再転生した元神は転スラの世界へ   作:さすらいの旅人

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久しぶりに投稿しました。


獣王国ユーラザニア③

 獣王国ユーラザニアに滞在して数日。魔国連邦(テンペスト)の使節団は軍事面や生活面について学んでいた。

 

 先ず軍事面については、一人たりとも弱卒はいないと断言してしまう程だった。その方面を重点的に見ていたベニマルですら、一兵士ですら徹底的に鍛え上げられていたことに感服した程だ。隆誠も魔国連邦(テンペスト)の戦力は獣王国(ユーラザニア)には劣らないと見ていたが、獣人達の戦闘力は相当なもので、下手に敵対すれば不味いと考えを改めている。

 

 次に生活面の方だが、此方は主にリグルたちホブゴブリンが担当していた。王宮には贅を凝らしている反面、一般市民の住居は質素なのだが、その暮らしに誰一人達とも不満は無い。獣人は強者を称える傾向がある為か、魔王カリオンの恩恵を得ている住民はこれが当然と考えているかもしれない。

 

 魔国連邦(テンペスト)と比較しても似たり寄ったりと思いきや、一番に負けている所――農業があった。獣王国(ユーラザニア)は広大な田畑が広がって、様々な農作物が彩り豊かに実っており、それを見たリグルは大変素晴らしいものだったと報告している。

 

 一通りの情報を得た隆誠は、リムルに良い報告が出来そうだと充分な結果に満足していた。特に農業に関する技術は魔国連邦(テンペスト)では必要だから、次の使節団を送るのは是非とも習得する必要があると。

 

 これで心置きなく魔国連邦(テンペスト)に帰還出来ると思っていた際――

 

「おい待てよ、隆誠。折角来てくれたんだから、帰る前に軽く手合わせしねぇか?」

 

「……………そうですね」

 

 魔王カリオンが逃がさないように模擬戦の提案をするので、世話になった隆誠は承諾せざるを得なかった。

 

 

 

 

 場所は王宮の訓練場。

 

 その中心地から何かがぶつかり合う衝撃音を響かせている。

 

「はっはっはっは! やるじゃねぇか、隆誠! 俺様と此処まで戦える人間はお前が初めてだぜ!」

 

「それはどうも!」

 

 カリオンと隆誠が、己の拳と脚を使って激しい格闘戦をしていた。その周囲にはベニマルやリグル、フォビオたち獣人が二人の戦いを見守っている。

 

 つい先程までベニマルとフォビオが模擬戦をして、結果としてはベニマルが勝利。その結果にフォビオは口惜しそうにしながらも、次は必ず勝つと宣言して問題無く終わった。

 

 そして魔王カリオンが痺れを切らしたかのように、勝負を見守っていた隆誠に手合わせをしたいと指名して、今こうして攻防を広げている。

 

 因みに今の隆誠は両腕両脚に付けている(バンド)は既に外している。戦う前にカリオンから外せと言われてしまい、抑えていたオーラを解放せざるを得なくなったのだ。

 

 お互いに手の内を見せていないが、それでも先程戦っていたベニマルとフォビオ以上の攻防を繰り広げている。パワー、スピード、どちらも両者譲らずと言う感じで。

 

(コイツ、まだ隠してやがるな)

 

 カリオンは隆誠に枷を外させても、まだ本気を出していないのをとっくに気付いている。

 

 同時に納得もしていた。あのミリムが認めるほどの強者なのは確かである事に。

 

 魔物化したフォビオを圧倒、部下達を威圧する凄まじいオーラ。これを知った時からカリオンはすぐにでも隆誠と手合わせしたかったが、国同士の交流を無駄にしないよう、一通り終えてからやる事にした。

 

 自分とまともに戦える相手は、最早他の魔王達しかいないと思っていたが、それは大きな間違いだと改めて認識させられている。今まで脆弱な存在としか見てなかった筈の人間が、魔王の自分とここまで戦えるなど全くの予想外だったが。

 

 だが、今の彼は最早そんな事は既に如何でも良くなっていた。この機会に是非とも隆誠の本気を見てみたいと考えている。

 

「どうした隆誠! その程度じゃ俺は倒せねぇぞ!」

 

