再転生した元神は転スラの世界へ   作:さすらいの旅人

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前回と違って、少々長めに書きました。


武装国家ドワルゴン①

獣王国(ユーラザニア)とは違うな)

 

 武装国家ドワルゴンに入国する前の大門を見て、隆誠は思わず数日前に訪れた国と比較していた。

 

 獣王国ユーラザニアも当然門はあるが、此処と違って威圧的ではない。仮に無理矢理入ろうとしたところで、魔王カリオンに鍛えられた兵士達から手厚い洗礼を受ける破目になって追い出されるのがオチだが。

 

 比較している隆誠とは別に、今までシュナの膝の上でゆったりしていたスライム姿のリムルは車体の中で人型に変化すると、儀礼用の正装を纏った姿になる。因みに隆誠は元から人間なので、四日目の朝の出発前に正装に着替えを済ませていた。

 

 車から降りたリムル、隆誠、シュナ、カイジン、ドワーフ三兄弟、狼車を引いているゴブタ達が大門を通ろうとする際、同じくドワルゴンに入ろうとしていた者達が凝視している。スターウルフでも充分に興味を引き付けているだけでなく、大門を開いてまで迎え入れる一行も気になっているから。

 

「よう、兄貴。元気そうで何よりだ」

 

「カイドウか! 久しぶりだな、元気か? 俺はリムルの旦那のもとで楽しくやってたぜ!」

 

「だろうな。顔見りゃ分かるよ。ガルム達も元気だったか?」

 

 警備の一人がカイジンに話し掛けたのは、仲の良い身内らしき者だった。

 

 互いの呼び方からして兄弟だと言うのがすぐに分かった隆誠は、仲の良い二人を見て思わず笑みを浮かべる。

 

「で、リムル殿はどこだ? あの方は国賓だからな。先ずは挨拶をしなきゃならんのだが……」

 

 久しぶりに会った兄とドワーフ三兄弟の元気な姿を見て満足そうな表情となったカイドウは、次にリムルに声を掛けようとしていたが、どこにいるのか分からないように周囲を見回していた。

 

 彼が捜している人物は目の前にいるのだが、全く気付いていない。

 

『リムル、あのドワーフは貴方の姿を知らないのか?』

 

『あ、忘れてた。スライムの時の俺しか知らないんだった』

 

 思念伝達で確認する隆誠に、リムルは途端に思い出す。彼が人型の姿を知らない事を。

 

 カイジン達が人型になった盟主を改めて紹介すると、全く別人の姿である事を認識した瞬間、目を丸くして口をパクパクするカイドウは完全に混乱していた。

 

「リ、リムル――殿も、お元気そうで何よりです……。で、では此方へどうぞ」

 

 混乱していたカイドウは漸く口を開いて、気まずそうに案内をしようとする。

 

 彼の心情を理解してるのか、リムルは苦笑だけに留めながらも隆誠達を連れて後に続く。

 

 

 

 ドワーフの警備部隊に案内され、リムル達は門を潜った。

 

 王宮に着いた際、天翔騎士団(ペガサスナイツ)団長のドルフが出迎えた事で、カイドウは警備の仕事に戻ろうと別れる。

 

 文官の格好をしているドルフが何故と疑問を抱いてもおかしくないが、ガゼル王直属の極秘部隊の為に普段は身分を偽っていると事前に聞かされていた。それを知っているリムル達は敢えて何も知らないように振舞い、ただの文官として接している。

 

 ガゼル王と会う前に、(天翔騎士(ペガサスナイト)も混じってる)他の文官達から武装解除を要求された。リムルが腰に差した直刀を渡し、隆誠も倣ってクロベエが作ってくれた打刀を渡している――のだが、ドルフから他にも持っていないかと何度も確認された。打刀以外の武器は一切事を主張した事で如何にか事無きを得た後、完全武装状態のゴブタ達とも一旦別れる事になった。

 

 ドワーフのカイジン達とは別に、盟主リムルの付き添いは文官のみとなっているが、そこは然して問題無い。盟主補佐の隆誠と秘書のシュナが付き添うのは当然だから。

 

 一通りの確認を終えた事で、漸く面会が始まろうとする。

 

「久しいな、リムルに隆誠よ!」

 

 王の間の奥にある玉座に座る武装国家ドワルゴン国王、ガゼル・ドワルゴはリムルだけでなく隆誠にも声を掛けるのだった。

 

 

 

 ガゼル王との対面が始まるも、リムルはずっと笑顔のまま緊張していた。

 

 盟主になったとは言っても、王としての振る舞いを一切知らないので無理はない。故に隆誠とシュナが全て対応する手筈になっている。

 

