「フォビオ。この俺様が玉座で待っていたってのに、これは一体どう言う事だ?」
「……申し訳ありません、カリオン様。少しばかり問題が起きまして」
カリオンの問いにフォビオは少々間がありながらも、謝罪の言葉を述べた。
本当は配下である獣王戦士団の一人が問題を起こしたのだが、彼は自分の責任だと言わんばかりの姿勢を見せている。
カリオンはそれを既に見抜いており、視線をフォビオから配下の獣人達を見ている。
「フンッ。大方コイツ等が勝手に盟主補佐を人間と言う理由だけで因縁をつけてきたんだろ。んで、あれ程の力を見せてる奴を見てもまだ気に入らないのか?」
『いえ、一切ございません!』
先程までとは打って変わるように、一切の不満がないように答える獣人達。
(やはりな……)
即座に乱れの無い返事を聞いた隆誠は確信した。先ほどのやり取りは自分を試していたのだと。
魔王カリオンは盟主補佐が人間だと知っているから、ユーラザニアの部下達にも当然周知させている筈。なのに獣人達が人間と馬鹿にした時点で、これは何か思惑があるのではないかと隆誠は途中で気付いた。
そして案の定と言うべきか、カリオンの登場によって空気が一気に変わり、今の彼等は誰一人とも隆誠を嘲る視線を見せようともしない。あくまで主の前でそう見せていると疑ってもおかしくないが、彼等は人間と違って正直な種族なのだ。獣人は強さこそが全てと言う実力主義であるが故に。
「悪かったな、隆誠。コイツ等は見たものでしか簡単に信じられない連中なんでな」
「いえ、お気になさらず」
隆誠はそう言いながら、全身から吹き荒れてるオーラを消失させた。それを見たカリオンが何故か残念そうになっている。
「にしても、前に見た時よりまた一段と腕を上げたようだな」
「魔王カリオン殿からすれば些末なモノに過ぎませんが」
「人間だからって謙遜する必要はないぜ。さっき見せた力はまだ本気じゃないってことは分かってる」
『!?』
カリオンの台詞にフォビオを除く獣人達は驚愕を示した。先程まで力の差を教えられたと言うのに、あの人間は一体どれだけの実力があるのだと彼等は逆に気になり始めている。
「ミリムが認めるほどの実力者であれば一度手合わせしたいが――」
「カリオン様!」
「冗談だ。いきなり
いきなりの発言にフォビオが諫めようとするも、カリオンは笑い飛ばしながら否定した。
(初日から、ねぇ)
しかし、隆誠は内心嘆息した。今日は手合わせをしなくても、その翌日以降からやる事が決定している為に。
魔王カリオンが他の獣人達と同様、根っからの武闘派だと言う事を隆誠は改めて理解する。
因みにリグル達ホブゴブリンが少々焦り気味の中、好戦的なベニマルだけは明日以降から楽しくなりそうだと笑みを浮かべていた。もしも隆誠が同行していなければ、彼は自分からカリオンに喧嘩を吹っ掛けて勝負を挑もうと考えていたから。
少々物騒な会話をしていたが、隆誠達は漸く王宮へ案内されるのであった。
☆
夜の時間となり、カリオンの宮殿で歓迎の宴を催されている。
ユーラザニア側で用意してくれた食事の中で、隆誠達が一番驚いているのは果実の盛り合わせだった。
「これは素晴らしい。どの果実も瑞々しく甘くて、人間の私から見ても最高級品だと断言出来ます」
「ああ、美味い……」
果実を食べながら味の分析をしている隆誠とは別に、甘党のベニマルは余りの美味しさに頬が緩んでムシャムシャと食べていた。リグル達も
それとは別に、この場にいない獣人達はある物に熱中している。
娯楽品とはチェスや将棋、麻雀などの
戦闘以外の楽しみを得る事が出来たカリオンは楽しそうな表情となっており、今は
「気に入ってくれて何よりだが、お前達が用意してくれた酒も美味いじゃねぇか!」
カリオンが美味しそうに飲んでいるのは林檎のブランデーで、今のところ
彼以外にも宴に参加している獣人達も気に入っており、誰もが夢中になって何度もお代わりしては飲んでいる程だ。
「確か林檎の
彼が言ったアルビスとスフィアとは、フォビオと同じ三獣士の事だった。その二人はユーラザニア側の使節団の代表として
アルビスは
今頃
「そっちが良ければ俺の国にも酒を回して欲しいな」
「申し訳ありません。恥ずかしながら果物は試験的にしか作っておらず、今も森からの恵みに頼っている状態でして」
一通りの説明を聞いたカリオンは酒を飲みながらも考える仕草をした後、笑みを浮かべながらこう言った。
「そう言う事か。だったら、こっちの果物を使えばいい。その代わりと言っちゃなんだが――分かるよな?」
「……なるほど」
その先を聞かなくても隆誠は分かった。果物を提供する対価として、それで造った酒を寄越せ、と。
「因みに割合は?」
「話が通じて助かるぜ。細かい事はそっちに任せるが、何か不便な点があれば遠慮無く言ってくれ」
雑務一切を全て丸投げしてくるカリオンだが、それでも困っている事があれば手助けはすると約束した。
どちらにしても
「一応確認しておきたいのですが、我が国にいる商人は
ユーラザニアの首都は弱い種族が入れない修羅の国である為、
「だったら俺様が直々に許可証を発行しよう。こんな美味い酒が飲めるなら喜んで協力するぜ」
酒を飲みたいが為に協力するカリオンに、隆誠は相当な酒好きだなと苦笑しながらも様々な取引をするのであった。
一方、
「………はぁっ」
初日にユーラザニアの使節団との有意義な取引をしたリムルは、自身の庵に戻った後に何故か嘆息していた。
いつもであれば隆誠の家に行って夜食を頂くのだが、その家主がユーラザニアに向かって交流中の為に不在だった。
数日経てば戻って来るのは分かっても、同郷人と一緒にいる時間はリムルにとっては楽しい日常の一つとなっている為、彼がいない事に寂しさを感じている。
「早く帰って来ないかなぁ……」
リムルはそう言いながら、隆誠から借りたゲーム機を起動させるのであった。