「ぐっ!」

 

 カリオンが隙を突くように頬に一発当てた。隙だらけな姿を晒しているところ、追撃をしようと再度拳を振るう。

 

 二度も喰らいたくなかったのか、隆誠が咄嗟に躱しながら後退して距離を取る。

 

 開始してまだ数分しか経っていないが、見守っている者達は息をのむばかりだった。特にフォビオも含めた獣人達は、人間の隆誠が主のカリオン相手に互角の戦いを繰り広げるなど余りにも予想外な為に。

 

「………ふぅっ、流石ですね。俺もそれなりに鍛えたのですが、上には上がいると痛感させられます」

 

「ふんっ、よく言うぜ。この俺様の一撃を受けても、大してダメージはねぇだろ」

 

 隆誠に頬を当てた拳は加減したとは言え、配下の獣人達でも簡単に起き上がれない威力があった。にも拘らず、受けた当の本人は未だにピンピンしてるから、カリオンは内心流石だと称賛している。

 

 拳を交えて分かった事がある。この人間の実力は『三獣士』を上回っているだけでなく、自分を倒せる切り札らしきモノを持っていると。まだ始まったばかりとは言え、冷静な表情で自身を観察するように見ているのだから。

 

「隆誠、どうせなら俺様に手札の一つくらい見せろ」 

 

「……重りを外した時点で、既に見せているんですが」

 

 隆誠としては、出来ればこれ以上の手札を見せる事無く終わらせたかった。下手に披露すればカリオンや他の獣人達に警戒されるどころか、仲間のベニマルからも余計に興味を持たれてしまうから。

 

 暗に見せたくないと伝えるも、カリオンはこう言った。

 

「見せてくれたら、次回の使節にはお前達が欲しがってる農業の専門知識を提供してやっても良いぜ」

 

「っ……」

 

 カリオンは魔国連邦(テンペスト)側が獣王国(ユーラザニア)の農業に関心を寄せてる事に気付いているようだ。交流をしてるから知識(ノウハウ)を提供するつもりでいるが、手合わせしてる隆誠の手の内を是非とも見たい彼は、少々せこいと分かっていながらも条件を突き出す事にした。

 

(此方の弱いところを突いてくるなぁ)

 

 盟主リムルが知れば絶対に食い付く条件に、隆誠は少しばかり困っていた。

 

 自分の手札を見せるだけで農業技術が向上する事を考えれば、魔国連邦(テンペスト)の食糧事情や生産性が更に改善出来る。

 

 そう考えた隆誠は、魔王ミリムにも対抗出来る手段の一つを披露する事にした。

 

「良いでしょう、そこまで言われたら出さざるを得ませんね」

 

「!」

 

 腹を括る隆誠が目つきを変えた途端、カリオンは思わず警戒するように構えだした。

 

「はぁぁぁぁぁぁ……!」

 

(オーラの量が桁違いに上がってるだと!?)

 

 隆誠が全身から凄まじいオーラを解放してる事で、彼から放たれる突風にカリオンだけでなく、ベニマルやフォビオ達も踏ん張っていた。

 

「龍帝拳!」

 

「ごっ!」

 

『ッ!?』

 

 全身やオーラが赤く染まった隆誠は、(ノーマル状態の)カリオンですら視認出来ない程のスピードで接近して頬に拳を当てて吹っ飛ばした。突然の光景にフォビオ達は信じられないように驚愕している。

 

 隆誠が発動させた『龍帝拳』は、全力(フルパワー)になった自身の力を更に高める事が出来る技で、前世(むかし)(イッセー)が使っていた。

 

 本来であれば神滅具(ロンギヌス)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』が無ければ使えない技だが、開発者である隆誠が赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)『ドライグ』から戦闘データを得た事によって、それが無くても再現出来るようになった。

 

 尤も、この技は元の世界で使う必要性が全く無かった為に今まで封印していた。魔法師として最強クラスの実力を持つ異母弟妹の達也や深雪ですら、隆誠から見れば全力を出すに値しない相手だった為に。その他の魔法師や剣士達も同様であり、元の世界では一度も本気で戦った事が無いのだ。

 

