武装国家ドワルゴンから帰国して数日後。一週間の休日を過ごしている隆誠を除くリムル達は、平和な時間を満喫しながら政務に励んでいた。
現在は
そんな中、盟主リムル(+ゴブタ)は苦境に陥っている。先日内緒で『
罰の内容を聞いた隆誠は、これには流石に抗議をした。いくら黙っていたからとは言え、別に夫婦や恋人の関係でもないのに度が過ぎてる罰である為に。
しかし、それでもシュナは考えを改めずに決行してしまう。これはリムルの罰だけではなく、シオンにも必要なのだと。
シオンは『厨房での手料理絶対禁止令』が出されてる事で、料理を披露する事が出来ないと不満が溜まり続けている。故にこれ以上抑制すると何を仕出かすか分からないと危惧したシュナは、主のリムルに自身の手料理を食べさせることで不満を解消させようと一時的に許可を出す事にしたのだ。
一通りの理由を聞いた隆誠は、同胞に料理の基礎を教えれば改善出来るのではないかと訊いてみるも――
「それが、その……何度教えても……」
とても言い辛そうな表情をしていたのを見て、あの毒マズ女の料理改善は一生無理なのがよく分かった。加えて禁止令を出した人間の自分が指摘したところで、絶対に反抗するどころか聞く耳持たずだろうと。
それはそうと、シオンに料理が出来ない不満を溜めさせるのは確かに不味いので、隆誠は渋々でありながらも一時的に禁止令を解除した。リムルの帰りを待ちながら(殆どリグルド任せの)仕事をしていた彼女は、報告を聞いた瞬間に厨房へ駆け込み、嬉々として調理したのは言うまでもない。
リムル(+ゴブタ)が毒マズ料理に耐えている間、隆誠はある事をしようと密かに一部の幹部達を集める。
「今回は突然の招集に応じてくれて感謝する」
場所は隆誠の家で、数人の幹部達が揃っていた。
参加しているのはベニマル、ソウエイ、ハクロウ、リグル、カイジン、べスター、ゲルドの七名。
隆誠はユーラザニアとドワルゴンの連続交流をした事で一週間の休日を与えられてるが、少々暇を持て余してるからベニマル達に御馳走を振る舞おう。と言う名目で声を掛けた。
ベニマルは普段から彼の家に来ては料理(特にスイーツ)を食べてるので問題無いが、残りの面々は違う。隆誠の料理は今まで何度も食べたが、家に来て頂いた事は無いから。
「それで隆誠、急に呼び出したのは一体何だ?」
「ベニマルだけでなく俺達にまで声を掛けたと言うのは、単なる食事会だけではないのだろう?」
「左様。この場にリムル様がいないのであれば猶更じゃな」
理由を問うベニマルとは別に、何か理由があって呼び出したのではないかと推測するソウエイとハクロウ。
因みにリムルは未だに罰を受けている身である為、どの道参加する事は出来ない。
「お察しの通り、今回はチョッとばかり盟主には話せない内容なんだ」
「リムル様には話せない?」
「隆誠殿、それは一体どう言う事ですか?」
聞き捨てならないと言わんばかりに反応するリグルとゲルド。
二人は人間の隆誠に対して微塵も疑っていない。人間でありながらも、魔物の自分達と一切垣根がなく良き隣人として共に仕事に励んでいる。
しかし、普段から盟主を支える筈の補佐がリムルに話せない案件となれば、それだけ大きな問題なのかと考えてしまう。
「みんなも知っての通り、俺は獣王国ユーラザニアと武装国家ドワルゴンの交流をした。ユーラザニアは特に問題無かったが、ドワルゴンでガゼル王から聞いた話の中に懸念事項があって、な。と言っても、これはあくまで俺の個人的な考えだから、もしかすれば杞憂で終わるかもしれない」
「それを分かっていながらも、隆誠の兄ちゃんは俺達にも声を掛けたんだな」
「ガゼル王から聞いた話となれば納得です」
今は
リムルに話せないとは言え、一体何の懸念があるのかと気になるベニマル達は聞く姿勢となる。
