 魔物である彼は昼食を必要としないが、隆誠が作る料理は別だった。特に甘い物に関しては目が無いほどに。

 

 そして今はデザートの時間で、既に作られた本日のスイーツをテーブルに置いた途端、待ってましたと言わんばかりにベニマルが凝視する。

 

「隆誠、これは前に食べたホットケーキじゃないな」

 

「今回はチーズケーキを作ったんだ。その名前通りチーズを使った甘い物で、この上にメープルシロップをかけて……」

 

 以前から持っているチーズケーキの上に、メープルシロップを掛ける隆誠。チーズと合わさったシロップの甘い香りがして、ベニマルは益々食べたそうな表情となっていく。

 

 そしてデザートタイムとなって、ベニマルが食べると――

 

「ああ、美味い」

 

 至福の一時を味わうように幸せな表情をするのであった。

 

 因みにリムルもチーズケーキは好きだが、今日もミリムの相手をしているから、後日に作ろうと全て食べてしまう。

 

 そして昼食が済んだ後、魔王ミリムが急な仕事で魔国連邦(テンペスト)を離れたとの情報が入る。突然の事に隆誠は驚くも、漸くリグルドの溜飲が下がるだろうと安堵するのであった。




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