 人間と大鬼族(オーガ)の姫による二人の対応は見事で、一連の流れを見ていたガゼル王も感心する程だった。特に隆誠の方を見ながら。

 

 一旦小休止をしてから、次は歓迎する為の宮廷晩餐会を行った。リムルは緊張していた所為もあって、美味しい筈の料理が美味しく感じなかったとか。

 

 一通りの挨拶や宮廷作法はべスターから指導を受けている筈なのだが、初めての国賓待遇による緊張と不安で殆ど活かせなかったようだ。だが、これを経験として次回はもう少し上手く出来る事を願う隆誠だった。

 

 表面上の堅苦しいやり取りが漸く終わり、此処からリムルの出番となり、ガゼル王と腹を割って最重要となる話に移ろうとする。

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって応接室。

 

 差し向かいで応接椅子に腰掛けるリムルとガゼル王。

 

 ガゼル王の背後には護衛として、団長のドルフが立っている。

 

 リムルの背後にも補佐の隆誠が立っており、シュナは魔国連邦(テンペスト)から持ってきた飲み物を用意しに席を立っていた。

 

「ガゼル王に先ずは感謝を。カイジン達の罪を取り消してくれてありがとう」

 

「他の大臣共を納得させる為には、国外追放とするのが最適だったからな」

 

 リムルからの感謝の言葉に、ガゼル王は今までと全く違って砕けた雰囲気となっていた。

 

 カイジン達の罪に関して隆誠も一通り聞いた。リムルが初めてドワルゴンに訪れた際、べスターの策略によって国外追放となった事を。尤も、カイジン達を陥れた当の本人はガゼル王にバレてしまった事で免職となり、現在は魔国連邦(テンペスト)で真面目に働いている。

 

「最初から許すつもりだったって事か」

 

「それもあるが、貴様のような怪しげな者に、我が国内で自由にさせるのは面白くないと思ったからだ」

 

「あはは……」

 

 とても一国の王としての振舞いではないリムルだが、ガゼル王は全く気にしてない様子。先程まで対応していた大臣達が目にしてれば確実に憤慨してるだろう。

 

 隆誠も外交で作法は必要不可欠だと理解しても、一般庶民の人間に転生した事もあってか、今のような会話を非常に好ましく思っている。

 

「とは言え、カイジンやガルム達を手放すなど、断腸の思いであったわ」

 

「ガルムのお陰で防具類も用意出来たし、ドルドやミルドは建設関係で大いに役立ってくれている。それに、カイジンが俺の手の届かない分野を取り纏めてくれてるので、どうにかこうにか集団としてやっていけてるんだ」

 

「奴等も我が国で燻ぶっておるよりは、自由にその腕を振るえる身を置く方が良かろうて」

 

 魔国連邦(テンペスト)の基礎を作り上げたのはカイジン達のお陰と言っても過言ではない。リムルは心からそう思っており、彼等が来てくれた事を非常に感謝している。

 

 報告を聞いたガゼル王は改めて彼等を手放した事を悔いつつも、魔国連邦(テンペスト)で伸び伸びとやらせる方が良いのだと改めて理解していた。

 

「ところで、べスターはどうした?」

 

 すると、思い出したようにガゼル王が疑問を投げかけてきた。

 

 今回の外遊でカイジン達が来てるのだから、べスターも来ると思っていたところ、姿が無かったから訊ねるのは当然だ。

 

「いやあ、誘ったんだけどね……」

 

 以前あった件が未だに尾を引いているのか、成果を出すまではガゼル王の前に出す顔を持ち合わせていないと言う理由で断っていた。

 

 当の本人が行かないと言うのであれば無理強いは出来ない為、リムルは諦める事にしたのだ。

 

「ふははは。べスターらしいのう。奴もまた、その才を存分に発揮出来る場を得たと言う事か」

 

 リムルから不参加の理由を聞いたガゼル王は笑顔を浮かべた。

 

 しかし、此処から途端に真面目な雰囲気となる。

 

「で、リムルに隆誠よ。改めて聞きたい事がある」

 

 リムルと話していた筈のガゼル王は、隆誠にも問おうとしていた。

 

 今まで聞き役に徹していた盟主補佐は、向こうが何を訊いてくるのかを既に予想してるように一切動揺していない。

 

「あの空永巨大鮫(メガロドン)暴風大妖渦(カリュブディス)を倒したと言う高出力の魔法兵器とは、一体どのようなものなのだ? 戦略級魔法をも凌ぐ前代未聞の威力だったそうだが?」