 しかし、今は違う。別世界(ここ)にはとんでもない強者達がいると知った隆誠は前世(むかし)の血が騒ぎ、元の世界以上に鍛錬に励んだ結果、『龍帝拳』の維持と出力を大きく向上している。

 

 カリオンに使った龍帝拳は、その気になれば十倍まで可能となっている。だけど今の状態で十倍を使うと身体が耐え切れない為、安定して使う為に敢えて五倍にしていた。

 

「ド…ラ…ゴ…ン……!」

 

「ちぃっ!」

 

 追撃しようと接近した隆誠が拳を振るうも、カリオンは吹っ飛びながらも急上昇したことで躱した。

 

 躱すのを予想していたのか、隆誠は空かさず上空にいるカリオンを見ながら構えて――

 

「波ーーーーーーっ!!!!!」

 

 (イッセー)が愛用していた技『ドラゴン波』を放つのであった。

 

「ッ! 面白ぇ!!」

 

 大出力のオーラを放った技にカリオンは目を見開くも、途端に好戦的な笑みを浮かべながら急停止して両腕を前に突き出した。

 

 直後、隆誠が放ったドラゴン波をカリオンが受け止める。

 

 その所為で訓練場どころか、王宮全体に影響を及ぼすほどの突風が吹き荒れており、獣人達は勿論、ベニマルですら踏ん張るのもやっとだった。

 

「グギギギギ……!!」

 

「ぐ、くっ……!」

 

 受け止めているカリオンは既に青筋を浮かべるほどの本気の表情になっており、隆誠も負けじとドラゴン波を放ち続けている。

 

 両者の根競べは数秒以上続くも――

 

「がぁぁぁーーーーーーーーーーーーーっっっっっっ!!!!!」

 

 突如カリオンの姿が急に変化した事で、隆誠が放っているドラゴン波は崩壊するように大爆発が起きた。

 

 訓練場から発生した爆風と衝撃は、最早王宮だけでなく、一般市民の住居にまで及んでいる。

 

 

 

 

 

 

「いや~、あの時は本気で焦った! あれが人間の底力だと思うと、今まで侮っていた自分が恥ずかしくなるくらいだ!」

 

「俺としても、貴方があの姿(・・・)になるのは予想外でしたが」

 

 真夜中の時間。隆誠はカリオンがプライベートで利用してる私室で接待をしている。

 

 あの大爆発が収まった後、王宮どころか獣王国(ユーラザニア)全体が大騒ぎとなっていた。何しろカリオンがユニークスキル『百獣化』の姿にならなければ不味い程の威力だったのだから。

 

 自分達が崇拝している主を死の危険まで追い詰めた行為に、配下の獣人達が一気に猛抗議してきたのは言うまでもない。

 

『やめねぇか! これは俺が隆誠に無理を言ってこうなったんだ! 文句があるなら俺に直接言え!』

 

 そう言ってカリオンは部下や住民達が暴走しないよう、隆誠に一切非は無いと国全体に周知した結果、もう既に何事も無かったかのように収まっている。流石は獣王国(ユーラザニア)の君主と呼ばれるだけあると、隆誠は心底感心した。

 

 普通なら気まずくなるのだが、当の本人は全く気にせず、今こうして魔国連邦(テンペスト)盟主補佐の手料理を楽しんでいる。

 

「ではご迷惑をお掛けしたお詫びとして、俺が作った特製の『蜂蜜酒』とつまみをどうぞ」

 

「おいおい、林檎の蒸留酒(ブランデー)以外の酒もあったのかよ。何で初日の時に出さなかったんだ?」

 

「これは魔国連邦(テンペスト)でしか作れない希少な酒な上に、そう簡単にお渡し出来る物ではありませんので」

 

「そうか。其方がお詫びとして出してくれるなら、有難く飲ませてもらうぜ」

 

 興味深そうにグラスを持ってグイッと飲んだ後――

 

「ぷはぁ! こりゃ美味ぇ! もう一杯くれ!」

 

「良いですけど、今度はちゃんと味わって飲んでくださいね」

 

 蒸留酒(ブランデー)とは違う美味しさに魅了されるカリオンであった。

 

 後日、部下達には内緒で隆誠から極秘に蜂蜜酒を融通してもらうよう頼んでいたとか。




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