再転生した元神は転スラの世界へ   作:さすらいの旅人

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人間(リューセー)魔物(リムル)の旅路②

 冒険者には採取、探索、討伐と三つの部門がある。

 

 その中で一番に難しいのは討伐であり、最低でもD+以上のランクが必要とされている。可能であればCランク以上推奨されると受付嬢が暗に考え直した方が良いと説明するも、リムルや隆誠は全く意にも返さず試験を受ける事を承諾。

 

 本来であれば先ず組合に登録してFランクからスタートして、戦闘経験を積めばEランクとなり、それで更に実力が認められれば、Dランクとして冒険者を名乗れる流れになっている。確かにそうしなければ、一通りの経験や知識を積ませなければ冒険者と名乗る事は許されないのは明白だ。安全を考慮し、尚且つ事故が起きないように細かくルールを定めるなど、これを考えた者は大変思慮のある人間と見るべきだろう。

 

 しかし、リムルや隆誠は一刻も早く冒険者にならなければいけない理由がある為、そんな事(・・・・)で無駄に時間を掛けたくないのが本音だ。何も知らない他の冒険者達からすれば身の程知らずと思ってるだろうが、二人はジーギスと呼ばれる試験官の案内で裏口から別棟へと移動する。

 

 

 

 辿り着いた試験会場は、体育館のような広い建物の中で行われる。

 

 試験が行われると聞いたのか、明らかに暇潰し目的だと思われる組合員や冒険者達が、ゾロゾロと見学に来ていた。

 

 娯楽が少ない世界だから、チョッとした事でも食いついてしまうのだろうと隆誠とリムルは内心思っている。

 

「試験は一人ずつやってもらうが、どっちからやる?」

 

 二人を胡散臭そうにみている試験官のジーギスは、片手で杖を付きながら中央に立っている。

 

 因みに彼は嘗て冒険者だったらしく、現在は引退して試験官を務めている。理由は片足を失って義足となっており、片手の杖がなければ移動や直立がままならない状態だから。

 

 少々気の毒そうに見ている隆誠とリムルだが、これから行う試験とは全く関係無い。

 

「だったら俺が――」

 

「待て、リューセー。俺からやらせてくれ」

 

 隆誠が一歩前に進もうとするも、リムルが待ったを掛けて自分が先にやりたいと言い出す。

 

 一応は盟主補佐として万が一の事を考え、試験に問題が無いかの確認するつもりだったが、そこまで警戒する必要は無いかと考えを改めて譲る事にした。

 

 足を止めて『どうぞ』のジェスチャーをする隆誠を見たリムルは、前に進んで試験官と対峙する事になる。

 

 その瞬間、地面に描かれている魔法陣が発動し、リムルとジーギスを覆う広い円形の結界が展開された。

 

「この魔法陣の中で戦うのが試験か?」

 

「そうだ。これは外に被害を出さない為のもの。受験者であるお前は、この円から一歩でも出た時点で失格になる」

 

(成程、な)

 

 結界の必要性を説くジーギスに、隆誠は見物に来てる他の冒険者や組合員が何故こんなに無警戒なのかを内心納得した。

 

 彼がその気になれば目の前にある結界を簡単に壊すのは造作も無いが、周囲の様子から見て相当信頼があるモノなのだろう。

 

「なるほど、分かった。で、相手は?」

 

 リムルも隆誠と同様に納得しながら、早く始めようと促した。

 

 その態度が気に食わないジーギスだが、一先ずは試験官としての顔になって宣言しようとする。

 

「ではこれよりEランクの試験を開始する。魔物に見事打ち勝ってみせよ」

 

 そう言いながらジーギスは右の義足の先端をコツコツと地面に突いた直後、目の前から別の魔法陣が展開したと同時に魔物――狩猟犬(ハウンドドッグ)が出現した。

 

(ほう。この世界の人間は本当の(・・・)召喚魔法が使えるのか)

 

 ジーギスが召喚術師(サモナー)だと判明した隆誠は、自分がいる世界の魔法師とは全く違うモノだと改めて認識する。

 

 魔法師は精霊や使い魔を召喚するSB魔法はあるが、アレ等は非物質存在を媒体としている為、実体の存在を召喚する事は出来ない。因みに元神の隆誠は異なる世界から転生した存在な為に魔法師が扱う魔法は使えないが、四葉家では神霊を召喚できる特殊なSB魔法の召喚術者(サモナー)として周知されている為、思わずその立場で目の前の召喚魔法を興味深そうに見ている。