 

「ああ……それについてはリューセーの方で」

 

 ガゼル王の質問に困っていたリムルは後ろにいる補佐にパスした。寧ろ、それは自分も聞きたい位だと思っているから。

 

「ドルフ殿にお答えしたように、魔法兵器など一切使わず全て自分だけの能力(ちから)で倒したのですが」

 

「貴様の力だと?」

 

「あの日もそんな冗談を言っておられましたが……」

 

 聞いていた話とは全く違うとガゼルは眉を顰めるも、彼の背後にいるドルフは疲れたような表情で嘆息していた。

 

「申し訳ないが、そんな簡単に信じられません。仮に真実であったとすれば隆誠殿、貴方は天災級(カタストロフ)の魔王に匹敵すると言う事になるのですが……」

 

「それはいくら何でも買い被り過ぎです。もしそんな事を近くにいた魔王ミリムに聞かれでもしたら絶対黙ってませんよ」

 

「は? 魔王ミリムがあの場にいたですと?」

 

「いましたよ。リムルの近くにピンク髪のツインテールの少女が。あれが魔王ミリムです」

 

 隆誠が当時の事を放すと、ドルフはその時に確かに見慣れぬ娘がいた事を思い出す。

 

 あの時の娘が本当に魔王ミリムだったのかと、余りにも内容がぶっ飛び過ぎて理解に苦しんでいる。

 

「ふっ。くっくっく……。ホラにしては荒唐無稽が過ぎる話だが、貴様が嘘を吐いているとは思えん」

 

 聞いていたガゼル王はドルフと違って素直に受け入れていた。

 

「だが隆誠よ、これからは無暗に使うでないぞ。魔国連邦(テンペスト)を守る為に力を行使したとは言え、他の人間達が知れば黙っていないのは分かっておろう?」

 

「無論です。他の人間と言えばブルムンド王国にも知られていますが、ね」

 

「問題無かろう。恐らくは貴様を刺激しないよう慎重な姿勢になってる筈だ」

 

 ガゼル王の予想は隆誠も同様に考えていた。魔国連邦(テンペスト)に来ていたギルマスのフューズが帰国する直前、『もし貴方やリムル殿がブルムンドへ来た際、私が対応させて頂きます』と言っていたから。

 

「因みにガゼル王やドワルゴンの方は?」

 

「そうだな。もし魔国連邦(テンペスト)に居辛くなったのであれば、此方で面倒を見てやっても良いぞ」

 

「リューセーは(色々な意味で)必要不可欠な人材なんで、引き抜きは一切認めません!」

 

 ガゼル王は隆誠の力を脅威と見ても人格面について問題無いと判断している。

 

 もしもの時に備えての軽い勧誘をするも、少々感情的になってるリムルが拒否の姿勢を示した事で、彼は思わず笑みを浮かべてしまう。

 

「魔物のリムルにそこまで言わせるとは、貴様相当に懐かれておるではないか」

 

「誉め言葉として受け取っておきます。もうついでに俺は盟主に保護してもらった恩がある為、他国に移る気は毛頭ありません」

 

「そうか。それは残念だ」

 

 勧誘に興味ない隆誠からの返答に残念がるガゼル王だが、実は全くそう思っていない。寧ろ彼を補佐に就かせた弟弟子の判断は見事だと内心称賛している。

 

 因みに聞いていたドルフは少々ハラハラするも、王が判断した以上はもう何も言うまいと気にしない事にした。

 

「しかし、まさか魔王ミリムとも知り合いになられていたとは驚くばかりです」

 

「あ、ドルフさん。それは自分の管轄外なので、彼女関連については盟主に聞いて下さい」

 

「おい!」

 

 ミリムについてはリムルが対応してるのは事実だが、完全に丸投げな姿勢を見せる隆誠に思わずツッコミを入れた。

 

 コント染みたやり取りを見せる盟主(まもの)盟主補佐(にんげん)に、ガゼル王とドルフは種族の蟠りなど一切関係無く息が合っているなと感心そうに見ている。

 

 そんな中、席を外していたシュナが入室してきた。

 

「お待たせしました」

 

 そう言いながら今回用意した土産を乗せたワゴンを押してるシュナが近付いてくる。

 

「それは何だ?」

 

「此方のチョッとした手土産です」

 

「シュナ、頼む」

 

 ガゼルの問いに隆誠が答えると、リムルはシュナに合図を出した。

 

 手土産――林檎の蒸留酒(ブランデー)を開封した彼女は、一緒に用意したグラスに注いだ後、ガゼル王の元まで運ぶ。

 

