予定通りカバル達が到着するも夜だった。時間帯だけでなく三人も疲労状態である為、早朝に出発するのは当然の流れと言えよう。
その翌日、見送ろうとしている魔物達を背景に外出着を身に纏う隆誠とリムルは、カバル達の案内でブルムンド王国へ向かう事になる。
本当はイングラシア王国へ向かうのが目的だが、その途中にブルムンド王国がある。ならばギルドマスターのフューズに顔を合わせるついで、
「旦那達は俺達に付いて来てくれればいいぜ!」
「どーーーんと任せちゃってよね」
「あっしの本領発揮ですやね!」
自信満々に言ったカバル達に案内されながら進むこと数時間経つも――
『リムル、もしかしてアイツ等……』
『ああ、俺もそう思った』
隆誠とリムルは早くも不安視する事になった。
三人が意気揚々とブルムンド王国の道へ進んでると思いきや、同じ道をグルグルと歩き続けているのだ。それが分かるのは、気の枝の上にある鳥の巣を何度も見ていたから。
「なぁ、ひょっとして」
「迷ってるんじゃないのか?」
「「「ッ!」」」
リムルと隆誠が声を掛けると、カバル達は図星と言わんばかりに身体を震わせており、冷や汗を掻きながら何度も地図を見る始末。
旅立って早々道に迷う事態に呆れながらも、予定を変更して今夜はハイオーク達が工事の際に利用してる現場宿舎に宿泊する事になった。
だが、そのお陰でカバル達が道に迷っていた原因が判明する。周囲に幻覚作用をもたらす花の所為だったと、現場のリーダーであるゲルドが教えてくれたのだ。同行してるエレンからも、その花は
改めて翌朝。
幻妖花に惑わされない為として、リムルが『
今度は迷うことなく進んで順調に進んでいくのだが――
「何で魔物の巣を突っつくんだよ!!」
「これが(この世界の)冒険者の常識なのか?」
ふざけているとしか思えない行為をやらかす馬鹿者の所為で無駄に時間を食う事になった。この所為でリムルと隆誠はカバル達の評価が下がったのは言うまでもない。
大型魔物であればカバル達なら死に物狂いの逃亡をするも、今回は規格外の存在が二名も同行してる事であっさりと片付いていく。
道中、今度は余計な事をしないよう隆誠が眼を光らせた事で、それ以降から無用なトラブルが起きる事無く一週間未満でブルムンド王国に辿り着く事になる。
☆
『ここがブルムンド王国、か』
『見た感じ、中々良い国だな』
最初の目的地であるブルムンド王国に辿り着いた隆誠とリムルは、初めて見た別世界の人間の国を興味深そうに見渡していた。
魔物の生息する森が近い為もあって、堅固な印象を受ける建造物ばかり。更には街を警邏している者がいる事もあってか、住民の表情は明るくて平和に暮らしているのがよく分かる。
二人は思念伝達をしながら初めて訪れた国に対しての感想を言ってる中――
「そこの仮面のお嬢ちゃん、焼き立てのパンはいかが?」
屋台でパンを販売してる中年の女性が仮面を付けてるリムルに声を掛けていた。
この国に到着して早々、リムルは仮面で素顔を隠している。それには
それを聞いた隆誠は中々便利な物だなと思いながら、
「いっこサービスしといたから、お揃いの服装してる彼氏さんも後で一緒に食べな」
「え? 彼氏?」
「?」
中年の女性が妙な事を言った所為で、リムルだけでなく隆誠も揃って首を傾げていた。
意味が分からないと頭に疑問符を浮かべる二人を余所に、カバル達は食事を摂ろうと行きつけと思われる店を案内する。
「夢で見た子供達に会うため?」
「ああ。シズさんの心残りだし、何か意味ありげな夢だったからな」
食事を済ませながら、リムルはイングラシアへ向かう目的を教えていた。