 

 いっそ今回の試験でジーギスに倣って自身の影に潜んでいる神造精霊獣(フェンたち)を出してみようかと思わず考えてると、襲い掛かる魔物犬はリムルが抜いた直刀で首を刎ねられていた。

 

 たった一撃でEランクをクリアした事で、ジーギスや周囲の者達が『は?』と唖然とした表情になっている。カバル達三人が何故か得意気になってるのは気にしない。

 

「ほい、倒したよ。次もよろしく」

 

「……いいだろう、次だ」

 

 簡単すぎて詰まらないと遠回しに言ってくるリムルに、唖然としていたジーギスは途端にピクピクと額に青筋を浮き出していた。

 

 完全に頭に来てるのか、今度は容赦しないと言わんばかりに新たな魔物を召喚した。

 

「いでよ、邪鬼妖精(ダークゴブリン)!」

 

 召喚された魔物は完全武装した黒い肌のゴブリンモドキ――邪鬼妖精(ダークゴブリン)

 

(ん? あの魔物の顔……)

 

 邪鬼妖精(ダークゴブリン)の表情を見た隆誠が、急に魔国連邦(テンペスト)にいるお調子者の人鬼族(ホブゴブリン)を思い出した。

 

 その瞬間、リムルが瞬時に間合いに入って、先程と同様に直刀で魔物の首を刎ねた。

 

 またしても一撃で倒された展開に、ジーギスは信じられないと言わんばかりの変顔になってしまう。

 

「いや、すまん。何か知り合いが煽って来た時の顔に似てて、つい……」

 

 リムルも邪鬼妖精(ダークゴブリン)の顔を見てゴブタを連想したようで、思わずイラっとして瞬殺したようだ。もし此処に彼がいたら『リムル様酷いっすよ~!』と嘆いているかもしれない。

 

(この程度の試験なら問題なさそうだな)

 

 試験の流れを見た隆誠は自分でも簡単に合格できると判断したのか、何の心配も無い感じで観戦するように見ている。

 

「カバル等を倒したと言うその腕、最早疑う余地はないようだ」

 

 全然本気ではないがリムルの実力に周囲の冒険者達が驚愕している中、ジーギスはそれを認めたようにある事を提案した。

 

「どうだ? 一気にBランクの試験を受けてみないか? このまま順々にランクを上げていくのも面倒だろう」

 

「……それは良いねぇ」

 

 ジーギスの提案にリムルは願ってもないように了承した。

 

 すると、今まで余裕な感じで見守っていたカバル達が突然慌て始める。

 

「おいおいジーギスさん、いくらなんでもちょっとやり過ぎだぞ!」

 

「そうよぅ! Bランクの相手ってリムルさんにとって不利な相手だしぃ」

 

(リムルにとって不利だと?)

 

 カバルとエレンの発言が聞き捨てならなかった隆誠は、再度警戒しようと意識を切り替えた。

 

「外野は黙ってろ! 決めるのは受験者本人だ!」

 

 ジーギスがカバル達に何の恨みがあるのかは隆誠には不明だが、恨みを抱いているような気がした。

 

 だが今はそんな事より、場合によっては試験であろうとリムルの危機に関する事態になれば、違反覚悟で加勢する事を考慮する必要がある。そう考えた隆誠は、いつでも手助けできるよう『光の槍』を展開出来るようにしていた。

 

「だがまぁ、逃げるチャンスはやろう。コイツの姿を見て勝てないと思ったら降参するがいい」

 

 そう言いながらジーギスは今までとは違う真剣な顔で構え、今までとは異なり魔力を迸らせながら再び魔物を召喚しようとする。

 

「来いっ! 下位悪魔(レッサーデーモン)!」

 

(おいおい、この世界は悪魔も存在してるのかよ……!)