「どうぞ」

 

「うむ」

 

「ドルフ様も」

 

「ありがとう」

 

 シュナから受け取ったガゼル王とドルフだが、二人揃って酒でなくグラスに視線を向けている。

 

 グラスはドワーフ三兄弟の次男ドルドが作成した物で、その薄さや模様は並の職人では作れない作品となっていた。だが会談と言う事もあって、今回用意したグラスには泥酔しない対策として解毒の刻印魔法が刻まれている。

 

「良かったら俺が毒味をしても良いけど」

 

「フッ。貴様等が毒を盛るなどとは最初から思っておらぬわ」

 

 二人と同じくグラスを受け取ったリムルが毒味を提案するも、ガゼル王は無用な心配だと酒の匂いを嗅ぐ。

 

「うむ、品があるな」

 

 そう言ったガゼル王は酒を口に運び、それを見たドルフも倣うように取り敢えずは一口だけ飲む。

 

「おお、これは……美味い……!」

 

「素晴らしい……!」

 

 今まで飲んだ事のない酒だったのか、余りの美味しさに感動するガゼル王とドルフ。

 

「じゃあ俺も……ぷはぁ、美味い!」

 

 その評価を聞いて満足そうなリムルも二人に続いてグイッと酒を飲む。

 

 因みに隆誠は事前に酒は飲まないと言ってる為、グラスを手にしていない。

 

「お二人が飲んでいるのは、林檎で作った蒸留酒です。以前までは数に限りがあったのですが、果実を輸入出来る目途が立ちましたので、これからは量産可能になっています」

 

「ほう、輸入か」

 

 隆誠が軽く説明した事で、ガゼル王は輸入と聞いて興味深そうな表情になる。

 

「このドワルゴン以外にも貴様達と国交を結ぼうという者が現れたのか。先ほど話したブルムンド王国辺りか?」

 

「ええ、まぁ……」

 

 他にも獣王国ユーラザニアだと教えれば、絶対仰天するだろうと言い淀む隆誠だが――

 

「ブルムンドだけじゃなくて、この前リューセーが行った獣王国ユーラザニアからも――」

 

「待て! ユーラザニアだと!?」

 

「誇り高い獣王が他国と取引を!?」

 

 何も考えずにリムルが暴露してしまった所為で、ガゼル王とドルフは勢いよく詰め寄ってしまうのであった。

 

「それと隆誠! 貴様、あの魔王カリオンが治める国へ出向いたと言うのは(まこと)なのか!?」

 

「……はい。実は先日に使節を終えたばかりでして」

 

「よく生きて戻ってこられましたね。聞いた話によると、獣人達は人間を嫌っているとの事でしたが」

 

「あの国は超が付くほどの実力主義なので、此方が相応の力を見せた事で友好的に接してくれました」

 

 その所為で魔王カリオンと手合わせする破目になったが、と内心付け加える隆誠。流石に手合わせの内容まで答える訳にはいかないので、そこから先は敢えて言葉を濁している。

 

 ガゼル王は何か引っかかるように一瞬眉を顰めるも、いくら同盟国であってもこれ以上の詮索は止しておこうと踏み止まる事にした。魔王ミリムだけでなく、魔王カリオンとも交流をしてる時点で理解が追い付かない為に。

 

「はぁっ。リムルと言い、隆誠と言い……貴様等は揃って魔王たらしなのか?」

 

「いやいやいや、ミリムはともかく、魔王カリオンの方は部下を助けただけだから」

 

「その部下を助けたのが切っ掛けになって、ユーラザニアと交流することになりました。とは言え、今はまだ使節団の派遣程度の付き合いですが、ね」

 

「ほう、そのような事があったのか」

 

 リムルと隆誠の言い分を聞いたガゼル王は落ち着きを取り戻しながら、再び椅子に座ろうとする。

 

「だとしても、魔国連邦(テンペスト)の重要性は一気に跳ね上がるでしょう! いずれはファルムス王国に代わる貿易の中心地になるかもしれません!」

 

「うむ、確かにな」

 

 ドルフの言い分に頷くガゼル王は頷いていた。

 

 それを聞いていたリムルは買い被り過ぎだと言い返してる際、隆誠が何か気になるように目を細める。

 

(ファルムス王国、ねぇ)

 

 隆誠は聞き覚えがあった。ファルムス王国がヨウムの出身地である事を。

 

 今の時点で問題無いにしても、もしかしたら何らかの形で関わる事になるかもしれないと思い、彼は情報収集も兼ねて訊ねる事にした。




シオンはいませんが、原作と殆ど変わらない内容ですいません。

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