再転生した元神は転スラの世界へ   作:さすらいの旅人

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今回は短いです。


獣王国ユーラザニア①

 獣王国ユーラザニアに到着した隆誠たち使節団は首都に入り、魔王カリオンが住まう王宮前で馬車を止めて降りた後、目の前には知っている人物が佇んでいた。

 

「使節団の方々、ようこそお越し頂きました。本日は魔王カリオン様の三獣士が一人、(コク)(ヒョウ)()のフォビオが皆様をご案内します」

 

 歓迎の姿勢を見せているのは、以前に使者としてやって来たフォビオだった。初めて会った時は傲慢で横柄だったが、そんな素振りは一切見せず、魔王カリオンの配下として相応しい振舞いをしている。

 

 しかし、他はそうでもない。配下と思われる獣人達が、大変不服そうな表情をしているのだ。魔物のベニマル達にではなく、人間の隆誠だけに対して。

 

「この度は名高き獣王国ユーラザニアへ御招き頂き、ありがとうございます。私はジュラ・テンペスト連邦国盟主リムルの補佐を務める、司波隆誠(リュウセイ・シバ)と申します。使節団団長のベニマル、並びにリグル達ホブゴブリンの責任者として同行させて頂きました。見ての通り人間なので至らぬところは多々ありますが、どうかご容赦下さい」

 

 隆誠は不服そうな獣人達に気付いていながらも、敢えて気にせず礼儀正しく振舞っていた。彼がお辞儀をすると、ベニマルやリグル達も倣うように同様の仕草をする。

 

 それを見たフォビオは感心した後、彼等を王宮へ案内しようとするも――

 

「お待ち下さい、フォビオ様!」

 

 突如、配下と思われる一人の獣人が異を唱えた。

 

 こうなる事を予想していたのか、フォビオが眉を顰めながら視線を向ける。

 

「いきなり何だ?」

 

「魔物達が王宮へ案内するのは問題ありませんが、その人間だけは断じて認められません!」

 

「控えろ。お前の振る舞いは、カリオン様の顔に泥を塗るのと同じだぞ!」

 

「勿論それは重々承知しております! ですが人間は矮小で小賢しく卑怯な存在だと、フォビオ様も仰っていたではありませんか!」

 

 余程人間の事が嫌いな獣人の主張に、他の獣人達も賛同するように頷いている。

 

 ユーラザニアの住民達の大半が人間嫌いである事を既に予想していた。以前に魔国連邦(テンペスト)へ訪れたフォビオが、盟主補佐に向かって下等な人間と見下していたのだ。他の獣人もそう言う考えを持っているのは容易に想像出来たから、隆誠は冷静に見ている。

 

 国同士の交流を始めて早々起きた一悶着に、ベニマルやリグル達は不愉快な表情になっていく。人間でも分け隔てなく魔物の自分達と接している盟主補佐を、こうまで侮辱するのは黙っていられない。

 

 しかし、隆誠から向こうが挑発しても安易に乗らないように忠告された為、取り敢えずと言った感じで我慢してくれている。

 

「ハハハハハハ!」

 

 突然爆笑する隆誠にベニマル達だけでなく、フォビオも含めた獣人達もギョッとした反応を見せた。

 

「ああ、すいません。獣人の貴方達から見て(この世界の)人間がここまで見下されるとは思いませんでしたよ」

 

 ですが、と言って隆誠は言葉を続ける。

 

「そんな管見にとらわれていては、貴方達の程度が知れると言うモノですよ」

 

「何だと!?」

 

 隆誠は事実を言ったのだが、獣人側からすれば侮辱も同然だった。

 

 しかし、フォビオだけは全く違う反応を示している。まるで何処かでみたやり取りだと言うような感じで。

 

「まぁ口で言ったところで簡単には信じられないと思うので、此処で少しばかり実力を見せた方が良いでしょうね」

 

「ちょっと隆誠さん、喧嘩を売らず平和的にいくんじゃなかったんですか!?」

 

 相手の挑発に乗って喧嘩を買おうとしてる盟主補佐の言動に、リグルが止めに入ろうとした。

 

「勿論そのつもりだったが、こう言う相手は実力で分からせた方が手っ取り早いと思ってな。ベニマルもそう思わないか?」

 

「同感だ。俺としても盟主補佐のお前が見縊られるのは困るからな」

 

 ベニマルはこの展開を待っていたと言うような感じで、止める気配を一切見せなかった。寧ろ奴等に実力を見せてやれと押している。

 

 リグル達ホブゴブリンが慌てた様子を見せている中、隆誠は礼服として身に纏っていたコートを脱いでベニマルに預けていた。

 

「さてさて、本当なら獣人の皆様と一人ずつ相手をしたいところですが、魔王カリオン殿を待たせる訳には行かないので――はぁっ!」

 

『ッ!?』

 

 隆誠が抑えている力を解放しようと、全身から凄まじいオーラが吹き荒れた。

 

 今の彼は両腕両脚に(バンド)を装着している為に本来の全力を出せないが、それでも目の前にいる獣人達を簡単に倒せるだけの実力はある。先程まで隆誠に対して見下していた筈の(フォビオを除く)獣人達は、今までとは打って変わるように警戒しているのが何よりの証拠だ。

 

「どうしました? 貴方達の言う矮小で小賢しく卑怯な人間がこうして前に出ているのに、何をそんなに気圧されているのですか?」

 

「ぐっ……」

 

 オーラを解放する隆誠に、先程まで強気な態度を見せていた一人の獣人が完全に呑まれて後ずさっていた。

 

 彼は戦わずとも理解しているのだ。目の前の人間は自分とは比べ物にならない実力者の持ち主で、例え果敢に挑んでも無様にやられてしまうと。

 

(いや、この方はまだ全力を出していない!)

 

 獣人達と一緒に隆誠のオーラを一心に受けているフォビオだけは違う。

 

 暴風大妖渦(カリュブディス)との融合中に意識は殆ど失っていたが、その時に隆誠の全力と思われるオーラを感じ取っていた。その時と比べた事で、今の彼は本気を出していないのが分かるから。

 

 魔国連邦(テンペスト)へ向かった自身と同じ三獣士の一人、白虎(ビャッコ)(ソウ)のスフィアがもしこの場に居たら、興奮するように血を滾らせながら挑む姿を容易に想像出来てしまう。本当ならフォビオも戦いたいところだが、今の彼は魔王カリオンに今回の交流で軽はずみな行動を取らないと固く誓っている身なので無理だった。

 

 強気に出ていた筈の獣人達が隆誠に気圧されている中、

 

「おいおい、中々面白そうなことをしてるじゃねぇか」

 

 王宮から予想外の人物――魔王カリオンが現れた。

 

「カリオン様!」

 

 玉座で待っている筈のカリオンが来た事に、フォビオは驚きの声を上げていた。それは当然、他の獣人達も同様に。

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