「実はな――」
そう言って隆誠はガゼル王と話した中にあった、ファルムス王国について話し始めた。概要だけでなく、その国に対して用心しておく必要がある事を。
彼が話す内容に疑問を抱く魔物のベニマル達とは別に、カイジンとべスターは全く異なる反応を示す。寧ろ、用心するに越したことは無いと頷いている。
「成程な。確かにあの欲深な国が、どんどん発展していく
「そうですね。ファルムスは貿易が盛んな大国ですから、その利益に響くような事になれば絶対黙っていないでしょう」
ドワルゴンに仕官していた頃のドワーフの二人は、ファルムス王国の概要を詳しく知っているどころか、どのような行動に出るのかを想像していた。
「人間の国であれば外交やら交渉をするかもしれないが、
「俺も断定は出来ねぇが、その可能性はあるだろうな」
「私も同感です」
欲深なファルムス王国ならやりかねないと頷くカイジンとべスター。
加えて西方正教会と言う強力な後ろ盾もあるから、その力も借りて
ここまでの話で、今後はファルムス王国の動きを警戒した方が良いと考えるべきだろう。
「隆誠さん、仰ることは理解しましたが」
「仮にそのような事になろうとも、我々が追い出せば良いのでは?」
だけど魔物側はそう簡単にいかないようで、リグルやゲルドは何の問題無く言い返した。
「そうだな。人間が俺達に喧嘩を売ってくるのであれば、相応のもてなしをするだけだ」
「自分達がどれだけ愚かな事をしたのか地獄の底から後悔させる。俺は今まで侵略してきた連中にそうしてきた」
「ワシ等が本気でやれば殺してしまうから、加減する必要はあるがのう」
実際この国にいる魔物達は名前を与えられた事で、進化すると同時に強くなっている。だからファルムスが大国であっても、
加えてリムルから『人間と仲良くするように』と言われており、もし敵対する事になっても絶対殺さないよう常に心掛けている。魔物の彼等は盟主に絶対の忠誠を誓っている為、背くような事は決して無い。
隆誠は当然予想してるが――
「確かにお前達は人間とは比べ物にならない力を持っている。だけど……もし人間を殺すしかない状況になればどうする?」
『!?』
敢えて盟主の命令に背く展開になった場合の事を訊いた。
「俺が言うのもなんだけど、人間は魔物以上に厄介な存在だ。自分達より強い魔物相手に対策を練ったり弱点を突くなど、有利な展開にしようと知恵を働かせる。例えば……
この国に住む魔物達の殆どは種族を問わず人情深い反面、人間に対する警戒心は皆無に等しい。
もし悪意ある人間が近づいても、全く気付かずに囚われるか殺されてしまうだろう。そうなれば如何に強いベニマル達でも考えを改めるどころか、敢えてリムルの命令に背く可能性がある。隆誠としては勿論そんな展開になって欲しくないが、それでも最悪な状況になる場合も想定しなければならない。
先程まで問題無さそうにしていたベニマル達だが、卑劣としか言えない例え話を聞いて眉を潜めている。魔物ではないドワーフのカイジンとべスターは、隆誠の言ってる事は非常にあり得る話だと思って重く受け止めている様子だ。
「気分を害する言い方をしてるのは重々承知している。だが人間の中には卑劣な手段を取ろうとする奴もいる事を、可能であれば頭の片隅に置いて欲しい」
『…………………』
決して間違った事を言わないのは分かっていても、少しばかり複雑な気持ちになるベニマル達。
しかし、彼等は後になってから隆誠の懸念は正しかったと理解させられるのを、この時の彼等はまだ知らない。
本来は食事会をする為に呼び出されたが、誰もがとてもそんな気分ではなかった。
魔物達に人間への警戒心を持たせるよう忠告する隆誠でした。
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