 

 ジーギスが召喚した邪悪なる魔物――下位悪魔(レッサーデーモン)を見た隆誠は、悪魔も存在してる事に内心驚愕した。

 

 悪魔は嘗て隆誠こと聖書の神が対立していた不倶戴天な存在。前々世(おおむかし)前世(むかし)の頃に戦っていたが、まさか再び目にするとは思いもしなかったのだ。

 

(あれが下位(レッサー)なら、間違いなく上位種も存在してるだろう、な)

 

 ただでさえミリム・ナーヴァも含めた魔王達の存在でも面倒なのに、それに悪魔も加われば実に厄介極まりない。これでもし天使も存在していたら、前世(むかし)の頃にいた世界と何ら変わらなくなってしまいそうだと隆誠は頭を悩ませてしまう。元の世界に戻れば無関係になるとは言っても、この世界にいる以上、前世(むかし)の実力を取り戻さなければ不味いと考え直す事にした。

 

 そんな中、いつの間にかリムルが下位悪魔(レッサーデーモン)と交戦中だった。

 

 この世界の悪魔は魔法に関する攻撃がメインなのか、球状の火炎魔法を放っている。

 

 リムルは炎に対するスキルがある為に問題無いのだが、それを周囲に知られたら不味いと思ってるのか、放たれた火炎魔法を全て回避していた。

 

 その際に斬撃や魔法で反撃するも、下位悪魔(レッサーデーモン)には一切通用しない。

 

(成程。この世界の悪魔は俺の神造精霊獣(こどもたち)と似たような存在か)

 

 物理攻撃や魔法が通用しない下位悪魔(レッサーデーモン)を見て、隆誠は実体のない生命体だと推測した。

 

 

 ――ウゥゥゥゥ……。

 

 ――クワァァァ……。

 

 ――シャァァァ……。

 

 ――グルル……。

 

 

 すると、隆誠の影に潜んでいる神造精霊獣達が抗議の念話をしてきた。悪魔(あんなの)と一緒にしないでほしいと。

 

(ゴメンゴメン。一緒にして悪かった)

 

 子供達の機嫌を損ねてしまった事に謝る隆誠とは別に、リムルは今までとは違う手段を行使する。

 

 直刀に妖気(オーラ)を包むように纏わせ、それで下位悪魔(レッサーデーモン)を斬った瞬間――物理攻撃が通じない筈の存在を真っ二つに両断され、塵となって消え失せた。

 

(妙だな。魔法剣なんて使えなかった筈だが……)

 

 リムルはハクロウから鍛えた事でそれなりの剣技を見せるが、魔法剣の技術(アーツ)は未だに習得していない。

 

 いくら魔法が使えると言っても、剣に自身のオーラを纏わせるのは簡単ではない。扱いを誤ると魔法の力に武器が耐えれなくなって崩壊してしまう恐れがあるのに、初心者である筈のリムルは完璧に使いこなすなど余りにも違和感があり過ぎる。

 

(以前のスキルを使って自動的に会得したかもしれない、な)

 

 隆誠は思い出した。暴風大妖渦(カリュブディス)を倒した後、核と融合しているフォビオをリムルが強制的に分離させた時の事を。

 

「……見事だ、おみそれしたよ」

 

 相変わらず規格外なスキルだと呆れるように見ている中、下位悪魔(レッサーデーモン)に勝利したリムルをジーギスが今までの非礼を詫びていた。同時に合格を宣言した事で、リムルは晴れてBランク冒険者になる。

 

 途轍もない実力者だと分かったのか、今まで見学していた者達から盛大な歓声と勧誘が始まったのは言うまでもない。

 

「あのぅ、水を差すようで申し訳無いのですが、俺の試験は?」

 

「ん? あっ……」

 

 隆誠が手を上げながら訊ねてきた事で、ジーギスは忘れてたと言わんばかりの表情だった。リムルを勧誘していた者達も同様に。

 

「えっと、すまないが俺はもう精神力(マインド)が尽き掛けてて、これ以上召喚が出来なくてな」

 

「でしょうね」

 

 あれだけ召喚魔法を行使しただけでなく、下位悪魔(レッサーデーモン)を制御するだけでも必死だったから、ジーギスが疲労困憊になってるのは一目瞭然だった。

 

「君が今すぐ試験を受けたいなら、別の試験官を呼ぶように手配を――」

 

「その必要は無い!!」

 

 突如、聞き覚えのある第三者の声がジーギスの台詞を遮るように大音声で叫んだ。

 

 誰もが振り向いた先には、隆誠とリムルが会おうとしていたフューズが物凄く怖い顔になっていた。

 

 魔国連邦(テンペスト)では見た事のない表情に、盟主とその補佐が思わず後退りしてしまうのは無理もない。




リムルの試験を見守る隆誠、と言う原作と全く変わらない内容ですいません。

本当は隆誠が試験を受けて圧勝するつもりでしたが、リムルの時と全く変わらないと思ってやめました。

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