死んだ静江の話題だからか、カバル達は大変興味深そうに話を聞いている姿勢だ。
このメンツの中で唯一会った事のない隆誠は、相当思い入れのある女性なのだと改めて理解している。
「あ、だったらぁ。うちのギルマスに紹介状書いてもらうといいかも」
「フューズに?」
エレンの提案にリムルは何故と訊ねる。
目的地であるイングラシア王国には
名はユウキ・カグラザカと、明らかに日本人の名前なのが丸分かりだった。
隆誠としても元の世界へ帰る方法がないかを尋ねておく必要があるので、その同郷人に会いに行かない理由はない。
提案を断る理由がないリムルと隆誠は、店を出てフューズがいる自由組合ブルムンド支部へ行こうとする。
「あ、そうだお二人とも。イングラシアに行くなら
「え、何で?」
「もしかして入国する時の身元証明に必要だからか?」
冒険者登録を勧めるカバルに疑問を抱くリムルとは別に、隆誠が理由を推察した。
「そうそう、冒険者って待ちの外で活動するのが殆どなの。
正解だと言わんばかりに、エレンは所持しているカードらしき物を見せる。
一種の身分証だと分かった隆誠とリムルは、確かに必要かもしれないと考え直す。
ブルムンドへ入国する際、二人はカバル達の連れという扱いで一緒に入れた。加えてイングラシアは大国だと言われてる為、入国審査も厳しいのは容易に想像出来てしまう。
加えて隆誠は情報収集をする為に諸国を回るから、冒険者登録は猶更やらなければいけないのは明白だった。
自由組合ブルムンド支部の建物に着いて、奥へ進み受付窓口へ案内される。
受付は大きく三つに分かれていた。
採取した素材などを組合へ納入する買取受付。
組合員が利用する一般受付。
冒険者しか利用できない専門受付。
隆誠とリムルが今回利用するのは専門受付で、そこで冒険者登録をする事になっている。
「えっと……そこの殿方はともかく、仮面の君にはまだ早いと思うわよ。英雄に憧れるのは分かるけど」
眼鏡をかけた受付嬢は、仮面を付けてるリムルに向かってそう言った。
どうやら静江はブルムンドだけでなく、他国からも大きく知れ渡るほど有名な存在だった。彼女に憧れる者もいてか、リムルのように仮面を付けている者もチラホラいるらしい。
「お姉さん、見た目だけでしない方が良いですよ」
「その兄さんの言う通りだぜ。この人はこう見えて、俺ら三人が束になっても敵わねぇんだから」
「えっ!?」
隆誠の発言に頷くカバルが自分や他の二人以上の実力者だと公言した。
それを聞いて驚愕する受付嬢だけでなく、周囲にいる冒険者達も信じられないと言わんばかりにざわめき出す。
カバル達は信頼があるのか、リムルを甘く見ていた者達から反論の言葉を誰一人たりとも口に使用とはしない。
『なぁリューセー、アイツ等って此処だと結構信頼されてるんだな。俺はてっきりポンコツ三人衆だと思ってたんだが』
『……その評価は誤りだ。アレを見ろ』
口に出すのは不味いと思って思念伝達をするリムルに、隆誠は呆れるようにカバル達が納入してる買取受付を見るよう促す。
その先には森を迷う原因となった大量の幻妖花を自慢気に見せてる三人に、他の冒険者達から尊敬の眼差しを向けられる光景だった。
『アイツ等、もしかして……』
『ああやって信頼を得たんだろうな』
何の苦労もせず楽して貰っただけの素材を、あたかも苦労して採取したと周囲に思わせているから、リムルと隆誠は最早呆れる視線を送るしかない。
以前にフューズが
そんな事とは別に、リムルは隆誠の分も含めて冒険者の中で一番難しい討伐部門を受けようと、提示された用紙に記入していくのであった。
内容を出来る限り飛ばして書きました。
感想お待ちしています。